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幸福に生きたい不幸なあなたへ  作者: 木鳥
三章・飛鳥
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   鈴音との張り込み②

「そうだ。大門寺がどの辺を誤解してるのか、飛鳥に聞けばすぐにわかるんじゃないか?」

「駄目に決まってるよ。話したくないから昨日で大門寺に弁明しなかったんでしょう? 飛鳥ちゃんを少しでも傷つけないようにするには、私たちで調べるしかないよ」


 真面目な顔で鈴音が語る。

 た、確かに言うとおりだ。鈴音の意見が正しい。


 いつもなら率先して聞きに行こうとするのに、こんな状況では冷静な判断が出来るのか。鈴音は意外と一つ一つの行動を考えてとっているということだろう。


「そうだな。悪い考えが足りなかった」

「いいよいいよ! 孝宏と先に少し話し合ってたから、こんな意見も出せるんだし!」


 ブンブンと手を振って遠慮がちに後ずさる。


「それよりもさ、今日の放課後の予定を伝えたいんだけど!」

「予定? そっか、他校に行くしな」


 褒められ慣れていないのか、顔を真っ赤にして早口になる。


 今のやり取りで飛鳥がかなり思い悩んでいるのはわかったから、後はその悩みの解決を考えないといけない。

 今ある情報は鍵になりそうな人物が近くの中学にいるということだ。


 鈴音は名案ありといった感じで、その場でくるっとターンし俺に指を突き付ける。

 さながらバレエのようなその軽やかな動きは、一瞬俺の視線を釘付けにするには十分なものだった。


「今日の放課後、私と優作の二人で出待ち作戦を実行するよ!」



――――――――――――――――――――――



「二人なのは別に構わないけどよ。孝宏やアリスは何しているんだ?」


 放課後。帰り支度が整ったら即座に学校を出て、鈴音と二人して徒歩ニ十分ほどの位置にある中学まで歩く。

 その最中、今朝の話の続きをそれとなしに切り出してみた。


「二人には飛鳥ちゃんと一緒にいてもらいたいから、学校外には私たちだけで行こうかなって。そういえば最近は事あるごとにアリスちゃんと一緒にいるけど、そっちの方がよかった?」


 とんでもない誤解をされている気がするけれど、実際にアリスと一緒にいる時間が長いのは事実なので否定できない。


「馬鹿いえ。付き合いの長さだったらお前とも相当長いだろ。第一、俺はそこまでアリスに固執してないよ」

「そう? 傍から見てるといちゃついてるようにしか見えないよ。それはもうどっぷりと」

「普通にお前と接するような感じじゃないか。他意はない」

「そうだねー。まあ、私は優作に毎日お弁当作れるほどの腕はないからねー」

「そういう意味じゃないって」


 変に卑屈になっている鈴音だけど、多分冗談の範疇だ。

 本気で言っているなら鈴音の重いプレッシャーを味わっていただろう。


「転校前からの知り合いって言ってたけど、どんな経緯でアリスちゃんと面識持ったの?」

「ああ、それはまあ、オカルト的なあれだ」

「うん?」


 案の定、首をかしげられる。


 生霊としてさまよっていた寝たきりの少女を、俺が起こしてしまったなんて怪異めいた話をこんなところで言っても信じてもらえないだろう。

 

 いや鈴音なら信じる可能性も零ではないけど、そうなったらなったで面倒くさそうだからいいか。


「あ、校門が見えてきたね」


 鈴音の指を追うように視線をずらすと、中学生がワイワイとにぎやかに帰宅していた。

 時間的には結構いい具合に到着できたようだ。


「とりあえずこの辺で写真の子が通らないか監視しておこうか」

「わからないぞ。もしかしたら凄く帰るのが早い奴で、もう帰ってる可能性もある」

「ナーバスな意見禁止。こっちまで気が落ちるから」

 

 横目で注意されるけれど、その可能性が無いとは言い切れない。

 まあ、そうなればまた明日にでも今度は俺一人で見張りに来ればいい。

 午後の授業をサボってしまえば余裕のよっちゃんで間に合うし。


「あ、そうだ。今日大門寺と何か話をしたか?」


 中学の校門が見える位置で自販機の横に置いてあったベンチに座り、観察しながら雑談を始める。

 俺は今日、変に意識してしまって大門寺と教室で会話することがなかった。

 でもコミュ力お化けの鈴音なら、何かのタイミングで話しているかもしれないと思ったからだ。

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