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あらたな神は、受け入れられない。~存在~

 長くなりますので、一旦ここであげます。


 珍しくシリアス入ります←

「ねぇ、これが貴方の望む結末なのかしら? それとも、彼は気づくのかしら、この世界の成り立ちに。真理に、()という存在の意味に」


 彼が出ていった応接室の扉を見ながら、情報管理課、課長神の女神は誰に向かってでもなく呟く。


◇◆◇


 情報管理課から帰り、部屋へと戻る。もう、見慣れた我が家、天使が要望を全て汲み取り、僅か半日で造られた理想の家、既に住み始めてかなりの時を過ごしたと錯覚するほど馴染んだ家に。採光の天窓から差し込む、柔らかな月の光に照らされる一室のベッド横にたどり着き胸を撫で下ろす。


 まだ、彼女は『存在』してくれていた。穏やかな寝息に、羽布団が持ち上がっては、また元の高さに戻っていく、それが規則正しく繰り返される。


 今にも目を覚まして、『おにぃさん、おなかすいたぁ』そう言ってきそうな彼女を見て、何ができるかを考える。


 俺は絵の神。絵を描き、神々を楽しませる事が仕事であり、力である。ならば、『彼女』を描き出せば……。


 そう考え、沈む心を奮い立たせた俺は羽ペン型の仕事道具を握る。俺の中に確かに存在する女神を確立し、創るために。


▼▽▼


 あれから、描いては捨て、描いては消し、今では満足にラフすら描けなくなっていた。そう、俺の中の『彼女』が霞に包まれ、うまく思い出せないのだ。ならば、とベッド横に行きラフを描きだそうとすれば、曖昧な何かを描いてしまう。そう、視認しているのに、()()出来ていないのだ。


 果たして彼女は、いや、彼女だったのかすら怪しくなっている存在は、『幼かった』のだろうか? いや、そもそも、その幼さは『見た目』『性格』『格好』そのどれだったかすらも怪しいのだ。


 現に、描かれるラフは毎回変わり、『男の子』だったり、『女の子』だったり、はたまた『ガチムチの男』だったり、『ムチムチの女』だったりするのだ。そして、それはどれもが『彼女、または彼である』と、受け入れてしまいそうになるが、俺の中の『何か』が違うと否定するのだ。


 髪型は? 髪の色は? 眼の色は? 眼の大きさは? 前髪はどこまで掛かっていた? そもそも、髪はあったか? 普段、どんな髪型だったか? 全てが、全て『なんでも有り』の状況なのだ。


 これは、顧客の神々に聞いても同じで、とにかくなにも進まなかった。


 そんな日が続き、ある朝俺は絶望に飲まれた。いや、飲まれたというよりは、なぜ絶望したのかわからないが、()()()()()()()()()()()()()()()ベッドの横で気づけば泣いていたのだ。声をあげて。


 何が悲しいのか、何に絶望したのかわからない。わからないが、俺の中の大事な何かは消えた事を告げていた。胸のうちに広がる冷たい穴が、これでもかと空虚な渇いた風を心に流し、満たし吹き続ける事で。


▼▽▼


 それから、俺は仕事をこなし、神々を満足させ続けた。だが、常に心は渇いたまま、満たされぬまま、ただ、ただ『萌えるだけ』のイラストを仕上げていた。


 そんなある時、ふと、使いなれた液タブ風のデバイス内の過去のイラストを眺めていた時、それに『再会』した。


 それは、あまりに乱雑に仕上げた、いや、仕上がってなどいない、ざっくり配色し、背景すらない、ただ、ただ、可愛い笑顔でパンケーキを頬張る、少女のイラスト。頬についたホイップや、小さな手に持つナイフとフォーク、その前に置かれた食べかけのパンケーキ。それだけのイラスト。俺が描いたのは線を見ればわかる。時間の無いときに即座に仕上げるための描き方だった、にもかかわらず未完のまま眠っていたイラスト。


 何故か視界がボヤけていた。気づけば俺は、また涙を流していたのだ、そして、俺は確信した。そのイラストに描かれた少女が『俺の中の飢えを満たしてくれる』と。


 何故かはわからない、だが、これこそが天啓なのだと。


 彼は彼女を描き出す事が出来るのか、それとも……


 次回、彩り

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