表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
全ては私に任せろ!
196/215

撃墜! 電脳戦開始!

やっとの事で投稿。

活動報告にて説明しましたが、もう少しだけ完結を先延ばしします。


話は変わりますが今のアリスはかなり調子に乗ってます。

あとステラはこの状況を純粋に楽しんでおります。


「む? 怪しい動きをする一団が接近中ね!」


 猫耳がピクピクっと反応。同じ球体内(コックピット)でステラの斜め上後方にいるアリスに向け報告する。


「アイツ等は……ω(オメガ)Σ(シグマ)の同調レベルを一段階引き上げて!」


 球体壁面モニターにポップアップ表示された画像を数秒間観察すると、艦の動きに? 覚えがあったのか、慌てて指示を出し始める。


「「アイアイサー!」」


 アリス達が対応中に接近してくる五艦。先行していたソフィア艦がいち早く到着。


「邪魔だぜなの!」

「な、何? 貴方達は⁈」

「そうなの!」


 仲間の間を擦り抜けていくソフィア艦。その後をピッタリと付いて行くソニア艦。


 抜けた先にはω(オメガ)Σ(シグマ)名付けられた敵艦の姿が。距離は凡そ三百Km先。

 予定外の行動で味方の攻撃がいったん中断。幸か不幸か敵艦の周りに遮る物は何も無い状態。

 ソニア()との勝負に負けたと悔しがっていたソフィアは繊細一隅のチャンス! とばかりに艦を円錐形へと形状変化、一気に光速まで加速、敵艦目掛けて突撃して行く。

 ソフィアにとってはラストチャンス。ここで獲物を取られたら暫くの間はドヤ顔の姉を見続けなければならない。


「いやがったなの! 行くぞソニア! とっか――――ん‼」

「仕方ないなの! 背中は任せろなの!」


 二艦が円錐形で縦列にでω(オメガ)突撃して行く。この距離から光速での突撃。相手はどう足掻こうとも避けられない。


 だが敵艦と接触した気配無く数光秒先で停止する。


「あ、れれれーーなの?」


 当たった感触が無かったのですぐに方向転換し近距離まで戻り姿を確認したところ…… ω(オメガ)Σ(シグマ)は変化というか、突撃前の位置から動いてすらいなかった。


 何が起きたか艦の行動記録を確認してみる。すると……


「…………な……何だこれは……なの」


 信じられない物を見たと唖然とする。

 そこに姉からの通話が。


「およよ? 今何処……ってもう戻っていたなの。で、外したなの?」

「い、いや……避けられたぜ……なのね」

「避けられた? あの状況ではあり得ないなの」

「い、いやホントだってなの! これ見てくれなの!」


 見守っていた全員の前に空間モニターが現れ、運よく記録出来たソフィア艦とω(オメガ)との接触寸前の静止画が映し出される。

 そこに映っていたω(オメガ)艦の形状だが、突撃寸前までの球体の艦ではなく、まるで三日月そのものと呼べる形状をしていた。

 つまりソフィア達を形状変化させただけでやり過ごしていたのだ。


「え?」「何これ」「あり得るの?」


 そこら中から驚きの声が。


 やろうと思えばどの艦でも形状変更は簡単に出来るが問題はそこではない。

 認識外からの攻撃を的確に予測し避けている、という部分。

 全員それを理解しているが為に困惑が広がって行く。


「フ……面白い! 次は俺様の番だ! 皆、よーく見ておくんだぞ!」


 そこに高笑いと共に悠々と現れるルーク。


「ワハハハハ! 後は俺様に任せろ!」


 ソフィア達とは違いルークの先には自然と道が出来る。


「行くぞ!」


 質量兵器五十機を自艦から放出。敵から見て垂直方向に十機ずつ連結させると五本のしなやかな鞭状にした。


「お? まさかアレを?」

「おうよ! そのまさかだ!」


 先の戦いでシェリーと競い合った時の技を使うのだろうか。

 確かにあれなら先ほど見せた穴では避けられない。ただ……


「え? お、俺っちも行くの? ルークの兄貴一人で行くんでないの?」


 おいらは余り戦いは好きでは無いんだな~


「つべこべ言わずに付いて来い! それとっか――――ん‼」

「な、南無さーーん!」


 だが今度も接触せずに突き抜ける。

 攻撃は掠りもしなかった。


「……なんてこった……」


 言葉を失うルーク。

 悔しい、というより唖然としている。


 ──これはちょっと厳しいかも。


 ロイズは冷静に敵艦の性能を分析。

 いくつかの攻撃手段を頭の中で思案してみたが、有効な手段が思い浮かばなかい。


 今回は周囲の仲間達が多方面から観測しており、記録に成功した複数の艦から情報が寄せられた。

 それを見て、突撃した本人達も含め大半の者達から声が消えてゆく。

 今度は質量兵器を通す為、艦を一時的に分断させてやり過ごしていたのだ。


 ──これほどの差が有るのか……


 アトラスも声が出せない。


 そんな中、一人だけ敵艦から目を背けている者が一人だけいたが、誰も気づく者はいない。


「もう逆らう者もいなさそうね。アリス様」

「フ……ハハハハ! よーーしこのまま前進よ!」


 ここぞとばかりに調子に乗った二人の高笑いの声が全艦に響き渡ると 、ω(オメガ)Σ(シグマ)が挑発するかの如く取り囲んでいる探索艦へと堂々と接近してゆく。



 ──あの動き……リンの真似をしているがかなりアドバンテージを取って広げている……これは面白い!



  ω(オメガ)Σ(シグマ)の挑発行動には目もくれず、二回の攻撃の画像を見ていたシェリーの目が突然光る。


「お姉様?」


 気配が変わったのに気付く妹。


「シャーリー、己を高める又と無い好機。心を無にし(わたくし)についてらっしゃい」

「え? は、はいお姉様!」


 未だ正体不明なグリップを力強く前に押し出すと、白色の円錐型へと変化をした姉妹の艦が光速の八割程度の速度で突撃して行く。



 因みにこのグリップ。名もまんま「やる気グリップ」との愛称で、二人の入魂の度合いを高める為の装置の一つ。普段はシートに格納されてあるが二人が座るといつの間にかニョキっと現れる。


 この装置は二人の為だけにノアが開発した特別製……というワケではなく、艦AIに個性の設定を行う際に二人で話し合って取り入れたモノ。


 これは艦AIであるジンとコーチンがグリップを通し、二人の中の「根性というパラメーター」の度合いを高める目的で適度な反発力を加えている。

 このよく分からない特異な数値が低ければグリップはスカスカで無抵抗の動かし放題。逆に気合十分ならばいかにも艦を操っている感触が得られる、という自己満足に近い機能にし、さらに高揚感と連動しダイレクトに艦の動き具合に反映されるという仕組み。


 何故このような「鬱陶しい」機能を取り入れたのか?


 それには当然理由があるのだが説明し出すと長くなるのでそれは別の機会にて。


 因みに二人だから動かせるが、他の者だと翌日は筋肉痛で酷い目にあうだろう。



 ジンとコーチンが縦列で二艦並んでいる内のω(オメガ)とへと消えていく。


 ──先ずは小手調から……


 質量兵器を一機だけ出し先行させ敵へと向かわせる。




 *ここからは人には認識不能な時間の流れ*


 質量兵器を針に似た形状に変化させ、光速を超えた速度で迫る。

 それに対しリン艦と同様に、その針を通そうと艦の形を変化させ穴を開けていく。


 ──ほう……これにも対応するのか。ならば……


 その変化を待っていましたとばかりにさらに加速させながら艦本体へと微妙に進路を変えさせた。


 ──さあどうだ?


 敵艦の脇をシェリー達が擦り抜けていく。


 結果までは流石に分からない。早すぎて認識出来ない。だが当たった感覚はあった。




 そのまま通り過ぎてから視点を敵艦へと向ける。

 その瞬間、眩い閃光がシェリーへと追いかけてきた。


「「「あ!」」」


 探索者サイドからほぼ同時に巻き起こる声。

 それと共にシェリー達の下にも仲間からの映像が入ってきた。

 そこには……


「そ……んな……先っぽ……だけ……」


 シャーリーの呟き。


 そう、シェリーが放った質量兵器は確かに敵艦に当たった。たがそれだけで突き抜けるどころか僅かに刺さるのみ。


 ポロ


 その兵器が流体化し敵艦から離れると、シェリー艦へと一目散に帰還した。


「「「お……おおおおお!」」」


 探索者達から巻き起こる大歓声。

 シャーリーとは違い、掠りもしなかった相手に当てたことに歓喜していた。


「な! 当たった⁉ どんな手品を使った?」

「り、理解出来ないのね!」


 絶対の自信があったのか、それとも()()なのか、大袈裟に狼狽え始めるアリス達。


「す……スゲーなの」

「流石は師匠なの!」


「何で当てられたんだ?」

「えーーと、多分だけどおいらのお蔭じゃない……かな?」

「特訓の相手でもしてやったのか?」

「うーーん。ま、そんな感じ」


 追っ掛け回されただけなんだけどな~。


「でも凄いっす!」

「ああ」


 ()()()見ていたようでワイズも素直に驚いていた。


 一方のシェリー。


 ──硬いな……これがあと三つ。全てを滅するのは無理だな……

 ──しかし感じるだけで意のままに操れるとは。流石あの二人が作った兵器だ。


 妹の姿を探す。シッカリと付きてきており、直ぐ脇にいた。


「シャーリー、今ので何か掴めた?」

「い、いえ……お姉様に付いて行くので精一杯で……」


 悔しそうな様子で話すシャーリー。


「初めてで付いて来れただけでも上出来です。ではもう一度挑みます。今度は敵も反撃してくる筈。その間に()()を掴みなさい」

「は、はい、お姉様!」


 この程度、我が妹ならモノに出来ると信じる!


「そうだロイズ!」

「へ? お、おいらを呼んだ?」


 ビクッと反応。


「我が妹のナビを頼む!」

「お、おいらが?」

「ああ。()()()()いざ知らず、我一人で同時に二人の相手は流石に無理だ!」


「えーーと……了解」


 一瞬迷う。

 シェリーが名指しして来た理由。確かに今の自分になら要望に応えられると思うし、可能な限り応えてあげたい。

 ましてや探索者としてここにいる以上、先輩の言う事には逆らいたくない。


 ただ一つだけ気になることが。

 それは以前の指令が未だに取り消されていない点。

 ただ今の相手はアリスであり椿ではない。つまり気を使う必要などどこにも無いのに気が付いた。


 ならいっか!


 と早々に思考放棄すると了承し、シャーリー艦へと近付いて行く。

 その動きを見逃さない猫耳メイド。


「不味いですね、シェリー(縦ロール)が何か企んでますね!」


 成り行きを見守っていた探索者達に動きがあった。

 しかも何故か一艦だけ。

 不穏な空気を察してアリスに報告。


 報告を受けその艦を見た途端、顔色を変えながら指示を出す。


 ──狙いはω(オメガ)か?


「チッ、ω(オメガ)は下手に応戦しないで逃げ回って時間稼ぎを! その間にΣ(シグマ)は妹を血祭りにあげておしまい!」

「「了解!」」


 何なのあの娘は? つい最近までは只の脳筋娘だったはず! いつの間に進化したの?

 それにこのタイミングで何故ロイズ(あの子)が出てくるの?


「アリス様! 我々は?」


 ──奥の手を使うにはまだ早い。まだ憂さ晴らしはしていない。


α(アルファ―)β(ベータ)と共に待機!」

「了解ね!」


 α(アルファ―)β(ベータ)には完全武装を施した斬り込みメイド隊が乗り込んでいる。出番が無いまま彼女達を失うわけにはいかない。




 それから数分後。


「むう……だいぶ読めてきたな」


 光速を超えた速度でω(オメガ)を追い掛け回しているシェリー艦が、追うのを一旦止めて姿を現す。


「シャーリー?」


 呼び掛ける。すると閃光が瞬く区域からシャーリー艦が姿を現わし自分の下へとやってきた。


「ハアハアハアハア! よ、呼びましたかお姉様!」


 息も絶え絶え、汗だくの妹がモニターに表示された。

 そんな妹に微笑みながら問い掛ける。


「経過はどお?」

「は、はい! 何となくですが掴めた気がします!」

「コーチンの感想は?」

「五分と五分といったところだ」

「ならば仕上げに掛かりましょう」


 仕上げとは妹の心の、という意味。


「は、はい! ですがどうやって?」


 シャーリーには意味は通じなかったようだ。

 ただそれを正そうとはせずに話を続ける。


「コーチ、説明をお願いします」


 ジンに振る。


「ふむ、いいかシャーリー。つい最近、我々の大きさが変わったのを知っている筈だな?」

「は、はい!」

「艦の外装を形成している流体物質が増量されたのだが、今回はそれを利用する」


「は、はぁ……」


 意味が分からず曖昧な返答。


「……返事は?」

「は、はい!」

「気が緩んでいるからそんな返事になるんだ! 校庭十周!」


「こ、コーチ……今は」


 姉妹の誓いでそれぞれの艦AIには逆らわないと決めてあった。だが流石にこのタイミングでは止めざるを得ない。


「まあ待て。懲罰は後でいいだろう? それより時間も無し、説明を続けよう」


 今度はコーチンが割り込む。


「説明は俺が代わりにしよう。二人の艦は今は質量がほぼ二倍になっているのだが何故二倍になったと思う?」


「…………」


 いかにも頭の中に「?」が浮かんでいそうな表情。


「……ま、まあ実際にやってみればお前も納得するだろう」


「は、はいコーチ!」


 シャーリーの場合、説明よりも実践させた方が早い、との判断。


「良いこと? これは一度切りの技。二度目は無いと思いなさい」

「警戒されたら間違い無く避けられる」


「了解!」


 ──つまり一撃必殺!


「ではコーチ、フォロー願います」

「「任せろ!」」


 シェリーはω(オメガ)に向け、シャーリーはロイズを追っかけているΣ(シグマ)へと突撃していった。




 それから約一分後。


 アリス艦に脱出を果たしたω(オメガ)Σ(シグマ)の操縦者が到着。


「な……なんと! 当ててきた……」

「す、凄いですね」


 ω(オメガ)Σ(シグマ)に空いた大きな穴。二艦は盛大に大破。

 大量の流体物質を撒き散らし、そこかしらから白煙を上げながらフラフラと()()していく。

 どうやら推進装置を見事破壊したらしく制御不能状態のようだ。


 その艦から十m程の銀色の球体が飛び出し、一目散に艦から離れてアリス艦へと向かっていった。


 宇宙空間では上下左右の区別なく無重力空間。なので墜落との表現は適切ではないが、B級映画でよく見掛ける制御不能状態で白い煙を出しながら離脱していくシーンと同じくであったのでそう見えたのだ。


 因みに探索艦は損傷を受けても煙の類を発生させる機器は搭載していない。なのでこの煙はアリスが事前に準備しておいた演出の一つ。


 その煙を鋭い考察眼の持ち主が見たらアリスの思惑に直ぐに気付くだろう。が唯一気付ける者はアリスの意図も、この争いにも興味が薄れてしまったので、場を盛り上げる演出でしかなかった。


「「「お……おーーーーーー!」」」


 探索者達から巻き起こる大歓声。

 撃墜という事実以外、何が起きたのか誰も分からない。


「な! まさかの撃墜⁉ なにアイツ?」

「り、理解出来ないのね!」


 絶対の自信があったのか、それとも演技なのか、狼狽え始めるアリス達。

 その時、アリス艦に脱出を果たした操縦者二名が到着。


「す……スゲーなの」

「流石は師匠とその妹なの! 赤い宇宙服は伊達じゃなかったの!」


 一回り()()()()()()姉妹の艦がアリス達へとゆっくり近付いて行く。


「くっ!」

「ま、不味いですね、アリス様! こうなったらα(アルファ―)β(ベータ)を使いますね?」

「致し方ない。ここでやられる訳にはいかない。ステラ、暫くの間、貴方に任せる。よきに計らえ」

「? あっ、今度こそ()()のね?」

「そう。グーの根も出ないくらいに叩きのめしてやるぅーー!」

「子守歌は?」

「いらない!」


 シートに体を預けて目を瞑り意識を集中し始めた。






 アリスが潜った(寝た)瞬間、基地のドックにて待機中のミア艦のコックピットにけたたましいアラートが鳴り響く。

 このアラートはとあるプログラムが走り始めたら鳴るようにらセットしてあった。



「……うひょ? ……きたきたきたきた、でーーーー!」



 椅子に座りスチール机にもたれ掛かりだらしなく寝ていた? ミアが跳ね起きる。

 涎が垂れた顔を起こすと頭部にはにはいつもとは違い、古代で使用されていたゴーグル付き戦車兵ヘルメットを被っていた。


「……出番、だぞ」


 ノアからの音声通話。どうやらミアの艦内にはいないようだ。


「……ノアちゃん、か。フォロー頼む、じょじょ?」

「……おうバックアップは任せん、しゃいん」

「「…………」」


「「そんじゃ…あでぃおす~」」


 ハモる声を最後にミアの身体から力が抜けると机に平伏した。




 ミアの意識は別の空間へ。


 1 (先生、オ待チシテオリマシタデス)


 声が聞こえきたので上体を起こす。

 すると正面にいる少女が無愛想にこちらを見ていた。


(……おう1号……そして3号、よ。待たせた、な)


 首を振ると瓜二つの少女の姿が。


 1 (助ッ人モ待機サセテアリマスデス)


 2 (手伝イ二参リマシタデス)


 3号とは反対側から同じ声が聞こえてきたので首だけ向ける。

 そこには一箇所を除き、これまた瓜二つな少女がいた。


(……良くぞいらっしゃいました2号ちゃん、や)



 ここは様変わりしたミアちゃん専用電脳空間。

 以前は狭く・暗く・怪くと「3()()」が揃った空間だった、が今回は本腰を入れているので全ての面で思い切った模様替えを断行した。


 先ずは薄暗い部屋から屋外へと移動。

 雲がプカプカと漂うスカイブルーの空、波一立っていない瑠璃色の海の床。

 そして各々の配置も変更。今までは向かい合わせの二列で置かれていたスチール机。

 今回はミアを中心に囲むように3台置き、そこに擬人化したアシシリーズが腰掛ける。さらにその後方には同じく擬人化した細分化してあるプログラム達が座る机を無限とも思える数を並べておいた。

 アシシリーズの机は楕円形のシステム机とし複数枚の空間モニターと昔ながらのキーボードを設置。

 各プログラム達はサイドテーブル付きの椅子を用意、空間モニターと何故かゲーム用コントローラーが用意されてある。


 中心に置かれたミアが腰かける椅子もランクアップ。体格に不釣り合いなリクライニング式の重役椅子を用意した。因みにフットレスト仕様の黒い椅子で任意に回転できる仕様。


 擬人化した1・3号は十歳ごろの容姿(自分)。2号はノアの容姿。さらにプログラム達は幼少期のそれぞれの容姿と今までと変わりなし。

 服装も今までと変わりなくミアと同じ学生服で1号・3号共に赤いネクタイ。

 だが今回は助っ人となる2号が来ており、識別させる目的で2号は青いネクタイという井出達に。


 無限に近いプログラムである小ミアノアが中心を向いている光景は一種異様な世界に思える。


(……1号状況、は?)

 1 (既二防壁外周ノ侵食ヲ確認シテイマスデス)

(……フムフム。でこちらの攻勢ウイルス、は?)

 1 (同ジク敵ノ仮想防壁ノ取リ崩シニ入ッテオリマスデス)


(……では打合せ通り、1号はアタッカー部隊、を)

 1 (了解デス)


(……2号はディフェンダー部隊、を)

 2 (了解デス)


(……3号はレンジャー部隊をそれぞれ率いてくれ、たまゑちゃん)

 3 (了解デス)


 座りながらキリリと背筋を伸ばし探索部式の敬礼をして見せる。その姿は彼女ら三人の決意の表れ。

 単なる優秀なAIから、ミアによりさらに上位へと引き上げられたAI(存在)


 その一方、三人の後方に控えている数千、数万いる小ミアノア達は対照的に落ち着きがない。

 席から離れる者こそいないが、それぞれが自由奔放に、隣とくっちゃべってたり、居眠りしてたり、机を叩いていたり、和菓子を美味しそう食べていたりと誰一人、話を聞く者はいなかった。

 その光景は古代の学校で見掛けた所謂「学級崩壊」と似ているだろう。


 だが四人はそんな騒がしい集団を注意したりはしない。

 それは誰もが通ってきた道だから。

 ここにいる小ミアノアは自分達の性格を模写して生み出したから。


 指示を終えるとゴーグルをずらしてから椅子の上に立ち上がり皆を見渡す。

 視線が一m程高くなっただけ。

 だが見えていた範囲が変わり、この場に集結した者達全員を見ることが出来る。

 そのままゆっくりと椅子が回転していき全員に視線を送る。


 一回転し元の位置へと戻ると片手を突き上げた仁王立ちのポーズをとった。


 すると騒がしかった空間が一瞬で静まり替える。

 皆の()()()()()中央にいるミアへと向けられた。


(……お前ら、やっとこさで本気モードで遊べる相手の登場、だ!)

(((…………)))


 無反応で静まり返る空間。

 アシシリーズはして清聴。

 その配下である小ミアノア達は対照的に前すら向いていない者が殆ど。この姿を見たら纏まりあるとはとても思えない。ホントにこれで大丈夫? と心配になってしまうくらいに。

 ただよく見れば静寂の中、誰一人ピクリとも動かずにただ全員がミアの演説に耳を傾けているのだけは見て取れた。


(……思えば生まれてここまで長い道程だった、よね……)

(((…………)))


 行き成りテンション下げ俯き悲しそうな素振りを見せる。

 ミアに合わせてアシ1号と2号も視線を下げる。

 すると雰囲気の変化に気付いた小ミアノア達の顔が徐々にミアへと向いてゆく。

 そんな中、アシ3号だけは表情変わらず。


(……我が姉妹の生い立ちを悲しんだ時もあった、かも……)


 遂には泣き出すアシ1・2号。


(……この世界に悲観していたんだ、ね……)


 小 (((……悲観?)))



(……そう。だって~遊び相手が~いなかった、じゃん~?)



(((…………ブーーーーーーーーー!)))


 一斉にブーイングが巻き起こり様々な物がミアに向け飛んでくる。

 同情しちまっただろ! とか演説を聞いていた時間を返せ! とかのヤジも聞こえてくる。


(……い、痛い……)


 1 2 ((チョ、君達物ヲ投ゲテハイケマセン……))

 3 (……フッ……)


(……まあまあ皆の衆、ちょいと落ち着く、のだ)


 ピタリと収まる。


(だが今は違う、ぞ。神様が遊び相手を寄こしてくれ、た。その名はアリス、と言う)


(((オーー)))


(……こいつはちょっとやそっとじゃめげない骨のある奴、だ。だから思う存分遊べる、ぞ)


(((オーーーー!)))


(……だが一歩間違えたら我々人類に未来は訪れない、かも! なので初めから『ガンガン行こうぜ』だから、な!)


(((オーーーーーー!)))


(……ではホウレンソウを忘れずに暴れまわるんだ、ぞーーーー!)


(((オーーーーーーーー!)))


 訳の分からない演説で、皆のやる気が起きたようだ。


 そして号令と共に一斉に作業が開始された。

「コーチ」が二人いて紛らわしい……


 以下は「ある人物」のネタバレになるので望まない方はここで読むのを終了してください。







 *かなり悩みましたが「バイオロイド」についての説明入れることにします。


 この世界では法の規定により、バイオロイドには「自我」を持たせていません。

 この空想世界の方針については一度説明してあるので改めてしませんが、バイオロイドはあくまでも「物」扱い。なので全ての個体の脳には「自立式プログラム」がインストールされてあるAIチップを組み込み制御する決まりとなっています(完全自立型は存在せず)。


 対して「アリスが手を加えたバイオロイド」は基本的な仕組みこそ同じですが、こちらには人と変わらずの「自我」が存在します。同行しているステラや執事さん達がこれに該当します。


 この説明を入れると「ある人物」もそうなのか? と思われるでしょうが、実のところは違います。


 唯一、正体を見抜けそうなローナ。アリスの性格をかなり的確に分析していますが、この件に関しては彼女の下に情報が集まっていないので、残念ながら正解には辿り着けていません(今は支障が無く、その気も無いのが最大の理由)。


 ただ考察の必要を感じていないだけで「自我」の存在を知った場合、彼女ならば間違いなく興味を持ち、そして割と早くに答えを導き出すでしょう。


 流れとしては繋がりのある「ある人物」に関心が移り存在理由に疑問が湧く。

 次はこれまた当然の如く、自分が抱いていたアリスの性格に対しての差異に気付き「ある疑問」が湧いてくる。


『アイツがそんなリスクを冒すだろうか……』と。

『もし自分がアイツの立場ならこうする』と。


 ここまでくるとアリスの存在にも疑問を抱く……



 ヒント、というかこの件に関しては既に色々な箇所でネタバラしております。

 最終的に「どちらにする」か、読まれている方に気付かれずに済ませることも出来そうでしたが、一歩間違えれば「ご都合主義」となりかねないので、悩んだ末に説明しておくとにしました。(悩みの種が一つ減って良かった)


 なので「ある人物」についてはアリス同様に最後まで詳しい説明はせずにさらりと流すつもりです。


 *因みにリンとランは「人」で「ある人物」には該当しません(なら残りは一人?)



年内にもう一話、更新するように努力します!

毎度安定更新出来なくて情けない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ