天使は新たなものを生み出したい。
前話からの繋がりです。
今の神界はきっと過渡期なのだ、と天使は考える。何の過渡期なのか、それはファッションというものである。まだ、現段階では女神様専門が主流の可愛い系、きれい系、ゴージャス系などと、下界からの情報を貰い神界で、女神様向けにブラッシュアップする仕事が新たに出来て、人気になってきた。
それを、始めに行ったのが、銀髪の天使、ここのオーナー兼デザイナーである。
彼女はつい先日も、赤いバラのヘアピンなるものを作り出し、その後も多数のヘアピンや手鏡、姿見などを手掛け、もともと高かった人気が、さらに加速され販売員兼デザイナー志望の私には辛いものがある。
きれいで、かわいくて、でも、しっかりとした機能が無いと売れない。それは、この店で働かせて貰い、理解できた。
しかし、私は新たな物を生み出したいのだ。
そう、水着という物のような、神界には存在し得なかった物を。
何か、何か無いのか……。ふと、視線を下に落とし、一考する。
もともと、神様、天使は造形が美しく生まれてくる。それは、どの神も女神も、天使も例外ではない。ただし、その美は誕生した世界の基準に依存するため、神界にも多様な美を持つ神が生まれるのである。
そこで、天使は思い至る。天使の基本的な格好は太もも位までの白いワンピース。
足元は素足だ。穢れのない神界、天界において、靴など不要――――。そのとき、閃きが走り店の外へ飛び出し周りを見渡す。
出歩く天使、神々を足元に注視して見ていく。
裸足、裸足、裸足、裸足、裸足……。
あった! たしか、下界には靴と共に、靴下と呼ばれるモノがあったはずだ。こないだ、夜の店で働く天使の友達に聞いていて良かった!
いける。いけるわ! これなら、オーナーとも競合しないはず。
そのまま、天使は店の中へ飛び込み、色々な素材で試作を開始した。そのあと、オーナーの天使に怒られるまで店番を放置して。
「できたぁ!!!!!」
ようやく、満足のいく仕上がりになったソレらを机に並べチェックをしていく。
破れ無し、ほつれ無し、型も良し。
オーナーの銀髪の天使には許可を既にもらっている。店の中の棚に並べても良いと。
まず並べるのは一足のセット。そう、作ったのは靴と、靴下のセットである。もちろん、靴下も多種作ってはいるものの、靴下を売るには靴が無いとならないのだから、仕方ない。
並べてから二週間。靴は未だに売れないでいた。何がダメなのか、頭を抱える天使の元に、靴下を買いに来た夜の店で働く天使が声をかける。
「おひさぁ。ねぇ、靴下色んな種類ちょうだい♪」
「ねぇ? 何でいつも靴下だけなの? 靴は?」
「靴? そんなの要らないよ。神様の趣向は、太ももまでの靴下にアレを差し込んだり、脱がすのが好きだったり、色々あるけど。靴はどうにもそう言った事には向いてないみたいよ?」
「ねぇ、前から思ってたけど、どんな店なの?」
「神様の溜まったモノを発散するところよ? 主に下の方で……♪」
人差し指と親指で円を描き、なにやら怪しげな動きをしてみせる友達に顔を赤くし縮こまる。
「とても、神聖な行為なんだから恥ずかしい事なんてないのに♪」
友達は、有るだけ靴下を買い帰っていった。その際に試作で作っていた靴と靴下もお土産として持たせ。
その友達の店に後日、ピンヒールと網タイツという新たな世界の扉が開かれる事となるのだが、このときはまだ誰も知らない。
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