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幸福に生きたい不幸なあなたへ  作者: 木鳥
五章・友華 二部
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   新入部員②

「わ! アリス先輩のお弁当本当に凄く美味しいです!」

「顔もよくて料理もできるなんて……。久しぶりにこんな敗北感を味わったわ。卵巻き美味し」

「えへへ。そう言ってもらえると嬉しい」


 一学期初日の昼過ぎ。

 オカ研の部室ではアリスの昼食をみんなで囲んで食べていた。元々全員で食べるつもりだったらしく、いつもより多めに作っていたから新入部員の二人がいても十分な量がある。

 卵巻き、ミートボールといった弁当っぽい具材の外に春巻きやエビチリ何かも入っていた。


「いやー、まさか二人が入ってくれるなんて思わなかったよ」


 鈴音が美味しそうにミニハンバーグを頬張りながら、二人の一年生を見ていた。


「私は無理やり連れ込まれた感じだけれど、確かに燈子がここに入ったのは意外ね」

「うう、その、一応飛鳥先輩の事は凄く反省してるから……。朝に鈴音先輩に部員問題が大変って聞いて、力になれればなって思ったの」

「部員問題?」

「ああ、言ってなかったな。三人部員を勧誘できないと廃部になるんだよここ」

「お前、そういうことは早めに言いなさいよ。少しビックリしたじゃない」


 友華が俺を睨みつけた。こいつ俺に対しての当たりが強すぎないか。

 目を逸らしたとき、丁度部室の戸が開かれた。

 入ってきたのは幼馴染の生徒会長、神谷飛鳥だ。


「こんにちわー、って凄い人! 燈子!?」

「あ、入部しました、よろしくお願いします。その、もし嫌だったら遠慮せずに言ってください」

「全然! 久しぶりね、可愛いわー!」


 飛鳥が燈子を大歓迎して、近所のおばさんのように頭を撫で始める。

 母性大爆発といった感じだ。


「初めまして飛鳥先輩。如月友華よ。燈子の友人でもあるわ」

「初めまして、わあ、あなたも可愛い! え、本当にこんな部活に入るの!?」

「おい」


 友華とも握手を交わしてその容姿に驚いていた。

 何か良からぬことを口走っていたが興奮のせいだろう。飛鳥は生徒会長になっても、大して様変わりした所は無く相変わらずこの部室では普段の真面目さの欠片すら失ってしまうのだった。


「もう二人も入ってくれたから部員も余裕で集まるかもね」

「そうなったら八人かあ……。結構な大人数になるから椅子増やした方がいいかな」

「言っても俺たちはそんなに長くいる訳じゃないんだ。三年だからすぐに引退なんだし、少し我慢すればよくないか?」


 にしても女子六人に男子二人とは。オカ研なんて名前の部活なのに男女比が凄いことになったな。


「あ、それなんですけど、私は茶道部にも入る予定なので来る頻度は少ないかもです」


 おずおずと燈子が手を挙げる。

 茶道部という単語にピクリと耳が反応してしまった。


「茶道部って、知覧のところか。この前知り合ってたけど、あの後も会ってたのか?」

「はい。千夜子先輩は帰り道に会うことが多かったので、結構話していたんですよ。私も昔茶道を習っていたので、高校では同じ部活に入りたいと思ってたんです」

「あ、じゃあ、もしかして、うちに入るのは迷惑だった!?」

「いえいえ。むしろありがたいくらいですよ。それに友華も入ったのなら、私も入部しておきたいです」


 鈴音が一瞬焦ったような顔をするが、燈子はブンブンと手を振って心配させないようにしていた。

 二人とも結構他人の顔色を伺うところがあるのかもしれない。

 気遣いコンビの異名を与えておこう。


「二人とも本当に仲良いんだね。幼馴染?」

「燈子とは中学からの付き合いよ。燈子以外とはまともに話した記憶が無いわね。面倒くさい性格の私に関わろうとする人間が、燈子しかいなかったって言い方も出来るけれど」

「はは、言えてるな」

「お前は黙りなさい」

「痴漢先輩。流石に今のは失礼です」

「何か俺にだけ厳しくないか! あと痴漢先輩はやめろ!」


 燈子の奴、初めて会った時の事をまだ根に持っていたのか。

 あれはアリスの記憶を探していたから、俺だってやむを得ずやっただけで下心なんて一ミリもなかったんだ。


 幽霊の記憶を探していたからナンパしたなんて、信じてもらえないのは分かっているから何も言わないけど。


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