聖戦、そして――さーどれいど
更新……まにあた。
『こちら、D班。やられた、俺以外全員が足を負傷。動けない、応援を頼む』
『こちら、本部A、B班対応可能か? C班は現在交戦中、動けるのはお前たちだけだ』
『A班、罠が多すぎる。無効化しながら救援に向かうには時間が掛かりすぎる』
『こちら、B班。丘の方から敵勢力がやって来た。丘の方はどうなっている!?』
『こちら本部、現在確認中――丘が無神になっている!? B班は丘の確保を優先せよ。本部も丘を目指す。他の班も無理せず、丘を目指せ』
『B班、了解。こちらは敵勢力が丘に戻らないように足止めを行う』
『おい、本部! D班はっ――――』
『こちら本部、D班は作戦終了後に救助、最優先は丘の制圧と目標の捕捉とする。聖遺物には目をくれるな! そういった罠も奴等は使ってくるぞ!』
『ちっ! おせぇよ』
『D班何か言ったか?』
『いや、なんでもねぇ。とりあえず、救援急いでくれ、ココからは外から手助けがないと出れない』
神力を用いた報告がなされ、各変態達は目標の再設定を共有し、それぞれ動き出す。交戦中のC班は一切交信してきていないことに、気づくのは作戦本部が丘にたどり着いた時であった。
『こちら本部、全部隊に通達。丘を占拠した。繰り返す、丘を占拠した。敵勢力は数が足りず、湖畔の妨害へと集中している。一旦退却後、丘に再集結し共に目標の捕捉、観測会を開こうではないか』
『『『了解』』』
『ん? 今返事した班、報告せよ』
『A班了解』
『B班了解』
『D班了解、撤退時に救援を頼む』
『A班が向かう。位置を送れ』
『D班了解……今送った』
『待て、C班はどうした?』
『A班、こちらは見ていない』
『B班、こちらも確認、誰も見ていない』
『『こちら、Dは――』あ、D班の報告は良い』
どう言うことだ? 敵勢力が全てC班に集中した? およその戦闘域を出すと湖畔から三十近く離れた森の際辺りのはずだ。丘からそちらを確認しても、戦闘など起こっていない。
湖畔には、女神が一柱と天使が複数? 我らの希望はどこに? まさか、間に合わなかった?
すると、C班の予測戦闘域から幼い神々が現れる。最後に大天使が籠を手に出てくる。
「本部、どうなってる?」
「見てみろ」
「なんだあれは…………」
「バカな……裸……じゃ、ない……だ、と?」
続々と丘に集結し、眼下の光景に落胆する変態たち。
「まさか、敵勢力はこれを知っていて敢えて丘を手放した?」
「ならばせめて聖遺物だけでも奪取しに行くべきだ」
「いや、それは叶わないだろう。見ろ、あの大天使が持っている籠を」
「な!? あれは、籠なの……か?」
大天使が持つ籠は、鈍く輝き、更には鍵がついているのを確認し、絶句する。
「あの輝き……アダマンタイトか」
「くそうっ! ならば、ココから湖へ飛んで、あの衣服を剥げば……」
「死ぬ気かっ! いくら神とてこの距離と高さだ、無事には済まんぞ」
「くっ!」
眼下では、幼い神々が駆け回り、水を掛け合い、笑いあっている。距離が有るため声を拾うことは叶わず、ただ目測するだけとなり虚しさが丘に吹きすさぶ。
「奴等め! ここまで、我らの邪魔立てをするとはっ!」
「あんなもの、着ていたら萌えねぇよ! ちくしょう!!」
「「「「帰るか……」」」」
そして、聖戦は幕を閉じた。勝者は、水着を作った妹天使だと言うことを理解すら出来ずに。
ちなみに、幼い女神の水着は、ワンピースのフリルすらない、俗に言うスク水のようなものであった。幼い神の方は、短パンタイプで統一されていた。
妹天使いわく、「時間が無いから、可愛さは二の次になってます。次回までに可愛いのを作って置きますね」との事であった。
もちろん、この事は囲炉裏を囲む会には知られていないため、以降の湖水浴はしばらく何事もなく楽しめたのは別の話である。
「なぁ、俺ら忘れられてね?」
「いやいや、そんなことないだろ。子供じゃあるまいし」
「いや、日が暮れてってるんだが。まるで、かくれんぼして忘れられた過去を──」
「おまっ! それは言うなよっ! 俺も思い出しただろうがっ!」
「お前、まさか……」
「ふ、同志よ」
そして、忘れ去られたD班の神々は森の土の中で、夜を明かすのであった。
閲覧ありがとうございます。
なんとか、聖戦は終わった…………よね?
闘いとは虚しいものである。
次回更新は明日になります。次回もお付き合いよろしくお願いいたします。