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あらたな神は、受け入れられない。~神、襲来~

 ふぅ、なんとかなった。これにて、神絵師回は終わりです。

 さて、これは何事だろうか? 天使の店を、天使の笑顔を浮かべた女神に手を引かれ出たところだ。おーけー、ここまでは理解できてる。だが、目の前の光景はなんだ? 店の前で神々が争っているのだ、数名、いや、数柱の神と女神が店の入り口を守るように。


 そして、ひゃっはー! とか、叫んで店の入り口を目指し突貫してきては守る神と女神に無双よろしく、吹き飛ばされている。その数はざっと三十は超えている。


「そこをどけぇー! 蕾のっ!」

「前に出るから犬死にするって、なんでわからないんだっ!」


「ひゃっはーっ! 俺は天災だぁ! 覚悟はいいか!?」

「うっさい! 吹き飛びなさいっ!」


 うん、なんか彼らが劇画調に見えるのは俺の目の錯覚だろう。なにしろ、店の並びに眼をやると、辺りは穏やかな天使街。カラフルとは言わないまでも、整い、清楚感と安心感をくれる街並み。空気も穏やかな温もりと、花の香りを運ぶ風が心地よい。そして、眼を正面に向けると、『世紀末感』のある、乾いた風の吹き荒れる荒野が見えるのだから。いや、空気がそこだけ歪んでる、そう言った方が正しいのかも知れない。


 吹き飛ばされた神が岩にぶつかり埋もれる。そんな光景が見える、気がする。


「我らの邪魔をするなぁっ!」


「だまれっ! この変態神(ロリコン)どもがっ!」


「貴様らも同類だろう? さぁ、こちら側に来るのだ。素直になれよ?」


「やめろっ! お前たちと一緒にするな! 我等は彼女達の穢れぬ笑顔を見守りたい、それだけだ!」


「はっ! 綺麗事を! その笑顔を我が物としたいと内心で思ってる癖に!」

「そうだ! 貴様らとて、聖遺物(アーティファクト)に顔を埋めたいと願っているはずだ!」


「「この、変態どもが!」」


「ふ、やはりな。貴様らとて、一枚岩では無いようだな?」


「な、んだと?」


「すまん、実は少し……」

「私も……」


「ふははははっ! 結局貴様らは同じ穴の狢よっ! さぁ素直になれよ?」


 俺は何を見せられてるんだ? 隣の女神も首を傾げている。相変わらず、可愛いな、おい。


「おにいさん、止めないの?」


「え? これ、止めるべきなの?」


「うーん、でも、このままだと天使さんのお店が……」


 少し不安げに見上げてくる瞳に涙が溜まっていた。


「良かろう。俺が止めてやる!」


 俺はやるときはやる男だ。可愛い女神を泣かせるなど、この俺が許さん。


 さて、どうしたものか? 目の前で苦悶の表情を浮かべ膝を屈した神々、どや顔全開で魔の道へ誘う神々。まさにカオス。背景は荒野だ。


 そこで、手にしている重みを思い出した。そうか、会話の流れから見て奴らは俺の獲物だ。間違いなく、俺は奴らを駆逐出来る。


 ならば、出来ることをしなければ。液タブ風の板に電源? を入れ羽ペンを走らせる。今回は先ほど見た光景。パンケーキを食べ、幸せそうな笑顔を浮かべ、口の横にクリームをつけた女神を二次元に落とし込む。


 腕は、鈍ってないな。迷いの無いラフを仕上げ、一気に下絵迄終わらせる。チラリと前を向くと、いつの間にか地に伏し苦悶の表情を浮かべた守ってくれていた神々、そして、コチラに悠々と迫り来る変態の編隊。時間がない。そう、目の前に迫るは締め切り(デッド・ライン)だ。眼に見える死線など初めて体験するが。


 仕方ないので、荒く彩色していく。焦るな、まだいける。あと少し、ハイライトを加えて……出来た!


「貴様が新たな神か?」


「悪いが、貴様の神生もここまでだ。我等、囲炉裏の糧となれぃっ!」


「くっ、逃げ……ろ」


 顔を上げたら、劇画調の神々が俺を囲んでいた。冷たい汗が頬を伝うが、俺には奴らにとっての致命傷となりえる劇物が、武器がある。さぁ、喰らうがいい。


「はっ! 俺の命を奪う? 無理だな。なにせ、お前達は俺に()()()()側だからだっ! 見るがいい! これが俺の全力だぁっっっ!!!」


 そして、俺は液タブ風の板を獲物達に向ける。


「こ、これはっ!」

「なんだっ! この感覚……」

「目が、目がぁあああっ!」


「「「「「「「尊い……」」」」」」」


「ふ、お前らが真に求めるはコレだろう? さて、俺をどうすると?」


「「「「「「「あんたが神だっ!」」」」」」」


「だが、一つ言おう、これは未完成だ。時間が足りなかったからな、だが、時間があれば更に……」


「ま、まさか。この上がある……と?」

「ほ、欲しい……」

「売ってくれ! 言い値で買おう!」

「おまっ、ずるいぞっ! それは俺が買う!」


「いいや、私のヨメよっ!」

「おまっ、百合だったのかよ!?」


 等と、そのあとそれぞれの神に別の絵を描き、天使の店でプリントして手渡し終わったときには日が沈んでいた。こうして、俺は天界、神界でも『神絵師』として存在を確立させた。いつの間にか、膝の上に頭をのせ眠る女神の髪を撫で満天の星空を見上げ感慨にふけるのだった。





「あのぉ~、神様……そろそろ、お店閉めてもいいですか?」


 背後で残業を余儀なくされた天使が申し訳なさげに告げる声で、現実に戻るまで。

 前書きで神絵師回終わりと言ったが、すまん。嘘だ。実は隠しシナリオ入ります←



 次回、『夢幻』。


 その存在は夢、幻か。

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