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あらたな神は、困惑する。

 あぁ、書きたいとこまでいかなかった……。ので、いずれ続きを……

 はて、俺はどうしたのだろう? 創作していたはずが、気がつけば大自然の中に寝ていた。ヤバい、イベント用のポスター絵がまだ未完成だった! こんなとこでのんびりしてられない!


 パソコン……液タブ、いや、その前にウチはどこだ!?


 見渡した目に入るのは、手入れの行き届いた様な木々と、色とりどりの花、頬をくすぐるような柔らかな風にのって、知らない花の良い香りが鼻腔を抜ける。

 見上げた空には絵に描いたような、わずかな星を映した濃紺の空と、幻想的な雲が朝焼け、ないしは夕焼けに照らされ、赤紫に染まっている。



「本当にどこなの? ここ」


 俺は記憶を辿る。納品の締め切りが重なり、六枚の絵を仕上げ、データを送ったあと、その日何本目かのエナドリを飲み干し、ポスターの構図を描いて居たはずだ。三徹明けで、意識が朦朧としてるとこまでは覚えてる。


 マジ、ここどこ?



「あ、珍しい(ひと)発見~♪ もしかして、生まれたばかりなのかな?」


 背後の森から突如、明るい声がしたため、振り返った俺は目を疑った。あまりにも整った顔立ち、そして、光をまるで透過したような金色の髪、いつまでも眺めていたいような青い瞳をした小さな女の子が笑顔でたっていたからだ。


 まて、俺は正直、女の子と話すのは苦手だ。そもそも、対人スキルが低いのだ。趣味で始めたイラストが受けて、依頼が舞い込んできてる今でも変わらず、俺は引きこもり体質なのだ。


 メールならいい。電話もなんとかなる。だが、正直異性の人とは何を話したら良いかわからないのだ。女の子に興味がないわけではない、興味があるからこそ、可愛い女の子を描き、世に送り出して行くことを生業としてる。そして、とある場所では『神』とまで言われた事もある。



「? もしかして、お兄さん元人種なのかな? 記憶あるの?」


「どういうことですか?」


 つい、俺は小さな女の子相手に敬語を発してしまった。もっと砕けた話し方でも良いはずなのに。



「えっと~、ここどこかわかる?」


「どっかの森のなかでしょうか……いや、平原ですか?」


「あ~そうじゃなくて~、ここ天界なんですよぉ」


「はい? てんかい……って場所なんですか? 聞いたことが無いですね」


「じゃあ、どこならわかりますか?」


「秋葉原」


 即答してしまった。俺の唯一の遊び先で庭とも言える場所。



「それって、地球? で、あってますか?」


「あ、はい。地球にある日本の……え? なんで地球から……?」


「では、やはりお兄さんは、人から神に生まれ変わった方ですね♪」


「はい?」


 女の子は綺麗な笑顔で、『生まれ変わった』と俺に告げた。意味がわからない。どういうことだ?



「どういうことでしょうか?」


「ん~~、だからぁ、お兄さんは一度死んで、神として生まれ変わったのです。死んだ記憶ありませんか?」


「マジか……。いや、意識が無くなった位しか……、待てよなんで意識を失ったって憶えてるんだ?」


「あぁ~たぶん、それが亡くなった時の記憶ですね」


「え……マジで死んだの? 俺」


「ですねぇ♪ まぁ、細かいことは気にしない♪ じゃあ、お兄さんを案内するね♪」


「案内? 死後の世界の?」


「だからぁ、ここは天界。神の住む場所ですよぉ~」


 そう言って、女の子は俺の手をとり、森の小道へと歩きだした。小さな手のひらから伝わる温もりに少し胸を踊らせたのは秘密だ。


 言い訳をさせてもらえるなら、女の子の手なんて、小学校のダンスの時しか握った記憶がないのだから仕方ない。


 女の子柔らかな手の感触を楽しんでいたら、女の子は振り返り笑顔で告げる。


「お兄さん、女の子は苦手じゃ無かったの?」


 え? なんで、知ってるんだ?


「うぅ~ん、えっとね、お兄さんを迎えに行くようにって言った神様が教えてくれたからだよ?」


 首を傾げながら、俺の口に出してない問いに笑顔で答える。


「もしかして、心が読める?」


「ん? 同じ神だからね~♪ お兄さんもわかるんじゃないかな?」


「え?」


 お兄さんの手、おっきくて暖かいよ♪


 目の前には笑顔で立ち止まったままの、女の子。口元は動いていない。


 聞こえてる?


「あ、ああ。聞こえた」


「ん。良かった♪ だから、天界では正直に思ったことを口にして良いんだよ? 心を隠せるようになるまではその方が楽だと思うし、仕事もしやすいよ♪」


「わかった。ありがとう」


「うん♪ じゃ、行こっか」


 こうして俺は、人から神として生まれ変わり、神として生きることとなった。

 結局、可愛い女神様の回になるという……解せぬ。

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