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未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
それぞれの思いの終着点
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新リーダー?

遅くなりました。


今話は会話多めです。

 二手に分けてから四度目の小惑星を撃破を終え約十分が経過。


 三度目まではほぼ連続で、四度目は撃破後に間をおいてから現れた。

 因みに大きさは初回が一番大きく、次第に小さくなってゆく。

 現れた区域はバラバラであったが、遺跡がある惑星からはほぼ同じ距離に出現していた。


「やっとお終いか?」


 初めに口を開いたのはマリ。

 特に疲れている様子は見られない。

 それは他の者達も同様だ。


 現れた小惑星は普通の惑星とは違い中心核も存在しない鉱物を含んだ岩石の塊なので砕くの()()苦労はしなかった。

 ただし要望の「漏れなく50cm以下まで砕ききる」のにはどうしても時間を要していた。


「打ち漏らしは無さそうね!」


 広大な空間に太陽光を反射させキラキラと漂う銀色の岩や鉄鉱石。更に氷も含まれていた様でより一層光り輝いていた。

 その大半は惑星の引力に引かれて一方向へと移動しており、まるで無数の宝石群が巨大な川を形作りながら整然と流れていく様にも見える。

 この輝く宝石達も惑星に近付くにつれ次第に速度を増し、明日の昼くらいには流れ星となりながら燃え尽きるだろう。


「……今、サンプルの検査結果が出たんだけど、ね」


 突然全員の前に空間モニターが開くと何かを食べているノアが映っていた。


「何のサンプル?」

「……小惑星の残骸、だぞ」


 全員の前に新たなモニターが開き、一個の拳大の大きさで灰色をした石ころが映し出された。


「ほうほういつの間に。で?」

「……構成物質は元素に至る迄、こちらの物と配置迄全く同じだったのだが、周波数だけが微妙に違ってたんだ、な」

「周波数って? はろ〜はろ〜のヤツかい?」

「……ちゃう。ドリーがこっちに戻った時に「時間の流れが違う」って教えたの覚えてる、かい?」

「あ、私は覚えてる!」

「ウチがいない時か? んで?」

「……ここでは詳しく調べられんので断言は出来ないが、それぞれが相手側に移動した場合「長生き」が出来ないか、も」

「長生きって?」

「……『(とき)』という世界の根源の一つを成している法則の違いで次第に避けようのない「ズレ」が生じてしまう、かも。んで、それが我慢の限界がきたら自然崩壊が起きちゃう、かもかも」


「ならドリーの人達は? 大丈夫なの?」


 ドリーは以前、僅かな時間だが住んでいた人共々あちらの世界に()()()いる。


「……星一個丸ごとだからな、然程心配はいらない、ね。簡単に説明すると、こちらの理屈で成り立っていたドリーという星に守られていた形になっているの、ね。向こうの宇宙空間もこちらと多分条件が同じで、直接的な影響を及ぼすのは電磁波と重力波、の筈。で。皆も知ってる通り、大半はドリー自身の磁場が防いでくれてたので、影響はかなり低いと見てる、ね」

「成程」

「でも仮に身一つで向こうの惑星になり行ったと、する。呼吸して肺にあちらの空気を取入たりあちらの物を食べて胃に入る、といった当たり前の行為をして体内に物質を入れたりを繰り返したら、加速度的に身体に影響が出てしまうだろう、て」


「その理屈ならアリスや桜にも影響が出てる筈よね?」


 その問いに答える前にエリスが映ったモニターをチラ見する。


「……いや違う方面の影響を受けている、らしい」

「それは例の贄ってやつだから?」

「……そこは本人に聞いて、ちょ。理由や理屈は知らんけど、ね。でも思うにその影響ってのは世界を渡った()()では享受出来なさそうだ、ね」

「エマさん達は? 直ぐに戻ってくるから影響は考慮しなくていい?」

「……多分……こればかりは時間を掛けて検証実験をやってみんと分からんよ、ね」

「探索艦に乗っていれば?」

「……一番問題ない対処法なの、ね」

「そうか。なら一安心」


 皆が安堵した表情へと変わってゆく。


「……でもな、問題というか心配事は他にも山積みなんだ、ぞ。例えば「どう」とか「どこ」とかの言葉が付く行為に関して私達は知らないことが多すぎなんだ、な」


 ノアの言う通り、決意や意気込みだけでは乗り越えられない問題が立ち塞がっている。


「そこはエリス先生に教えて貰うしかないわな。なエリス?」


「みんなハ気にするナ。何とかなるカラ」


 当のエリスはサンドウィッチ? を頬張り皆を見ずに何かを見ていた。


「いやいや一番気になるとこちゃう? で、ホンマのとこはどうなん?」

「ダカラ大丈夫だ。アイツらが導いてくれるカラ」



 ──アイツらって誰?



 全員首を傾げる。


「それより今の内に昼食取っとけバ?」


 ノア以外はハッとなり思い思いの食事を始めた。





 粗方食事が終わった頃を見計らいエリスが全員に呼び掛けてきた。


「みんな少しだけいいカナ?」

「ん? どしたん?」


「次からは連携してミー」


「「「連携?」」」


「ソウ〜。お前ら自己中過ぎて無駄ナ動きが多過ぎだゾ」


「「「…………」」」


 的を射た指摘に反論出来ない。


「誰か指揮取ってミソ」


 全員顔を見合わせる。

 確かに今は纏め役が居らず自由気の向くまま動き回っていた。当然の事と隙さえ有れば獲物を横取りといった動きが目立った。


 幸い艦AI同士がさり気なくフォローしているので、光速に近い速度にも拘らず接触に至る様なニアミスは起きてはいない。

 そのことは搭乗者も重々承知している。だが纏め役が不在、注意を促す者がいない、適任者もいない。

 目的は単純、達成困難という程では無いので、敢えて全員気付かないフリをしていた。


 今まではそれでも良かった。

 頼れる先輩がそばにいてくれたから。


 だがこの先……その者達はいなくなる。


 指摘された事により、表情には出さないがこの先に不安を感じ始めると次第にマキとノアに視線が集まり始めた。


「う、ウチはアカン!」


 確かにマキはここぞという場面では弱腰になるしあまり責任を負いたがらない。

 つまりリーダーには向いていない。逆に彼女はサポートに回った方が役に立つ。


 次はノアに期待の眼差しが集まる。


「……お断り、だぞ」


 速攻断ってきた。 

 すると一斉に落胆の表情に変わる。

 彼女は全体を見れるという点は合格なのだが積極性が皆無。さらにへそ曲がりな性格は誰でも知っているのである意味信頼は出来ない。


 残るは三人。


 シャーリーは……無理だ。

 成長したとはいえシェリーの様に全体を見通す「余裕」は未だに無いし、どうしても目先の獲物に目が向いてしまう。


 リンは……シャーリー同様、戦力としては秀逸だが、そもそもランしか見ていないのでこの手に関しては問題外。

 二人とも優秀な指揮官がいればこそ能力が生きてくる。


 残るは一人……


「へ? はい?」 


 全員の視線が自分に集まると目をパチクリさせてキョロキョロし出す。


「決まりやね」

「うん、いいかも!」

「リンリンもさんせいなのね〜」


「は、はいーーーー⁉︎」


「みんなフォローするんダゾ」

「「「了解!」」」


「え、えーーとウチは?」


 候補にも挙がらなかったマリが小声で呟いた。


「リーダーやりたいの?」

「い、いや別に……」


 目線を逸らした。強く反論してこないところを見るにどうしてもやりたいといったワケではなさそう。

 多分誰もやりたがらなそうだったので引き受けてもいいかな? 程度の反応。


 と言うのもマリには敢えて話を振ることはしなかった。

 彼女には誰でも知っている「弱気」と「優しさ」いう短所が存在していた。だが、行方不明からエリー救出後の帰還までに著しい成長が見られ、すでにその短所も良い方向に克服されていたことは皆知っている。

 だが他の者の様に一部でも秀でた所があるワケでもないし全体の能力は「平均値」の範囲内でしかない。

 さらに心配性な姉という側面と、もう一つの最大の欠点は未だに解消されてはいない。


 モジモジしている姉の性格は何となくは知っているがこのまま放置も出来ないので、軽いため息を一つついてから神妙な面持ちで、だが軽い口調で話し掛けた。


「姉ちゃん」

「ん?」


 やっと声が掛かったと即反応を示す。


「あのな、マリには今まで黙っとったけど、ウチらにとって姉ちゃんは最強秘匿兵器なんよ」

「……へ?」


 行き成り何言うとんの? と言った(いぶか)しげな表情。


「所謂隠し玉っちゅーヤツ?」

「ウチのどこが?」

「何謙遜しとん。エリーが帰って来れたんは誰のお蔭や?」

「そ、それはウチの……いやそうやない。みんなの」

「またまた謙遜しとる。椿の城で再会した時の姉ちゃんは今までで一番輝いとったで!」


「そ、そう?」


 少しだが照れ始める。


「そや。そんな英雄が後方でふんぞり返っとったら宝の持ち腐れちゃうの?」


「そ、それもそうか〜」


 照れさ加減が増してゆく。


「そやで。あと後方におるっちゅーことはウチと離れ離れになってまうけど……ええの?」

「そ、それはあかん!」

「そやろ? マリの能力はウチと組むことによって最大限発揮されると思うんやけど?」


「……お笑いの、か?」


「お? ノアは良う分かっとる! 岩、相手にボケとツッコミかまして無双…………ちゃうわ‼ しゃーない、リーダーの座はランに譲ったる!」


 ランに向け親指立ててグーを突き出す。


「流石姉ちゃん!」


 今度はマキが姉に向け親指立ててグーを突き出す。

 すると姉妹は目が合うとさり気なくウインクし合った。


「ううう、そんなの譲られても嬉しく無いですぅ……」


 逃げ道を塞がれ、さらに最後の希望まで断たれてしまい対照的に落ち込んでしまう。


「でなラン。エマを「お姉様」って慕っとるだけじゃアカンよ」

「そやで。ウチみたいに頼るより頼られる姉ちゃんにならんとな」


「頼られる?」


「おう、考えてもみ? エマは元より菜緒もこの先どう転ぶかは分からん。サラ(主任)にしても帰ってくるかどうかすら怪しい。残るはローナの姉さんしか居らんけどこっちも今は不在。Bエリアでまともにリーダー務まる奴は他におらんやろ?」


「ら、ラーナさんは?」


 なおも食い下がる。


「姉御もウチらと同じで現場監督には向いとらん」


「そ、そうなんですか?」


「うん。見てて分からない? ラーナさんはね、根が優しすぎるのよ」

「……それは言えてる、かもかも」


「な、ならシェリーさんは?」


「アレは頭が固すぎて柔軟性に欠けるんよ」

「し、失礼な! お姉様は率先して死地に赴くことによって仲間の犠牲を最小限に……」

「それただの戦闘狂(バトルジャンキー)やん。あ、あと重度のシスコンな」

「ふふふふ二人共そこに直れーーーー!」


「…………」


 全員他人の性格については詳細に把握しているようだ。だがここにいる誰一人として自らを省みる者がいないのは言うまでもない。


「でな、カオスな状況に颯爽と陣頭指揮を執れる美少女登場ってな事にでもなってみ? イチコロちゃう?」

「ウチならそのまま()()()()()決定やな」


「お、お持ち帰り……」


 ランの目が期待と欲望で血走り出す。


「おもちかえりってな~に~?」

「えーーズルいーー私もお持ち帰りしてもらいたいーー!」

「……激しく同意、だな!」


「分かりました! やってみます!」


 あれ程迷っていたにも拘らず、たった一言で決断してしまう。


「「「おお!」」」


 OKした途端、全員表には出さなかったが心の中で安堵した。



 ──だって面倒くさいことはしたくなかったから。



「但し言う事はちゃんと聞いて下さいね!」


「「「お? おう」」」


 ふんふんと鼻息荒くやる気満々の表情で釘を刺された。



 各々自艦内で残りの昼食を平らげる。

 運よく? 食事中は何事も起きなかったが、気が緩んだ不意を突いて初めとほぼ同じ大きさの小惑星が再び出現した。


「デハやってみて~」


 ランの指揮ので作戦は今回が初、ということで全員参加とした。


「はい! ではシャーリーさんを先頭に縦列で突入します。中心付近に到着したら指示通りに!」


「「「了解!」」」


 バラバラで浮いていた艦が円錐ドリル型で移動を始めるシャーリー艦の後に付いて行く。


「とっかーーーーん!」


「い、いや今回は貫通しちゃダメですって!」


 光速に近い速度で小惑星に突っ込むと惑星全体一瞬だけだが振動が走った。

 突入口付近は綺麗な円形の穴が開いたのだが、その周囲の砂や岩石は振動によって盛大に撒き散らしながら散乱して行く。

 そこに後続が縦列で綺麗な等間隔で、シャーリー艦が開けた穴を崩すことなく続いて行く。


 進入から数秒も経たずに中心付近に到達すると全艦その場で急停止をする。


 辺りは当然真っ暗。画像処理をしても白い僚艦か黒に近い灰色の岩石しか見当たらない。

 さらに小惑星の中心付近を空洞にしたことで、心なしか鉄鉱石を含んだ周りの岩石が自らの自重(じじゅう)による重力の作用で崩壊し始めるている様にも見えた。


「オーーホホホホ、皆様お久しぶりで御座います! これからお嬢様の為に馬車馬の如く働くザーマス!」


 だがのんびりと観察している暇も無く、シャルロット(お調子者)から全艦に次の指示が入る。

 すると艦をそれぞれ適切な形状に変化させた上で、調整された速度と通って行く経路を細かく設定。質量兵器も含めて、全周囲に向け散弾の様に散開させた。


 全艦ほぼ同時に外へと突き抜ける。

 すると細かく砕けることなく綺麗に八等分に分かれながら徐々に離れてゆく。


「「「おおーー!」」」


 歓声が上がる。


 見た目はリンゴをヘタから十字に切り、更に側面から綺麗に切った様にも見える。

 しかも今までとは違い崩れることなく殆ど原型を留めながら。


「で、これからどうするの?」

「押します」

「へ? 押すのけ?」


「そうです。要はお姉様達がいる惑星に影響を及ぼさなければいいんです。大きくて押せないなら押せる大きさまで小さくすればいい。小さければちょっと押してあげるだけ落下軌道(コース)を変えられますよね」

「な、成程……そりゃそうやね」


「流石はお嬢様! 凡人には思いつかない様なナイスなアイデアで御座います!」


「いや~~ホメられたら照れてまうやん~~」


「師匠ちゃうで!」


「へ? ちゃうの? そりゃ失礼~」


「相変わらず神出鬼没ザーマス!」


「ではシャルロット、後の割り振りはお願いね」

「承知しました! これよりお嬢様に変わり(わたくし)が指示を与えます!」


「与えるって何くれるん? ワシはボンキュッボンの綺麗な姉ちゃんのあられもない画像が……」


「そんな画像は有りません。あるのはお嬢様のご入浴時のあられもない姿しか……」


「ししししシャルロット⁈」


「いらんわーー」


「な……なんですと? 成程……師匠さんは実は年増好みなのでは?」


「そやね。ガキンチョよりも熟れとる方がええかな?」


「ウチは若い男の方がええ」


「なんやワシの弟子は未だに男色の気があったんかい」


「そやからウチは女やて!」


「皆様、ソロソロ行動ヲ始メナイト」


 アシ2号が止めに入る。

 搭乗者のノアは……我関せずと澄まし顔で水羊羹を頬張っていた。


「そうだ! 私の教え子がそろそろ限界だ!」


 コーチンの声でシャーリーに視線が集まると……

 突入したくて挙動不審でウズウズしていた。


「みんな一旦落ち着こ。でシャルロットや、サッサとデーター寄こしーや」


 マキもハナちゃんの提案にウンウンと頷いてみせる。


「これは失礼しました。(わたくし)とエリス様は待機で、それ以外の方々は指定した破片を押して下さいまし」


「エリスはどしたん?」


「エリス様には質量兵器がございません。しかも連戦されておりますので、暫く小休止して頂きます」


「別に疲れてないヨ〜?」


「これは決定事項ですので悪しからず」


「ほよヨ~。なら少しの間だけ休ませて進ぜヨウ~」


 そう言い残すとモニターが消えた。


「そんじゃ取り掛るかの!」

「よっしゃー!」

「お先なのね~」

「……アシ2号、や。行ってくれ、たまゑちゃん」


「とっかーーーーん!」


「そこ! 突貫したら罰ザマス!」



 シャルロットからの指示で艦本体+多数の質量兵器の反重力装置を分割した小惑星の強固な部分に、艦本体を「軟化」させながら張り付き、絶妙な力加減で押してゆく。

 すると苦なく落下軌道(コース)を逸らすことに成功した。


 さらに全ての軌道を変えるのに、今までかかっていた二割程度の時間で終えてしまう。


「サイ○フレームが無くても出来た……」

「いや〜リーダーがいるのといないとじゃ雲泥の差が出たの〜」

「ランランが優秀だからなのね! お姉ちゃんははながたかいのだ〜」

「そこは同意。視点がウチらとは全くちゃうわ」


「えへへ♡ 何とかなりました!」


「お嬢様に不可能は御座いません! この調子で次も参りましょう!」

(あ、この件を入れとかないと……)

 結構重要な件を入れている筈……どこだっけ?

 ランの事ではないのは間違いない……よね?


 思い出すのに時間が掛かりそう←本当に!


 次は地上のターンです←これは確実です


次回は6/23(水)までには投稿します。

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