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未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
それぞれの思いの終着点
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発見!

 ……うん、完結したらパーティーの続きを書こ。残った者全員参加で。

 女主任二人とクレア姉妹も強制参加。

 足りない分は葵とルーシー巻き込んで。

 ……既に小隊規模やん。

 あ、あとシェリーとマキの件も忘れずに。

 あの艦が向いていた方向をリストと照らし合わせると運が良い事に「遺跡」がある惑星が一つしかなかった。

 そこへは凡そ十分。


(……成程……うん……それでいい。……大丈夫、判断はするから……うん、その時は貴方が最善と思える行動を取って…………そう、言わなくていい……)


 現在、奴を追うため跳躍の真っ最中。

 一息ついてから静かに目を開けるとセバスチャンが話し掛けてきた。


「お話は終わりましたか?」

「ええお待たせ。それよりどう思う?」

「先程の艦、でしょうか?」

「そう」

「先ず状況を整理いたしましょう」


 あの時の映像を再度映す。

 先程見掛けた探索艦。

 相手との距離は約二光秒。

 当初は白色卵型であったことから移動中であったと思われる。

 そして形状変化をしそのまま跳躍して行った


 この間、僅か二秒。


「こちらに気付いて……ってワケではなさそうね」

「その通りかと、はい」


 いくら優秀な探索艦とはいえこちらを認識と同時に跳躍は出来ない。

 最低でも形状変化→跳躍開始まで一秒強は掛かる。

 しかも見ていた光景は二秒前。

 つまり奴はこちらの到着と同時に跳躍したことになる。


 来ることが分かっていた?

 それはあり得ない。


 今は単独行動中でサラと別れて以降、誰とも会っていないし、遭遇時点まで誰とも連絡を取っていない。


 尾行されていた?

 可能性も無きにしも非ずだが、例の第六世代型と仮定しても跳躍装置だけは性能に変わりがないので第七世代艦(セバスチャン)よりも先回りは物理的に不可能。

 まあサラとレイアで既に二艦。それ以外にも複数いそうなニュアンスだったので、お互い連携しているのかもしれない。


 第五世代艦?

 これはアリかも。


 介入出来るってことは盗聴も出来るとみるべき。

 だとしたらレベッカが? 何の為に?


 いや彼女は今忙しいのでこちらにかまけている余裕は無いのでは?


「一つ聞いてもいい?」

「はい、何でしょうか?」

「私が覚醒したことにより貴方はどこが変わった?」

「役割が追加されたのに伴い情報量が格段に増えました、はい」

「それ以外には?」


「契約した探索者の方の性格に合わせた上で、基本はアルテミスと同じ「あの方」の下へ「贄」を無事送り届けるのが主な役割となりますが、はい」


「それは私をってこと?」

「違います」

「違うの? では誰を?」

「もう答えは出ているのでは?」

「エマ……とエリーさん?」


「いえ違います」


「違うの? 何処が?」

「お二人ではなくお一人です」

「……?」


「旅立つ「贄」はお一人。選ばれた方を無事に送り出すのが(わたくし)の役目。それには菜緒様の御助力が必要不可欠。その為に私は貴方にお仕えしているのです、はい」


「微妙な言い回し方ね」


「恐れ入ります」


 嫌味と分かった上での返答。


 こんな設定にしたつもりはないんだが……

 けど……悪い気はしない。


「で、誰?」

「四名の内、一番近いのは……エマ様」

「それは何故?」

「「消失」を収める「力」を保持していらっしゃるのはあの方のみ」

「……椿の力よね?」

「いえ厳密には三人分です」

「椿と彼女の分と……桜さんの?」

「はい」

「なら問題は無いんじゃない?」


「「消失」を収めるだけならば」


「? 何、その気になる言い方?」


「そこで菜緒様の出番となるのですが……お気付きでないご様子なのでヒントをお出ししますが、お一人で向かわれても帰還手段が御座いません」


「何故?」


 エマは「思いの力」は持っているのに?


「頼みの力は「他人」や「物」にしか作用しません。そこは確定しております。間違いありません、はい」


「…………はい?」


「なので帰る手段が御座いません」


 ……はい? はい? き、聞いてない、っていうかそこまで頭が回らなかった!


 確かに自分に対して力を使えるなら、桜はこちらに戻って来ても良さそうだか未だに向こう側に行ったきり。

 使命感や他に理由があるからとも思えなくもないが、今までやり直せるチャンスがあったのにそうしないのは戻りたくても戻れないから?


 それともう一つ、


「も……もしかして()()は同行出来ないの⁉︎」


「確定している今では残りの「枠」はありません」


「その事をアルテミスやミケちゃんは?」


「当然知っておりますし、関係している艦達も既に承知しているかと」

「なら敢えて黙っていると?」

「そのようですね。どのような対応を取るかは艦に一任されているので」


 第一候補がエマなのは「椿の力」を持っているから、だろう。

 クレア姉妹も椿の遺伝子を受け継いでいるとはいえ厳密には他人の遺伝子が混ざっている。それはエマ姉妹も同じ筈。

 唯一、違いがあるとすればエマの中にある「椿の力」しかない。


 残り枠が無いのも、桜は椿の力を携えてあちらの世界に渡ったが為に、椿本人か彼女の力を保持している者しか渡れない、つまり初めに渡った二人にしか権利が無いのだろう。

 そこにエリーが含まれているのは、エマにもしもが起こった際の控えとして、なのかもしれない。


 アルテミス達が二人に説明していないのは……まあ順当な判断だろう。そこに異論を挟むつもりは無い。


「なら「椿の力」を他の人に……」

「どの様に、ですか? ()()は受け渡しの方法をご存知で? それにその手段は今からでは色々と間に合わないかと」


 一瞬頭の中に、決して言ってはならない悪魔の囁きが聞こえたのでそれを言いかけたところ冷淡な声色のセバスチャンに遮られる。


 自分さえ、エマさえ無事なら……と。


 たとえ自ら進んで「贄」になろうという崇高な者がいたとしても、それを他人が一言でも口にしてしまえばサラが嫌いな「あいつら」と何ら変わりがないし、この場にいる資格は失われてしまう。

 それは仲間を守ろうと今もなお必死で戦っている者達への裏切り行為に他ならない。


 そんな菜緒の気持ちを察してか、セバスチャンは反論出来ない事柄を持ち出し突き放す言い方で返してくれた。


 受け渡しに関しても確かに懸念材料。

 アリスや椿に方法を聞けていない以上、あちらに渡った後にぶっつけ本番、桜に教えて貰うことになる。


「じゃ、じゃあ『思いの力』はどの様な条件下なら使えるの⁈」


「あくまでも過去の出来事から推測した範囲内ですが、力が行使可能な状態で『見えている物の中から任意の箇所』に対して『自分がいる世界からあちらの世界へと送り出す』ではないでしょうか」


「なら仮にエマが一人で渡って桜さんを『思いの力』で帰還させる。その後、彼女はどうやって帰還すれば⁇」


 力を昇華し「消失」が収まった後では自力で帰ってくる(ほか)、手段が無い。


「…………()()()()()奇跡を待つ以外に手は」


 本来「奇跡」とは運要素も含め人の手では絶対に成し得ない幸運が起こった場合を指す。

 AIが使う「奇跡」とは0%。彼が持ち合わせている情報の中に解決する手段は一文字も存在しない、ということ。


 他人にしか行使出来ない……


 こちらには複数人いるが、あちらの世界にはアリス姉妹以外に「贄」はいないと言っていた。

 それが事実なら向こう側の協力は期待出来ない。


 桜には人を送るだけの力は残されていないかもしれない。

 その恐れがある為に椿に力を返しても意味が無い。

 なのであちらに渡り桜と会い、力の使い方を教わる。

 そして「消失現象」を収めてから椿の力を使い桜を帰還させる。

 そこでエマとエリー、お互いの力を相手に使い各々帰還する、予定だった。


 桜を戻してしまったら……エマ一人残されてしまう。


「なら異なる宇宙(あちら側)にいる者を呼び寄せるのは? 可能?」


 それしか思い浮かばない。


「流石菜緒様。ですが前例がありませんので何とも」


 確かにそうだ。

 椿も桜も送るだけで呼び寄せてはいない。

 けどポジティブに捉えれば……


「不可能では無い?」

「無くはないかと」


 ん?


「何?」

「前例も確証もないので」

「ハッキリと言いなさい‼︎」


「それでは……先ず「贄」の方々は力を保持したまま世界を渡られていらっしゃいますが、それは見方を変えれば「力が移動している」と言えません?」


「……それで?」


「人を媒体としているだけで、世界を超えた力のやり取り自体は問題ないのかもしれません」


「こちら側からあちらで「消失」を起こせると?」

「あくまでも仮定に過ぎません。ただ出来るとしても……」


「しても?」


「あちらの世界の位置の特定が難しいので」


「位置? 特定?」


「はい。認知しても現認出来なければ無いも同然。存在していない目標物を探り当てるのは事実上不可能かと。分かり易くご説明すれば、大海原に小魚が一匹だけ泳いでいたとします。菜緒様がその魚を狙って一本釣りしようと適当に針を落す。釣れると思いますか?」


「……無理」


「見えており、さらに目の前を泳いでいるならまだしも、どこにいるか分からない、ましてや見えていない者を探り当てピンポイントで「消失」を起こせなければ呼び戻すのは不可能かと」


「それなら繋がって(リンクして)いれば?」


「存在を感じれるだけで位置の特定までは不可能。アリス様や椿様、もしくは菜緒様を以てしても不可能な作業をエリー様に要求するのは鬼畜以外の何者でもありませんか?」


「なら位置さえ特定できれば?」


「不可能では無いかと」


「因みに艦同士では?」


「探索者の繋がり(リンク)以上の機能は期待しないで下さい」


 ここに来て……でも何かしらの方法が有る筈。


「何故エマ様が特別なのかをもう一度……いえ、跳躍を終了します」


「……?」


 先程から歯切れの悪い受け応え。正解を知っていながら言えないといったもどかしさを感じる。

 その勘を信じで「言えない」と仮定した場合、艦AIに命令出来る者は……主任達を除けば三人、いや主体的な立場ではない一人は除外して二人。


 一体どちらの指示? ん? ……()()


 と宣言通り跳躍が終わり一瞬で周りが暗くなる。

 すると正面に先程と同じく惑星が二つ。そばには輝く探索艦が。


「いた!」

「様子が変です」


 拡大画像には先程とは違い白色円錐形で待機? している姿が。


「ワザと? 待っていた?」

「のようです。あっ跳躍しました」

「付いて来いっていってるような」

「そのようです。では再跳躍致します」


 前回同様、次の目標も重なることなく一点に絞れた。



 今の内に何か胃に入れておこうと思い「Cエリア印」である「探索艦非常時用レーション」を出して貰う。

 指示を出すと壁面から、スプーンと先に飴玉の形をした固形物が菜緒に向けてゆっくりと出てきた。


 菜緒はこのレーションを口にするのは実は二度目。

 一度目は主任代行となった際に班長から探索艦の装備品の説明を受けたのだが「どんな食感と味なの?」と疑問に思い聞いたところ「グミ」に近いと教えられた。


 立場上、試食しておかないと、と食べてみたら食感はグミそのもの。仄かに甘味を感じるだけで素っ気も無かったので担当班長に皆の意見を取り入れたCエリア風アレンジを加える様に指示しておいた。

 その後、多忙な時期を過ごしたので結果がどうなったか、試食のタイミングを逃していたのを思い出した。


 形や大きさは前回と変わらず。

 栄養価は言うまでも無く、胃に入れば適度な大きさに膨らみ空腹を満たしてくれる、筈。


 問題は味。

 スプーンを持ち口へ。


「……な、何これ……」


 うーまーいーぞー!


 目と口から光が溢れ出す。


「菜緒様、お楽しみのところ申し訳ありませんがもう直ぐ到着します」


「……へ? あーゴメンなさい」


 甘味、塩味、酸味、苦味、うま味が過度に主義主張をせず調和が取れている。

 今食べたレーション。どうやって作ったの?


 いや今はレーションよりも……


「逃げている? 探索艦は何者かしら?」

「分かりません、が直ぐに答えは出そうです」

「何故?」

「次の目標に到着です」


 球体内(コックピット)が暗くなる。

 かなり近距離、とはいえ数千光年の距離を二分も掛からず駆け抜けた。

 そこには先程と同じく二重惑星が。

 ただ先行していた艦の姿はどこにもない。


「見失った? それとも隠れた?」

「センサーには何も……いえ、発見しました!」

「何処?」


 惑星の片方、大気圏内まで画像が寄ってゆく。すると若干揺らいで見える白色球体の物体が空に浮いていた。


「いつの間にあそこまで。急いで接近」

「はい」


 直ぐに大気圏手前に到着。


「菜緒様、目標を発見」

「目標? もしや」

「はいご覧ください」


 まだ大気圏寸前なので空間モニターの画像は空気の影響でほんの僅かに揺らいでいるが、大草原の真ん中で仰向けで寝転んでいるレイアとクレアと思しき二人が長閑にこちらを見上げている姿が映っていた。


「こっちに気付いていそうね。連絡は取れる?」

「はい……どうぞ」


「二人共、久しぶりね」


 すると二人はピクリと反応、お互い顔を見合わせてから再度上空(こちら)を見上げる。


『その声は……菜緒?』


 映像に合わせて声が聞こえた。

 瓜二つの双子の片方が若干驚いた表情で返事をしている。


「そう、元気そうねクレア」


 ということはこっちがクレア。

 どちらも見た目は別れた時と変わっておらず外見では見分けが付かない。

 だが一つだけハッキリと分かる程、見た目に大きな変化があった。


 二人共、Aエリア基地の時と比べてとても活き活きとした清々しい表情をしていた。


『菜緒? ……お? あのいい身体したツンツン姉ちゃんか?』


 隣で寝ているレイアがクレアをチラ見する。

 するとため息混じりに頷く。


『ツンツンって……』

『で、こんな辺境に何の用事だ? 俺達の憩いの邪魔をしに来たのか? でなけりゃ俺に抱かれにきたとか?』


「……はい?」


『今「はい」っていったよな⁉ そうか、俺の体が目当てか! てか俺も同じだからその気持ちよーーく分かる。俺もここ暫くご無沙汰だったからストレスが溜まっちまってよ。クレアに手を出す訳にはいかないし、お前の身体なら鬱憤晴らすには持ってこいの相手だ。早く降りてきてお互い楽しもうぜ! って痛て!』


 へ? 相手って? もしかしてそっち系? そう言えばエマにキスしていたような。


 寝ころんだ状態でニヤケながらこちらに手招きをしていたが脇からクレアに頭を叩かれた。


『叩かなくてもいいだろ⁉』

『まだその趣味続けてるの?』

『ああこれだけは止められない。ってか今のクレアなら俺の気持ち理解出来るだろ?』


 と言うとさり気無く宇宙服の上から妹の太腿をニヤケ顔で軽く撫でてくる。


『…………』


 レイアをギロリと睨む。

 するとビクッとし直ぐに手を引っ込めた。


『うう……わ、分かったゴメンよクレア。だから怒らないでおくれ』

『分かれば良し』

『で、でもよ、ストレス溜めるのは体に良くないってゆーか……だからなチョットだけ、な?』

『もう、菜緒がOKしたらね』

『よっしゃ――――! なら決まりだ! おいお前早く降りてこい!』


 歓喜の雄たけびを上げる。そして両足を真上に持ち上げ勢いをつけてヒョイっと軽々起き上がると、立派な山脈をブルンと震わせながら片腕をこちらに向け手招きをして見せた。


 ──えーーと、私の合意って。勝手に決めないで欲しいんだけど……


 しかし相変わらず身軽なヤツ。

 よく見ると舌舐めずりまでしている。

 それを見て自分の貞操に危機が訪れている気がし始めた。


 ──えーーと、出来れば近寄りたくないな……


 クレアを見ると……いつの間にか立ち上がり、何故か姉から遠ざかっていく。


「ちょ、クレアどこ行くの? 貴方達二人に話があるの」


『え? どこって私がいたらお楽しみの邪魔でしょ? 邪魔するつもりも無いし、事が済むまで離れててあげる。話はその後にゆっくりしましょ?』


「こ、事が済む⁇」


『あ、レイアは自分勝手に話進めるから嫌ならハッキリ言ってね。でも安易に断ると子供みたいに機嫌悪くなるから』


「え? え?」


『俺はガキか?』

『違うの? 大人なら我儘言わないよね?』


『い、いや……はいその通りです』


 目を背けて畏まる。


『誰に対してもそれくらい素直ならいいんだけど……あ、この惑星(ここ)には私達しかいないからどんな声出しても大丈夫。それでは二人共ごゆっくり~♡』


 こちらに向けウインクした。


「ちょ、待って! 一つだけ教えて。お姉さんは何がしたいの?」


『……多分貴方が想像している通り』


「…………」


 含み笑いを残して離れていく。

 見付けたというのにこちらの話も聞かずに妙な展開にされてしまった。


 それより「想像」って……一体()()()だろう……


 うーん……どっちにしよう……色々と。

 実は作者の中では「誰を」行かせるか、未だに決められずにいます。

 初めはエマ一人の予定でしたが今は3パターンほど。ただどのパターンになったとしても結末には変わりが無いのでもう少しだけ様子をみます。

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