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未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
運命の出会い・・
38/215

第三十八話 バージョンアップ? 目覚め!

またまた早く上がりました!

予定していた方は次回か次々回に変更します。


*2023/8/11 大規模修正を行いました

 


 翌日は休日とし、朝食と夕食以外は自由行動とした。


 ただ休みにしても私の中ではやりたいことが順番待ちをしているので遊んでいる暇はない。優先度の高いものから片付けよう。



 先ずは昨日救出したラーナだが、彼女も半ば強制冬眠状態にさせられていたお陰で消耗は最低限で済んでいた。

 それにより長くとも三日程の休養で社会復帰出来るとのことで、今はシャーリーの時と同様、治療液が入っていないカプセルの中で栄養たっぷりの点滴治療を受けている。

 朝一で経過を確かめたが、やはり基礎体力値が段違いだからか、並の探索者の三倍の速さで回復していた。危険域はとっくに脱していたのでもう放置でよいだろう。



 皆と朝食を取った後一度解散。

 午前中は昨日ノアに依頼していた「装備品」の受け渡しをする約束なので改めてノアとクレアと合流する。

 クレアの武器だが本人の希望は昨夜の内にノアに伝えてさせ作らせてあるので、後は確認して受け取るだけ。


 装備品試作室に行くと既に二人が待っていた。

 早速工作を開始する。今回も前回同様に構想は予め固まっていたので直ぐに完成する。


 完成した銃は私達と同じ形状をしていた。

 基本的な弾の種類も同じ。唯一違ったのは例のフロントサイトの形状変化だ。


「「ポチッと」な」

「「お〜〜〜〜」」


 クレアなら「サーベル系」かなと、勝手なイメージを抱いていたがそっちにしたのか……まあこれはこれで彼女らしい。


「……この逸品は探索艦本体の素材から作ってある、ぜ」


 艦の? でも白いよ? まあ色はなんとでもなるか。


「ねえノア? クレアの場合「ポチッと」は言わない方が良くない? 相手に居場所バレちゃうし、ボタンを押すことで予備動作にならない?」

「……そこは抜かり無いの、だ〜。後で分かる、ぞよ〜」



 部屋を移動。

 次はクレアの頭の中にあるナノマイクロチップの改造を行う。

 まず改造と言っても我々探索者のチップは一般人のそれとは異なり「特別製」らしく、サイズも小さく性能は高性能とのこと。

 これは探索艦との「リンク」が前提となっているからとのこと。

 ノアに趣旨を説明したところ「……なら可能かどうか、エマので調べてみようか、ね」と「私の」チップを構造解析をして貰ったところ「……フッ、チョロい、ぜ」と()()()()()()()()()()()探索艦の艦AIとは異なり基地の設備でも扱える代物だと判明。


 一度脳内からチップの「中身」だけを転送で取り出し魔改造を施してから脳内のチップの中へと戻す。

 この行為を行うにあたり、取り出したり改造することにより、チップが使えなくなる恐れもあった。

 まあ元々使われていなかった訳だし、壊れたとしても現状には戻せると言われたので、ダメ元で実験してみることにした。


 結果は……当然ならが成功。

 先生の腕は相変わらず素晴らしい。


 これで「ベース」は完成した。


 改造の初期目的だったクレアと「脳内通話」が出来る様になった。

 いや、脳内通話と言っても普通の通話ではない。我々探索者が艦AIを通してやっている「リンク」のことだ。

 クレアの場合、基地にいる場合は基地AIを、艦にいる場合には探索艦を通して艦AIのシステムの一部を利用出来るようにした。

 さらに情報部での「少尉」という階級も有効に活用出来るように、ある工夫を施した。機会があれば共に悪事に手を染めてもらおう。


 ただチップの改造に関してはどこまでが許されるのか、いや黙認されるのか探索部内での基準がないので公には出来ない。

 なので今のところ通話相手は改造に携わった私とノアの二名だけに限定している。

 まあその内、なし崩し的に解禁となる気がするが……


 それとこれはノアの提案で、艦が無いクレアに役割りを与える目的で、私達のチップとは異なる設定を追加した。彼女がコレを使いこなせればかなりの()()になる。


 探索者になれなかった理由は分からないけど、元々「素質」があったからこそ候補生になれたのだ。

 今後はそっちの分野でも大活躍して貰おう……


 フフフ、ハハハ……これであと十年は戦える!


 とは言え「新たなる役割」はミアがいないと「完全」とは言えない。ノアと言えども()()()()()()()()()ミアの足元にも及ばない。

 なので今回のチップ改造計画はまだ道半ば。()()()()はミアが戻ってきてからの話。


 え? 勿論、本人は了承済み。決して無理強いはしていませんよ?


「……さて、さっきの疑問に答える、か。クレア、ガンを出して、ちょ」


 クレアが腰から銃を取る。


「……心の中で「ポチッと」な、と」

「…………」


 持っていたガンのフロントサイトが変化した。


「「お〜〜」」

「……はい完成、だぞ」


「…………」

「……エマのは幾らやっても無理、だよ」

「ちっ」


 私のも出来ないか試してみたけど出来なかった。私には「お約束」を強要するのね……


 この時点でクレアには探索部も兼任して貰うこととした。つまり両方からお給料が貰える事になる。

 正式にはサラの了解と各本部への交渉が必要になるが、アルテミス曰く、この程度のことはエマが「お願い」すればすんなり通るレベルらしい。

 まあ抜かりないサラのことだ。その辺は既に考えているかもしれない。


 予定では「適合者補助手当て」という名称になるとのことだったので、事前に「適合者」の部分だけは強制的に変えさせた。



 次に基地の防衛兵器だが、今回は逃げられたようなので手の内がバレた可能性が非常に高い。

 バレたからといって回避出来るものでは無いが、サラも危惧していた様に、囮などの対策を立てられ長期戦にでも持っていかれると、こちらはジリ貧だ。


 自動追尾()にでも出来れば……


 一番嫌なのは()()をされること。

 あんなの食らったら基地も艦も一瞬でお陀仏。

 真似をされなくても、敵の気が変わって物量で迫られ消耗戦にでもなったらこれまたジリ貧だ。

 技術力が同じなら結局は物量しだい。量には量で対抗するしかない。

 ただ今回、防衛機能は証明出来たので取り敢えずは一安心といったところか。

 さらに追加の資材が手に入った。ノアには新兵器を開発してもらい、防衛機能に厚みを持たせよう。


 それでも太刀打ちできない時は、多分私が目標だろうからここから立ち去れば(逃げれば)基地や仲間は逃れられると思う。

 ていうか、本当に何しに来てるんだろう。訳が分からないから過剰防衛とも言える行為で対抗するしかない。



 ──話が出来れば敵対しなくても済みそうな気がするけど……



 やはりもっと仲間(人手)が欲しい。

 一緒に立ち向かってくれる仲間が……いや、仲間はいる。ただ自分で考え、行動に移せる人物がいない。

 勿論私も含まれる。

 ただ仲間は欲しいが探索者に限られる。ドリーの隠れ家の近所のおっちゃんを仲間にしても意味は無い。



 ──仲間か……



 所属部員が一番多いのがAエリア。次いで我がBでC・Dにいくにつれ探索者数が減っていく。

 数が一律でないのは設立からまだ日が浅いから。

 今度Aエリアに行って協力を願い出てみるか。Dは運用開始から日も浅く、そして行方不明者捜索で忙しいだろうから、サラと遊びに行くだけにしとこう。


 探索部本部がある地球には行きたくない。

 あそこには全ての部署の本部があるから。



 ──せめてブレーンとなる人物がいれば……




 それとカルミアからの情報引き出しは不可能になった。なんとカルミアが「続きはラーナに聞け」と拒否したのだ。

 昨日再会した時の様子がおかしかったことから、アルテミスあたりから横ヤリが入ったのだろう。

 AIは人と違い無理やり口を割らせることは出来ない。下手をしたら機密保護プログラムが発動、自己崩壊を起こしかねない。

 エリアマスター権限を行使しても無理なのだからここは諦めるしかない。

 ただカルミアはラーナやローナが事情を知っていそうな口ぶりだった。

 この二人なら……特にラーナは期待出来る。


 仲間の捜索もそうだけど、私が「贄」にならないで済み、更に「消失」が起きなくなる方法があれば……丸く収まる。

 ラーナはその方法を知っている、と期待するしかない。



 全員、職員食堂に集まって昼食を取りながら作戦会議中。

 最近ここで食事を兼ねた打ち合わせすることが多い。


 クレア関連が午後は分身体との接続実験。こちらはサラ公認なので大っぴらに実験できる。

 接続実験は、簡単に言えばドリーにある分身体であるバイオロイドに接続できるかどうか、さらに操れるかの実験だ。もし繋がれば、ドリーの位置が特定できるかもしれない。

 その際「消失」の仕組みが分かれば御の字だ。


 ただし場合によってはこちらとは比較にならないほどの悲惨な状況かもしれない。

 向こうで見聞きすることはダイレクトに自分の脳に伝わり精神的ダメージとして脳に蓄積される。

 通常時なら考えられないが、機器の状態によっては()()()()()()()()()()もありえる。

 まあドリーが遠方にあるなら繋がらない。その時は諦めるしかない。


 趣旨の説明を終えたところで一つ問題が起きた。


 誰を行かせるか? で。


 私は発案者だし、誰も巻き込みたくは無かったので一人で行くと立候補したが、単独ではダメと全員に反対された。


 では誰が一緒に行く?


 機器の操作はノアが適任、と言うか不測の事態に即応可能な人物はノアしかいない。なので除外せざるを得ない。

 それともう一人。分身体が無いクレアは除外。基地にて待機とした。


 残るは三人。

 率先して立候補したねはシャーリーのみでマキとランの二人は俯いてしまう。


 人数が多ければ多い程、得られるモノは多くなる。だがリスクを抱えた作戦だと分かっているので無理強いは出来ない。

 強制しても「絶対に」良い結果には繋がらない。


()()()二人だけで行きます」


 全員を見渡しキッパリと宣言した。


「お、お姉様が……行くなら私も……」


 恐る恐る手を上げる。

 もう一人はかなり迷っているようで落ち着きが無い。


「ランとマキはここで待機。これは命令です」


 手を上げているランはそのまま固まる。

 マキも俯いたまま動かなくなる。

 なんか二人を叱っているみたいで居た堪れなくなってくる。


「マキ、私達が向こうに行っている間は貴方がリーダーね。貴方が基地(ホーム)と仲間を守って」


 自分としては二人の判断は尊重するし、含むところも無い。

 ただマキなら「オモロそうやん!」とか言って率先して参加するかと思っていたがいつになく弱気な反応で若干戸惑っていた。

 まあマキもここらで疲れが出てもおかしくない。マリの安否も分からないし休ませるには丁度いいタイミングといえる。それはランにも当て嵌まると思うので、二人に基地を任せる「逃げ道」を与えた。


「ラン、そばで私達を見守っていてね」


 笑顔で言うとランの目から涙が溢れてくる。


「ゴメンなさい……私……怖くて」


 本音だろう。だって私も同じ気持ちだから。

 ただ私は立ち止まれない。

 だから先に進む。


「……大丈夫だ、ぞ? 行っている間、私がずっとエマの手を握ってる、から。ランは自室待機してれ、ば?」


 ノアが上から目線でランを見て言い放つ。


「……それは……私の役目‼︎」


 涙目でノアを睨みつける。


「……なら任せた、ぜ」


 素知らぬ顔でお茶を飲んだ。


「な、ならウチはシャーリー……」

「気持ち悪いからやめてって!」


 真面目に引いている。

 親友の反応に口を開けて白くなっていた。


「私はエマさんに添い寝して貰って向こうに行くの!」


 へ? 出来るの? 確か一人用しか無かったような……

 ノアを見ると親指立ててグーをしていた。



 ──あるんだ……



 ま、いいか。それくらいのご褒美は。


 これでメンバーは決まった、と思った矢先に「皆さん、ラーナが目覚めました」とアルテミスからの報告が。

 全員一斉にお互いを見回す。

 予定よりかなり早い気がすると。


「分かった。今行く」


 席から立ち上がる。


「みんなはここで待ってて。後で呼ぶから」


 若干強めの口調で静止する。

 すると全員が私を見て無言で腰を落とす。

 何故か皆、ホッとしていた。


 静止した理由。

 それはラーナは色々と知っている可能性が高いから。

 同席させてたことにより皆を巻き込む訳にはいかないから。



 医務室へと移動をする。

 部屋には誰もいなかった。


 奥まで行くとラーナが入っているカプセルの蓋が開いていた。

 カプセル脇まで行くと病衣を着て横になって点滴を受けているラーナが寝ていた。

 出来るだけ足音を立てずに近づき、脇に置いてある椅子に腰掛けてから声を掛ける。


「ラーたん……」


 すると目がゆっくりと開かれる。


 因みに今更だが「ラーたん」とはエマがラーナを呼ぶときの愛称。


「その声は……エマちゃんね」


 相変わらずの透き通った綺麗な声だ。


「そうよ。ここは基地(ホーム)よ」

「そう……戻ってこれたのね……」


 言い終えると同時に周りの空間に花が咲き始めた。

 これはカルミアの仕業だ。

 ラーナの精神を少しでも落ち着かせようという心遣いだ。


「ありがとう。カルミア」

「いえ、どういたしまして」


 そこでラーナは一旦目を閉じる。


「ラーたん、気分はどお?」

「今は……心の底からから〜とっても穏やかで〜す」

「そう、良かった……」


 会話もそうだがラーナの笑顔を見れて、私も心の底から安堵した。


「それで〜その後は〜どうなったの〜?」


 再び目を開き首だけこちらへ向け、優しい笑顔で私に聞いてきた。

 この笑顔と話し方。()()()()()()()()()()()()()



基地(ホーム)に戻れたのはラーたんで二人目。もう一人はシャーリー」

「そう……あれから〜どれくらい経ったのかしら〜ね〜?」

「また十日くらい?」

「そう……こんなに〜長く休んだのは〜何年ぶりかしらね〜」

「私が来てからは無いんじゃない?」

「そうね〜エマちゃんは〜とっても頑張り屋さん〜だもんね〜」


 ……いや私じゃなくてお前の話だろう。

 困った笑みで返した。


 ラーナはここに来てからの私の全て知っている。勿論、趣味のことも。

 仕事を其方退(そっちの)けで帰りが遅くなったりしていることも。

 なので「頑張り屋」などと言われると少し情けなくなる。

 しかも今までラーナには叱られたことが一度もない。

 いつも温かい目で接してくれていた。



 ただしそれは、()()()()()()()の場合に限るが……



「主任は〜? ……サラちゃんは〜?」

「今はいないの。「消失」に巻き込まれて重傷だったけど、治ったら何処かに出掛けちゃった」

「サラちゃんらしいわね〜。それで〜……貴方一人ということは〜何か秘密の話があるのかな〜?」


 流石はラーナ。


「うん。私どうやら……「覚醒」したらしいの」


 言葉を選んで説明を始める。選んだのはラーナを信用していないから、ではない。寧ろ逆。

 そのラーナに驚いた様子は見られない。


「そう……出来れば私達が代わってあげたかったけど〜……私達姉妹には〜()()がないの〜」

「資格?」

「……そうね〜。このことは〜姉さん……から〜話して貰った方が〜いいのかも……かもかも?」

「ローナはまだ見つかってないの」

「姉さんなら〜大丈夫よ〜必ず自力で帰ってくるから〜それまでは私がついててあげる〜から安心してね〜」

「うん、ありがとう。ラーたん」

「どういたしまして〜」


 全くこの人は……私の心配ばかりして。

 こんな時くらい自分の心配をしなさいな。


「ちょっと疲れたから寝るね〜」

「分かった。ゆっくり休んでて」

「ありがと〜エマちゃん〜愛してる〜♡」

「はいはい、お休み。ラーたん」


 最後の言葉はスルーした。


 カプセルの蓋が閉じると同時に咲き誇っていた花も一瞬で消えた。

 ラーナが寝たのを見届けてから医務室を後にし、皆の所へと戻った。


次回は10/23(水)の予定です。

22日も仕事なので・・

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