あらたな神は、受け入れられない。~これは、デートですか?~
おかしい、話が進まないのに変なイベントが……
俺は何をしているのだろうか、疑念が脳裏をかすめる。なぜ、こんなことを考えるか? 答えは簡単だ。俺が今の状況を飲み込めないからだ。そう、幼い(俺より年上)の女神に手を引かれ街を歩いているこの状況を。
前世では、引きこもり、とまでは行かなくとも異性と街に出るなんてほぼなかった。いや、有るにはあったよ。うん、ほんとうだよ?
相手は母や姉だったが……あ、眼から汗が。まぁ、そんな母や姉の影響からか、俺は年下の女の子を、理想の尊い女の子を描き出し、生計を立ててたわけなんだが。うん。
で、フリルが踊る白のワンピース姿の女神に手を引かれてるわけなんだ。理想、幻想、夢想、その全てを凌駕するほどの笑顔の彼女に。
なぜ、こうなったのか? それは、俺の仕事に関係する。情報管理課に急遽作られたのは、『神対応部』部所員は二柱、俺と目の前の天使な女神だ。そして、仕事内容は俺の前世の仕事と同じで、『萌える絵を描く』事。しかも、イラスト一枚で『尊死』に至らしめる破壊力を持たねばならないという、無茶振りである。
そして、俺はイラストを描こうとして絶望した。神界には『イラストツール』が無いのだ。キャンパスと絵の具、鉛筆などはあった。だが、そうじゃない。俺が欲しいのは『レイヤー作業』や、『範囲塗りつぶし』、などの出来るツールである。つまり、アナログは苦手なのだ。
で、課長神に相談したら『なら、天使街に行きなさい』と、言われ天使街に来たわけである。
眼に入るのは背中から純白の羽を生やした、まさに天使達ばかり、羽の無いのは神たる俺と、目の前の彼女だけ。建物は煉瓦造りや、木造など様々で一見、統一感が無いのに、やけに落ち着いた雰囲気の街である。ベージュを主体とした壁に、オレンジ、赤、ピンクなどの暖色の多い屋根、平屋根や、三角屋根、出窓も丸から四角、ステンドグラスの窓など様々だ。
街並みを見ながら歩く速度が落ちたところで、女神が振り返る。
「どうしたの? おなか痛い?」
小首を傾げながら心配そうな顔の女神にヤられ掛けたが、心を強く持ち答える。
「いや、大丈夫。というか、神も腹痛起こすのか?」
「ん? んん~、わかんない。でも、よく神様たちが『胃が痛い』って言ってるよ~」
「それは、腹痛ではないな……たぶん、ストレス……」
「そなの? おにいさんは平気?」
「あぁ、平気さ。街並みを見てただけさ」
「良かったぁ! じゃあ、ゆっくりいこう♪」
そうして、彼女は少し歩く速度を落として手を引き歩き出すのであった。
ところで、これどこにむかってるんだ? むしろ、俺はどこにむかってるんだ? 心配になってきた。
「ところで、どこに行くんだ?」
「天使さんのとこっ♪」
「いや、既に辺りは天使だらけなんだが」
「んん~? たぶん、あっち?」
え? なにその行き当たりばったり感。まぁ、いいか、デートと思えば……、え、これデートじゃね? マジ俺は何をしてるんだ!?
そんなことを考えてると、隣から可愛い音がなる。そちらを見ると、少し頬を染めた女神が恥ずかしそうにお腹をおさえてた。
「お腹すいたの?」
「うう~、はずかしいよ」
どうやら、幼くとも女の子らしく、お腹の音が恥ずかしかったらしい。
「何か軽く食べていこうか、そろそろお昼どきだしね」
「うん♪」
そのあと、パンケーキを食べ、ゆっくりしてから俺たちはなんとか目的の場所、『天使の指先』という下界の品を神界用にモディファイしたものを造り出す店にたどり着き、液タブ風何かと、ペンタブ風羽ペンを手に入れた。出力とかは、印刷機的な何かでプリントできるらしい。天使さん、マジぱねぇっす。
▼▽▼
私は眼を疑った、幼い女神と、青年神がデートしているのだ。即座に『囲炉裏を囲む会』のメンバーへとメッセージを送る。
目の前の羨ましい光景に、自分等も混ざれないかと、むしろ、青年神を亡きものにしてでも代われないかと……。
「で、対象はどこだ?」
「早いな、メッセージ送ったの三十秒前だぞ?」
「おい、ターゲットはどこだ?」
「待たせたな! で、裏山けしからん敵はどこだ?」
「おまいら……」
メッセージを送って僅か一分で既に八柱が現着していた。そして、歴史は動き出す。
次回、神、襲来。
次回もハーデス、ハーデス♪