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未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
運命の出会い・・
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第三十九話 良いではないか〜? エアバイク!

早着です!


*2023/8/14 大規模修正を行いました!

 (10)分程で面会は終了。そのまま食堂に戻ると皆が待ってくれていた。

 私が席に着くのを目で追ってくる。


「……でどやった?」

「ん? 本調子にはまだ程遠いかな。だからちょっとだけしか話せなかった」

「そ、そうですか……」


 若干一名を除き、皆表情が暗い。暗い雰囲気になってしまった主な原因は二つ。

 一つ目は()()()()()()()()()()仲間の「帰還者第一号」という点。

 二つ目はその第一号がマリでもリンでもシェリーでもミアでもなく「ラーナ」だったという点。


「精神的には?」

「そちらは問題なさそう。二、三日休んで体力が戻れば復帰ね」

「さ、流石はラーナさんです!」

「そ、そやね」


 クレアでさえも戸惑いながらも笑顔を作る。

 そんな中、ノアだけは屈託のない笑顔だった。

 二人はあまり接点は無かった気がするが……




 準備をするので一度解散。時間を決めて転送ルームに集合とした。

 今回の実験総責任者であるノア、それと私、不在の間「私の本体」の護衛してもらうクレアと共に一足先に転送ルームへ。

 ここで「護衛」して貰うのは()()()。先日の密談を考慮しクレア自ら護衛を買って出てくれたのだ。


「本当に二人用ってあるの?」


 見える範囲にそれらしいモノは無い。


「……こっち、だぞ」

「あれ? こんなとこにあったっけ?」


 ノアの案内で円形の部屋の一番奥まで行くと、確かに二人用が置かれてあった。


 てか見た目からして何かおかしい……

 何故カプセルが四角いの? ……二人用だから?

 何故中が畳なの? ……単なる趣味?

 何故布団が敷いてあるの? ……綿? 羽毛?

 何故布団が一組だけなの? ……しかもキングサイズ?

 何故その布団に枕が二つなの?


 ノアにジト目を向けると何時ぞやと同じく額から一筋の汗が落しながら速攻目を、いや顔を背けた。


「あ! 何かのドラマで見た事がある! 確か……「良いではないか〜」だったかな?」


 クレアが手をポンと叩く。


「へーーどんなドラマ?」

「確か「ロウニン」が借金のカタに連れてきた「ショウグンの娘」を手籠にしようとしたら、娘は「くノ一」で返り討ちにされた……だったかな」

「へ~返り討ちね……へ? なんか色々おかしくない?」

「何が?」

「「ロウニン」と「ショウグン」はどっちの身分が上?」

「……ロウニン?」


 おいおい大丈夫かいな。あんた情報部でしょうに。

 情報部員って実は大した事ないんじゃない?


 それはさておき、断りなく改造したノアちゃんにお仕置きをしなければ。


「ノア? みんなが来るまで一緒に寝よ♡?」


 顔を真っ赤にして固まる。いつもの可愛い純情なノアちゃんだ。


「クレア手伝って~」


 ウインクして合図する。


「任せて〜♪」


 クレアが素早くノアの後ろに回り込んで体を持ち上げる。その隙に私が靴を脱がす。

 そのままノアの足を持ち上げ二人でノアを布団へと運ぶ。

 掛け声は勿論「良いではないか〜」だ。


 掛け布団を素早く捲ると、ノアを中央にして川の字で横になり布団を素早く被せる。

 さらにノアの身体に手を巻き付けてから二人同時に両耳へ「良いではないか〜」と囁くと……

 頭から湯気を出して逝ってしまった。


 ノアちゃん純情で可愛い〜〜

 でもちょっとお仕置きが強すぎたかな?


「「あ、ズルい! 私も」」


 とハモった大声が聞こえ、ドカドカと駆け足が近づいてくる。

 布団からそーと覗くと、欲望丸出しで血相変えた野獣が二匹、布団へと潜り込んでくる寸前だった。


「ちょ、ちょっと、キャーーーーー」



 …………



「うう、もうお嫁に行けない……」

「ハアハアハア、エマさんもお嫁さんに行きたかったんだ!」

「ハアハアハア、久しぶりのお姉様の身体、ご馳走様でした♡」

「私も便乗しちゃった♡」


 クレアまで! くすぐりは弱いからやめて!


「何じゃこりゃ?」


 少し離れた所のカプセルの影から、マキが眉をしかめながらこちらを見ていた。


 マキの視線に合わせて全員下を向くと、布団が汗だくで滅茶苦茶になっていた。

 しかも巻き添えを食らったノアは目を回している。


「あちゃーこりゃダメだ!」


 ということで一人用を使う事になった。

 ま、適度に緊張感が解れたからいいか!



 準備が済んだところで例の苦い液体を受け取りシャリーと一緒に一気に飲み干す。


「「うげーー」」


 シャーリーにも苦く感じたらしく自分の味覚が正常だったと安堵する、と同時にルークの変態性を再確認できた。


「シャーリー、もしもの場合の待ち合わせ場所は覚えてる?」

「探索部Bエリアドリー支部!」


 転送用カプセルを横づけし、その中で座っているシャーリーが頷きながら親指立ててグーをしてみせる。


「そう、首都にあるやつ」


 再度頷く。


「ノア、貴方の判断に任せる。いざとなったら強制切断(起こ)して」

「……りょうか〜い」


 円形の部屋の中央にいる操作台から声が返ってきた。


「マキ、みんなは任せた!」

「おう!」


 脇にいるランの直ぐ後ろで胸を叩いて答えた。


「ラン」

「はい! 戻るまでここから離れません!」


 カプセルの隣に椅子を用意し、両手で私の手を握りながら返事をした。

 二人の後ろにいるクレアとは目を見てお互いに頷きあう。


 みんな後は任せた。

 さ〜て行くかね。無事に帰って来れることを祈って……


 横になるとカプセルの蓋が音もなく閉じる。そのまま目を閉じると意識が途切れた。



 ・・・・・・・



 ……ごめんなさい……


 ん? 誰?



 目を開ける。見慣れた天井。

 目だけを動かして周りを確認する。いつもの「我が家」の寝室。

 潮の香りもしている。どうやら無事来れたようだ。


 気負いしすぎだったかな?

 ところで今の声は誰? いや気のせい?


 手足を動かしてみる。問題なさそう。

 起き上がり周りを見渡す。いつもと変わりない。

 当然だが人の気配はしない。


 ベットから降りて鏡の前に立ち全身を映す。

 何故だか下着姿。それ以外は変わりなさそう。

 あれから随分時間が経っているが「メンテナンス」はされているようだ。

 バイオロイドや自宅のメンテナンスはドリーにある星系AIの役割り。


 つまり星系AIは()()()()()ということ。



 

 格子状の木製雨戸から差し込む光以外に光源が無い中、クローゼットから洋服を取り出して着る。

 外を確認するため、薄暗い室内をゆっくりと窓に向かう。

 僅かな明かりを頼りにガラス窓を開け、少し固めに閉じてある雨戸をゆっくりと開けると……そこにはいつもと変わらない、どこまでも続く海がキラキラと眩しく輝いており、水平線辺りにはのんびりとヨットまでが浮かんでいた。


「……え?」


 普段と変わらぬ風景に思考が止まる。

 その間にも海から心地よい風が頬を撫で髪が靡く。


(……アル、聞こえる?)

(はいよ〜)

(ここはどこ?)

(ん〜? こことは?)

(私が今いる場所)

(ドリーだよね?)

(通信誤差は?)

(無いね〜。以前と変わらないけど〜)

(……貴方、本当にアル?)

(…………そうよ。()()()()()よ。()()()())

(…………シャーリーは無事来れた?)

(来てるよ〜。住居の位置は……プライベートには干渉しない〜。お互いに秘密だったよね〜)


 アルテミスで間違いは無さそうだ。


(ノア達に「無事に着いた。これから行動を開始します」と伝えて)

(りょうかい〜)


 ()()()()()()に戸惑うがやる事は変わらない。


 さて先ずは現状確認からだ。

 電脳内モニターを呼び出す……が現れない。

 ヨットを注視する……が注釈もアイコンも現れない。

 ここで、星系AIに繋がらない事に気がつく。

 理由は分からないが反応がない。


 ()()()()()()とはいえ、今まで出来ていたことが出来なくて少し動揺するが、アルテミスとリンクが取れているのを思い出し平常心を取り戻す。

 多分、アルテミス&基地AIと星系AIとの連携が取れていないせいだ、と思いたい。


 ここで疑問が湧く。

 私はバイオロイド(分身体)とリンクが出来た。

 なのに班長達は何故バイオロイドを動かす事が出来ないの? と。


 単に艦AIのバックアップがないから?

 いやいや、艦AIが必須条件なら元々操ることなんて不可能な筈。


 どういう事? まさかサラが嘘をついているとも思えない。

 もしくはこちらにいる班長達の身体に何かしらの支障が生じて動けなくなっているか。

 あとで班長達の所在を突き止めて確かめてみるか……


 この時点で星系AIが使えないのはかなり辛い。

 ここからは自らの足で情報を集めるしかない。


 先ずは玄関に向かう。

 外に出るがいつもと変わらない風景。

 今は太陽の昇り具合から見て正午をゆうに過ぎている。

 あと数時間で夕方になるだろう。


 空を見上げる。

 普段なら遥か上空に淡くだが「基地」が見える筈。

 この時間なら……向こうの方角……


「あ!」



 見えた! あった! あるよ基地が!


 ど、どーゆーこと⁇



 いつもと変わらない姿で空に浮かんでいた。


(アル! 今見ている映像、ノア達に送れる?)

(ん〜正直言って無理かな〜)

(どうして⁈)

(今はダメ)

(…………分かった)

(もう少しだけ我慢して下さい。マスター)

(…………)


 アルが益々壊れてきた気がする……


 いや、壊れると言うよりも人格設定が変わりすぎる。

 安定していない、そんな感じだ。


 玄関を離れて車庫へと向かう。

 とりあえず街の様子を見に行こう。

 前回と同じエアバイクに跨り、電源を入れてみた。

 生体認証によりロックが解除。ペラが回り車体が浮くが、今まで感じたことのない挙動に見舞われる。両足はまだ地面に付けたままなので転倒の恐れはないが……


 目的地は首都にある星系庁舎に設定し自動走行をオンにするが何故だか一向に進まない。

 さらに電脳内でマップを開こうするが出てこない。


 困った。

 この状態は星系AIとアルテミスとの間にリンクが成立していないのが原因。

 繋がっていないのだから、こちらの機器に干渉出来ないのだと。


 これ以降は自分で何とかしなくてはならない。

 支部の場所は頭に入っていないが、星系庁舎までの道は何となくだが覚えている。

 アルテミスが使えない今は自力で乗り越えるしか無い。

 だが道も、サポートの無い運転も自信が無い。


 手動でも行ける、私なら! 多分……


「えーーい! 行っちゃえーー!」


 一度も使った事がない手動モードに切り替えてアクセルを回す。



 ズズズズズーーーー



 アクセルの開け具合が分からず転倒。車体から投げ出されてしまった。


 痛てて〜〜


 まだ自宅前の芝生の上だったから怪我をせずに済んだ。

 ヨロヨロと立ち上がり服の汚れを払ってからエアバイクに跨り、もう一度電源を入れ手動に変更。


「今度はゆっくりと……」


 アクセルを回すと前後のペラが傾き後方に風を送り始める。さらに回すと小さな子供が歩くくらいのスピードで前に進み始めた。


「いやっほーー」


 港町に続く長く緩やかな下り坂を徐々にスピードを上げて行く。

 とは言ってもまだ軽いジョギングくらいのスピードだ。

 それでも「動かしている」という実感が伝わり少し嬉しくなった。


「よし! 今度はブレーキ!」


 減速はアクセルノブを戻すだけだ。

 さっきの転倒の教訓からゆっくりノブを戻す。

 するとかなり時間が掛かったが衝撃も無く止まれた。


「だいたい分かった! 後は慣れだね!」




 港町に着く頃には完璧に乗りこなしていた。体の擦り傷も増えていたが。

 今ならハングオンまで出来そうな気がする。

 ここに着くまでだいぶ時間が掛かってしまった。

 空を見上げると色が暗闇に変わり始めていた。


 ここまでは一本道だったけど、この港町を過ぎた先は幾つかの分岐もある。

 夜道をエアバイクで走った事はないし、今はマップも自動運転も使えない。

 でもここからの道はしっかりと整備されていて灯りもある。

 分岐も覚えている。多分……


 まあ何とかなるさ! 自分の勘を信じよう!



 港町に入ると人っ子一人いなかった。

 元々ここは数百人程度の小さな港町で、皆朝早く起き夕方にはもう寝始める人が殆ど。確認のために一件ずつ戸を叩いて迷惑を掛ける訳にもいかない。

 それは最後の手段に取っておく。

 周囲の家の窓からは灯りが漏れているので人はいるのが救いか。


 これは首都まで行かないとダメっぽい。

 手ぶらでは帰りたくはないし……

 来れることは分かったし、無理しないで今日はここで引き上げていいかも。

 次回は時間調整して朝方に来るようにしよう。

 うん、帰ろう! アルの調子もおかしいし。


 ところでシャーリーは今どこにいるのかな……


(アル?)

(……もうちょい待って)

(シャーリーに連絡「無理しないで早めに帰還せよ」と)

(シャーリーはいいけどエマはダメ〜)

(何故?)

(ダメだから)


 こんにゃろーー!


(アル、約束覚えてる?)

(モチのロン)

(何故私は帰っちゃダメなの?)

(ここまで来れたエマにはある所に行って欲しいんだな)

(……どこよ?)

(この先だよ〜)


 見えている道に矢印アイコンが立ち、行き先を示す。

 そちらは確か海沿いの道で行き止まり、というか誰も住んで居なかった気がする。


(そっちに何があるの?)

(ん? 行けば分かるよ)

(……分かった)



 ……ごめんなさい……



 ? 最後だけ声色が変わった?


 どこかで聞いたような声……


 もう訳わからんよ……



 港町を出発してから約三十分。

 見通しの良い一本道をそこそこの速度で走り抜ける。

 既に周りは真っ暗で港町を離れてから人工の灯りは一つもない、エアバイクのライトと空の星の明かりの中での走行。

 まあ探索者()はこの手の状況には慣れている。満天の空だし潮風も心地良い。なので気分はそこまで悪く無かった。


 遂に道が無くなりエアバイクを止めた。

 前方には辺り一面、膝くらいまである雑草が生い茂っている様子がライトの明かりで映し出されている。

 この長さだとエアバイクのペラが草を巻き込んでまともに走れない。

 にも拘らず見えているアイコンはこのまま直進しろと訴えていた。


(アル、まだ先?)

(…………)


 はぁ〜〜ダンマリかい。仕方ない、歩くか……


 真っ暗な中、少しでも明かりが欲しいのでエアバイクのライトで照らしておく。

 だが歩き始めて暫くするとライトの明かりは届かなくなる。

 振り向けば光源の位置は何とか分かった。


 よし、帰りはあの光を目標にしよう!


 暗闇に目が慣れたからか周りは何とか見えるが草が足に絡み付いてかなり歩きづらい。

 岩や石ころが無さそうなので転ぶ心配は無さそうだが……


「はぁはぁ……」


 もうかれこれ二十分は歩いている。感覚的には1kmくらい?

 前方に目を凝らすとこの少し先はこじんまりとした岬になっているようで、先程から岬の先端辺りにボンヤリとだが明かりが見えていた。


 と、ここで今まで出ていたアイコンが突然消える。


 いったいこの先に何があるのだろう……


次話が一つ目の前の「山場」となります。

次回は10/25(金)の予定です。

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