第二話 断罪の剣
少し、過去の話が入ります。
追記・第二話が長すぎたので、分割しました。
俺は宿で寛いでいた。
昨日の指名依頼の話、まさか無くなったものが『断罪の剣』だったとは。完全に俺のためにある剣だな。
「そういえば、なくなった『断罪の剣』ってもしかしてお前のことじゃないのか?」
『ギクッ。い、いやだな〜。そんなの知るわけないじゃないか、あはは、あはははは』
こいつ、絶対何か隠している。
そう思った瞬間、宿の窓から『何か』が突っ込んできた。
その『何か』がそのまま床に突き刺さった。よく見ると刀だ。
しかし、何だこの刀?なんか黒いオーラを放っている。一応、確認しておこう。
「『鑑定魔法』!」
名前・断罪の剣
レア度・EX クラス・創世級
魔力伝導率・SSS 耐久度・∞
称号・断罪の象徴、世界の救世主、知性ある武器
固有スキル・永遠不滅
固有魔法・断罪魔法
スキル・念話、ステータス偽造、变化、鑑定魔法、自我分離、自我融合
状態・飢餓
んん??断罪の剣?あれ?聞き覚えがあるな〜どこだろう?
もういいや。白々しい芝居も飽きたわ。覚えてるよ。ギルドの依頼でこの剣の捜索願いを頼まれていた。
まさか向こうからやってくるとは。ってゆうか、さっきからずっと黙っているやつがいるんだよな。
「何か僕に言うべきことでもあるんじゃないのか?ギルティ?」
『いや、な、なにもないぞ。俺、嘘つかない」
「……」
『……はい。これは俺の本体だ。今は自我だけ切り離している状態だ』
(固有スキル『永遠不滅』って…なんかすごいな)
「ちょっと待て、今『断罪の剣』に飢餓状態になってるけどどういうこと?」
『俺のエネルギー補給方法はお前の魔力と罪だ。断罪することで罪を喰らい、エネルギーとして変換している』
「つまり、断罪したりないと」
『そういうことだ』
「じゃ、称号『世界の救世主』っていうのは……」
『そんなの、もう忘れたわ。ちょっと待ってろ。『自我融合』!』
俺の体から何かが抜けたような感じがした。
しばらくして、先程の剣を見ると先ほどまであった黒いオーラが無くなった。
真っ黒な刃、取っ手についた水晶が黒く光る。まさに、漆黒の剣だ。
ちなみに、見た目を変えられるらしい。断罪するときだけもとのすがたにして、人前で使うときは銀色の刃にして見た目を変えることにした。
もちろん、この剣が『断罪の剣』であることを隠すためである。
なんせ今、絶賛捜索中なのだから。
『いや〜やっぱり元の姿の方がいいわ。自由に動かせるし。あ、ちなみにこの俺を触れるのはお前だけだ。他の人が触れば最悪死ぬぞ。気を付けておくんだな』
「お、おう。分かったよ」
『さて、朝っぱらから色々あったが次のターゲットが決まったぞ』
「あ、そうなのか」
『早速行くぞ。目的地はここから北上した先にある王都だ」
「へいへい、わかったからちょっと待て」
身支度を済ませ、早速出発した。
道すがら今回のターゲットについて聞いてみた。
『んぁ?あぁ、今回のターゲットは・・・聖騎士バヴィン・フォン・サルエミ・ルテイン」
「聖騎士ってあの?」
聖騎士とはミルフィード王国の名誉ある騎士のことである。大きな武勲を称えた数少ない騎士。王国には12人の聖騎士がいる。聖騎士は国王の護衛や各国の重鎮の護衛などの仕事がある。王国内でも強い発言権を持っている。武勲を称えられてるだけあり、とても強いのだ。今回はその一人を断罪するのだ。難易度がとてつもなく高い。
「聖騎士か〜」
『なんだ?なにか問題でもあんのか?』
「お前知らないのか?聖騎士って王国最大戦力なんだぞ。その一人を断罪しろって言ってんだろ?難しいだろ」
『だからこそ、断罪しがいがあるだろ。異論は認めないぞ。それがお前の使命なんだからな』
「ちぇ」
道中、魔物が出てくるから討伐しながら野宿すること一週間、ついに王都についた。
・ ・ ・
今から約2000万年前、世界がまだできたばかりの頃、世の中は平和だった。争うなど起きぬ、平和な世だった。
しかし、少しづつだが人々の心に、邪な感情や欲望が生まれた。そのうち邪心が強まり、世界の均衡を崩した。
『大罪系スキル』、人々の邪心からうまれた自我スキル。『暴食』『強欲』『色欲』『嫉妬』『傲慢』『憤怒』『怠惰』。
『大罪系スキル』を持った人族、後に『原初の大罪』を呼ばれた者たちは、世界を争乱の渦に巻き込んだ。
『強欲』のままに侵略する国、『暴食』のままに食べ物を求め略奪を繰り返す国、『傲慢』のままに他国を見下し戦争を吹っかけさせる国、『憤怒』のままに怒り狂って殺戮を繰り返す国など。
お互いが憎しみ合い、世界が腐りかけた。森は焼き払われて、海は汚染され腐り、各地に廃墟となった街が数多くできた。
そんな中、一人の男が立ち向かった。この世界を争乱の渦から脱するために。男は世界各地へ渡り歩き、争乱を沈めてきた。
しかし、男一人だけでは無理だった。なにより『大罪系スキル』所持者、いわば『原初の大罪』が強敵だった。幾度となく立ちふさがり、邪魔してきた。
そこで、男は自らの死をトリガーにした、『浄化』をすることにした。
男は世界の争乱に立ち向かったとしいて、称号『断罪』、『世界の救世主』を獲得していた。そのときに1つのスキル『浄化』を獲得した。『浄化』は、自分の命をつかって全世界の『罪』や『邪心』を打ち消す究極の魔法。男はある一つの場所に向かった。
古代神殿『世界の始まり』。
この世界の創造神がこの地から世界を創ったと言われ、その際にシンボルとして建てられた神殿。人々はここを神聖な場所としていた。
男は、神殿の中に入った。神殿の奥にある祭壇に立ち、祈りを捧げる。この世界を『浄化』するために。
男は『浄化』を使った。古代神殿を中心に、まばゆい光が天高くまで伸び、その光が世界を包む。さすがの『原初の大罪』メンバーも対処しきれずに、この世界から姿を消した。世界に再び平和が訪れたのだった。