新入部員④
「ひとまず部員の問題はこれで解決だな」
オカ研の部室を見渡して改めて八人の大所帯になった事を実感する。
俺と孝宏はソファじゃなく普通の教室にあるような木製椅子に座っている始末だ。
「まさかこんな簡単に三人も入部するなんて思っていなかったけれど、楽に終わって何よりだわ」
「僕は納得できてないけどね……。本当に七海を入れるの? ここは一度部員会議を開いて審議するべきだと思うんだ」
「孝宏。多分それしても結果は変わらないと思うよ。そんなことよりも私は部員が増えて嬉しいし!」
「私も。えへへ、後輩」
俺たち三年は各々の反応を示していた。
新しく入った一年生の方が、俺たちよりも比較的真面目そうな奴が多いのは気のせいだろう。なんだって今の会話には三年の生徒会長と成績学年一位の奴が混じっていたのだから。
「えっと、一応皆そろったしもう一度自己紹介してもらってもいいかな!」
鈴音が人当たりのよい笑顔で話を振る。
一年ズは互いに顔を見合わせた後、まずは枕崎がやる気に満ちた顔で立ち上がった。
「それでは私から。こんにちわ! 名を枕崎七海といいます! 孝宏先輩と同じ中学で当時色々ありましたが今は先輩が大好きです! この部活にも先輩と一緒の時間を過ごしたかったので入部しました。以後よろしくお願いします。あ、もし先輩の事が気になっている人がいたら一度私に話してくださいね。勝手に付き合ったとかですと、自分でも何するかわからないので」
「大丈夫。好きにして」
「アリスちゃん!?」
最後の方は若干脅しじみてはいたが枕崎は満足げに座った。
孝宏に興味を持つなんて奇特な奴がそう現れるとは思わないので、アリスの反応は至極真っ当なものだろう。
「あ、あはは。元気な子だね。じゃあ次は燈子ちゃん、お願いしていい?」
鈴音が話を回すと黒山も返事をして立ち上がった。
「はい。その、知ってる人も多いと思いますが改めて。黒山燈子といいます。私は茶道部との兼部なので、普通の部員と比べたらあまり顔を出せないと思いますけどよろしくお願いします。その、出来れば仲良くしてもらえると幸いです」
「安心して。あんたの事を根に持つような人はいないわ」
「……はい!」
黒山に関しては飛鳥と打ち解けられるか不安だったが、杞憂だったらしい。
飛鳥の方から歩み寄ってくれるなら、年下の黒山も安心できる筈だ。
「じゃあ……、最後は友華ちゃん。お願いしていい?」
話の流れから最後は友華の番になる。
鈴音の言葉に合わせて他の二人のように立ち上がるかと思ったらそうするわけでもなく、座って腕を組んだままだった。
「了解したわ。私は如月友華、燈子と同じ中学に通っていたわ。人様に自慢できるほどの特技は無いと思うけれど、強いて言うなら人よりも勉強が得意かしらね。周りの人間は基本自分より馬鹿だから、昔から下に見て生きてきたわ。……あとはこんな話し方だから人づきあいが苦手よ。よろしく」
「相変わらず歪んでんな。高圧的な態度をやめればいいのに」
「友華はこれで結構寂しがりやなんです。先輩方は誤解しないであげてください、根は良い子なんですよ」
「ふん」
燈子のフォローが入ったけど、友華は鼻を鳴らしていた。
多分燈子の言うことは間違ってないとは思う。
特にこれといって友華と関わってきたわけではないが、何故か俺は友華を嫌いになれる気がしない。でも、少なくとも今の状態で打ち解けられるような気はしなかった。
「それじゃあ、このメンバーでこれから盛り上げていこうね! 一年生はわからないことがあったら私たちの誰にでも聞いてくれていいよ」
鈴音が話を纏めようと先輩らしいことを言う。
施設で普段から大勢の年下の面倒を見ているからか、鈴音は後輩との関わり方が凄く上手だ。普段は一番年下っぽいのに、しっかりと三年の雰囲気になっていた。
「ええと、一ついいですか?」
黒山が遠慮がちに手を挙げる。
鈴音はそれを聞いて目を輝かせていた。先輩として頼ってもらえたのが嬉しかったんだな……。
「いいよ! 何でも聞いて! 先輩だから答えちゃうよー!」
「ありがとうございます。その、具体的にはこの部活って何の活動をしているんですか?」
「……」
「……え、あの」
「まあ、こう、オカルト的な何かを調べて資料に纏めるとか? 真面目に、日々、活動してます」
「嘘ね」
「嘘っぽいですね」
「嘘なんですか?」
「本当、だよ。うん。まじまじ」
「先が思いやられるな」
「なー」
俺の言葉に孝宏が同意する。
一年ズの前で大量の汗を流しながら必死に普段何も活動していない部活の内容を説明する鈴音には、先輩の威厳何て微塵もなかった。
次回の更新は明日になります
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