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幸福に生きたい不幸なあなたへ  作者: 木鳥
三章・飛鳥
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   もはやボランティア部②

 鈴音はもう少し茶道部に、というか知覧と話しているそうなので俺は次のオカ研メンバーのいる場所に向かっている。


 次は家庭科室。

 そこでは料理研究会が活動しているはずだ。


 確かアリスはそこに参加しているんだったよな。


 家庭科室に近づくと扉の前で膝を抱えてうなだれている奴がいた。この学校ではかなりの顔見知りの一人だ。

 ぶっちゃけ話しかけたくはない。絶対にしょうもないことだろうし。

 でも、通り道にいるので必然的に声をけざるを得ない。


 ツインテールの赤みがかった髪をげんなりとしおらせて、いつもの自信満々な表情が嘘のように落ち込んでいる見てくれだけはかなりの美少女。

 料理研究会部長の山川節子に声をかけた。


「あーえっと、何があったんだ?」


 基本部活に参加しているときはテンション高めなのでここまで落ち込んでいるのも珍しい。

 山川はゆっくりと顔を上げ、まるで長年付き合っていた恋人に振られたかのように自嘲気味な乾いた笑みを浮かべた。高飛車なお嬢様キャラの面影はもはや残っていない。


「いいんですのよ。はは、私はどうせ井の中の蛙。大海を目にして撃沈するのがオチなのですわ」

「本当にどうしたんだよ!? らしくないぞ!」

「らしくない……、自分らしさって何なのでしょうね。他人から決められた偏見なのか、自分がそうなろうと思って持っているのか。どちらなんでしょう。ああ、哲学ですわ。ソクラテスですわ」

「めんどくっさ」

「わああああん!」


 いかん、つい本音が。

 山川は膝を抱える強さを増し、体操座りのまま顔を膝と腹の間に埋めた。


 そしてショックから号泣して――あ、いや違う。よく見ると目で隙間から俺をちらちら見ている。構ってほしいオーラ全開だ。


「泣くなよ俺も悪かった。それで、教室の外にいる理由は何なんだ? それがわからないと対処の使用がないだろ」

「中を見るといいですわ」


 そういって顔をうずめたまま山川が家庭科室を指さす。

 部活で何か起こったということか……。

 促されるままに俺は料理研究会の活動を覗いてみた。


 やっぱりというか、見た限り女子生徒しか目に入らない。男女の縛りはないけど、この部活は殆どが女子生徒という噂は本当だったらしい。

 いくつか調理用の大きくて平たい机があるが、今は黒板近くの机に人が集まっていた。円を描くように誰かを囲っている。


「すごーい! 手際いいです先輩!」

「しかもどれも美味しそう!」

「その梅干しは何ですか?」

「はちみつに漬けた梅干しだよ。甘酸っぱいから和風パスタとかに入れると良いアクセントになる」

「本当だ! 甘いけど酸っぱい!」

「ずるいです! 私も食べます!」

「あはは。料理で使う分は残しといてね」


 囲いの原因になっている人物は顔こそ見えないが間違いなくアリスだ。

 元々料理が好きなのは知っていたけれど、料理研究会の部員にも引けを取らないレベルだったらしい。

 キャッキャッと楽しそうに女子だけで談笑している中心にいた。


「アリスさん、まさかここまで料理が出来たとは想定外でしたわ。軽く助手程度の手伝いを頼んだら手際が良すぎてあっという間に乗っ取られました」


 隣に立っていた山川が震えながら告げる。

 こいつのリアクションも大袈裟だけれどアリスの料理が大勢に認められるのは素直に嬉しいな。


「まあ、料理研究会だし。上手な奴が重宝されるのは当然じゃないか?」

「なんですって! 男の人っていつもそうですわね! 料理する女性のことを何だと思っているんですの!?」

「俺に突っかかってくるな! というか普通はそうだろうが!」


 襲い掛かってこようとする山川を押さえる。

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