部活がヤバイ②
「新入部員が三人は加入しないと廃部だそうです。校長先生から急に言われました」
目の前のロリっ子教師から放たれた衝撃の一言に、俺は息を飲んだ。
「幾らなんでも急すぎないか!? 今の流れでそんな重大なこと言うとは思わないだろ!」
「優作。相手は串木野先生よ?」
「……そっか」
「私に失礼ですよ!? まあ、職員室で急に言われた時には驚きましたしその場で文句も言ったんですけど……。私では力が及びませんでした」
「あ、すみません。もしかして俺たちのせいで怒られたんですか?」
「ハーゲンバッツを貰ってしまっては、歯向かえませんでした」
「心配を返せ!」
アイスに敗北した俺たちの顧問は、申し訳なさそうに項垂れていた。
そこまで深刻になるのなら何故そこで食い下がらなかったのだろう。
先生はトテトテと歩いて部長席近くに置かれた小さな冷蔵庫から、レジ袋を取り出した。
「皆の分もありますよー」
「やったあ!」
「鈴音ちゃん。部長ならここは怒ろうよ」
最近思うのだが、実はこの部活では俺と孝宏が常識人枠なのではないだろうか。
現に部の廃部が提示されているのに、机に置かれた高級アイスで女子達はキャッキャッとはしゃいでいた。
「何かデジャブを感じるんだが」
「僕もだよ。文化祭の時も似たようなこと言われたもんね」
「ああ。確かあの時は孝宏の意見で飲食店をして、何とか目標金額を達成したんだったよな」
「うええ、そうなってるんすね……」
「どうかしたのか?」
「何でもないよ」
文化祭の話をしただけなのに孝宏は気持ち悪そうに舌を出した。あの時はこいつにしては素晴らしい名案だと思っていたのに、何で心苦しそうにするのだろう。
いつもなら誇らしげに自慢しそうだ。
「まあ、そんな訳なので新入生勧誘頑張りましょうね!」
「はい! 私も後輩が欲しいから頑張りますよ!」
「任せて。生徒会長権限で校門のど真ん中に看板建ててみるわ」
「賛成」
女子たちはアイスを食べながらも作戦会議っぽい話を進めていた。
俺たちも話しに混ざらないと、このままでは勧誘できる部員も勧誘できないゲテモノ企画が通ってしまう。俺がしっかりしないと真面な意見は出ないので、こういった時は率先して参加しなければ。
全く本当にこいつらは俺がいないと駄目だな。
「そんなことしたら悪目立ちするだけだ。もっと落ち着いて考えろよ」
「むう、じゃあ山元は何か案があるの?」
当然この質問をされるのは想定内だ。
反対する以上自分の意見がないと根拠を強められない。
俺たちはオカルト研究会だ。中学を卒業したての奴らなら数人くらいその手の話に興味がある奴もいるだろう。だから大切なのは入部のハードルを下げることだ。変に壁を作ったり格式高いイメージを付けると入りずらくなるからな。
「そうだな……、皆でお揃いの服着て勧誘するのはどうだ? オカ研って文字いれて」
「却下」
「ふざけてるのか?」
「それはちょっと……」
「山元、真面目に」
「うう、私も流石にどうかと……」
「ちくしょう!」
全員から瞬時に否定されて泣きたくなった。
取り敢えず話し合いに参加したら白い目で見られそうなので、ソファの裏に隠れて勉強しよう……。
良い案だと思うんだがなあ。部活着みたいな感じで。
その日は様々な意見が出たが、話が纏まることはなく下校時間となった。