心配事?
寝ながらポチポチしたので後日追記するかもしれません……
*2021/11/9 若干ですが追記と修正を行いました
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サラと別れ二人を探し始めてから三ヶ所目となる「遺跡」がある惑星の上空。
万が一にも見逃すワケにはいかないと、艦の全センサーを総動員して何重にも探査を掛けているのでどうしても時間が掛っていた。
ノアが我々の艦の能力を向上させてくれたとは言え、彼女らを見付けられるとは限らない。
もしあちらの性能が遥か上にあり、無線封鎖をした上で艦に迷彩でも掛けていたら気付けずに見逃してしまうかもしれない。なので念には念を入れて。
「菜緒様、探査終了。こちらには居られません」
──ここでもなかった……か。
セバスチャンの声が何処か済まなそうに聞こえてしまう。
「了解。次に行きましょう!」
そう聞こえたのは先が見通せないから。
今の自分の気持ちが沈んでいるからそう聞こえたのだ。
だから敢えて元気良く振る舞ってみせる。
「承知しました。それでは跳躍に入ります」
Aエリアで二人と別れ、その後総本部に戻った所までは判明している。
その後の行動について、天探女とサラの二人が申し合わせたかのように同じ話をしていた。
つまりレイアもクレアも「過去」の出来事、そして自分達の生い立ちから役割迄、知った上で自分達が先日までしていた行為と同じ事をしていると思われる。
力を蓄えてあちらの世界へと渡る準備をしている、と。
そこまではいい。
権利と覚悟さえあれば誰が「贄」になっても構わない。
今では不確かで希望的推測となるが、役割を果たした後の「帰還手段」も判明している。
だが『二人を止めろ』と言われた。
確かにレイアとクレアは「帰る手段」を知らないのかもしれない。
今の自分同様、行ってはならない理由を知らないのかもしれない。
なら止める理由を伝えて納得して貰えば済むのでは? と思われるがそうではなく「止めろ」とだけ言われた。
何故? と聞けば「お前なら分かる」とだけ。
実の所、クレアを探していたので都合が良かった。
だがサラも天探女と同じく彼女達の居場所の特定には至らなかった。
ただ会えたお陰でいくつかの疑問は解消した。
先ずはサラのその後。
どうやら政府との交渉は失敗したらしい。
そのせいで「総本部」にいるとのこと。
サラの目的はいくつかあったと思う。
<立場ある者達が自ら世の仕組みを変えた上で椿と直接会い過去の経緯を説明させる>
この目的は既に頓挫していると思われる。
彼女がいたのは探索部でもなく整合部でもなく総本部がある月面。
この状況下、政府機能が集中している「地球」にいない時点で政府との交渉は失敗とみるべきだろう。
もしくは政府の要職入りを果たしたとか、その手で権力を掌握し成り替わったか。
失敗したのなら後者に変えないと詰みとなる。
何故なら椿に会うにはどうしても政府代表としての立場が必要だから。
三百億という人口。
広範囲に活動領域を拡げている人類。
それらの面倒を見ている政府の要職に就いている人数は、AIの補助があったとしても数百人はいると思われる。
それ程の人数を僅かな時間で一人一人を説得するには時間が無さすぎる。
もし拒否した者が一人でもいたら政府が心から謝罪した事にはならない。
<黙っていれば分かるものか>
その通りかもしれない、がそんな小手先だけの子供騙しをサラが受け入れるとは到底思えない。
仮に「自分なら」時間的猶予が無い、後がない待った無しの状況を理解せず、理解しても決断すら出来ない者がいたら躊躇いも無く権力の場から強制退場してもらうだろう。
退場とはいっても別に死んでもらう必要は無い。単に「要職」から降りて貰えば良いだけ。
強制的に辞職して貰う、脅すなり事故に見せかけて辞めて貰う等、手はいくらでもある。
そう最後の手段、一番手っ取り早いのは権力というか政府を掌握してしまえばいい。
その上で(裏技にはなるが)空席となった役職に誰かを就任させる。
就任する者はサラと志を同じくする者、またはサラ自身が兼任しても良い。
そして条件が揃い次第、総意を携えた政府の代表が椿の前に現れれば良い。
そこで『二度と過去の過ちは繰り返させない』とあの椿の前で約束をする。
ただし一度約束を交わしたら守り通さなければならない。
万が一、要職に付いている者が過去を繰り返した場合「消失現象」によらなくても椿の手により世界の破滅がもたらされるだろう。
それを防ぐ確実な手段は全員蹴落としサラ一人で全ての面倒を見る。これならクレームのつけようがない。
勿論一人で全ての面倒を見るのは不可能。なので適任な者を探し出し道筋を付けた上で早々に任せることになるが、これなら約束を守った事には変わりない。
ただ政府を掌握するにはどうしても無視出来ない奴らがいる。
それは「整合部」と「情報部」の存在。
政府に手を出そうとすれば「情報部」に気付かれ、結果「整合部」が介入してくる。
ただ今のところ二部門が介入する・した兆候は微塵も感じられない。
唯一実感出来たのは情報部からのメールだけ。
しかもかなり好意的な内容。
今回自分を招待してくれた「長」とは間違いなく情報部の長だろう。
ローナ姉妹と関りがある情報部。
部の目論見は知らないがサラの願いに忖度してくれたのかもしれない。
もう一つの整合部。
内情は全く知らないが、サラに手を貸す理由が思い付かない。
というのも以前のサラから伝わってきた整合部のニュアンスは旧体制そのもの。
戦い直後の混乱の最中にエリア主任を呼び付ける様な、傲慢とも取れかねないそんな組織がサラに手を貸すとは思えない。
確か主任は「反乱が起きた」と言っていた。
彼女が原因なのは想像が付く。
なのに今現在、整合部は平静を保っているように思えるので、恐らく今現在はサラと整合部本部とは敵対していないと思われる。
でなければ「総本部」にいられる訳が無い。
あそこは政府特殊四部門を統括している所。
権限が無ければそこにはいられない。
裏を返せば権限がある、という証。
そこで疑問となるのが「抑える為の条件の条件」というサラの言葉。
権限はあるが完全ではない。
だが整合部を掌握したという事実さえ揃えば条件が揃い完璧となる。
「残党」さえ始末出来れば……
そうなれば「抑えられる」と。
もう一つ、経緯は知らないが総本部所属のレイアが探索者でないにも関わらず何故探索艦に乗れていたのか。
それは先程、サラ主任からヒントを貰った。
彼女達姉妹が乗っていた艦は総本部管轄の第六世代艦。
得た情報では予測通り、スペックのほぼ全てが第七世代艦の二割増し。
特に外装を構成している物質の強度がハッキリと分かる程の差があった。
さらに特筆する点が一点。
契約していない探索者でも操れる、という点。
搭乗者を選ばない、つまり艦に乗り込めさえすれば誰でも動かせる、という事。
その証拠に探索者で無いにも関わらずサラ専用となる艦があるそうだ。
汎用性を高めるという点だけを取れば素晴らしいと思えるが、良く考えてみれば「椿」や「レベッカ」の「贄システム」の思惑とは相反するシステムを採用しているのは明らかにおかしい。
さらに探索艦と銘打っているにも関わらず、何故総本部管轄なのか。
誰かが必要だから造った。
なら誰の為に?
椿ではない。
彼女の既定路線に第六世代艦のシステムは不要。
もし世界を渡るのに必須な乗り物というのなら、初めから可能性がある者達に適当な理由を付けて第六世代型を配備すればいい。なのにそうせず、この期に及んでも椿自身から何の発言も聞かれない。
レイアのため? ……彼女が特別とは思えない。サラ自身が「止めろ」と言っている今では。
サラのため? ……プレゼントとしては高価すぎる。アリそうだがあり得ない。
残るは四賢者と繋がりがあるアリスのみ。
彼女には第七世代の探索艦がある。移動の手足としては充分すぎるスペックの乗り物。
ましてや彼女は世界を渡ってきた「贄」であり、本来ならこちらの「贄」の為に用意された艦は必要ない筈。
なら彼女の野望の為に用意された物。
──何の目的で?
「消失現象」を収めるには「力」が必要。その力を行使出来るのは人。
つまりアリス姉妹。
先日、あちらの世界から唐突に現れた同性能の艦。
あれは何かの前兆か合図。
間違いなくアリス関連。
それも姉の方。
力……そう言えば彼女の力はまだ椿の手元に。
──そうか。第六世代艦を造らせた真の目的は「その時の為の保険」なのね。
疑問を抱いた「抑える」との発言。
この時点で何となくだが意味を理解した。
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ここで探索者が知り得ない繋がりの原理の説明を少々。
先ず適性がある双子が訓練を積むことにより、心の中で相手を思うだけで距離に関係なくお互いの存在を「身近」に感じ取れるようになる。
この「身近」だが、人によって表現方法は異なり、
<気配がする>
<温もりを感じる>
<喜怒哀楽が分かる>
<何となく?>
と感じ方は千差万別。
血を分け合った姉妹でも一致しないのは、抱いている姉妹で「思いの力の源」が異なるからと考えられているが、正確なところは未だ判明していない。
では「感じる」から「会話」を成立させるにはどの様な方法を取っているのか?
その特殊な部分を補ってくれているのが探索艦のAI。
探索艦と呼ばれている艦に漏れなく搭載されている人工知能。
その艦AIは探索部本部の工房でしか作られていない。
アリスから得た技術を利用し世界で唯一探索部の工房でしか作れない、と聞けば部品一つに至るまで誰にも構造解析出来ない代物なのでは? と思われがちだが、ノアミアが弄れたことから一部を除き大半が現代科学で説明が付く物ばかり。
確かにブラックボックスと化してはいるが、原材料からAIとしての形になるまで全てこちらの世界で作られている。
なのに何故工房でしか作れないのか?
それはレベッカの細胞を組み込む必要があるから。
第一世代艦から実験を重ねたが第四世代型まで失敗の繰り返し。やっとの事で探索艦と呼べるものが完成したのが第五世代艦で今から三十数年前の事。
完成と時を同じくして「変革者」が現れたので、かねてより準備されていた探索部の創設に踏み切りめでたく量産化の運びとなるのだが、現在の第七に至るまで全ての艦のAIには漏れなくレベッカの細胞が組み込まれてある。
それを踏まえた上で、現在探索部を襲っている探索艦はレベッカが操っている。
それはアリスが構築してくれた「バイオロイドを操る技術」を利用している。
メリットもデメリットも承知の上でシステムと融合しレベッカは各艦と繋がっている。
探索者がペア同士で「会話」や「データのやり取り」を行えるのは、そのレベッカの繋がりを便乗しているから。
なので艦との通信が阻害されていたり、そもそも相棒となる艦がいない場合は成り立たない。
この技術、実はエマ達Bエリア探索者は知らずの内に利用している。
それはドリーにいるバイオロイド。
あれはアリスの世界の技術を利用して用意されたモノ。
サラから探索者用バイオロイドの要請が上がってきた際に探索部本部は総本部に話を通す。
すると「許可する代わりに全員分のサンプル(遺伝子)を送れ」と何故だか班長達の分まで要求してきた。
アリスとエリスの二名を除く探索者用十六体はあちらの世界の技術を用いて用意したモノ。
班長用と残り二名の分はこちらの倫理観に基づき古くからある技術で作られた遠隔操作用。
製造過程が異なるが、基地AIと星系AIが関与しているという点は同じ。
ドリーがあちらの世界に渡った際に、エマ達のバイオロイドは繋がったのに班長達は繋がらなかったのはこのような理由から。
簡単に纏めるれば、探索者が登録した自艦を通じて繋がりで通話なり情報のやり取りを行う場合、探索艦AI、厳密にはAIの一部にあるレベッカの細胞を利用してやり取りをしている。
なので脳内チップの電波が繋がる距離に艦がいないと通話が出来ない。
逆に電波が届く範囲に自艦がおり、さらに相手が出れる状態ならばいつでも繋がる、ということ。
但し自艦がいなくても繋げる手段はある。
先日エマ姉妹が自艦ではなくエリス艦で椿の研究所へと跳躍にて向かっている最中、そばにいたとはいえ電波でやり取り出来ない速度で移動していたにも関わらず、アルテミス達と「会話」が成立していた。
何故「会話」が成り立ったかと言えば理由は簡単、レベッカが許可したから。
つまり〈エマ達⇔エリア艦AI⇔レベッカ経由⇔アルテミス達〉とレベッカと艦達が繋がっている状態で、さらにレベッカが容認していたので話せていたのだ。
ここまでくれば「アリス」と「エリス(椿)」がどんな手段で繋がりしていたかがお分かり頂けたと思う。
二人はレベッカを通してやり取りをしていたのだ。
この件は「当事者」がいなくとも、関係者全員が集まり知り得た情報を出し合い精査すれば比較的簡単に導きだせると思われるのだが、時既に遅く全てが終わるまでその機会が巡ってくる事は無い。
さらに菜緒にはローナやサラといった「現状」を把握していそうな者達から情報を得る機会も無い。
今後は限られた情報を基に自ら考え、自ら判断し、最適な着地点を導き出さなければならない。
・・・・
椿とアリス、二人の間に交わされた「お互い干渉しない」という約束。
効力は……多分結果が出るまで。
それ以降、アリスも椿も「贄」として責任ある行動に移る筈。
但し「贄」としての能力が無い椿。
能力が無い、とアリスにいつ退場させられても可笑しくない。
だからアリスの「力」を奪い、だからこそ未だに返せずにいるのか。
片や約束を律義に守り結果……椿が納得するのを待ち続けるアリス。
そしてもう直ぐ結果が出る。
我々探索者の勝利という形で。
だが椿がもし落としどころを間違えたら……我々ではなくアリスが黙っていない気がする。
この舞台の裏で着々と計画を進めていたアリス。
用意周到な彼女のことだ、もしかしたらそちら方面も手を打っているのかもしれない。
そして心配事はまだある。
ラーナの件を報告しようとした際のローナの仕草。
何故あんな仕草をしたのか?
何を意味しているのか?
ラーナはエマから基地の防衛ともう一つ、アリスの姉の件を任されている。
防衛は天探女を始めとしたCの面々、そして今頃はDとAも駆け付けている筈なので、そちらの役目は既に終えているだろう。
残るはアリスの姉になるが、アリスがこの後に及んでまだ見つけていないのはあり得ないと考える。
「消失」が再開したので残り時間はあと僅か。
なのに用意周到な彼女が手を打っていないとは思えない。
「消失再開」しないと条件が揃わない、といった可能性もあるが、それは一歩間違えたら取り返しが付かない。
なら完璧を期す為に他の可能性を模索したり、誰かの協力を仰いても良さそうだがそんな素振りは見られず、本人の言動からは逆に余裕すら感じられた。
既に準備万端、後は実行に移すのみ。
ラーナはその内容を知ってしまった。
その内容に動揺してしまい、結果天探女に見抜かれた。
動揺が収まらないのは一人で抱え込んでいるから。
もし姉に相談していたら判断は姉がする。
その時点で重圧から解放される。
受け継いだ姉は妹が受け入れられない決断をするとは思えない。
なら姉に相談しても解決を見出せない、とラーナは判断したのだろう。
対するローナは妹が置かれている状況を察している筈。
その上で私にあの仕草をして見せた。
──口にするな……いやお前はこの件に関わるな、かな。
『役割はここから』
気にせず自分の役割を果たせ……か。
「菜緒様、そろそろ跳躍を終えますが」
目を開ける。
「了解」
真っ白だった球体モニターが一瞬で暗闇へと変わり全面に星々の灯りが、遠くに惑星が二つ輝いていた。
するとその惑星の一つに輝く何かが。そこに矢印アイコンが立つ……が直ぐに消えてしまう。
「何今のは?」
「跳躍する間際だったようです」
「誰だか分かる?」
「御覧ください」
眼前に空間モニターが現れ拡大された映像が表示される。
そこには主星からの光を反射させている白色卵型から漆黒円錐形へと変わり消え去る姿が映っていた。
「どう見ても探索艦よね?」
「はい。残念ながら情報連結する時間は御座いませんでした」
「なら分からないか……でも方角は」
「はい。それを基に次の予定は決めてあります」
「よし、そこに向かいましょう」
「ここはよろしいので?」
「構わない」
アレがレイア達とは限らない、がレイアならば追い掛けるのみ。
例えレイアでないとしても、この時期に「遺跡」がある惑星に近付く奴ならば何かしらを知っている可能性が高い。
もし自分と同じく二人を探しているのなら、見つかるまで次々と移動を繰り返す筈。
追い付く前に跳躍されたら、折角の手掛かりを失う羽目に。
どちらにしても賭けに変わりがない、がより高い可能性に掛けてみることにした。
先日「ハッブルレガシーフィールド」がネット上に公開されました。
NASAが打ち上げた「ハッブル宇宙望遠鏡」を使い何年も掛けて地道に撮影してきた画像。
一見して何も無い暗闇を拡大していくと……そこに色鮮やかな銀河が現れ、さらに拡大するとまた銀河が現れて……と素晴らしい光景に。
興味がある方は是非見て下さい。




