ローナの怒り?
巷では三回目のワクチン接種が始まりましたね。
私は1月の予定ですが、入ってきた情報をお伝えします。
〇接種後、かなりの割合で発熱の症状が見られる(前回2回とも無症状だった方も発熱)
〇倦怠感や鈍痛が増した(←前回の私)
二回とも幸運にも変化が無かった方にも(上記の症状が)多く出たとのこと。
発熱以外は体感に個人差があるので一概にどうこうとは言えませんが、接種後2日間は休みを入れて食料や解熱剤を準備しておいた方が無難かもしれませんね。
*ローナは総本部には行っていないし、基地に戻るまでサラとは接触していません。念の為に言っておきます。
*2021/12/14 ラストの部分に200文字程度、追記しました
通路への扉の脇にある転送装置から四人の姿が消え一人になると、その場で一旦立ち止まりミアノアを呼び出す。
(二人共、準備は終えてる?)
(……う、ウヒョ〜〜)
「う、うひょ?」
聞こえてきたのは戸惑いと恥じらいが混ざった感じの喘ぎ声。
意表を突かれて思わず同じ口調で呟いてしまう。
(……な、何する、の?)
(……ジタバタするな、って)
続けて聞こえてくる仲の良さそうな姉妹の声。
(貴方達、二人で何してるの?)
((…………み、ミアノアシスターズあ〜んどアシシリーズ準備万端、いつでも来やがれ~、だぜ))
僅かな沈黙後、慌てて返答してきた。
(そ、そう? もう直ぐ時間切れよ?)
(……時間? 八ツ! や、奴が……来る‼︎)
(そう、赤い機体に乗った……じゃな~く~て~ア~リ~ス~♪ 繋がりが途切れている今なら最高のタイミングと言えるでしょ?)
((………………マジ切れてる、っす))
二人共、同じ場所にいるから気付かないか……
((……んじゃ配置に付く、かな?))
(よろしく~♪)
この二人は多くを説明しなくてもこちらの意を汲んで動いてくれる。なので次の相手に切り替える。
(主任、ちょっといいかしら?)
(……その声はローナちゃん?)
(そう〜♪)
(今どこにいるの~?)
(ひ・み・つ~♪)
(ウヒョ〜)
歓喜の呟き。
アトラスもミアノアレベルに余計な会話はしてこないし会話の中から相手の意図を読み取るのが上手。
ローナにしてみれば組み易く信頼できる相手。
相性もあるが、そこに至るまでお互い信頼関係を築く努力をしてきたから言える事。
(そろそろ本命が来るから片付け中止、全員要警戒♩)
(承知したぞい、がその前に一つ教えてくれ)
(何を?)
(これから何が始まるの?)
(とってもくだらない戦い♩)
口調そのまま冷めた顔付きで。
(……くだらんのか?)
(そ。とてもくだらない争いに私達が付き合わされるの♩)
先程の会話から判明したこと。
可能性の中で最悪なのは椿とアリスが目的遂行の為ならば人を人とは思わないような、さらにお互いを蔑ろにする行動を取ること。幸い二人はこのタイプでは無かった。
逆に椿は良い意味で予想以上のお人好しであった。
ただし椿とアリスは実は仲は悪い。これは得た様々な情報から可能性の一つとしては有りと見ていたが先程確定してしまった。
二人の間に何があったのか。特に総本部絡みで何かしらの確執があるように思われる。
それが何なのかは今の段階では分からないが「粛清」の件だけで無いはず。
自分達の人生を滅茶苦茶にした四賢者は許せない存在。だがどこかで致し方ないと妥協している。
それはサラが結果を出すのを待っていたことからも分かる。
その気に入らない四賢者と直接の関りがある者、そして現存している者達。
長は四賢者その者。なので除外すると「サラ」と「レベッカ」と残るは「アリス」の三名が残る。
先程の会話からレベッカは取りあえずは除外。
サラに対しても悪感情は抱いていなかった。少なくとも先程までは。いやあんな態度を取っていたが今でも変わりがない、と思う。
残るはアリス。
椿とアリスの関係を示す内容の報告書。
菜緒が纏めてくれた報告書の中に「お互いのやる事に干渉しない」という約束が椿とアリスとの間で交わされており、二人はそれを遵守しているらしい。
ここから推測するに、お互い交流はあったが主な活動な場は完全に異なっていたに違いない。
椿には「研究所」が、アリスには「総本部/四賢者」と安住できる住処をメインに活動していた。
さらにアリスに限って言えば、機密の塊である探索部のAエリア基地の中に、誰も知らない、さらに部員でさえ干渉出来ない住処、通称「アリスエリア」まで用意して貰い至れり尽くせりと言える立ち場だ。
椿からしてみればある意味「贔屓」されていると思われても致し方ない。
自分達姉妹との扱いが余りにも違う、と……
これもアリスに対する蟠りの要因の一つと思われる。
それ以外にもアリスと椿との間にも何らかしらのいざこざが有ると思われた。
その辺りを確定させるために姿を現し、椿の気分に合わせ会話に割り込んだ。
すると特に打合せも、前振りすらもしていないのにこちらの意図を読んで見事応えてくれた。
続けてリンが攫われたと聞いた時の反応。
あの時点で椿は連れ去り行為自体に異議を唱えなかった。
それは「アリスにとって必要な行為」と事前に知っていたからに他ならない。
つまり椿やレベッカもアリスによるリンの連れ去りを容認していたのだ。
なのにランの状態を聞いた際の過剰なまでの反応。
しかも当事者でないしその件に関わが無いにもかかわらず、親しいというだけでサラに対してまで敵意剥き出しにしていた。
それは椿にとってランの件は容認出来る範囲を超えてしまったからだろう。
ただその辺りをアリス程の奴が椿の感情を読めなかったとは到底思えない。
ならアリスにとって今回の件は椿との「約束」という一線を反故にしても問題ない何かが、又は「約束」の期限は既に過ぎているかのどちらかとなる。
ま、こんなところだろう。ということは……
椿はアリスよりも立場が上。
それは今まではこちらの世界の中心にいたから。
「消失」を止めさせるには椿の存在は必要不可欠だったから。
だがそれも既に過去のもの。
アイツも事が済む前に、アイツにとっての過去の精算をしたい筈。
そしてもう一つ。
天探女の小細工のお蔭で残念ながらランを攫いにここに戻って来ざるを得ない。
これに関しては天探女には『グッジョブ』そしてアリスには『ざまーみろ』と言いたいところ。
そしてこちらに不測の事態が起きても良いように、予め監視役としてラーナを向かわせてある。
特にリンランが無事帰還出来るかはラーナに掛かっている。
だが一つ気になることが。
椿は自分の立場を理解している筈。
今現在アリスと唯一同等と言えるのは情報レベルの五のみ。
それもアリスがその気になれば瞬時に崩れ去るのを椿は気付いている筈。
なのにこの余裕。
アリスと未だ対等な立ち位置でいられる理由。
どちらにしてもこちらが巻き込まれる可能性が非常に高い。
特に感情に任せて何を仕出かすか予想が付かない。
(そ。ここからは命を張る意味は無し♩ だから決してみんなに無理はさせないで♩ 艦に守られているとはいえ、相手の気分次第でどう転ぶか予想つかないから♩)
(……もしや探索艦相手ではない?)
(流石ね♩ 確かに探索艦とは呼べないかも♩)
(違う……なら第六世代か?)
(そう♩ だから皆で徹底的に邪魔をして♪ 悟られない範囲で本気で相手をしない事♪ 特に血の気の多い奴は事前に血抜きしといて♩)
(……ふむふむ、何となくだが状況が掴めてきたぞい。よし、宇宙は任せとくれ)
(よろ……あ、言いそびれるとこだった! 全艦にちょっとした細工を施してあるから♪)
(何を?)
(レベル5用の安全対策)
(レベル5? 「あの方」以外にもいるの?)
(最低二人はね♩ それじゃ巻き込まれないように注意しつつ後はヨロシク~♪)
(巻き込まれる? ……承知した!)
脳内通話を終え転送装置へ。そのまま医務室内にある治療室の前室へと出て、四人の後を追って部屋へと入って行く。
すると何故かビクビクしながらその四人を遠巻きに見ていたマリマキが、ローナを見付けた途端にスリスリと音もてずに横滑りして後方へ回り込む。甲と丙の二人も真似をしながらそれに続く。
二人が両側に辿り着くと、手で口元を隠しながら小声で囁いてきた。
「(姉さん! アイツ等誰?)」
「(そや、サラもいつ帰って来たん?)」
相変わらずの音量の声。いつもながら内緒話とは思えない。
「見て分かるでしょ? 小さいのは椿。隣にいるのは保護者ってとこかしら♩」
「「あああああれが椿ーー⁉」」
部屋に響く声。
慌てて手で口を押さえる姉妹。冷や汗が流れ落ちる。
二人揃って椿達に目を向ける……が誰もマリ達を気にする素振りは見られない。
「(で、その椿が何故ここに?)」
「(そやそや!)」
「理由? …………そうだその手があったか! マリ、貴方にお願いがあるの!」
目を輝かせるローナ。
「へ? 揉むの? ここで?」
両手を僅かに上げてニギニギし出すマリ。
その手の位置は丁度ローナの山脈の高さ。
それを見て珍しく動揺、両手で山脈を隠してオドケて見せる。
「違ーーうその手じゃなーーい!」
「お? ウケとる?」
「良かったやん」
「そうじゃなくて〜ちょっとした悪巧みに参加しない?」
「……悪巧み?」
「オモロそうやん。でもその前に問題があるんよ」
「どんな?」
マキが上を指す。すると……
……う……うう……
微かに泣き声が聞こえる。
? 首を傾げるローナ。
……うう……おいたわしや……お嬢様……
「シャルロット?」
……またもや……お嬢様のピンチにお役に立てず……
言われなければ気付けない程の微かな鳴き声。
「(前回同様、冥界に送られとったらしいで)」
これは事実確認が必要。
(ミア、誰の仕業? 部下のメイド? それとも猫耳?)
(……いや、アリスが事前に仕掛けていたの、かも。昔風に言えばトロイの木馬、的? 条件が揃ったので目覚めたってとこか、ね)
(もうない?)
(……サンプルが欲しかったけど、ね)
痕跡すら残っていないのか……
(厄介ね♩)
(……ワクチンと防壁展開してある、よ。だから既存のプログラムは無視して、いい)
(なら……)
(……そう、懸念材料だった「中の人」の脅威レベルが激減したから、ね)
(後はミアの腕時次第?)
(……ふ、ふ、ふ。やっとこさヒーローの出番、じゃな~い?)
(期待してるわよ♪)
──通じればいいけど……
フラグになりそうなので口にはしない。
(シャルロット、師匠、それとハナちゃん。貴方達に指令を一つ与える♩)
(は、はい!)
(何や用事かいな? 面倒臭いのは嫌やで)
(そう言うな師匠。やっとこさウチらに出番が回ってきたんやから)
(いい? 三人共。これからアリスがランを掻っ攫いにやって来る♩)
(え、えーーーーお嬢様を⁉︎ 何故⁈)
(そう。これは避けられない、だから攫わせる♩ ただし、タダでは渡さない♪)
(((…………)))
(そこで何故黙るの?)
(((い、いや何となく……)))
(まあいい、それより時間が無い、手短に作戦を伝えるわよ♪)
マリマキ、そして艦AIの三人相手に内緒話を始めた。
カプセルのなかで横たわるランを眺める椿。
ここに来てから一言も喋らない。
それは隣にいるレベッカ、そして対面に立っているサラも同様。
唯一天探女だけが忙しなく視線を動かしていた。
「今はどこにも異常は見当たらないので敢えて寝かせております」
三人に説明をする天探女。
「天探女」
「何じゃ?」
「済まない。迷惑を掛けた」
ランから目を背けずに呟く。
「お主はお主の目的があった故、致し方あるまい。お主もわらわも手は二本と変わらぬ。足りなければ空いている者が手を貸すのは当たり前のことじゃろう?」
「まあお優しい事♩ 主任二人の差は先見の目があるかどうかだと思うけど、ね♩」
「ローナ……さん?」
離れた場所から話に割り込む。反応を示したのはレベッカのみ。
気にぜずそのままカプセルに近付き四人が見渡せる場所で立ち止まる。
「そして椿……さん♩ 貴方はそれこそこの事態をどう収めるつもり?」
この事態……つまり落とし所。
これは「消失現象」だけではない。アリスやリンランを含めた全てを指している。
それはこの事態を招いた責任はサラよりも椿が締める割合の方が遥かに大きいと思うから。
「…………」
黙ったまま。それはローナの問い掛けの意味を理解している証。
「話し合う気は無いの? アイツと♩」
「…………」
変化無し。
──全く……どいつもこいつも意固地になってるし♩ ……遺恨を残したままだと後味悪いし、変われるキッカケを与えるか。
「椿さん、一つ貴方の考えを聞かせて♩ 何故あのタイミングで「消失」を起こしたの? それをアリスは何故容認していたと思います?」
その問い掛けにピクリと反応を示す。
「サラ♩」
今度はサラに視線を向ける。
「サラは何故理由を言えないの? そこまでアイツに気を使う必要がある?」
椿と同じ反応をする。
サラが言えない理由、それはアイツの見えない部分の行いを知っているからだろう。かくいう自分も「アレ」を見るまではアイツの真意がイマイチ読めなかった、が今では何となく想像が付く。
なので代わりに説明してあげても良いのだが、言ったら言ったでアリスがドヤ顔になりそうなので、時が来る迄は放置を決め込む。
「貴方達二人の信念はとても立派♩ でもその信念のせいで本質が見えていないの♩ だからあの女狐に良いように付け込まれてるのよ♩」
敢えて「付け込まれる」という言葉を使う。
すると二人が同時にローナに視線を向けてきた。
その眼差しに敢えて無視を決め込む。
いい大人なんだからこれ以上は自分で考えろ、と……
「最後に、レベッカさん……でいいのよね?」
「は、はいそうです」
「貴方に言った言葉を覚えている?」
「言葉? 「工房」での? は、はい」
「貴方には「接し方」について言っておいたわよね? それとも具体的に指摘しないとダメ? そこまで私にさせるのなら貴方もそこの二人と同類♩ これ以上私が貴方達に付き合う義理はないし、それこそ時間の無駄でしかない♩」
「…………」
考え込むレベッカ。
ハッキリ言って、もうこの三人がいなくても「消失」を終わらせられる。
ただそれでは今回、他人の為に身を粉にして頑張っているあの子達が納得しないだろう。
だから見捨てたくはない。
「ろ、ローナよ、ちと言い過ぎ……」
「黙らっしゃいこのヘタレが♩ 主任も事態の深刻さは理解してるでしょ?」
「ヒッ!」
お前も黙っていないで文句の一つでも言え! と冷めた横目で一喝されると頭を抱えてサラの背に隠れてしまう。
ローナは過去に拘らない、とてもポジティブな持ち主。
失敗は自分が未熟だから起きた。
後悔している暇があるならそこから学び、同様の失敗をしないように必死に考え行動すればいいと考えている。
だから天探女を始め、目の前の三人には言いたい事が順番待ちしている状態なのだ。
「もう一つ、今繋がりが途切れているのは貴方が原因で間違いない?」
「は、はい」
「なら三人共、感傷に慕っている時間はもう残されていない♩ なので貴方達は今後どうするかを今すぐ決めなさい♩ その間、私達が時間を稼ぐから♩ それとランの身柄はこちらで預かるわね♩」
そのまま出口へと体の向きを変える。そしてマリマキにアイコンタクトを送り一緒に出て行くように促す。
「主任、三人を頼むわよ?」
「はへ? ま、任せておくのじゃ!」
出口へと向かう途中、振り向かずに呟くと、聞こえたようで慌てて返事をした。
「もう直ぐここにアリスがやって来る♩ その時までに答えを出しておく事♩」
あのプライドばかり高いツンデレは……陰でコソコソ動いてるから誤解されるのよ♩
戦闘確定……結局は拗れたか……これじゃアリスの方がまだマシに思える♩
と口には出さずに一人愚痴る。そのままマリマキ達と一緒に治療室を出る。
「それじゃみんな頼むわね♪」
マリマキがニヤリと頷きそのまま転送装置へ。
後ろ姿を見送りつつミアを呼び出す。
(フォローよろしく♪)
(……そっちにも基地AI使って、いい?)
(勿論……ところで今の権限者は誰?)
(……まだアーちゃんになってる、ね)
何故? と思いつつ、
(なら好都合♪ 一応変更不可にしてから好きに使って良し♪)
と許可を出す。
まあサラなりに考えがあっての措置なのだろう。
こちらとしては天探女の方が御し易いし、発覚してもこの手の小細工には喜んで協力してくれる筈。
「よし、こんなところか♪」
これからやろうとしているのは徹底したアリスに対する嫌がらせ。
我々も良いように使われてきたのだ。最後に憂さ晴らししないと気が済まない。
(……ローちゃん、や)
(な~に~ノア?)
(……来た、で~)
(アリス?)
(……と仲間達、かな?)
(来たか♩ それじゃ手筈通りに♩)
会話を終えると軽く目を瞑る。
──結局、アリスも椿も私達も、そして「長達」も、真の黒幕が描いたストーリにそって演じていたってところね♩……
口元に笑みを浮かべる。
──まあ確かにこれが最善なのかもしれない。
目を開け両手を上げて背伸びをする。
──だからって私をコキ使い過ぎじゃない?
誰も見ていないのをよいことに、肩を落としてらしくない大きなため息を一つ。
──まあ……いっか!
とある場所へ一人向かった。
さあ楽しいラストバトルの幕開けだ!
次回も一週間以内に投稿します。
一応200話、年内完結を目指していますがかなり微妙なところです。
それと完結後にシェリーとマリとルーシー、そして迷宮探索の続きを入れる予定です。
もう直ぐ結末を迎えますが、最後まで温かい目で見守って頂けると幸いです。




