表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/68

001 完璧美少女遊薙さん


本作は一途だけど強引で、ちょっと嫉妬深いヒロイン遊薙ゆうなぎさんと、マイペースで鈍感で、すごく優しい男の子 桜庭さくらばくんの、イチャイチャラブコメとなっております。


二人の絶妙な距離感や、嫉妬深いけれど一生懸命な遊薙さん、密かにモテるけど鈍い桜庭くんと彼を守る遊薙さん、などをお楽しみいただければと思います!



 僕の通う学校には、とんでもない美少女がいる。


 彼女、遊薙ゆうなぎ静乃しずのさんは、とにかくモテる。

 それはもちろん、遊薙さんが美少女だということだけが理由ではなくて。


「遊薙さんすごーい!」


「料理も出来るなんて、さっすがー!」


 向かいの校舎、家庭科室で調理実習をやっていたクラスの騒ぎ声が、僕のところまで聞こえてくる。


 遊薙ゆうなぎさんはシンプルなエプロンを華麗に着こなし、鮮やかにフライパンを振るっていた。


「可愛いのに勉強もできて、おまけに女子力も高いなんて凄すぎ!」


「料理は好きで、よくやってるから」


 遊薙さんは少しの嫌味も感じさせない口調でそう言って、クラスメイトたちと笑い合っていた。

 男子だけでなく、女の子たちもほんのりと頬を染めているのがわかる。

 さすがは男女問わず大人気の遊薙さんだ。


 遊薙さんがモテる理由。

 それは信じられないような美少女でありながら、内面も完璧だからだ。


 気取らず、人当たりも愛想もよく、誰にでも優しい。

 おまけに勉強もスポーツも得意で、欠点らしい欠点が無い。

 もはや欠点が無いことだけが欠点だと言ってもいいかもしれない。


 とにかく、遊薙さんはそんな人だ。

 異性からも同性からも愛される、スーパー美少女。

 みんなの憧れと、尊敬の的だ。


 一方で僕はと言えば。


「こら男子! 外ばっか見てないで黒板見ろ!」


 先生の怒鳴り声で、僕を含めた窓際の列の男子達が一斉に前を向く。

 どうやらみんな、遊薙さんを見ていたらしい。


 僕こと桜庭さくらば碧人あおとはと言えば、これといって特徴のない地味な男子高校生だ。

 こうしてクラスで目立つこともなく、ひっそりと日々を過ごす普通の人間。


 けれど、だからといって僕は遊薙さんのような人のことを、羨ましいとも思わない。


 僕はこの平穏な生活を気に入っているし、現状に充分満足している。

 モテたいとも恋人が欲しいとも思わない。


 むしろ僕は、一人の時間をこよなく愛している。

 気楽に一人で本を読んだり、映画を見たりしている方が、僕の性には間違いなく合ってる。


 校内でもダントツに整った容姿と、非の打ち所のない内面。

 そんな遊薙さんのことは、素直に凄いなと思う。

 素敵な女の子だとも思う。


 でも、それだけだ。


 僕にはあんまり関係がないし、普通に生きていれば、彼女と関わることもない。

 住む世界が、生きる道が違う。


 だから本来であれば(・・・・・・)、わざわざこんなふうに、彼女について語る必要すら、僕にはない。


「うわ! 遊薙さん盛り付けも素敵!」


 家庭科室から再び歓声が上がり、みんなが遊薙さんを囲んではしゃいでいるのが見える。


 ふと、遊薙さんが突然こちらを見た。


 ぼんやり彼女を眺めていた僕と、ばっちりと目が合う。


 遊薙さんは一瞬だけ驚いたような顔になってから、すぐにパァッと明るい笑顔になって、こちらに手を振った。


 なんてことを……。


 僕は慌てて視線を黒板に戻して、平静を装った。


 耳だけが、家庭科室の喧騒をかすかにとらえる。


「なになに? 誰かこっち見てたの?」


「ええ。見られてたみたい」


「えー! 誰? もしかして男の子?」


「さあね、どうかしら」


「でも遊薙さんなら、誰が見ててもおかしくないよね~」


「うんうん、他の学年にもファンがいるくらいだしね」


「そんな、大袈裟よ」


 ……ふぅ。

 なんとか、何事もなく済んだみたいだ。


 僕が彼女のことを語る理由。

 それは実に単純で、実に難解なものだった。


「それじゃあ、今日の授業はここまで!」


「起立! 気をつけ! 礼!」


 授業が終わり、昼休みになる。

 途端、ブブッとポケットのスマホが震え、画面にメッセージの通知が表示された。


『どうして見てたの?』


 全く、反省の色が見えない。

 それどころか、楽しんでいる節さえありそうだった。


『なんでもない。それより、バレたらどうするんだよ』


『いいじゃない、バレたって』


『ダメだよ。約束が違う』


『もう。いじわる』


 そのメッセージには返信せず、僕はスマホをしまった。

 思わずため息が出る。


 「なんでもするから、付き合って!」


 昨日、彼女は僕にそう言った。


 そしてその時から、遊薙さんは半ば強引に、僕の彼女になってしまったのだった。


もし「おもしろい!」「続きが読みたい!」と思っていただけたら、是非とも評価、ブックマーク、感想で応援いただけると幸いです!更新速度や作者のモチベーションアップにつながります!


↓の【☆☆☆☆☆】から、評価をお願いします!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
◆◆◆ 美少女と距離を置く方法〜俺のぼっち生活が学園の高嶺の花に邪魔されるんだが〜 同作者のじれじれ系ラブコメも掲載中です!!ジャンル別週間ランキング1位も獲得した大人気作品ですので、よろしければこちらにもお越し下さい!◆◆◆
― 新着の感想 ―
[良い点] ・主人公の視点からのヒロインの紹介がスムーズ。 ・描写から主人公とヒロインの関係へつなげて、二人のやりとりに、え?と思わせるオチがうまい。次も読みたくなります! [一言] 引き続き、読ませ…
[一言] タイトルや小説の小説を読んで面白そうだなと思いました(*ˊᵕˋ*) これからも頑張ってください♪
[一言] 更新まだですか?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ