神は食にとらわれない
いま、私達は新たに生まれた世界の情報を得るために降りてきている。
赤神以降、情報管理課にも神は増えた。中でも幼き神の増加は以前と比べ五倍にもなる。よって、新たに生まれた世界の調査など、影響が少ないとこへと回される。そう。影響が少ないとこへと。
「ねぇーおねーさん! お腹すいたぁ」
同行しているのは幼い女神、それと同期の神、私の三柱である。
情報管理課には、特定のミスの起こりやすい条件がある。それは、幼き神と一緒に作業を行う。
これは、まぁ、仕方ないものだ。神界よりも刺激が多く、誘惑が多いのだから。
次が問題である。食べ物問題。そう、食事こそミスの巣窟になる。野菜、果物、動物、全てにおいて、ご当地グルメを食べたらアウトなのだ。
正確には、ちょっと生態系に異常が出たりと、元の方向性から変わってしまうのだ。
ある世界では、匂いにつられ豚肉を食べてしまい、後にその豚の血統が全て魔物のトロールになった。もちろん、肉は食用だ。
何を隠そう、私の過去の話だ。
他にも、他部署に言えないこと、『存在しない真実』が五万とある。それほどまでに、世界の調査は誘惑が多い。
他にも、エルフ、ドワーフ、獣人、魔人、魔族、魔物のほとんどに情報管理課が絡んでいるなど言えるものでもないが……。
なにせ、転生課のソレを遥かに超えるのだから。まぁ、人種のミスは男神が多く引き起こしたので、神選を厳にしてからは減ったものの、やはり新たな何かは生まれ続ける。
そして、今日も。
「おじさん、串焼きください♪」
「あいよっ! 嬢ちゃん熱いから気を付けな!」
お代をつま先立ちしながらカウンターにおく姿を見たのはそんなときだった。既に受け取り小さな口に串焼きが向かっていた。
「ありがとー♪ いただきまぁす」
え? いつの間に?
「あ、おねーさんのぶんも買ったよー♪」
口元をタレで汚しながら、笑顔で串焼きを渡される。
「あ、ありがとうね」そう応え、頭を撫で、串焼きを口にする。一度食べたら、その食材は何度食べようと問題はなくなる。それは、過去の事例が示している。
今回はどんなモノが生まれてしまうのだろうか…………報告できない、その真実と共に串焼きを咀嚼する。
「んー、おいしっ♪」
幼き女神の眩しい笑顔をみながら。
「あれ? 同僚は?」
「おにーさんなら、さっき街の女の人についていったよ?」
あぁ、さらに言えない問題が生まれてそうだ。
その世界に、ハイエルフが生まれたのはそのあとすぐの事だった。
次回更新は明日になるかもです。
その場合は12:00更新予定となります。