第八十九話 反省! 宇宙服!
本日休みが取れたので投稿します。
その代わり31日はお休みとなります。
あとクレアが寝ている簡易カプセルですが、基地医務室の固定されている治療用カプセルとは違い、大きさも人一人が入る程度で宙に浮いている、といった感じです。
色んな場面で出てきていますが仕様は全て共通です。
*2024/3/16 大規模修正を行いました
転送装置から出た途端、眩い光で目が眩み思わず目蓋を閉じてしまう。
そこに頬を撫でる清々しく心地よい微風と温かみを感じて、今までいた「制御された空間」とは明らかに異なる区画へと移動したのを肌で感じとる。
一拍、間を空けてからそーと目を開ける。すると目の前には色とりどりの花が咲き乱れる花畑や青々とした草原が混在した景色が目に飛び込んできた。
さらには小川や森が頭上にまで広がっており、空には雲が、その隙間からは「太陽」の姿までもが見えていた。
一見すればどこにでもありそうな、どこかの地上世界の景色。
だが予想だにしなかった風光明媚な光景に一瞬で頭の中が真っ白に。
ピーピー
突然、近くの草むらから小鳥の囀りの声が聞こてくる。
そちらに目を向けると花が風の流れに合わせてゆらゆらと揺れていた。
そこで止まっていた皆の思考が動き始める。
……ここはどこ?
転送装置を利用したのだからここは基地の中。Bエリア基地のように近傍に惑星があれば基地の外の可能性もあるが、ここは数十光年内に惑星はおろか恒星すらない。
……なら基地のどの辺りなのか?
これは考えるまでもなかった。
そう、ここはAエリア基地の「中」にあたる空間。その証拠に頭上の遥か上空には、今いる場所と同じく「地表」が見えていた。
ここAエリア基地は探索部部員であれば誰もが知っているレベルの話で、造られた当時は今いる空間に部専用研究施設やら訓練施設等が隙間なく詰め込まれていたが、エリアの拡充や増加に伴い全てを移動した。
そして空いた直径1kmの球体空間は気密処理をした上で「真空状態」とし、活用の方法が見つかるまでは現状維持とした。
どうやらその「元」空き空間の中らしく、足元が基地側で、頭上の太陽がある位置が基地の中心になっているようだ。
この状態を分かり易く説明すれば、卵の中身を取り除きその殻の内側部分に陸地を造り、その上に自分達が立っている。
その陸地には引力を。
上空、基地の丁度中心部に当たる位置には極小の人工太陽を設置。
「地の広がりが逆」なのを除けば地上世界そのもの。
とはいえ足元から続く地面は人工太陽の先にある地面と繋がっている。
こんな摩訶不思議な環境に慣れるには時間が必要だろう。
空を見上げていると雲がない箇所に動くモノが見えたので目を凝らしてよく見たら鳥だった。
その鳥を何気なく目で追いかけていたら「飛び方」に違和感が。
注意深く観察すると背面飛び、さらには羽ばたきせずに空中静止しているではないか。
「もしかしたら映像」と思ったが、その後に本物だと判明した。
先程鳴き声が上げた鳥が音を立て空へと飛び立つ。その鳥が20m程の高さに到達すると羽ばたきを止め、羽を広げたまま人工太陽方向に「滑空」を始めたのだ。
鳥達が大した風も吹いていないのに空中浮遊の真似が出来たのは、20m先からは引力が作用しないように調整されているから。
一人納得したところで皆を見ると、皆一様に口を開けたまま周りをキョロキョロと見渡していた。
どうやら私と同じくこの「空き空間」がどうなっていたねかは知らなかったみたい。
前回来た時に知っていたら、半日程度でトンボ返りせずに散歩でもしてたかも。
その時「心を刺激する匂い」が花や緑の香りに混じって漂ってくる。
その「心地良い匂い」に身体が反応してしまいソワソワしだす。
──えーーとこれは……なんだっけ? …………思い出せない。
とここで不意に手を引かれた。
「エマ姉様! あそこ!」
指差す先。今いる転送装置から花畑の合間を緩やかに曲がりくねった芝生の小道が延びており、その先にログハウス風? の建物が一軒見えた。
その建物以外、見える範囲に建造は見当たらない。
「あそこみたいね」
風で靡く前髪を押さえながら菜緒が寄ってくる。
その顔はここに来る前とは別人。この風景と同じくとても穏やかに見えた。
出会ってから僅かな間に色んな菜緒を見てきたが、今の菜緒が本当の姿なんだと思う。
それは他の者も同じで普段見せないイキイキとした顔をしていた。
これもこの風景のお蔭だろう。
「お姉様! 早く行きましょう!」
と先頭きってランが走りだす。
「あ、待ってなの!」
その後をソニアが追いかける。
程なく追くと二人並んで駆けてゆく。
途中、立ち止り道端に蹲み込んでは何かを見たり、時々振り向きこちらに手を振ったりと楽しみながら。
私達はその後をのんびりと追いかける。
「そういえば最後の作戦からここまで、休みなく動き回ってたからね〜」
「そうなの?」
「うん、満足に休めたのは1日か2日くらいかな。特にランは基地待機もしてないし私と同じでずっと動き回ってくれてたからね」
良い気晴らしになればいいな~と。
「……ここが片付いたら一旦基地に戻ろうか?」
「ん? どして?」
「いや……エリーさんに会いたいでしょ?」
「あんがと。そっちはもう大丈夫。それよりどこか一か所だけでも「遺跡」に寄ってから帰るかで悩んでる」
「そう……分かった。あ、それと今の内に言っておこうかな」
「?」
「さっきアリスさんと「贄」になる約束、したわよね?」
「え? う、うん」
「そもそもあの人はアリスさん本人で間違いない?」
「…………はい?」
「私達他エリアの者は彼女に今回会うのが初めて。そしてここのメインAIは信用出来ない。しかも艦AIにもアクセス出来ない。ハッキリ言って判断材料は全く無いに等しい。なので彼女がアリスさんではない可能性を未だに捨てきれない」
「え? でもさっきは共感したって」
「ええ。でもね、レベッカから得た情報自体がもし作られたものであったとしたら?」
「…………」
「例えば……私と菜奈にはアリスさんのDNAではなく椿のDNAが。さらにアリスさんががアリスさんではなく椿本人だったら。司令室にいた時が素顔でその後アリスさんに偽装していたら。全てが逆になる様に仕組まれていたのなら。トドメは二人がまさかの同一人物だったら」
「ちょっと待って! だとしたら……」
「取り返しがつかないほどの計画駄々洩れ。しかも都合よく本人の前で「贄」にまでなる約束しちゃってるし」
「…………」
「心配……いらないよ」
青褪めたエマにぴったりとくっ付く菜奈。
「何故そう思うの?」
横目で妹を見る姉。
「ドックにいたのは……間違いなくアリス艦。でその艦が……「彼女がアリスだ」って……言ってたもん」
「どうやら取り越し苦労のようね」
私達から目線を逸らし、清々しい笑顔で空を見上げる菜緒。
「うぉ⁈ え、え~~? ど、どっちなの?」
「相手はレベル5。どんな搦手を使ってくるか想像もつかないし、何にでも疑って掛からないと。私が言いたいのは、今後は大事なことを一人で決めないで欲しいってこと。主任達が何故私を同行させたかを良く考えてね」
「……ごめん」
エマが項垂れる。それを悲しそうに見つめる菜奈。
「分かってくれればいい。私だってミスもするし空回りだってする。だからそれはお互い様。私は自分の役回りは知っているつもりだし、それこそ嫌な役回りは引き受けるつもり。だからもう少し私を頼って欲しいな」
「……はいごめんなさい」
「エマちゃんを……いじめちゃダメでしょ!」
鋭い目つきで菜緒を見る。
何やら怒っている感じ?
だが残念ながらその気迫は姉には通じない。
「いじめてるんじゃなくてお説教。そうだ菜奈、貴方にもちょっと話があります」
「…………」
動きが止まる菜奈。
嫌な予感がしたのか菜緒からぎこちな~く目線を逸らし始めた。
「エマが泣いているからって暴走しちゃダメでしょ?」
少しだけ目を細める菜緒。
「…………」
菜奈はほっぺを膨らませて尖り口に。どうやら不貞腐れているみたい。
てかその顔、とっても可愛いぞ。
「もし相手が椿だったら気分次第で銃を暴発させたり、貴方から制御を奪い取ったあのアンドロイドで皆を襲わせたり、または人質を取れると思わなかった?」
「……はい」
シュンとなった。
「それに……ホントかどうか分からないけど、傷つけられないって言ってたし」
「…………」
エマ同様に菜奈も項垂れた。
「二人とも少しは反省なさい」
「「……ごめんなさい」」
立ち止り二人揃って深々と頭を下げた。
「全く世話の掛かる妹達……」
言葉遣いと表情とは裏腹に声は怒ってはいなかった。
「今日の反省はここまで。折角の景色だし目の保養でもして行きましょう!」
その後、お互いの主任の悪口や他愛もない雑談に花を咲かせながら歩くとログハウスへと辿り着いた。
だが先行していたランとソニアの姿がどこにも見当たらない。
更に近付き様子を窺う。
ログハウスの周りには木の柵で囲いがしてあり、今まで歩いてきた芝生の道の終着点が木製の簡素な門となっていた。
その先、門の内側の中庭も同じ芝生が生い茂り、そこに大きな木が一本とその木の枝にハンモックが一つ掛けられてあった。
そしてログハウスは二階建て。
今いる位置からは正面側しか見えないが、一階中央にある玄関の真上の二階部分にはかなり広いテラスがあるようで、僅かにテーブルやら椅子が見えていた。
とここで話し声が聞こえたのでそちらを見ると、建物裏手側から柵沿いにラン&ソニアが歩いているのが目に入る。
目が合うと小走りに近付いてきた。
「お帰り」
二人を出迎える。
「お待ちしてました!」
「特に怪しいところはなかったなの!」
どうやら散策がてら敷地を一周してきたらしい。同時に危険がないかのチェックも兼ねてくれたみたい。
「見回りご苦労様。それじゃ入ろうかね」
ラン&ソニアを先頭にアーチ型の門を抜け庭に入る。すると両開きの玄関が開き、中から女性が現れた。
「お待ちしておりました。どうぞ中へ」
いかにも執事! の燕尾服を着た女性が礼儀正しく、執事の模範ともいえる完璧なお辞儀で挨拶をしてきた。
それに対し皆、黙したまま頭を軽く下げる。
「どうぞこちらへ」
踵を返し暗い室内へと消えていく。
その姿を見失しなうまいとラン&ソニアが慌てて中へ。
そこは建物の大きさからしたらあまり広くはない、幅15m奥行20m程の吹き抜けロビーで、正面には二階へと続く幅広の階段。左右の壁には両開きの扉が各1つずつ。階段の脇には片開きの扉が各一つずつ。計4つの扉が見えた。
そして壁や階段には今ではとても珍しい燭台が等間隔で設置してあり、蝋燭の明かりが揺らめいていた。
全員が入りきると玄関の扉が音も立てずに独りでに閉まる。
すると視界が真っ暗に。
今、聞こえているのは各々の呼吸音と蝋燭がジリジリと燃えている音のみ。
次第に正面階段手前にいた執事さんが見えてくる。
目が暗闇に慣れたタイミングで菜緒が口を開いた。
「食事が出来ると聞いてここに来たのですが」
事務的に聞く。
ここまで一本道で他にそれらしい建物は見えなかった。とは言えまあ万が一もあり得るので聞いたのだろう。
「はい。アリス様から皆様のおもてなしをする様、言われております」
掌を前で重ねて背筋を伸ばし、瞬きは最小、口だけを動かして答えた。
「其方の方はどうなさいます?」
クレアが寝ているカプセルに僅かに顔を向け聞いてきた。
「よろしければ別室をご用意致しますが?」
「そばで寝かせておきたいの。このままで構わない?」
「こちらは一向に構いません。それではこちらへ……」
と私達から見て左奥、執事さんからは右となる扉に向かい、両開きの扉を自ら開けると明るい部屋へと入って行く。
ここでもラン&ソニアが真っ先に扉に群がる。
だが中には入らず止まってしまった。
「どした?」
「「…………」」
声を掛けたが反応がない。
そして菜緒も扉へ。
「へ~~」
二人の後ろから中を覗き込みながら感嘆の声を上げる。
「ど、どしたの?」
三人が入口を塞いでいるためクレアのカプセルと一緒に入れるスペースが無い。
「みんな……邪魔」
「あ、ごめん」
菜奈の声で三人が我に返り中へと入って行く。
スペースが空いたので続いて部屋へ。
するとそこは眩い調度品の数々に囲まれた古代欧州貴族が使用していたバンケットルーム風造りの部屋であった。
広い部屋には大きな円卓が二つと椅子。右手の壁や正面の窓際にはソファーが配置。
極め付けは左側の壁の暖炉。
右奥の壁際にはランやソニアと似た身長と体型のメイド服を着た女性が二名、見据えて立っていた。
──なんか……悪趣味。
素直な第一印象。
皆とは違い、この部屋の趣向に引いてしまい気分が萎えてしまう。
「皆様、こちらへ」
と円卓へと案内され、執事さんと給仕メイドさんに椅子を引いてもらいながら菜緒、私、菜奈、ラン、ソニアの順に着席してゆく。
飲み物のオーダーを受ける際に食事の説明があり「ここはプライベートエリアであり『オーナー』の方針によりコース料理でのご提供となります」と。
また料理も「人の手で一から調理しているのでそれなりに時間が掛かります」と言われた。
さらにここの説明もしてくれた。
プライベートエリアとはこの空間、つまり外の自然環境も含めた球体空間内の全てが個人の所有物で、システムも基地から完全に独立しており「お互い不干渉」となっているらしい。
その説明の途中に菜緒が「人?」と隣の私でさえ聞き取れない小声て呟いたのだが、執事のスキルによるのか、その呟きを執事さんは聞き逃さなかった。
菜緒は「調理機器にやらせるのではなくわざわざ『人』が?」との趣旨での発言だった。だが執事さんは「バイオロイドではなく人と思われている」と勘違いしたらしい。
だからか親切に「このエリアで働いている者は全員完全自立型のバイオロイド」と断った上で「この空間同様、個人の所有物です」とそこまで教えてくれた。
飲み物を聞き終えると部屋から出ていく。
代わりに給仕メイドがテーブルにナイフやらフォークをセットしてゆく。
それらが終り一旦「間」が開いた時に、執事さんの発言内容を奈菜に確かめてもらったところ「全員バイオロイド」とのお墨付きが。
その時「この部屋以外にもいる?」と聞いたところ「見えないところに結構な数がいる」とのことだった。
以前説明をしたがバイオロイドは「基となる人」と身体の構成が同じで必然的にメンテナンスの手間が多くなる。当然製造・維持にかかるコストも大量生産・故障しないアンドロイドとは比較にならない程高額となる。
そんな面倒くさいモノを使いこなせるのは政府機関でも探索部くらい。
それをプライベートで、しかも複数体も保有。この空間の「主」は相当な人物の筈。
しかも探索部基地の中。
どうみても部関係者だろうし、条件に合致しそうな者はこの世で一人しか思い浮かばない。
見えない場所にいる多数のバイオロイド。
この状況はあまり好ましくないのかもしれない。
──う~ん、疑って掛かるってのは正論だと思うけどこの状況には悪意は感じないんだな〜
あれやこれやとヒソヒソ話をしていたら、壁際で待機していた給仕メイドの二人が突然、何も言わずにもう一つの扉から出て行った。
今は執事さんもいない。
取り残された私達に嫌な空気が。
武器はあるがバイオロイド相手にトリガーを引く勇気もない。
「いざ」となったら動けるような心づもりだけはしておけと菜緒が皆に目配せをする。
私は後ろにいるクレアの位置を頭に叩き込む。
暗闇でも動けるくらいに。
その時、扉の奥から「何か」が近付く音が聞こえてくる。
だんだんと近付く音。
皆の視線が開け放たれた扉に集中する。
緊張がマックスになったタイミングで現れたのは銀色のカートだった。
澄まし顔でカートを押してきたメイドさん二人が料理を順に置いていく。
その脇では執事さんが料理の説明をしながらグラスに飲み物を注いで回る。
準備が終わり料理に手を出そうと目線を下げたところで、マキの顔が映った空間モニターがなんの前触れもなく現れた。
「うぉ! びっくりしたなー」
「ん? あ、スマン。今ええか?」
「うん、どした?」
「ちょいとクレアの宇宙服借りれへんか?」
「何故クレアの?」
エマの表情が曇る。
「いやな、なんやこいつの異常数値がな~クレアと似とるんやと」
「それで何でクレアの宇宙服?」
「エマさん」
マキから横に移動しアリスの顔が現れた。するとエマの顔から表情が失われていく。
「どーゆーこと?」
感情の乗っていない声。
「レイアさんとクレアさんの数値が似通っているんですよね」
「それで?」
「クレアさんの宇宙服、特別製ですよね?」
「なんで知ってるの?」
「え? さっき……あっ……」
映像がフリーズしたかと間違う程に固まるアリス。
「だから……何で知ってるの?」
「…………ごめんなさい」
「お前はだれだ?」
「…………」
「お前は本当に信用できるのか?」
「…………すいませんでした」
平謝りするアリス。
「…………」
アリスを冷淡な目で見つめるエマ。
先程から尋常でない雰囲気、さらに聞いたこともない話し方に周りの者は動きを止めエマから視線が離せなかった。
「クレアが起きるまでは宇宙服は渡せない。どうしても必要ならアルの中に予備があるからそれを使え」
「そやかてアルテミスは今は動けんのやろ?」
しょんぼりしているアリスが映ったモニターからマキの声が聞こえた。
だがその問い掛けには答えず話しを続ける。
「何故動けないんだ?」
「…………ごめんなさい」
「何故言えないんだ?」
「…………ごめんなさい」
「お前は卑怯だ」
「…………」
「私の大切な者ばかり奪って傷つけ、さらに大切な者の大切な者まで平気で取引材料として利用し脅してくる」
「エマちゃん!」
「?」
エマを心配そうに見ていた菜奈が割り込んでくる。
「アルちゃんの所に……私が行ってくる」
「出来るの?」
「分からない」
力なく答える。
「仕方ない。ノア、聞いてるんでしょ?」
見かねたのか菜緒が口を挟んできた。
「…………」
返事はない。繋がっているかも分からない。
「今は無理か……クレアの宇宙服のデータをアリスさんに送ってあげて。複製不可の状態で送りっぱなしで構わないから」
「…………」
沈黙は肯定……じゃなくてノアなら聞いてそう。
「アリスさんは受信したら宇宙服を改造処理して着せてあげる事。受信データは基地AIに改造記録が残らぬよう、確実に消去する。よろしくて?」
「あ、はい! それくらいなら簡単です!」
「くれぐれも忘れずに。マキさんはそのまま任務継続」
「お、おう。しかし腹減ったわ~」
「育ち盛りだから仕方がない! 落ち着いたら速攻帰投せよ。美味しい食事が待ってるぞ!」
「了解や! ウチの分、残しといてや!」
ここで空間モニターが消えた。
「……ごめん」
俯いて謝る。
「全く……嘘をつかれて疑心暗鬼になるのは分かるけど。ホント、クレアの事になると見境なくなるんだから」
「……反省してます」
「でも今のやり取りで彼女がアリスさんだという確証が持てたから良しとしますかね」
機嫌良さげに言い放つ菜緒。
「……そうなの?」
「そうなの! さ、冷めない内に食べちゃいましょう」
ラン&ソニアは終始オロオロと心配そうな表情でエマを眺めていたが、菜緒の合図とともに戸惑いながらも食事を再開し出した。
菜奈はエマの「迷惑掛けてごめんなさいの頷き」を受けてから食事を始めた。
そして当のクレアは起きる気配は全くなかった。
次回はちょっと先が読めないのですが、6/7(日)までには投稿します。
毎度不定期でごめんなさい。




