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未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
情報部の介入
36/215

第三十六話 怪しい艦3

最近、誤字・脱字が多く、ただでさえ読みづらい文章に拍車をかけている始末。

ご迷惑をお掛けしています。


*2029/7/8 大規模修正を行いました

 

「この人は確か……」

「む?」

「ラーたん!」


 真っ先に突入したクレアを押し除けノアが近づき容態を確かめる。

 自分もノアの脇から近づき顔を確認。


 黒い宇宙服。綺麗に揃えられた長い赤毛。猫形ヘアピン。極め付けは表情以外はローナそっくりの顔。

 さらに実際に見るのは初めてだが、モニターを通して何度も見てきた白いフカフカフットマン付きのリクライニングソファーと白い小さなテーブル。

 これだけの証拠が揃えば間違いようがない。

 Bエリア最古参ペアの妹のラーナだ。


「ノアどお?」

「…………シャーリーと同じだと思う、な。少しは衰弱してるようだけど、帰って治療すれば直ぐに良くなるよ、たぶん」


「この人があのローナさんの妹……」


 クレアが真剣な眼差しで二人の後方からラーナを見ていたが、ラーナに集中していた二人はクレアの微妙な変化に気付かない。


 あれからそこそこの日数が過ぎたが、ノアの言う通り血色も悪くないし呼吸も落ち着いているように見える。

 多分()()()()()()()()()だろう。


 あ、そうだ! もしかしたら……


「は〜い! カルミア!」


 ラーナの艦AIの名を呼ぶ。


「……やあ、エマ。お元気でしたか?」


 透き通った聖母のような温かみのある女性の声。

 聞き慣れた声がコックピットに響き渡る。


 良かった、作動している。

 これならラーナの状態の良さにも納得がいく。


「お陰様で元気一杯。ところで何が起きたのか教えてくれる?」

「構いませんがその前に、アルテミスとアシ2号に私への「攻撃」を止めるように伝えて下さい」


 お? そうか!


「あ〜二人とも中止。()()()()()()

「了解」「了解デス」

「ごめんね、貴方達だとは知らなくてね。てっきりアイツらかと思ってね」

「あいつら……フフフ、そうでしたか。エマなら許します。……あら、貴方だいぶ変わりましたね? 色々と」

「そうなのよ、もー大変! みんなが行方不明になってから何度泣いたことか! 苦労の連続だったわ!」

「それはご迷惑をお掛けしました。まさかあのタイミングを狙っていたとは……ローナも予想していませんでしたね」


「あの時…………みんなを連れ去った犯人は?」


「……実際に動いたのはロイズです。他にも()()()がいるようですね」


 あいつか……マジギロチン確定!


「でもどうやってみんなを連れ去ったの?」

「長い年月を掛けて基地AIに判別不能なウイルスを紛れこましていたようです。貴方の()()を条件に作動するようプログラムが組まれていたようですね」

「……覚醒」

「はい。待機していた艦は僅かの間ですが基地AI経由で全てのコントロールを奪われ、仕組んだロイズ共々強制跳躍を強いられました」

「…………」


 ロイズも? さては逃げたな。


「ただミアが予め対策を講じてくれていたお蔭でラーナを見守れました。推測ですが他の艦も状況は同じではないかと」


 てことは「ピコピコ信号」を仕込んだのはミアかも。その時に……


「……そう。みんながいなくなった後に基地では「消失」が起きて基地(メイン)AIはオシャカ。ほぼ総入れ替えになった。だからハッキングの件は……今後は大丈夫だと思う。特にメインAIに関しては」

基地(ホーム)で「消失」が……そうですか……()()は多分メインAIを狙ったのでしょう」

「メインAIを破壊したのは証拠隠滅のため? 彼女? 他の賛同者って誰?」


「それは…………了解。申し訳ないのですが、今はお答えできません」


 ん? 了解? 何?


「何で応えられないの? 私の知っている奴?」

「エマ、お願いがあります」

「何?」

「ラーナを可能な限り素早く帰還し基地(ホーム)で治療を受けさせて下さい」


 ハッとして振り向くと、ラーナを抱いたノアと目が合う。

 脇ではクレアも二人に寄り添う形でこちらを見つめていた。



 ──しまった。また周りを見ずに突っ走ってしまった……



「ごめん、とにかく帰ろう」


 二人とも頷く。


「カルミア、貴方自力で動ける?」

「大丈夫です。体に戻して頂ければ」

「ノアいい?」

「……アシや、戻してやってくれ、な」

「了解デス」

「ラーたんは私が預かるね」


 まず四人は脱出艦のコックピットからアル艦のコックピットへ移動。その間に合体艦は放置艦(カルミア)まで移動する。

 移動を終えると合体艦から脱出艦が水面に泡が出てくる形で現れるとカルミアに「ぶにゅっと」押し込んでいく。

 そのまま融合し姿が見分けがつかなくなったところでカルミアが一瞬光った。

 これでカルミアは自艦の掌握が完了した。


「ありがとうございます」

「カルミア、悪いけどラーたんはこっちで運ぶ。貴方はアシ2号と共に基地(ホーム)へ帰投。帰ったら真っ先に「検閲」を受けてね。これは()()。いいわね?」

「もちろんです、マスター」

「クレア、ルーシーに私がいいと言うまで暫くこちらの惑星には立入禁止と通告しておいて。理由は……」

「OK。適当に言っておくね」

「ありがと」


 ラーナをお姫様抱っこをしながら、矢継ぎ早に指示を出す。


「ノア、カルミアと随行してくれる?」

「……了解、だぞ」


 頷くと自艦へと戻って行った。



 掌握が完了したってことは分離は無理やり()()()のではなかった?

 ロイズは「ウイルスを使った」と言っていたが、()()()()()それに気付けないほどの高度な能力を持っているのか?

 ……そうは見えない。


<ほかにも賛同者が>


 そいつが黒幕?

 ラーナもそいつによってこんな状態に?

 探索艦を分離させる命令を出せるなんてエリアマスターでも無理かも。もし可能なら我々ではどう足掻こうが太刀打ちできない。


<レベル5>


 あの時のサラの反応。


<まだ早い>


 まだ? まだとは?


 抱えているラーナを見ると、気持ちよさそうに寝ていた。

 こんな間近で顔を見るのは久しぶりかもしれない。

 年上なのに肌艶も私なんかよりよっぽど綺麗で、初めて会った頃から全く変わっていない。



 このラーナは私達姉妹にとって「初めて出会った探索者」となる。

 あの頃はまだBエリアが新設されてから日も浅く、Aエリアとなる「ゼロエリア」からBエリアへと移籍してきたラーナに私達姉妹は基地(ホーム)へと連れてこられた。

 Bエリア運用開始直後はローナ&ラーナペアと私達姉妹しか居らず、右も左も分からない私達姉妹に、公私を問わず一から十まで付きっ切りで教えてくれた。

 その後「Aエリア」から移籍してきたルイス&ルークペアは面倒見が悪く恩義とは無縁な存在でイライラさせられた。

 その三年後にマリマキ姉妹とシェリーシャーリー姉妹が来るまでは三組だけでBエリアをなんとか支えてきた。

 その頃の探索は今みたいに一回につき1〜2箇所ではなく、6〜8箇所行くのが当たり前だった。

 命令無視して(サボって)サラに怒られた時も、ローナに子供扱いされしょげてた時も、ルークと喧嘩した時も、私達姉妹を支えてくれた面倒見の良い先輩。

 外見は頼りなさそうに見えるし、一部の者には苦手意識を持たれているが、私は全幅の信頼を寄せている。


 仲間が増えてからは後輩の指導は私達姉妹に引き継がれたので、昔に比べれば影に埋もれた感があるが、私達にとっては今でもローナと同じくらいに頼もしい存在。


 それに比べてルイス&ルークは後輩の面倒は一切見ないし、サラの命令でも「あいつらは俺の好みじゃねえ」とか言って直ぐ逃げる。

 だからあいつらは後輩からは人気が無い。

 全く学生共もそうだが、ウチのエリアの男どもは変な奴ばかり。だから私達姉妹がしっかりしないと纏まらない。


 コックピット脇の空間に用意した簡易カプセルにラーナを横たえる。

 それからラーナの髪を手で優しく整えてあげてからカプセルの蓋を閉じる。

 コックピットに戻り、待っていてくれたクレアと笑顔を交わして定位置へと戻る。



 ラーナが見つかったのはエマ的にはかなりプラスの方向に向かう筈だ。

 なにせここまではエマにとっては頼れる相手が不在で、唯一のサラも何処かに行ってしまった。

 まだ睡眠状態とはいえ、そこに居るだけで安らぎを与えてくれる存在。



 定位置に戻り前を見据えた。


「さあ、基地(ホーム)に帰るぞ!」


 ノアも嬉しそうに無言で頷いた。


 跳躍が終わり、基地から約一光秒の距離に戻って来た。

 すると突然アルテミスが、

「基地から三光秒の距離に何かの残骸らしき物があります」

 と報告してきた。

 モニターが現れその「何かの残骸」が映し出される。


 白色というか銀色というか、どこかで見た事がある色。

 金属を無理やりめちゃくちゃに引きちぎったような物体が多数、キラキラと光を反射させて漂っているのが映しだされていた。


「何? あれ」


 脇から覗き込んでいたクレアが聞いてくる。


「分からない。何だろう……」


 何処かで見たきがするが……


『……どうやら基地の自動防衛機構がやっと作動したようだ、な』

「と、いう事は正体不明艦?」

『……多分。所属識別信号を出さん奴が基地から三光秒以内に近づいたら、無差別・無警告・無慈悲に潰すよう設定しといた、からね』

「お〜怖!」

「でも、奴だとしたら少し残骸の量が少ない様な……」

『……取り逃した、かもな。後で記録でも見るか、ね』

「あれも回収しとく? 手掛かりが残ってるかも」

『……そうだ、な。私が回収しとく?』

「お願い。私はマキに聞いてみる」

『……らじゃ〜』


 ニヤケ顔で離脱してゆく。

 でも今回はどうして接近したんだろう……


「マキ聞こえる?」


 返事がない。


「ん? マキ応答して」


 反応がない。まさか……


『……あ、忘れてた、ぞ。自動防衛機構が作動したら「ひきにーとモード」に突入、中から手動で解除しないと外界との接触が出来なくなっている、筈』


 ちょーめんどくさー……


「解除するには?」

『……正規の識別信号さえ出していれば出入りは問題ない、ぞ。社会復帰させるには司令室にあるサラの席に取り付けた黄色いボタンを「ポチッと」押せば解除される、よ』

「ポチッと……ね。分かった。先に行くね」

『……はい、な。間違っても隣にある()()()()()は押しちゃダメ、だぞ?』

「……それは()()()()()じゃないよね?」

『…………押しちゃダメ、だぞ?』

「…………」

『…………』

()()に押さないから安心して」

『……ちぇっ』


 何が「ちぇっ」なんだか……



 ノアの言う通り、無事ドックに入港出来た。

 ラーナをクレアに任せて、司令室に移動する。

 移動の間にマキがどこにいるかを調べたら「ポロ」にいた。

 なんで「ポロ」に? と思い連絡を取ろうとしたが、先に司令室に着いてしまう。

 全ての壁面モニターと班長達が操作するモニターは電源が落とされており真っ暗。それ以外は変わり無し。


 物音一つしない司令室内をサラのシートに向かう。

 見ればノアの言う通り、赤と黄色のアナログなボタンがアームレストに取り付けられあった。



 ──いつの間に……



 ノアにしては珍しく? シートとはミスマッチで手作り感満載な一品。

 このボタンを二回り程大きくしたら、大陸横断クイズ番組でも使えそう。


 十秒程二つのボタンと睨めっこをしたが、意を決して黄色いボタンに指を乗せる。

 だが……押せない。どうしても赤いボタンに目がいってしまう。


「あー全く!」


 押しても「自爆」みたいなことにはならないだろうが、今は遊んでいる時間はない。

 手を戻し、一度大きく深呼吸。



 すーー……はーー



 今度は迷う事なく黄色いボタンを押した!


 だが…………何も変わりがない。暫く待ったが何も起きない。


 もう一回押してみる、が何も起きない。

 やはり「お決まり事」をしないとダメかい?

 いやもしかして……


「ポチッとな」


 今度は劇的な反応が起きた。

 押した途端に司令室内が真っ赤になり「自衛モードが解除されました」とサイレン音とアナウンスが()()()で響き渡る。

 突然の音に驚いたが十秒程で平穏に戻った、と同時に転送装置からマキが飛び出してきた。


「なななな何事やーーーー‼︎」


 どうやら基地全域が同じ状況だったみたい。

 飛び出して来たマキは私を見てフリーズする。両手には「ポロ」の紙袋が二つずつ、計四袋握られていた。

 両肩が下がっているので相当な重さなのだろう。圧縮してあると考えればかなりの数を買い込んだと見るべき。


「ただ……いま」

「お、お、おかえり〜」


 流石お笑い姉妹。面白い態勢で固まったな。


「え〜とマキ……さん?」

「はいー‼︎」


 声が裏返っている。


「有意義に過ごせましたか?」

「はいー‼︎」

「…………」

「…………」


 ちょっと弄りたくなってきた


「あ、そうそう。さっきラーたんを見つけたよ」

「へ、へぇ〜姉御をね〜」


「…………」

「…………」


「外の残骸知ってる?」

「う、ウチは知らへん」


「…………」

「…………」


「ハナちゃん」

「何でっか?」

「あなたの相棒は何をしとってん?」

「も、も、儲かりまっか〜」

「ほほう〜、庇い建するつもりですか……」

「許したってや〜エマはん」

「サラ……じゃなかった。ローナが見つかったら告げ口しちぁおーと」


 マキの顔色が一瞬で青ざめる。


「そそそそれだけは堪忍したってや!」


 袋を投げ捨て私に抱きつきくと涙目になりながら必死に訴えてきた。


「フフフ冗談よ。ゆっくり出来た?」

「ふぇぇ〜堪忍して〜な……」


 脱力しその場に座り込んでしまう。


「そんなにローナが怖い?」

「姉さん全く隙無いやんか! 全て見透かされとるっと言うか、食物連鎖の頂点に君臨しとる風格や! 睨まれたら石化しそうやで!」

「頂点? 石化? まあ否定はしないけど。あの人はあれで結構優しいんだよ?」

「そないなこと言うのはエマだけやで……まだサラの方が取っ付きやすいわ」

「マリもローナが苦手?」


 無言で何度も頷く。これでもかってくらいに。


「みんなローナを誤解してるな〜。ま、いいか。マキ、もう少しでみんな帰ってくると思うからその荷物片付けといで」


「お、おおきに!」


 荷物を拾うと転送装置へ駆け込んで行った。


 さて「ひきにーとモード」は鬱陶しいから取り除かせるとして、ノアとカルミアはドック入りしたかな?


次回は10/19(土)の予定です。

少し早まるかもしれません。

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