敗北感
皆は言う、この石なら勝てると。
僕は言う、その石ころでは勝てないと。
皆は言う、磨けばいいと。
僕は言う、磨いたところで無意味だと。
それでもそれに勝機を見出だし磨け磨けと繰り返す。
無意味だ無駄だ、勝てっこない、諦めろと繰り返した。
いつしか周りは乗り気になり、皆勝てると信じきっている。
見栄よく雑に磨いた石が、まるで暗示をかけたよう。
“これだけ磨けば勝てる、この頑張りは報われる、お前達は良い石を選んだんだ。”
何度無理だと言っても止まらない。こんな石っころじゃたかがしれてる。
仕方なく僕も磨いた。言ったところでこの流れは止まらない。僕は口を閉ざすことにした。
そうして迎えた最終日、隣で輝く余所様の石に目を奪われた。
これは石ではない、宝石だ。
石選びや研磨、仕上げにどれだけの時間と労力が注ぎ込まれたのかは一目瞭然。
僕らの石は余計にちっぽけに、空っぽに見えた。
当たり前だ、当然の結果だと腹の中で笑った。
勿論勝ったのは眩く輝く宝石で、僕らのなんか足下にも及ばなかった。
皆は言う、もう少し磨けば勝てたのかなと。
僕は言う、そもそもの石が間違っていたのだと。
その時皆は口を閉じ、同じ目をして問いかけた。
本当の本当に勝てなかった?
あの頑張りは何だった?
何の為に頑張った?
あの努力さえも無駄だったと、そう一人勝手に決めつけるのか?
この感情の名前を、僕は知りたくない。