最後の一人!
本調子には程遠いですが何とか纏まりました。
*活動記録にてお知らせしましたが、現在体調を崩しておりもう暫くの間、投稿間隔が延びると思います。二週間以上開きそうな場所には活動記録にてお知らせ致します。
3号は「レンジャー部隊」の指揮。
この部隊はさらに三つに分かれる。
「辰班」は「アタッカー部隊」や「ディフェンダー部隊」から寄せられた情報を基に、攻防に使用する攻性ウイルスの改変を行い効率性を高める班。
「戌班」は抜け穴探し。これは自陣に漏れが無いか、敵陣に隙が無いかをチョコチョコと動き回り探る班。
残るは「巳班」だが、彼女ら? は時が来るまではコントローラーを握りしめジッと待機しているだけ。
「ボス〜第一弾の報告書の完成〜、だぞ」
早速「辰班」からこちらの防壁向けに使われている敵ウイルス解析のパターンに関する報告が上がってきた。
卓上モニターにて表示された情報を一瞥、すると「フッ……」と振り返りもせずに呟きを漏らして再び食事を再開してしまう。
「き、厳しい、かも」
どうやらアシ3号にはお気に召さなかったようでシュンとしてしまった。
「コノ程度デハ十点デスネ」
パフェを抱えながら椅子を回転させて、向きを皆の方へ。
「がーーーーん‼︎」
ダメ出しされてしまう。
「コノパターンデハ、解析ヲ折リ込ンダ上デ使ッテイマス。ツマリ相手ハ最低デモ、二手先マデ対策ヲ講ジテイル筈デス」
「ま、マジ〜」
小ミアの顔が青褪める。
そこに戌班からの報告が。
「ボス! 抜け道はっけーーん、かも?」
かなり後方にいた小ミアの一人が手をあげる。
「……ソレハ見エ透イタ罠デ地獄ヘノ一本道デスネ。入ッタラ敵ニ解析サレテ、此方ガジエンド、トナリマスデス」
モニターすら見ずに答えた。
「がーーーーん、だぞ」
頭を抱える小ミア。
「抜ケ穴トハ、思ワヌ所ニアルモノデス。モウ少シ、視野ヲ広ゲテミテ下サイデス」
「ううう……」
「君達ノセイデ、2号ガ苦戦シテイマスデス」
手に持ったパフェをスプーンで掬い上げる、が欲張り過ぎたのかスプーンの先からかなりの量の生クリームが元の場所へ。
その結果、大した量は掬えなかった。
「で、でも……」
「泣キ事ハ聞キタクアリマセンデス。早ク僕ヲワクワクサセレル報告書ヲ提出スルデス」
若干悲哀を感じる表情で、生クリームをペロリ。
「「「……(ゴクリ)……」」」
生唾を飲み込む音と共に皆の視線3号に集まる。
「…………仕事ヲスレバアゲマスデス」
「「「う、ウキィーーーー!」」」
部下に厳しいアシ3号。一斉に暴れ出す小ミア達。
「仕方ナイ。先ズハヤル気ヲ起コサセルトシマスデス」
戌班と巳班の全員の前にキャンディーが一つ現れた。
「ソレデモ舐メテテンションヲアゲマスデス」
「「「……ブーーーー」」」
ブーたれるながらも一斉に飴を咥えると……
「「「おおーーーー!」」」
処理速度が数段早くなり気分が良くなる小ミア達。
だが喜んだのは一瞬で皆の視線はフルーツパフェへと舞い戻る。
その視線に気付き「ン〜? 欲シイノデスカ?」と聞いてみると一斉に頷いた。
「…………ソウダ、コウシマスデス」
「「「?」」」
「第四層ノ防壁ガ破ラレルマデ。ソレマデニ必要ナ金塊ヲ見付ケラレタラゴ馳走シマスガ、ソレ以降ハ僕ガ美味シクイタダイチャイマスデス」
「「「えーーーー」」」
「大体、君達ニハパフェハ食べ切レナイデショウニ。ソレトモウ一ツ言ッテオキマスガ、第五層カラハ巳班モ動キ出シマスデス。コレノ意味ハ勿論分カッテイマスデスヨネ?」
「「「…………」」」
指以外はピタリと止まり急に冷や汗を流し出す時大人しくなった。
「オ互イ、様子見ノ今ガ付ケ入ルチャンスダトハ思イマセンデスカ?」
「「「…………」」」
「言ッテオキマスガ暇ソウニ見エマスガ僕ハ今、超多忙デ君達二カマケテイル時間ガ無インデスヨネ」
「「「…………」」」
何処が? といったジト目を向けてくる。
「ナノデ余分ナリソースヲ君達ノ為ダケ二振レナイノデスヨ」
これ以上、3号に楯突いても仕方ない、と諦めて作業に集中し出した。
・・・・・・
「言った通り行くのは俺達だ。お前らの出番は無い」
有無を言わさぬ顔付きでエマとエリーを交互に見やる。
「ちょ、レイア」「今更気を遣ってどうする?」
「っ…………」
突然の暴露を止めようと慌てて口を開く。それに対し首を軽く左右に振りながら遮られてしまう。
僅かな期間ではあるが、今までのレイアには言動には自分の意志を優先する傾向が多々見られた。それは性格から来るものと思われ、意識してやっている事では無かったと思われる。
なのでこのような場合、何処かで威圧する言葉や雰囲気が出てもおかしくはないのだが、今のレイアの雰囲気はこれまでとは全く異なり、諭すように話している。
エマはその姿を見てローナの姿が脳裏に浮かんだ。
一方のクレアもエマと同様、普段とは明らかに異なる姉を見て、反論出来ずに再度俯いてしまった。
瓜二つな姉妹の神妙なやり取りをエマは口を挟まず黙って見守る。
口を挟まなかったのは、僅かなやり取りとは言え、彼女が言わんとしているのが理解出来てしまったから。
今まさに、クレアが自分の下を離れて行った理由が分かったから。
自分達がやろうとしている行為と一緒だったから。
以前の自分だったなら、先への不安から頭が真っ白になっていただろう。
だが様々な出会いを経験した今では、特に慌てることなくこの状況を鑑みる程、心に余裕があることに気付いた。
──時間か……確かにそうだよね。
前にいる姉妹を交互に見やる。
クレアだけでなく、レイアまでもが同じ思いだったと分かり少しだけ嬉しくなった。
──菜緒は「手が多いに越した事ない」とも言っていた……でもね……こんなノホホーンと風呂に入っている場合では無いのかもね……だって今が人生の最後の「時」になるのかもしれないから。
──だから……後悔はしたくない。
「クレア」
自然と肩に手が伸びる。触れるとクレアの身体が強張ったのが伝わってくる。
「クレア、お願いがあるの」
こちらを見ずに湯面を見つめたまま聞き入っている。
「なら一緒に行こ。私と」
さらに身体が強張ってゆくのが手を通して伝わってくる。
「それなら一緒にいられるよね?」
次第にクレアの体が小刻みに震え始めた。
出来れば……エリーと二人だけで済ませたい。
ただこのままクレアを残して旅立ち、もし……万が一帰れなかった場合、渡った私達は自己満足と割り切れたとしても、残されたクレアはそうはいかず後悔の念に苛まれながら過ごす事になるだろう。
それは椿を見てきたから断言出来る。
なら後悔しない選択肢は……共に旅立つ、の一択しかない。
ここで変わらず湯船の中央で、我関せずとプカプカと浮いていたエリスが何かに反応し突然目を開ける。
その変化にエマ達三人のやり取りを見守っていたラーナがいち早く気付きエリスへとさり気なく意識を向ける。するとラーナの微妙な変化に今度はエリーが気付いた。
顔は妹に向けたままラーナに意識を向けると、彼女の全神経が正面で浮かんでいるエリスへと向けられているのが読み取れたので同じくエリスを見ると、クレア達が来た時と同じ表情で緊張感などは感じられない態度で集中しているのが伝わってきた、が何を考えているかまでは想像が付かなかった。
前回の轍を踏まえ、執事さんをチラ見する。
だが当てが外れたらしく、彼女達には変化が見られなかった。
あれ〜違うの〜? と一瞬戸惑いを覚える。
再度エリスに視線を戻す。当のエリスはたまに目を動かす程度で瞬きもせずに夜空を見上げていた。
ここに来てからも普段と変わらずのマイペース。変わらずの「空気」と化し、自ら積極的に話に加わらないエリス。
だが一度だけ変化があった。
そう、クレア姉妹が来た時だ。
その時は真っ先にエリスが気付き、そして執事さんも気が付いた。
今回も同じパターンかと思ったがどうやら違ったらしい。
エリスの艦が何かを見つけたのかもしれない、と思い空を見上げる。
だが見える範囲の夜空には何の変化も見られなかった。
(ミケちゃん〜?)
星が瞬く夜空を見上げたまま脳内で名を呼ぶ。
エリス艦が察知出来たならミケちゃんも捉えている筈、と思いエリスと同じ手段を取ってみた。
(何かニャ〜?)
直ぐに返答が。
(誰か来た〜?)
もしかしたら「消失現象」が起きたのかもしれないが、それならそれでエリスがこんなに長閑にしている筈はない。
だからクレア達と同じく誰か来たのだろう、とヤマを張る。
ここに来れるのは探索部所属の艦しかありえない。
だが現在探索部は交戦中の筈でごく一部を除き、各基地を守る為に奮闘している筈。
そんな基地の状況を考えると、ここに来れる者は限られる。
──来るとしたら……ローナか行方不明組。そして途中で居なくなった菜奈さんと単独行動中の菜緒さんくらい。……そう言えばここには探索艦が三つ。来た時に艦名は表示されなかったので断言は出来ないが、内一つは訓練中に現れた艦だと思う。残り二つの内、どちらかがカルミア? もう一つは……一体誰?
(ア…………い、いやいないのニャ)
珍しく歯切れの悪い返答。
慌てているミケちゃんは初めてかも?
(ア? どうしたの〜?)
(ニャニャニャんでもないのニャ!)
(そお~? それより艦と探索者の数が合わないんだけど~?)
(にゃにーー⁈ そそそそそれよりエマが!)
(へ? エマ? ……!)
ハッとなり勢いよくエマを見る。
エリーの慌てた気配を察しラーナも視線を移す。
「「!」」
エリーとラーナがほぼ同時にエマを見ると、エマの後ろにいつの間にかレイアがいた。
そして何故かクレアにもたれ掛かる様にエマが倒れ込んでゆく。
「え、エマ!」「エマちゃん!」
目を離した一瞬の出来事。
力が抜けた体をクレアが優しく迎え入れる。
「何をしたの⁉」
「少しの間だけ眠って貰っただけだ。直ぐに目を覚ます」
そう言ってからもたれ掛かっているエマを預かろうと抱くクレアの手に触れる、が何故かクレアは微動だにしなかった。
「……クレア」
「…………」
今までとは違い諭す様に優しく名を呼ぶ、が反応は返ってこない。
見るとクレアの顔は苦悩の表情をしていた。
そっと手を戻し見守るレイア。脇ではエリー、そしてラーナも静かに見守る。
クレアの苦悩。三人共、理由は知っている。だからこそ一緒にいれる最後の時間かもしれない邪魔はしない。
見守る三人の思いはその点では同じ。だがその先の展開に関しては心境は異なっている。
それは三人が置かれている立場の違いから、目の前で抱き合う二人が歩むであろう今後の展開が三人とも異なっているから。
特にレイアは他の二人とは違い、ここには並々ならぬ決意でやって来ている。
だからこそ妹の幸せを思い今はそっと見守る事にした。
暫くすると決心がついたのか、自らに寄り掛かっているエマを浮力を利用してお姫様抱っこの状態へと抱え直す。
「もういいのか?」
「ええ」
エマの顔をジッと見つめるクレア。
返事を聞いたレイアは、中腰になりエマを抱き抱えるクレアの脇に移動し肩に手を置く。
すると中腰のままゆっくり動き出し、エリーへと向かい、自らの手で引き渡した。
受け取り顔を覗き込むと幸せそうな寝顔であった。
これならレイアが言っているようにただ気を失っているだけだと思われる。
隣りから覗き込んでいるラーナも同意見らしくホットした表情をしていた。
視線をクレアに戻す。すると引き渡した後もクレアの細い目はエマから離さずにいた。
エリーにしてもラーナにしても、クレアについてはエマや仲間達から聞いた程度で性格等は勿論知らないが、この表情からエマに対する気持ちだけは容易に読み取れた。
決心は付いたと言ってはいた。
でもこの様子では行動を起こすにはもう少しだけ時間が必要なのかもしれないと二人は思う。
そんなクレアの後方からレイアが静かに近付いてゆく。
それにエリーとラーナが気付き視線を向けると、クレアではなく二人を見て笑みを浮かべていた。
「「?」」
二人がその笑みの意味に気付けずに戸惑っていたら……
「「⁉」」
笑みを崩さずクレアの頸椎辺りに手拳を一発。するとクレアも一瞬で気を失ってしまう。
そのまま流れる仕草で崩れ落ちるクレアの体を透かさず支えるとラーナに妹を預けた。
「……後は頼む」
二人に対し直立し、深々と頭を下げてから湯舟を出て行く。
「ちょ、ちょっと!」
ラーナが呼び止める。
「いいんだ。俺一人で済む話だ。それに妹を巻き込む訳にはいかない」
身体をメイドさんに拭いて貰い宇宙服を着ていく。
ラーナ達に背を向けたまま。
「「…………」」
鬼気迫る雰囲気というか男の背中? を感じる。
「いつから……こうしようと?」
「取れる選択肢が無いかを聞いた後……つい先日のことだ」
「選択肢?」
「ああ。奴らはこの展開を見越してあの時、俺に話を持ち掛けたんだろう。話を聞かされたあの時点で最適と思えた選択をしたが、今思えばどう足掻いてもこの結果にしか辿り着けないように仕組まれていたんだ」
これは候補生育成施設から失踪した時を言っていると思われる。
「仕組まれていた?」
「ああ。だが結果はどうあれを選んだのは俺自身。だから俺が締めなければならない」
「それでクレアさんを置いて行くの?」
「……好きなヤツから引き離す……クレアの悲しむ顔は見たくない」
「それって単なる逃げ……じゃない?」
「「「?」」」
有らぬ方向から女性の声が聞こえてくる。
いつの間にかバスタオルを体に巻いて、風呂の脇に用意された椅子で寛いでいるエリスを除き、執事さん達までもが声がした方を振り向く。
その先は暗闇。ボンヤリとした人影が近付いて来る。
突然の来訪者。
前回とは違いエリスは何も言ってこなかった。
そして表情からも分かるように執事さんにも気付かれずに? ここまで来たのだ。
全員、神経を人影に向け待ち構える。
間もなく姿を現したのは…………ボンバーヘアーで若干不機嫌そうに目を背けている大柄な男性であった。
「あ”ーー? 誰だお前?」
レイアは眉間に皺を寄せると向きを変え、男の正面に立ち塞がると、面と向かって堂々と威圧を始める。
見知らぬ男。圧迫感すら感じる体格。さらに自分等、眼中に無いといった振る舞い。
自分の威圧など「どこ吹く風」と気にする素振りは見られない。
色黒で背が高く、まるで自慢するかの如く宇宙服の上からでも全身を鍛えている様が一目瞭然の引き締まった身体をひけらかしている。
まともに目を合わせようとはせず、しかも声色まで変えて。
探索部の宇宙服を着ているからには探索者なのだろう、が一体何をしにここへ来た? もし俺の邪魔をする気なら、問答無用で二度とお天道様が拝めない体にすっぞ? といった目付きで睨む。
自分の思いを否定したのはどうでもいい。
資格の無い奴がいくらほざこうが一向に構わない。
一番気に入らないのは……その声だ。
背けた顔に顔を寄せ、コレでもかとガンを飛ばしまくる。
ひょうんな拍子で暴発しそうな張り詰めた状況、なのにレイアの後方は違った状況になっていた。
「「キャァァァァァァァァァァァァァァァァ!」」
慌てふためく二人分の悲鳴が夜空に響き渡っていた。
突然現れた同僚。
思いもしなかった人物の突然の登場に、初めは頭の中では「えーーと誰だっけ?」とフリーズ状態へ。
だが直ぐに我に返り、自分達が全裸だと気付くと大声を張り上げ、反射的に自らの身体を手で隠し始める。
手を戻す……当然気を失っている二人から手を離すことになる。
手を離す……これも当然だが意識が無いので湯へと沈んでゆく。
沈みゆく二人を見て咄嗟に手を伸ばす。すると今度は大事な所が丸見え状態に。
エマとクレアの身体もついでに隠さないと! とアタフタし出して湯舟の中はしっちゃかめっちゃか状態となっていた。
「…………そこ、ちーーと静かにしてくれねーか?」
眉間をピクピクさせたレイアが二人をジロリと睨む。
「「は……はい……」」
一喝されるともがくのを諦めたのかピタリと大人しくなり、そそくさと背を向けて丸くなった。
小ミアノアについて
彼女ら? は攻○機動隊の電脳空間内でのフチ○マ的な立場で、アシシリーズの手足の役割を担っております。
話し方も当初はアシシリーズと同じくカタカナ表記にしたのですが、とある理由により即変更しました。
その理由とは?
読み辛い、見分けが付かない、いちいちカタカナに直すのに作者の忍耐(←これが一番の理由)が追い付かなかったから。




