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未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
それぞれの思いの終着点
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実は男⁇

中途半端になりそうなので区切りました。

なのでいつもよりは若干短めです。

 突然誰かの倒れ込む音が聞こえた。

 静寂に包まれた空間に鈍い音が響く。

 何事かと音がした方を見るとエマが床でピクピクとしながら倒れていたのだ。


「ど、どうしたの?」


 対面にいたエリー、そして数m離れた位置で座っていた二人が急いで近寄ると、冷や汗を流し辛そうな表情で悶え苦しんでいた。


 修行(訓練)を始めてから約十五分。それまではお互いのペアで目を瞑り向かい合いながら正座をし、何事も無く集中していた。


 だが今のエマは明らかにおかしい。

 こんな状態を今まで見た事が無い。

 それは姉であるエリーの驚き様をみれば一目瞭然。


 三人は顔を見合わせ周りを警戒し出す。

 高い山脈に囲まれた山間(やまあい)の平坦な場所。

 周りは針葉樹に覆われているが今いる場所だけは綺麗に整地されており、近くには湧き水だろうか途切れることのない澄んだ小川まで流れている。

 勿論陸上には自分達四人以外には誰もいない。

 害をなすものはどこにもいないし、例えいたとしてもアルテミス()達が感知する筈。

 なので宇宙服を着ていなくても問題は無い。

 その艦達も何も言ってこない。

 つまりこの状態は外的要因では無いということ。

 なら内的要因? また彼女の影響?

 それなら気を失い身動き一つしなくなる筈。



 彼女(エマ)の身に一体何が起きたのか……




 エマ達がいる惑星は今でこそ人が住める環境にはなっているが隣の惑星共々、元々は生物が生きて行ける環境ではなかった。


 人類が太陽系から天の川銀河全域への進出を経て宇宙全域の調査を開始してから十数世紀。今では惑星改造に関する技術は成熟しており、人が将来的に共住可能という条件と合致する惑星は数千万登録されている。だからと言ってその全ての惑星に手を出してはいない。基本現状維持とし放置している。

 何故なら例え住める惑星が多数あっても人の数は限られているし、改造しても()()が全くない。政府としては自然増加率に合わせ改造・入植をすれば事足りる。


 何世紀にも渡った改造の技術レベルは水や酸素が全く存在していない惑星も、通常は十年もあれば自然に満ち溢れた居住可能な大地へと変貌させるほど極限まで成熟していた。


 先ずは惑星内部の改造から始まり地軸の微調整、地殻と地表面の再構成。

 さらに内部圧力の調整を行った後に惑星全体を「滅菌」し、手ごろな気体惑星から採掘・処理を施した「液体」を投入して「海」を構成していく。

 そして「大気」が出来上がったところで「自然のサイクル」が成せる様に「生物」を投入。

 後は様子を見ながら微修正を実施して改造が終了となる。


 通常は無理なく行っているので1つの惑星にかかる時間は約十年、それを年に合計十件同時に実施している状態であった。


 そしてこの二重惑星に関しても早期に発見、登録だけはしてあった。

 元々は液体と言えばメタンくらいでとても人が住める状態では無く、さらに近郊に資源惑星があるワケでもない。惑星内部の資源も平均的で至って普通。


 人類にとって(改造・植民するまでの)利用価値が無かったので長らく放置されていたのだ。


 だが今から二百年以上前、日未曾有の事態となる「消失現象」が発生したことにより、その時を境に専門機関が急遽登録済みの全惑星の再調査を行う。

 結果、ここを含め条件を満たした数千カ件の惑星がリストアップされ一気に改造が始まった。


 膨大な数を、しかも通常十年程度掛かる工期を半分以下の日数で終わらすために、一時期資源の枯渇や生産力の停滞を招く事態にまで発展、経済まで疲弊してしまう。

 だがそのお蔭で該当した全ての惑星が、人が住める環境へと改造することに成功したのだ。


 そして桜達が参加した実験が改造後の惑星で行われたが一年足らずで計画が終了。その後は立入ることを椿達に禁止されてしまった為に政府の関与するところではなくなった。


 しかも椿達もそれらの惑星を新たに調査したり管理していた訳ではなく、定期的に巡回・調査をする訳でもなく、特定の区域以外はこの星域と同様、自然の流れに任せていた。




「ねえ大丈夫? 何があったの?」

「…………」


 身体に触れた瞬間、ビクっとして息まで止めて硬直してしまう。


「ちょ、ちょっと!」


 エリーが横で悶えるエマの足に触れた瞬間、


「あぁぁぁぁ────‼」


 声にならない声をあげグッタリとしてしまった。


「どうやら……痺れただけ……みたいだね」


 それぞれ元の位置へと戻って行く。



「あーーーー死ぬかと思った!」

「はいはい。あの程度じゃ死なない」



「別に正座じゃなくてもいいよね? ってゆーか、クッションくらいあってもよくない? 板の上、メッチャ痛いんですけどーー」

「どんな座り方でもいいと思う〜。でも胡坐だとパンツ丸見えでしょ~」



「ねえ休憩にしない?」

「まだ始まって……三十分だよ。もう少し……頑張ろ?」



「みんな大丈夫かな~?」

「「「集中しなさい」」」

「……はい……」



 アっという間に今に午前中が過ぎ去って行く。



「では私達は食事の準備をしてきます」


 二人共、裾が乱れることなくお上品に立ち上がるとエリーに声を掛けた。


 ってゆーか、足痺れてないの?


「大丈夫~? お任せしても~?」

「努力します」

「作ったことは~?」

「ない……よね?」

「ええ」


 今の時代、料理と言えばメニューを「ポチっとな」とするだけ。すぐさま目の前に出てくる。


 それは自宅でもアウトドアでも同様。

 料理に対応していない機器や外出先等でも、機能を備えた「圧縮装置」を利用したり、準備するのさえ面倒臭ければ、それ専用のアンドロイドを借りれば事足りてしまう。


 ましてやこの時代、食材や味に拘る者はいても調理に手間暇をかける者はまずいない。

 何故なら自分で作るより、調理機器に任せた方が間違いがないし何よりも美味しい。

 また全ての調理機器は物資集積倉庫と繋がっているので、前もって食材を用意しておく手間も要らない。


 つまりほぼ100%、料理以前に包丁すら持った事すら無い者が大半なのだ。

 勿論、知識として歴史の授業で教えてくれるので「どんなものか?」くらいは誰でも知っている。


 なのでエマがガスでお湯を沸かす行為はとても珍しいと言える。



「火傷に気を付けてね」

「はいはい」


 火事も滅多に起こらない。

 あるとすれば山火事か放火くらい。

 放火も数分以内に解決されるし、山火事に至っては気象制御がなされている為、数十年に一度あるかないか。

 なので大半の者は炎を直に見た事は無いし、危険性は知識の範疇で得た程度しかない。


 一般の人々は生体強化が施されているので、治療さえすれば跡も後遺症も残らないが、我々探索者は生体強化されていないので、怪我や病気には細心の注意が必要だ。



 舞台から出て行く姉妹を見送る。

 普段と変わらず背筋を伸ばし音も立てずに。

 身長は私達とあまり変わらないのに羨ましい体型。

 宇宙服とはまた違う色気を感じる歩き方。


 う〜ん、何処かで見たような。

 そうだ、惑星ラングの神無月さんに似てるんだね。


「私達も休憩にするわよ〜」


 肩を叩かれて我に返る。

 歩いて行く姉の後ろ姿を見ると、上から下まで至って一般的な「普通」の体型。それは私も同じ。

 先程の姉妹とは明らかに違う体型なのだが同じ部分もあった。

 どこか色気が漂う歩き方。


 立ち上がり真似をしてみる、が違和感丸出しなので即止めた。


 舞台の縁で並んで座る。

 そのまま二人揃って寝転び足をブラブラさせ外の景色を眺める。

 傍には誰もいないので、エマだけでなくエリーも裾が乱れていても気にしない。


 標高が高いせいか過ごし易い気温と湿度。

 山間で木々に囲まれているので風は無いが暑くもなければ寒くも無い。


 正面には軽く二十m程はあろうか葉がギッシリと生い茂った針葉樹が規則正しく生えている。

 遺伝子改良が施されてあるので色・大きさ、さらに枝が出ている位置さえ全く同じ。

 なので一見すると何かの映像? とも思えてしまうが人工林ではよくある事。

 ただ手入れが全くなされていないので地面に光が届いとおらず奥の方は真っ暗。


 ふと空で光りが見えたので見上げると、広範囲に渡りピカピカと何かが光っていた。

 しかも主星がある方向とはだいぶ離れた区域で瞬いていた。


 小惑星相手に健闘している仲間達が頑張っている証だ。

 お陰で今現在、地表(ここ)に変わった様子は見られない。


「そう言えば主任はどこにいるのかしらね~」

「ん? サラ?」


 Cエリアで別れる際に「古巣」つまり「整合部本部」に行くと言っていた。

 その後ワイズ艦が戻った際に「厄介な事態」になったと置手紙もあった。

 今では情報共有されているので当然エリーも知っている。

 だがいない者の行動なんて全く分からないし想像もつかない。

 我々の中でサラの行方を知っているのはラーナと菜緒とノアだと思う。

 その中で全容を知っている者はローナの妹のラーナだけだろう。


「まだ本部がある太陽系にいたりして」

「一体何してるんだか~」

「そう言えばサラと天探女(あめのさぐめ)主任はラブラブなんよ~」

「ホント~?」

「天探女主任は間違いないね。サラはあんな性格だから認めようとしないけどね。あ、そうそう、ここだけの秘密にしてくれるなら耳寄り情報教えたげる」

「え、なになに~」


「菜緒菜奈にも秘密だよ? 実はね……」


(エマ~)

(アル? 何?)

(その件は「秘密じゃぞ」って言ってなかったっけ~?)

(…………確かに)


 確かに約束をした。


「どうしたの~?」

「え~~と」

「? 実は男だったとか?」


「‼」



 そそそそそう言えば()しか見てなかったよ! ()はスッポリと抜け落ちてたわ!


 確かに上は()()()()()だった。

 

 でもでもよく考えたら男の人でもあーゆータイプがいても可笑しくはない。


 でもでもでも……も、もしエリーの言う通り「男」だとしたら…………サラとは何も問題はないの? ……無いよね?


 いや別に女同士でも問題無いか……


 いやいやそうじゃない‼

 問題はアイツらの仲じゃない‼

 あたしゃ眠らされた上に素っ裸にされて何時間も二人きりだったんよ?

 あの変態が仮に男だったらそんなシチュエーションで何もなかったワケがない!

 しかも腰の上で悶えまくりながらあたしの身体をプニプニしてたし!


「あ、アル!」

(大丈夫~エマはまだ純潔だぞ~)

「え? ……あっそう」


 無事だったようだ。


「何が「あっそう」なの〜?」

「え? あ、ゴメン、警告されたからまたの機会ね」


 両手を合わせ謝る。



 でも何であんな偽装をしてたんだろう?

 別に隠さないで堂々としてれば良いものを。


 そう言えば「この事を知っているのはサラだけ」って言ってたような?

 そのサラはどうやって知ったんだろう。

 彼女の偽装はお風呂の中でも違和感無い程のレベルだった。

 私は直接触れたから知れたけど、見ただけでは判別不能だと断言出来る程の完成度。


 ……やはり男なのかね?

 実は仲良くイチャついてる最中に発覚したとか? 

 だからサラは素っ気ない態度取ってるのかも。


 ……ま、どっちでもいいか! 二人の関係はどうでもいい。それこそ私には関係ない。

 ただ今後は主任と二人きりになるのだけは止めとこっと!



「二人共……お待たせ」


 菜奈が呼びに来てくれた。

 見ると可愛らしいエプロン付けて。


「待ってました!」


 そのまま付いて行くといい匂いがしてくる。


 期待を込めて中に入るとぐったりとした菜緒の姿が。


 窓が全て開けられており外の陽気な光が室内に差し込んでいるお蔭で、初めて入ってきた時の様な陰湿さは微塵も感じられない。

 ただ菜緒を除いてだが……


「ん? どしたの?」

「つ……疲れた……わ」


 テーブルの上には鍋が一つ。椅子の前に一枚ずつ炊き立てのお米が乗ったお皿が並べてある。


「この匂いは……カレーだよね? すごいじゃん! 良く作れたね?」


 見た目と匂いはカレーそのもの。


「レシピは(艦に)聞いたから良かったんだけど……」

「それより……包丁と炎が怖くて」

「そうか! こんなの慣れじゃない?」

「ホント昔の人は偉いわ〜。こんな作業を日に三回? それが毎日でしょ〜?」

「そ、それは無理」

「そんじゃ次はみんなで作ろう!」

「で、でも貴方達は」

「いいって。成る様にしかならない。ね? エリ姉」

「料理はみんなで作った方が楽しくて美味しいくなるらしいわよ~」

「そうそう! 確か「美味しくな〜れ」って謎の呪文? を唱えながらだっけ?」


「良かったね……お姉ちゃん。もうビクビクしなくて」


 頭をポンポンと優しく撫でる。

 それに対し目を潤ませながら力無く頷いてみせた。


「それじゃ早速頂こう!」


「「「いただきます!」」」


 席に座り一斉にお口に入れる。


「「「‼︎」」」


 次の瞬間、一斉に口から火を噴いた。



 どうやらレシピだけで「味見」のことまでは教えてくれなかったようだ……


天探女の性別は……ご想像にお任せします。

因みにサラだけが真実を知っています。


 この件(性別・知り合った経緯等)は本編に影響が無いので秘密のまま終わらせるつもりです。


 次回は宇宙組。

で「最後の」のんびりとした話がもう少しの間、続きます。


次回は6/17までには投稿します。

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