第2話:粉江 蒼
「棗くん」
私は入学当初からこのクラスで孤立している棗志良くんに声をかけた。
この人は中学の頃から一緒で、医学好きの兄、蒼の友人だった。話た事はあまりないけど。
「棗くんって蒼の友達じゃない?大変でしょ。あの意地っ張り」
「別に…」
「…」
棗くんとはいつも話が続かない。
話を直ぐ終わらせようとするからだ。
「えっと…あっ!そうそう、星神様って知ってる?」
最近この学年はその話題で持ちきりだ。
なのでその話を話題に持ちあげた。
「名前だけは」
「へぇ〜。棗くんも知ってたんだ…!
あのね、その話なんだけど、
金曜日の午後4時04分に"アルテス・タストナ・アトロポス"って言うと星神様が現れて、悩み事に助言してくれるんだって!
凄いよね」
「女子ってそう言うの好きだよな」
棗くんはそれっきり喋らなくなった。
これが、そもそもの始まりだったんだと、私は後、知る事になる。
「蒼、またそんな本読んでるのか。」
医学書を読んでいると、志良がそう声をかけて来た。
「まだ医者になんてなろうと思ってるのか?
何でお前はそんなに医者になりたいんだ」
パタンと本を閉じる。
そして志良に目を向ける。
そして笑いながら俺は言った
「さっきも隼に言われたよ。」
「あっそ。で?何でそんなに医者になりたいんだ?」
志良は再び尋ねた。
「…俺は…俺は自己満足で医者になるんだ…」
俺はそう答えた。
「自己満足?」
「そ、親に認めてもらう為にな」
「蒼の親は十分 蒼を認めているだろ?」
「表向きはな…」
笑って見せると、それから、志良は尋ねてくる事は無かった。
気まずい雰囲気の中、
俺の部屋の扉が勢いよく開いた。