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堕天使、世界を往く~ツヴァイ~

 あらやだ、続いてる!?


 仕方無い、仕方無いんや。なんか、堕天使さんがグイグイ来るんや……。

 さて、この娘はどうしたものか。仮にも堕天したとはいえ、元天使。あまり、長く一緒に居るべきではないだろう。神界のルールでも、神の使いとして、下界へ行く天使たちにとっても、他者と関わらないのは最重要だと聞く。


 神ほどではなくとも、神力を持つ天使が、濃厚な接触、食事、殺生を行うとバランスが――という話を店に来た神に聞いたし。


 あれ? でも、堕天した私はソコを気にする必要あるのかしら? この世界に来て、殺生はしていないが、果実や木の実は食べている。もう既に禁忌は犯しているが、特段変わったことは無いよね。


 などと、考えていて少し眼を離した隙にどうやら娘は何処かへ去ったようだった。


「あら、挨拶もなしに何処かへ行くなんて。これだから人間は」

「――――――――た」


 なにやら、羽虫が鳴くような弱々しい声が聞こえた気がして、堕天使は辺りを見回す。木々、低木、苔むした岩。特に何者も居ない。

 首を傾げ、その場を去ろうと羽を広げた時、足首を掴まれる。視線を足元に向けると、ソコに娘はいた。


「なにしてるのかしら?」

「―――――た。なにか――――」

「? もしかして、お腹すいてるのかしら?」


 疑問を投げ掛けると、娘は弱弱しく首を縦に振った。仕方無いので、臭う娘を抱えあげ空を飛ぶ。


 森の切れ間と、すぐに川が見える。崖に挟まるように流れる小さな川だ。水辺に行くには崖を降りるか、空を飛んで行くしかない。だからこそ、拠点には崖の中腹を選んだのだが、流石に臭う娘を連れて行きたくはない。川岸に降り、水のなかを見る。パッと見ただけで、かなりの魚が泳いでいる。


貴女(あなた)、魚を獲るくらいの力は出るかしら?」


 無言で首を横に振る。どうやら、本当に限界のようだ。よく見れば、頬も痩け、肌は乾いている。仕方無い。殺生をすることになるが、ここで見捨てるのも元天使とはいえ、許せそうにない。


 神力を使おうとして、身の内に神力が無いことに気づく。だが代わりに、禍々しい力を感じる。神力が暖かな力とするなら、対極とも言えるほど冷たい力。しかし、それを取り出すと任意の事象を生んだ。風、雷、炎、土、水と、そこでようやく天界の店に来ていた情報管理課、魔法創造統制課の神から聞いた事を思い出す。


 その神は魔法が神界や天界では発動は出来ず、システム内で再現しながら登録していくのがダルいと愚痴を溢していたっけ。たしか、魔力を使うから神界では再現不能とか言ってたなぁ。


 あぁ、なるほど。堕天すると、神力が魔力に変わるから異物として神界から弾かれるのか。


 だとしたら、そもそもこの世界に堕ちて来た私は、この世界の一部になった? ならば、神界のルールは適用外よね。


 川に水の魔法を放ち、魚を水球に閉じ込め岸で解放する。水が霧散し、辺りを濡らしその上に魚が数尾跳ね回る。


 岩塩を拾っていたので近くの石で削り、魚に刷り込み、手頃な木の枝を突き刺し、火の魔法を地面に置いて魚を焼いていく。


 香ばしい匂いが、ゆっくりと立ち上る。


 それから、半時程焼き、岩に背中を預け、虚ろな眼をしている娘に差し出す。


「? これ――は?」

「見てわからない? 焼いた魚よ。ほら、食べなさいな」

「良いの? お金、無い……よ」

「お金? なにそれ? 良いから食べなさい!」


 まるで手を伸ばそうとしない娘に、業を煮やし、口に焼いた魚を突っ込む。


「――――――あひゃっ! ―――――っひい! おいひいっよぉ!!」


 泣きながら貪る娘を見て、ため息を吐き今後どうしたものか? と悩む堕天使であった。

 閲覧ありがとうございます。


 次回更新は明日の夜になるかと……。そして、この続きになります。転生者の娘は果たしてどうなるのか?ご期待下さい。

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