第七十三話 ゲソ?
遅くなりました。
前話でシェリー弄りを目論んで今話も途中までせっせと書いていましたが、気が変わりサッサと先に進めたいので、次話で軽く済ませる事にします。
*2023/12/23 大規模修正を行いました!
「先ずは〜作戦を練らないとね〜」
「うん。シェリーの弱点を見つけてそこを……シャーリー以外に何かある?」
「その妹ちゃんも〜弱点になり難いわよね〜」
「そだね~ゴリ押しして逆ギレされても困るし~」
「「う~~ん」」
二人揃って真面顔、なのだが口元は緩んだままでのヒソヒソ話。
「二人~と~も……どう~したの~?」
周りと雑談していた奈菜が不意に私の肩に頭を預けながら陽気に? 絡んできた。
「ん~? ん~ちょっと悩み事」
同じ様に頭を軽く擦りつけて愛情表現をする。
「……そうだ! 菜奈ちゃん!」
私達のスキンシップを微笑ましく眺めていたラーナ。何かを閃いたのか突然手を叩き叫ぶ。
結構大声だったが、周りは我関せずと反応する者はいなかった。
というか周りの方が大声だの笑い声だので結構喧しい。
「?」
突然名を呼ばれると垂れ目に変えラーナに顔を向ける。
「菜奈ちゃんに〜お願いがあるの~。ちょっと耳貸して~」
二人の距離は約一m。
ラーナは軽く身を乗り出すと、片手を口の脇に添え内緒話をする仕草をしてみせると菜奈は座り直し、両耳の裏に手を当て聞く体勢を取った。
参加しようと私も身を乗り出しかけたがクレアがいるので思い留まる。
「「………………」」
見つめ合ったまま無言の二人。おそらく脳内通話をしているのだろう、仕草そのまま口も動かさずにやり取りをしている。
それなら内緒話スタイル取らなくてもいいんじゃない? と思うが、こういった悪だくみ? は雰囲気も大切だから致し方ない、と割り切る。
……でもでも、もしもよ? 会話していなかったら?
「……ちょっと待ってね」
取り越し苦労だったみたい。
ラーナの提案? が無事伝わったらしく一点を見つめて動かなくなった。
いや厳密には酔っ払い状態なので上半身が右へ左へ前へ後ろへと不規則にフラついているし、固定された視線も動きに合わせて上下左右に向いている。
その姿を見て心が和む。
「判明……したよ~。送るね~……エマちゃんも~?」
「うんお願い」
五秒にも満たずに何かを調べ終えたらしくアルテミス経由で何かの情報が送られてきた。
その情報を覗き見不可の状態にした空間モニターにて読む。
……ふむふむ。
……あれ? これってどこかで。
……あらあら。
……そうだったの!
「なるほど~流石~菜奈ちゃ~ん」
「へーー菜奈って凄いのね!」
「そんなこと……ある……かな?」
あれ~もしかして照れてる~?
それよりもこんな個人情報、どこから拾って来たんだ?
私の知る限りシェリーはCエリアには来ていない。残るは艦AIしかないがシェリーが許可を出すのはあり得ないしどうやって……手に入れた?
「うふふ、天探女主任直伝だからね〜」
「どういうこと?」
「知りたい~?」
「うんうん」
「奈菜ちゃんはね~……」
「ちゃんは?」
とここで、
「お、何ぞおもろそうな顔しとるで!」
「そうなの! その顔はいじわるなこと考えてる人の顔なの!」
「お姉様のそのお顔、とっても素敵ですぅ!」
「……私もまぜろ~、っと!」
といつものメンバーがニヤケながら集まってくる。
するとそばに座っていたCエリアの人達が気を遣って席を譲ってくれた。
あらあら結局みんな集まっちゃったよ。
私達そんなに分かり易い顔してたかい?
でもそのお陰でソニアとマキが来てくれたし、皆で作戦を立てられる。
とその前に獲物のシェリーは……シャーリーと二人で酒瓶片手のCエリア探索者達に囲まれ感謝の言葉と共に引っ切り無しに酒を注がれて逃げられない状態。これなら悪巧みに気付かれる心配はなさそう。
しかしなんというタイミングの良さ。まるでこちらの意図を読んでいるかの行動。いや偶々?
どちらにしても……Cエリアの者共は……侮れん。
「それじゃいい? みんな聞いて……」
先程の二人同様、脳内通話にて話し掛けた。すると……
みんな菜奈の真似し出して耳に両手を当ててるし~
しかも何故真顔なの~
ってゆーかそんなに見つめられると照れちまうぜ~
と思いながらも脳内通話にてプランを話す。
えっ? さっきはツッコミ入れてたのに何で自分も声を出さないのかって?
そりゃお約束ですから!
「…………みんなOK?」
「オモロそうやん! 協力するで~!」
「了解なのなの!」
「あいあい……さ~」
今回のマル秘作戦のキーマンである三人はやる気満々。
「ソニア、念のためもう一度聞くけど、本当にいいの? もし成功したら……」
「それはそれで嬉しいなの! みんなが幸せになるなら大賛成なの!」
「ソフィアは?」
「エマ姉様の話聞いてる最中にソフィアにコッソリ聞いたら「O~K~失敗したら帰れねーぞーなの!」って言ってたの~!」
「あ、そう……」
いいんだそれで……なんか軽いノリだわさ。
実は反対されるかな~と思ってたんだ……
「んじゃ向こうの手筈はソニアに任せていいかいな?」
「ラジャーなの!」
「シェリーとシャーリーの誘導はマキとランに任せる! 二人ともよろしく!」
「「了解!」」
三人が親指立ててグーを突き出す。
「何が~了解~なのかしら~ん?」
突然菜緒の顔が後方から真横に現れた。酔っ払い特有のジト目をしながら。
「うぉーー! な、菜緒姉? ビックリしたいつの間に背後に⁉︎」
「Cエリア基地で~何企んでるのかしら~ん?」
「うっ…… (目が据わっている! もしかしてかなり酔ってる?) ……そうだ菜緒!」
ノーリアクションで菜緒の腕を掴みさらに引き寄せる。
顔と顔の距離、約十cm。
「あん……え? な、何?」
赤い顔が別の意味での真っ赤に変わる。
「いいよね? ね? ね?」
「え? え? 何……が?」
「……ダメ?」
鼻が触れるか触れないかの距離まで顔を近づけてから瞳を少女漫画風に潤ませてみた。
その時アルテミスが私の意図を察したらしく周りに百合の花が咲き乱れる。
「え……で、でもこんなところじゃ……みんな見てるし……」
「ここでじゃないとダメなの。それとも……私が……嫌い……なの?」
今度は悲しそうな表情に切り替えてみた。
「うっ~~そ、それは反則…………え、エマが……したいなら……いいよ」
何故か目をゆっくりと閉じる。
「よっしゃーー! 言質は取ったどーー!」
と叫んでから解放する。
菜緒は期待した状況とはならず、エマや周りを呆けた顔で見回すと、皆の視線が自分に向けられているのに気付く。
温かい目と可哀そうな子を見る目が半々。
「何? 何?」と状況が分からず戸惑う菜緒。そこに菜奈が菜緒の耳元に口を寄せ何ごとかを囁く。
すると一瞬落胆の表情を見せた後に笑みになり皆に向き直った。
「おほん! 作戦を若干変更をします。皆もう一度傾聴」
「………………」
「と、こんな感じで」
「だから声に出せ」とは言わずに大人しく聞いた。
菜緒の作戦は良い案だと思うが一つ問題が。その点を聞こうとしたところで、頭の中に乱入者が。
(よいよい。菜奈ならあれを上手く使いこなせる。さらに基地の権限は菜緒に預けてあるので問題無しじゃ)
天探女だった。主任専用席を見たが二人の姿は無し。
(そ、そうなの?)
(そうなのじゃ。それとわらわ専用の風呂も好きに使うがよい)
(いいの?)
(なに、ただの気まぐれじゃて気にするでない。それではサラが待っておるので「あでぃおす」なのじゃ!)
そこで通話が切れた。
ま、主任が大丈夫と言ってるんだしその案で……
「では作戦の成功を祈って……乾杯!」
「「「いえーーい!」」」
いつの間にか仕切っている菜緒の音頭で皆が声を張り上げる。私も慌ててジョッキを掲げた。
「……ん? みんな集まって……どうしたの?」
皆が大声を上げたのでクレアが起きてしまった。
見れば薄目で私を見上げていた。
「ん~ん、何でもないよ。もう少し寝てていいよ」
手で髪と顔を優しく撫でる。
その行為を素直に受けるクレア。
「ん……じゃあもう少しだけ……」
「はいよ。お休み〜」
程なく宴会は終了。気付けばそこそこ良い時間になっていた。
予め食事前にここに泊まると決まっていた。
あれ程基地に入るのを躊躇っていたサラ自らが決めたのには驚いた。
ただそうは決めた理由は直ぐに察した。
解決した時点でAエリアに向かっていたら、日が暮れる前に着いてしまうだろう。
それだと問題が起きた時の対処は必然的に夜になる。
生体強化をしていない我々探索者は普段から規則正しい生活を心掛けており「夜は寝るためにある」と決まっている。
瞼が重い状態では満足な行動は出来ないのは明白。
その辺を考慮した結果、留まる判断をしたのだろう。
ってか気分よく呑めた今は動きたくない。
今日くらいは気分良く寝たい。
大昔からの常識〈呑んだら乗るな! 乗るなら呑むな〉
探索部規則〈飲酒運転はきんし~〉は守らないと!
作戦の決行は明朝。
なので皆は自室や割当られた部屋へと去ってゆく。
ここで「蛍の光」の雰囲気を察したのかやっとクレアが目を覚ます。
生体強化の恩恵か、寝起きの顔は爽やかそのもの。アルコールはもう抜け切っているみたい。
先程までとは別人のようで、出会った頃のように生き生きとした表情をしている。
あ、クレアの制服を作らねば。服装を見て思い出す。
どこで作れるかを聞こうしたが既に誰もいない。
仕方なし。お店の位置を自分で調べ転送装置を使って移動する。
勿論腕を組んで。
お店は……もういちいち説明するのは辞めよう。
来た当初はウチそっくりな店やどこかの誰かさん似のアンドロイド店員ばかりで、何か特別な理由があるのかと思ってたけど只の趣味だったとは。
まあ基地内の配置やデザインは基地主任の特権。だから自ずとこうなったのねと。
先ずは制服。
探索者はエリアは違ってもデザインは統一。素材も宇宙服とは異なり一般に流通しているような生地。なのでサイズを計測したら即完成。
次は服とランジェリー。
クレアが持参した服や下着は一応アルテミスにも何組かは積んである。なので今直ぐ必要というワケではないが、これからを考え数を揃えておく事にした。ついでに靴も。
最後は下着。下着はプライバシーの塊。なので席を外す……というのは建前で、見てたら「後のお楽しみ」が減ってしまう。なので意地でも見ない。
「支払いは私がするから急がず自由に選んでね~。最低ラインは十セットで遠慮は禁止~」
「サンクス、エマ」
皆のお給料が増えるのは次回以降のお話。その支給日はまだまだ先なので贅沢は出来ないだろう。
私は前回早めて支給してもらった、使い道のないお金が山ほど残ってる。次回以降も同額が支給されるだろうし増える一方。現時点で服の千や二千買っても痛くも痒くもない。それはクレアも知っている。
それにクレアはファッションセンスはかなり良いし、こんなことで我慢はしてもらいたくないし、自分の彼女には綺麗でいて欲しい。
なだからお金の心配はせずに心ゆくまで選んでくれたまえ。
クレアが服を選んでいる間、フリードリンクで喉を潤す。
ただ待っているのも暇なので、空間モニターを呼び出しポチポチと弄り出す。
パラパラとページを捲るとランお勧めのチャイナ服が現れた。
「ついでだからみんなの分も作っとくかね」
ポチポチっと……そのまま支払いを済ませて、各艦に送り付ける。
勿論菜緒と菜奈の分も忘れずに。
あと生存確認出来ていない者の分とクレアの分はアルテミスに預けた。
因みにウチの男どもは無し。欲しければ自分で買いなさい。
「お待たせ」
「あれ? 制服は?」
「ん? ここにあるよ」
紙袋を持ち上げて見せた。
「折角作ったんだから遠慮せずに着よう!」
「……分かった」
待つ事三分。試着室から出てきた。
「……どうかな? 変じゃない?」
「変? どこが? メッチャ似合ってるよ」
「……本当?」
「情報部の制服も良かったけど、こっちの方がもっといい。完璧!」
「えへへ、ありがと」
「元がいいからね、何着ても似合うわ〜」
クレアは探索者にはなれなかった。目前で全てを失った。
候補生となった者の大半は「正規探索者」を目指すとのこと。クレア達も当然「正規探索者」になるのを夢見ていただろう。
それが「形だけ」だとしても、やっと念願が叶ったのだ。嬉しく無い筈はない。
『エマ、聞こえるか?』
音声のみの問い掛け。
「はい? サラ? どしたの?」
『今すぐ来い』
「なぜに?」
『急げ』
「……分かった。クレアもいるんだけど?」
『丁度いい、一緒に来い。貴賓室で待っている』
一方的に切られた。
何だろう。緊張感が漂う声だった。
「行こうか?」
「ええ」
貴賓室そばの転送装置に移動。そこから徒歩にて貴賓室の前へ。
「失礼します」
「入れ」
扉が開くとそこには張り詰めた空気が。
中にはサラとラーナ、対面には天探女主任と菜緒がソファーに座っていた。
四人とも素面の状態。
さてはアルコールを抜く薬を飲んだな?
クレアも素面だし、酔ってるのは私だけってか?
「ここに座れ」
と隣の席を勧められた。
そこに無言で座る。
クレアは対面の天探女主任の隣。
というか今は六脚しか用意されていないのでそこに座った。
座ってから直ぐに「どうしたの? 何か問題発生?」と尋ねる。
「…………暫く別行動になる」
かなりの間を開けての返事。
「どしたの? 忘れ物でも思い出した?」
私なりに空気を読んでの発言。
「呼び出しがあった」
「誰から?」
「古巣じゃ」
「古巣? どこ?」
「エマちゃん〜外を見て〜」
「外?」
言われた通りに基地AIが捉えている映像を、顔前に呼び出したモニターに映す。
「な、何? この派手派手な物体は! もしかして異星人? 基地、侵略されちゃうゲソ?」
「…………整合部の偵察艦よ」
背筋を伸ばした菜緒がコチラを細目で見ながら教えてくれた。
──菜緒ちゃん、ツッコミはしてくれなかったゲソ。そんなことじゃイカんぜよ。
「整合部?」
「エマ」
「え?」
「前に教えた「荒事専門」の」
「……あー思い出した。でそれが何故ここに? それに古巣って?」
菜緒を見る。菜緒は天探女を見る。
「サラはの〜元は整合部の所属なのじゃ」
サラを見ながら教えてくれた。
「ほ、本当? サラ」
「ああ」
特に躊躇う素振りも見せずに認めた。
驚愕? の事実にサラを直視する。
サラはこちらの視線は無視。用意してあったコーヒーに口をつけた。
「そ、そうだったの……」
クレアが教えてくれた整合部。
探索艦に匹敵する艦を保有しているらしい特殊な部署。
「エマ。私もついさっき教えてもらったの」
真剣な面持ちの菜緒。
妙な雰囲気の為か酔いが覚めていく。
ここで喉の渇きを覚えたので紅茶に手を伸ばし一口飲む。
「それで呼び出しって?」
「怖いんだ」
「こ、怖い?」
な、何が?
「怖くて怖くて堪らないんだ」
「どーゆー意味?」
「いや奴らの事だ。とにかく呼ばれたからには行かないと」
「そ、そう……何が言いたいのか分からないけど戻ってくる……よね?」
「ああ」
「因みにどこに行くの?」
「整合部本部。総本部の目と鼻の先。母星がある太陽系にある」
「母星……地球……」
「時間は然程掛からないと思う。ワイズの艦を持って帰るから奴に伝えておいてくれ」
「それはいいけど、私はこれからどうすればいいの?」
「天探女のおかげで……」
「コホン」
「……天探女のおかげで時間を進められた。だから暫くは「ゆとり」があると思う。皆で話し合い進むもよし、一度戻るもよし。よく考えお前が決めろ」
「私が? 分かった。早めに遺跡周りをしとかないとなって思ってたところ」
「……そうか。二百年も前の事だし正直言えば私も天探女も当時の「あの方達」はデータ上でしか知らない。特に私は。だから遺跡でどんな事をすれば良いかなどは分からないしアドバイスも出来ない」
「うん」
「アルテミスの中で「あの方」とは会えたのだろう?」
「彼女……レベッカのこと?」
「そうか……レベッカというのか」
「知らなかったの?」
「ああ。私も天探女も話したことはない。私には友人がいたし「道」も彼女が示してくれていたのでな」
「…………」
「話せたのなら今後は私ではなくレベッカ……いやアルテミスを頼れ。私よりも余程力になってくれるだろう」
「アルを?」
「そうだ」
「……分かった。レベッカもそう言ってた。それより友人……って?」
「友人? 彼女も昔の事はあまり話してはくれない」
「サラ。その友人っていうのは?」
答えようとしないので再度聞く。
「レベッカからどこまで話を聞けた?」
「……探索部が出来た経緯まで」
「そうか。……友人とはな、向こうの世界からこちらに来ている少女のことだ」
「……そうだったんだ。レベッカがもう直ぐ会えるって」
「……という事は予定通り、やはり進むべきだな。Aエリアに」
「そうする」
「ああ、早めに会っておいた方がいい。とにかく立ち止まるな。今後はサイコロで決めても構わないから動き回れ」
「了解」
「それとクレア」
「は、はい」
「制服、似合っているぞ」
「ありがとうございます」
「レイアの件は済まなかったと思っている」
「…………」
ハキハキと返事をしていたクレアだが「レイア」との言葉が出ると急に暗い雰囲気に。
「レイアって?」
サラに尋ねた。
「クレアちゃんのお姉さん……」
代わりにラーナが寂しそうな笑みで皆に聞こえるように教えてくれた。
「いえ、あれはどうしようもない状況で」
「それでも守ってやれなかった。ましてや私の管轄下で起きた事故だ。全ての責任は私にある」
「…………」
「だがこうして立派になって戻ってきてくれた。私は率直に嬉しい」
「……はい」
「今後はエマと共に行動しろ」
「はい」
「二人が離れるのは好ましくない。訓練も今は諦めろ」
「はい。了解です」
「そちら方面はミアと会えたら相談してみるんだな」
何故にミア?
「あ、ミアが基地に戻って来たって」
「ノアから報告は受けている」
「ミアはどこにいるか知ってる?」
サラとラーナを交互に見る。
「これはここだけの話だが、どこにいるかは知らないが残りのメンバーが全員無事なのは判明した」
「そうなの⁈」
「ああ。シェリーが教えてくれた」
「シェリーが?」
「そうだ。探し出すのにかなり時間が掛かったらしいがミアが一人で全員救出したそうだ」
「そうなの? 良かった……」
「だから今までやっていた捜索はもう必要ない」
「うん分かった!」
「あ、それと基地に現れていた所属不明の探索艦だがな、あれは……マリらしい」
「……えーーまりーーーー⁉︎」
「マキには言うなよ」
「な、なんで⁈」
「本人の希望らしい」
「は、はい? なんで?」
「一番初めに復活したのにマキが心配で基地にチラチラ様子を見に行ってたんだと。そのせいでローナ達の役に立てていないから、マキがピンチの時に颯爽と現れたいんだと」
「はぁ? しょうがないな〜。そんなの気にしないで帰って来ればいいのに」
「まあ無事なのが分かったんだ。マリの意を汲んでやれ」
「いやいや、マリだけでも戻ってくれてたらかなり楽だったのにー」
あの段階で一組だけでもペアがいたらと思うと……あれ? あまり変わらなかった?
「ローナ的にはその「戻す」という選択肢は無かったと思うぞ」
「何故?」
「お、そうだ! ローナからお前宛のメールを預かっている。後で確認しろ」
「本当? 今見てもいい?」
無言で頷くサラ。
早速空間モニターを呼び出す。
ボイスメールが一件。勿論差出人はローナ。
日付は三日前。
迷わずメールを開く。
するとローナの声が聞こえ始めた……
〈貴方……ちょっと太ったんじゃない?〉
ソファーからずり落ちた。
菜緒とクレアも。
ラーナと天探女は声を聞くなり一瞬で真顔に変わる。
ラーナに変化が表れたということは、この声の主は本物という証。
そしてサラは……声を押し殺して苦笑を浮かべた。
「なな……なんだとーーーー‼︎」
「アハハハハ! ローナらしいな!」
「くぅーーーー」
事実なので反論出来ない。
というか何で知ってるの⁇
「それと私がいない間のお前のサポートは菜緒にさせる」
「菜緒? ラーたんは?」
「基地で待機するそうだ」
「なんで⁈」
「知りたければローナに聞け。ラーナ以外の残りの連中は好きに使って構わない」
「くぅーーーーローナめ……何企んでやがるんだ?」
「あ〜あと菜奈も連れて行け」
「え? いいの?」
天探女主任を見る。
「アルテミスに置き手紙しといたじゃろ? 菜奈は事前に同行が決まっておったからの! 菜緒はサラが不在になるし、ラーナは引きこもるとの事だし、外に出す丁度良い機会と思うてな」
「良いタイミング?」
「そうじゃ。此奴は仕事大好きという難儀な性格でな。少しは外で遊ばせとかんと、行き遅れになった時にわらわのせいにされては堪らんからの〜のののののの!」
「行き遅れ? 外に出れないのは誰のせい? 自分の事を棚に上げて良く言えますね?」
またまた頬を抓られてる。
──は〜しかしみんな軽いわ〜
「他に質問はあるか?」
「サラ、無事に戻ってこれるよね?」
「当たり前だ。あいつらは私には手が出せない。そこは安心しろ」
「奴らに侵食されてなければな」
天探女がボソリと言う。
「それを言うならお前の方が余程心配だ」
「わらわはとうの昔に手は切っておる」
「どうだか」
「サラは心配性じゃて」
「まあいい」
全員を見回す。全員無言で頷く。
「では行ってくる。皆、エマを頼んだぞ」
と言って立ち上がる。
続いてラーナも立ち上がり、一緒に出て行った。
*蛍の光・・ショウワな人ならご存知、閉店の時間を知らせる某民謡の定番BGMが流れるあの雰囲気
*チャイナ服・・本編では残念ながら着ません
*「……そうか」・・直前の会話からアルテミスの中で「何かあったな」と察した。
次回は3/11(水)までには投稿します。
いつも遅くてごめんなさい。




