エリスと椿!
えーとこの展開で大丈夫だよね?
心身共に疲弊しており頭が全く回っておりません。昨日も6時間の残業でクタクタ。こんな状態なので後で修正・追記が入るかもしれません。
予めご承知下さい。
*今回は会話多めです
「エリス! ちっとツラ貸せ!」
「オヨよ? どしたノ〜? オモロい顔して〜?」
「悪かったな! これは生まれつきじゃ!」
「あハハハハ!」
いつもと変わらぬエリスを見て安心する、が聞きたい事が山積みなのを思い出し、また邪魔が入らぬうちに聞き出そうと凄味ながら詰め寄る。
だがエマの性格は良く知っているので凄んでもサラリと交わされてしまう。
「ねえねえ、それって私も面白いってことよね〜?」
エマの一歩後方にいたエリーが黒いオーラを纏いながら静かに呟く。
服装や髪型、性格から来ている表情や仕草の違い以外、同じ環境で育ってきた双子なので瓜二つなのは当たり前。
つまりエマと同じ顔をしているエリーもオモロいと言っているに等しい。
「ひっ! で、で〜なんジャ〜?」
只ならぬ不穏な空気を感じてたじろいでしまう。そこに逃げれないように二人が同時に両肩に手を伸ばしガッチリとホールドしてきた。
「何でお前の艦に椿がいたんだ? んー?」
隣ではエリーがウンウンと頷いて同調している。
「え、えーーーーと……ひ、拾ったんダナ」
椿をチラ見、冷や汗を流しながらの困り顔。
詰め寄る姉妹も普段なら気を使い違う責め方をする場面だが、そんな気遣いをする気はサラサラない。
「何処でだ?」
「そ、その辺ダネ」
「その辺ってどこ〜? いつ〜?」
見たことも無いエリーの和やか真顔で詰め寄られさらにたじろぐエリス。
「その前に……エリス、貴方は誰?」
突然椿が割り込んできた。
見ると真剣そのもの。雰囲気も今までとは違いどこか緊張感すら感じられる。
その雰囲気と視線に釣られ二人の視線も自然とエリスへと向けられる。
「(誰って?)」
「(どういう意味〜?)」
細めた目でエリスを見詰める椿。隣の黒服女性も同様に。
脇ではチラチラとアイコンタクトで会話をする姉妹。
「わ、私は……エリスちゃんデース」
か細い声で誰とも視線を合わせようとはしない。
「……そう。ならいい」
「あ、アレ〜?」
椿の反応が予想外だったのか驚いてしまう。
「貴方達二人には教えてあげる。私とエリスの関係」
「つ、椿様⁉︎」
初めて慌てた姿を見せる黒服女性。
先程アリスと擦れ違った際にも動じる様子を一切見せなかったが、今は困惑を隠そうともしない。
椿は黒服女性に体を向け、見上げる形で向き合う。
「いいの。彼女達には知る権利がある。いや知っておいて欲しいの。この二人にはね」
「……椿様がそうおっしゃるのでしたら」
ニコリと笑みを浮かべてからエマ達に向き直る。
「……エリスはね」
「「…………エリスは?」」
「エリスはね、私達の子、つまり私自身なの」
「「……………………へ?」」
二人の時が止まる。
「ん? 聞こえなかった? こ・ど・も」
「こ、子供って?」
「あ、あの子供〜?」
「そう。血の繋がった子ってこと」
「「えーーーーーー⁉︎」」
「? 何故に派手なリアクション? ……あ、そうか! 別にここから生まれたワケじゃないよ」
お腹をポンポンと叩いてみせる。
「当たり前です。そのお身体ではまだ早過ぎます」
椿を見ずにツッコミを入れてきた。
「何が早いの~?」
こちらもわざとらしくニヤケながら返す、が応じる事なく淡々と言い返す。
「全てです」「そうなの~?」「……産みたいのですか?」「一度くらいはね~」
「なら先ずお相手となる方を探すところから始めないと」
「え~~面倒クサ~~ならいい」
興味が無くなってしまったようだ。
というか軽い? やり取りに感じたので二人にとっては普段通りのスキンシップをしていただけかも。
身体上はまだ十二歳程度の幼児体型の未成年扱い。当然と言えば当然。
そのやり取りを呆気に取られながら眺めていたが、最近同じ言葉を聞いて同じリアクションをした記憶が蘇り、そのお蔭でふと我に帰る。
「そ、そこの二人話を逸さないで! エリス! 今のは事実?」
当のエリスはというと……話題が逸れたのに安堵・油断していたが急に自分に戻ってきたので戸惑ってしまう。
「は、ハーーイ、エリスちゃん……」
「いつものノリで誤魔化さないの!」
「どうやら事実みたい~」
エマ達には通用しなかった。
「私は嘘は付いてないよ?」
「な、なら相手は誰?」
「そうそう~」
「「「?」」」
その問いにエリスまで、えっ? といった表情で見返す。
三人の反応で微妙な空気が漂い始める。
「……見て分からない?」
間を置いて自称母親が口を開く。
「「?」」
「姿は瓜二つ、だと思いますが?」
瓜二つ、と聞きエリスを見る。こちらも間を置いてからハッと思い出す。
「「………………アリス?」」
椿を見ると大きく一回頷いた。
そのまま首だけをエリスに向ける。
するとバツが悪そうに速攻目を背けた。
つまり椿とアリスの遺伝子情報を元に生まれてきたということだ。
「な、ならエリスも私達と同じなの?」
「「同じ」のニュアンスが今一理解出来ないけど……多分貴方が思い描いたのとはちょっと違う。エリスはね「贄」じゃないから」
「「贄じゃない?」」
「そう。エリスはね、私達の為に生まれてきた子」
「「?」」
「私の中に私の力はもう残ってはいない。あの時お姉ちゃんに渡しちゃったからね」
淋しそうな笑顔に変わる。
「だからお姉ちゃんとの絆は今の私には感じられない」
「桜との繋がりが……切れてるの?」
「貴方達流に言えばそう」
「「…………」」
「あの時からお姉ちゃんは向こうの世界で独りぼっち。そんな状態で繋がりが切れてたらどう思う?」
「「…………」」
あの旅立ちの桜の心情を思い出すと絶望……と言う言葉しか思い浮かばない。
「私に何か起きたのかも、って心配するでしょ? だからエリスを生み出したの。私は生きているよって伝える為に」
「どうやって伝えてるの?」
「力を渡した私にはもう適性は残されてはいない。「思い」があっても適性が無いから力を留めておくのも無理。そしてお姉ちゃんがいないから力の源となる「思い」も生み出せない。そこであの人と相談してエリスを使い「思い」を送り込んで私が生きているのを知らせることにしたの」
「あの人ってアリスよね?」
「そう」
「そこまでは理解した。でもなんでアリスの遺伝子なの?」
「「全ての力」を渡して「贄」でなくなった私には探索艦を操る適性が無かった。でも「思いの力」を「生み出す」にはどうしても探索艦が必要だった。だから「適正」があるあの人の遺伝子を頼ることにしたの。私の代わりに、椿の「贄」としての「適正」を持った「子」を生みだす力をね」
「「…………」」
「実はね、私の遺伝子だけだとどうしても上手く行かなくてね。当時実験に参加していた子達のデーターも参考にしたけど失敗ばかり」
「失敗?」
「そう、始めたばかりの頃は生まれてくる子は皆何故か短命で長生き出来なかった。自分と同じ姿になった途端、私よりも先立っていっちゃう。とっても可哀想だったけどお姉ちゃんに会うまでは止めるつもりはなかった」
「「…………」」
「でも貴方達の二人の実験の成功とあの人の遺伝子を手に入れて使ったら、やっと私達と同じ特徴を持った子が誕生したの」
「私達二人?」
「そう。貴方達二人は「贄」の役割も果たせるし、特にエマはお姉ちゃんに「力」を渡す役割もしてくれているんだよ」
「「え?」」
「そこは私からご説明致します。エリー様の思いの源は「妹の幸せ」。エマ様の思いの源は「家族愛」と桜様の思いと重なる部分が多く御座います。そして桜様の遺伝子を組み込まれたお二方はエリス様同様に「思いの力」をあちらにいらっしゃる桜様の下へと送ってらっしゃるのです」
「ということは」
「はい。椿様のお力と桜様ご本人のお力があちらの世界にある。そして今でも僅かだと思いますが「力」は送られ続けている。つまり」
「お姉ちゃんは役割を果たせる可能性があるかもしれないってこと」
どこか寂し気な笑顔に見える。
そう感じたのは目の前にいる少女はそんな結末を望んではいないと私は知っているから、かもしれない。
姉の決意を尊重し姉と共に「贄」としての使命を全うしようと決めているのを。
桜の決意は今では知る手段が無い。力が回復していて心変わりしていなければそれで上手く行くのかもしれない。
だけど本当にそれでいいの?
なら桜は何故あんなにも悲しそうな顔をしていたの?
何故椿の力を私に託したの?
それは椿が来るのを待っているから。それは感じた。だから私に力を託したんだ、と。
何故会いたいのか……そこまでは流石に分からない。
もしかしたら終焉を感じ取り最後に一目だけでもと思っているのかもしれない。
それをもう一度確かめる手段も時間も無い。
エリスを見る。珍しく真顔をしていた。
今の説明で幾つか疑問が湧いてくる。
「思いを生み出す」のに何故探索艦が必要なのか?
それともう一つ。私達姉妹の「思い」が桜と同じ。
桜の遺伝子を使ったからとはいえ「思い」まで同じになるものなの?
それってただの偶然?
それとも必然?
「でもナ、それはあくまでも可能性なんだナ」
「そうあくまでも可能性の一つでしかない」
「だからこそ色々な手段を準備しておかないと二つの世界は終わってしまうのです」
「他に手段は無いの~?」
「私はお前ラの計画が一番だと思うケド。そこの二人が言った方法では世界は救えナイ」
エリスの発言に冷淡な目を向ける二人。
「大切な子」と言っている割に二人の雰囲気にどこか違和感を感じてしまう。
確かにエリスの言う通り。
だって椿の力はここにあるから。
ここで正直に打ち明けて椿に力を返したとする。
そこで「では私があちらの世界に行く」となってくれれば問題は解決……とはいかない気がする。
なぜなら桜の力が戻っているのかを調べる手段が無いのと、仮に上手く行っていたとし「消失現象」が解消した暁には二人、いや四人の身体はどうなってしまうか誰にも分からない。
もし止まっていた時が一気に動きだして身体の崩壊が始まったりしたら、私達姉妹の「二人を無事こちらの世界に帰還」させるという思惑がその時点で破綻してしまう。
そして一番の問題は、桜やアリスからは並々ならぬ決意を感じるが目の前にいる椿はどう考えているのか? だろう。
ここで「桜の気持ち」や「椿の力のありか」と私達の計画を伝え、説得の上で一緒に旅立つ。
リスクはかなり高いのかもしれないがこれなら二人は納得してくれるかも。
椿の目を見る。
椿も目を逸らす事なく見つめ返す。
「一つ聞いてもいい?」
「?」
「あなたウチの基地で「力」を使ったわよね?」
誰の力かは知った上での問い掛け。
「うん」
「力が無いのにどうやって? アレは誰の力?」
「あの人の力」
「その力はどうするの?」
「いずれは返す」
「いずれっていつ~? 何故今直ぐに返さないの~?」
「まだその時じゃないから」
「その時って?」
「今、探索部が置かれている状況は?」
「……襲撃! そう、何で襲われなきゃならないの?!」
「私がそう決めたから、かな?」
「そうじゃなくて理由!」
「理由か……忘れちゃった♡」
「誤魔化すな! どうしたら止めてくれるの?」
「あららそんなに結果を急がなくても。しょうがないヒントを教えてあげる。えーと一つは自分の為。もう一つはお姉ちゃんの為。そして私達家族の為。分かり易く言えば過去の清算」
「「…………」」
「貴方達はその為の判断材料」
「判断………」
「三つの内、家族の件は貴方達の上司が結果を出してくれると思う」
「上司? サラ?」
「そう。もし望む結果を携えた上で応えてくれたらお姉ちゃんの事も取りあえずは収めてあげる」
「残りの……あなたの件は?」
「それは貴方達の勝利を持って証明して見せて。全てはそこで終わるしそこから始まる。その結果が出るまでは力を返すつもりはないの」
「襲撃を止める気はないの~?」
「更々無い。例え最悪の結果になろうとも、ね」
感情の籠っていない笑顔で淡々と言い放つ。
雰囲気からして自らの意志を曲げる気は微塵もなさそう。
「それじゃ主任が間に合っても意味なくない~?」
確かにどれか一つでも欠けたら条件が成立しない。
「そんな程度なら0点。その程度の決意なら彼女達が可哀想だよ」
「彼女達?」
「貴方の大切な人」
「大切? ……クレア?」
「そうあの姉妹。あの姉妹は多分貴方達の……」「椿様」
言いかけたところで静止される。
「……そうだよね。そっちはあの人達のケジメ。私とは別の話。それより貴方達探索者は生き残ればいいだけ。勝てば未来という可能性が、負ければ全ての人が平等に無に帰すだけ。とっても単純で分かり易いでしょ?」
「「…………」」
「ここまで御膳立てしてあるんだからあまり深く考えないで気の赴くまま行動すればいい。それよりこんな所でノンビリと問答しててもいいのかな?」
「「?」」
「さっき言ったよね? 貴方達が置かれている状況は? 昔と違って再出発は効かないよ?」
「「?」」
首を傾げる。
二人の反応に軽い落胆をしてみせた。
「全く呑気なんだから。なら教えてあげる。Dエリア基地は既に陥落済み。次はどこかな? Aかな? それとも……」
「「‼︎」」
「で、CはBに逃げ込んでるって。では残ってるのはどことどこかな~?」
「い、急いで戻らないと!」
「帰るの? それならドック迄案内させようか?」
黒服女性に目線を向けると頷いて見せた。
「エリスはどうするの?」
「一緒に行く~? 残るの~?」
エリスを見る。
エリスは椿を見る。
「どうしたい?」
椿が問い掛ける。
「で、デモ……」
「大丈夫。移動手段はあるから」
「…………」
「貴方が何故そうなったか理由は解らないけど、なったからには思うままに生きなさい」
「は、ハイ……」
「今までありがとう。それと貴方達」
エマとエリーを呼び止める。
「この子をお願い。ケリが付いたら必ず会いに行く。貴方達の基地にね」
「後は任せテナ。私が連れてくカラ見送り不要ネ」
元気になったようで先頭切って歩き出す。
それを見送る椿達。
「椿様……アレは一体どういう?」
姿が見えなくなってからもその場に止まる二人。
「分からない。何故突然自我が芽生えたのか」
「自我、ですか。では今は?」
「うん。一切操っていないっていうか同調すら出来てない」
「繋がりは?」
「そっちは問題ない。それと悪意も感じられなかったしここまできたら再調整は必要無いかなって」
「成る程。状況を鑑みるにアリス様の仕業で間違いない様ですね」
「そりゃそうよ。こんな真似出来るのは全宇宙探してもあの人だけだもん」
「一体何が目的なのでしょう?」
「目的? あの人の頭の中は私と一緒。お姉さんを探し出すのに必死なだけ。私以上にどんな手段を使ってもってね。もう余裕も猶予もないから尚更だよね」
「という事は……来ますね。間違いなく」
「うん。どのタイミングかはまだ分からないけど。だからと言ってこちらから約束を反故にするつもりは無い、かな」
「その姉君の行方についてですが」
「総本部があの人に依頼されて用意したあの二人の事よね?」
「はい」
「それこそ放置。下手に手を出して契約を反故にしたくないし」
「勿論それは承知しております。今は安全エリアにいらっしゃるようですが、今後戻ればレベッカ様と対峙する……」
「いいの! あそこに捩じ込んできたのはそもそもあの人なんだし。私にとっては「お楽しみ」が増えたから結果OK〜!」
「全く……このお子ちゃまは」
「お子ちゃまだからいいのーー!」
呆れ顔とウキウキ顔で移動を始めた。
台風が二連荘になりそうですね。
被害に遭われないようにご注意下さい。




