踏ませなさい!
*一応補足を入れて置きます
〇総本部は政府特殊機関の四部門を統括する役目を負っており、その本拠地は「地球」の衛星にある「月」に置かれている
〇その総本部内に「四賢者」と呼ばれているAIが設置してある
○四賢者の会合は「賢者会」と呼ばれており、そこで決議されると四部門の「長老=長」へと伝えられる
○総本部は政府から「消失」に関する全権限を与えられている
○統括とは言っても現場の運営は各長に任せており口出しはしてこない
ついでに
〇ゼロエリア=現Aエリア
〇エリアマスター=エリア主任=エリア管理権限者
(現在Bエリアの名目上のマスターはエマ。実権は変わりなくサラが握っている)
〇Aエリアマスター=アトラス(男)、Cエリアマスター=天探女(女)、Dエリアマスター=ハンク(男)
あとローナの「♪」ですが
♩=機嫌がよくない又は真剣な状態
♪=機嫌が良い状態
♫=上機嫌の状態
無し=敢えて起伏を見せない状態
の表情や声色、ということで
*2021/5/14 修正と追記を行いました
「どう? アリスの姿は?」
「……艦はいない、ね。どうやらお留守のようだ、な」
探索部本部を出ると直接Aエリア基地へと跳躍した。
到着後、直ぐに基地から通信が入ったのでエリアマスターであるアトラスとの面会を申し出たところ、入ってくるように指示がきた。
二人は揃い指示されたドックへと向かいながら暗号通信にて会話を始めた。
その際、ミアに例の「ピコピコ信号」で基地全体に探りを入れて貰ったところ、アリス艦の反応が無かったのだ。
「それは残念〜♪ いたら覗いてみたかったんだけどね~♪」
「…………」
ローナの呟きに敢えて返事をしない先生。
その時は是非一声掛けてからにしてね、とのツッコミは我慢しながら。
そんなやり取りをしている内にドックへと到着。艦が停止、球体に変化をした。
「それではダンジョン攻略を始めるわよ〜♪」
「…………」
さらに挙動不審となり目線を逸らしまくる。
「あらそんなオドオドして♩ ジジイなら私が対応するから大丈夫よ♪ それよりさっきお願いした三つ件、よろしくね〜♪」
「……そっちは一号と三号にお願いしてある、よ。個人的には気はのらない、けど」
「気がのらないって……楽しみじゃないの?」
「……そりゃ楽しみだけど……やっぱり主任さんが、ね」
「気に入らなければノアみたいに制裁加えてもいいわよ? グーでもパーでもチョキでも好きなので♪」
「……ぼ、僕はノアちゃんと違って平和主義者なんだ、な~」
「直ぐ慣れるって♪」
「……ううう、慣れたくない、かも」
「それじゃ待機室で合流ね♪ それと制服着用~♩」
そこで通信が途切れた。
嫌々ながらも制服へと着替え一人待機室へ。
装置から出ると綺麗に整えられた腰まである赤髪を珍しく纏めた姿のローナが、数人の女性と向かい合い楽しそうに会話をしている姿が見えた。
そこにキョロキョロと周りを警戒しながら近付いて行く。
「あら可愛いーーーー!」
「……ひっ!」
自分やローナよりも頭一個半分は大きいだろうか、高身長で制服をビシッと着こなしている女性たちに見つかると、逃げる暇もなく一気に囲まれてしまい思わず軽い悲鳴をあげてしまう。
「その子はミアって言うの♩ 暫くお願いしても良くて?」
「「「任せて~~!」」」
「どどどどどこ行っちゃう、の⁈」
「主任に会ってくる♪ その間、基地の中でもブラブラしてて♪」
「え? え?」
「その子は甘い物が好きだから〜♪」
「了解! さあ行きましょミアちゃん!」
両脇と後方を固められて有無を言わさず何処かへと連れて行かれた。
一行を笑顔で見送ると一気に真顔へと変え、一人転送装置へと向かって行く。
向かった先はAエリア主任執務室。
各基地には主任専用の部屋があり、通常時の業務はそこで行っているからだ。
コンコンコン
直通転送装置が無いので一番近い場所から歩いて部屋の前へ。
扉の前で立ち止まる、が反応が無かったので一応ノックをしてみる。
すると僅かに作動音をさせて扉が開いた。
この執務室はゼロエリア時に、辞令のやり取りを始め度々暇潰しに訪れていたので、実は自分の部屋の事の様に詳しい。
ここは他エリアのマスターを交えた会合にも使われることを想定して、かなり広々とした円形となっている。
入口から見て一番奥にAエリアマスターの執務机、時計回りにB→C→Dのエアリマスター用の超豪華な単座ソファーが全て部屋中央に向け常時置かれてある。
それ以外には特に目立つものは無いが、部屋の中央は一際広い空き空間となっており、必要に応じて立体空間モニターを投影する場所となる。
この部屋も共有空間と同じで天井面が自ら発光しており部屋全体が均一の明るさに保たれていた。
そして部屋の奥、Aエリアマスター用机に人影が。
見ると初老の男性がこちらを見て静かに座っていたのだ。
この者がAエリアマスターであり、全エリアの纏め役でもあり、長を除けば探索部内で最年長・最勤続年数となる職員。
探索部が創設され初となる基地、つまりこの基地が建設され運営開始と共にエリアマスターとして、基地と共に長年君臨してきた職員なのだ。
名は「アトラス」で男性。
身長はサラとほぼ同じでそこそこの高さ。
体つきはDエリア主任であるハンクとは正反対で細身。若干色黒で顔の彫り、目尻には隠しようの無いシワが見られ、白髪混じり。
その容姿のお蔭か、いかにも数多の苦難を乗り越えてきたという風格が否応なしに伝わってくる。
だが中身はその容姿とは違い、物腰の柔らかい落ち着いた話し方で多くの言葉は使わずに済ませられるほどの会話術の持ち主。
外見的に個性派揃いのB・C・Dのエリアマスターたちとは違い、どこを取っても至って常識の範疇内。
能力・人望・カリスマと三拍子が揃った理想の上司なのだ。
アトラスの姿を認めると声も掛けずに入室、そのまま一番近いCエリア主任用の椅子に断りもなく腰掛ける。
一言も発せず、その姿を終始見つめるアトラス。
ローナの体格に対し明らかに大き過ぎるソファーに腰掛けると、椅子の本来の持ち主の縮小版ともいえるタイトなスカートから伸びた均等の取れたムチムチの生脚をワザと組んでから、空間モニターを呼び出して飲み物をオーダーしてゆく。
その間も片時も目を離さないアトラス。
直ぐに飲み物がソファー備え付けのカップホルダーに現れる。
それを受け取ると優雅に飲んで見せた。
「は~~美味しい♫」
その言葉、いやその仕草を見た途端、アトラスが勢いよく席から立ち上がり、ローナの2m程手前に見事な「じゃんぴんぐ土下座」をして見せた。
「ロ〜〜ナちゅわ〜〜〜〜ん‼︎ 会いたかったの〜‼︎」
目をウルウルキラキラさせ見上げる初老の男。
先程までの威厳に満ち溢れた姿はどこへやら。
「フフフ、相変わらず元気そうね主任♪」
「今元気になったところだぞい!」
「それはなにより♪」
「と、挨拶はこの辺で。やっと事態が動きおったな」
いきなり口調表情を変えてきた。
それを見てローナは頬を緩ませる。
「そうね♩ 多少、当初の筋書きとは違うけど♩ ところで顔のアザ、どうしたの?」
青タンを眺めながらワザとらしく尋ねる。ま
「へ? アザ? ……痛い⁇ 何故じゃ?」
言われて初めて気付いた様だ。
「なら菜緒は覚えてる?」
「なお? 誰それ?」
「……Cエリア主任の名は?」
「天探女君。どしたんじゃ急に?」
「その部下の菜緒」
「まだ耄碌するとしでは無いぞ。それくらいは覚えとる。その菜緒君と今、君が言ったなおさんとはどんな関係? 妹は確か菜奈君? の筈」
どうやらここに菜緒達が来たことすら記憶に残っていないようだ。
この状況はある程度予想していたので淡々と話しを進める。
「後で教えてあげる♩ 次はこの基地の内部空間について。いつ改造したの?」
「……な、何故それを君が知っとるんじゃ?」
思わぬ質問に驚くアトラス。
「いいから答えなさい♪ 答えないと踏むわよ?」
「うっ……癖になりそうだから止めとくれ。改造したのは君がいなくなった直後だったような?」
「へーー。因みに内部がどうなっているか知っている?」
「儂は知らんぞい。改造も全て本部が手配したアンドロイド達がやっとったし、一切干渉するなと「長」から直接ワシ宛に指令が出とったから部下達にも一切知らせとらんわい」
「そう♩ Bエリアのアリスは知っているわよね?」
「勿論知っとるぞ! 妹のエリスちゃんやミアちゃんノアちゃん、それとリンちゃんやランちゃんを始め、Dエリアの天使ちゃん達も全て網羅済み。あっ、勿論不動の一位は君だけどね」
得意げに教えてくれた。
「それは光栄な事で♪」
言動に不自然な点は見られない。
「ここ一週間の出来事は言える?」
「? 勿論」
聞くと探索部本部から通達があり、Bエリアの探索者が「該当した」した為、サラの進言により計画・準備がなされてあった基地及び探索艦の改造と、それに伴う準備を行なっていたとの事であった。
「で先日やっと改造を終えたところ」
基地AIから情報を取り寄せながら話を聞く。すると記録も説明通りで合致した。
確か後始末はアリスが引き受けたと……
「改修中、探索者は何をしていたの?」
「全員に休暇を与えたぞい」
「そう……」
こちらは早めに確認しておかないと不味い事態になりそうだ。
と言うのもここの探索者は探索部にとっての最大戦力。
四十艦という数は他エリアを合算した数とほぼ同数。
総数約八十艦の内半数が、使い物にならない可能性が僅かではあるが表面化したのだ。
まあその事はここに寄り道をした目的の一つに関係している。
なので今頃「アシシリーズ」が漏れなくチェックをしている筈。
それにいざとなったらレベッカ同様、強硬手段に訴えても良い。
寧ろ心配事は艦の方ではない。動かす人間の方が重要なのだ。
「まあそちらも今はいい♩ それよりこれから私と連れの二人で内部空間に遊びに行くつもり♩ なので主任に一言断っておこうと思ってね♩」
「……そ、それは許可出来ん! ワシは「長」と固い約束をだな」
「その約束を私がした覚えは全くないわよ~♫」
素知らぬフリをして見せる。
「確かにそうじゃが……しかしどうやって内部に侵入するんじゃ?」
「気にしないで~手段は確保してあるから♪」
「そうか……すまんの。理由は知らんがワシは一切手を貸すことは出来ん」
済ま無さそうに俯いてしまう。
「それでいい。逆に何もしないでくれると助かるわ♩ それより決戦について相談しておきたいことがあるの♩」
「何じゃ? ワシと君の仲じゃろう遠慮なく申してみい」
「椿戦では多分だけどここでは目立った戦闘は起こさない筈」
「何故じゃ?」
「この基地の内部空間のせいで♩」
「……ほう。そうなのか」
「なのでサラが立案した作戦だと時間が掛かりすぎるので若干変更しておきたいのよね……」
「どの様に?」
アトラスがいる中央スペースに、彼を飲み込むように基地を中心とした宇宙空間の立体映像が映し出される。
「そこ邪魔だからサッサと退く♩」
言われると正座したまま、ふんぞり返っているローナの脇までズリズリと器用に移動して行く。
「私の作戦はこう……………………」
「……………………成程。これならば攻守のバランスが程よく取れとるし孤立もせんで済むみそうじゃの」
示した戦術を目で追っていたアトラス。表示内容もあくまで簡易的な動きであったが、それだけでもこの案の意図を読み取ったようで迷うことなく頷いた。
「来ると分かっている相手に、馬鹿正直に正面から挑む必要はないしここだからこそ可能な戦法へと柔軟に変更するべきだと思ってね♪ このやり方は他エリアでは無理だし、ウチのシェリーを以ったとしても厳しい」
「良しその案採用するぞい」
「殲滅後は半数はBに、残りを更に半数に分けてCとDに向かわせて♩」
「Bはそれほどヤバいのか?」
「ウチにはドリーがあるでしょ?」
「まだ民間人の避難をしとらんの? 君らしくないの」
「しとらん、じゃなくて出来ないの。色々な奴らの思惑のせいで♩」
お前にも責任の一端があるんだぞ、といった眼差しを向ける。
「不味くないか? 見捨てるのか?」
「一応シェルターは作るわ。直前に「探索部権限」を行使して全員残らず強制的に避難させる。その為の準備期間が欲しかったんだけど……Aが原因でね。二便目の輸送艦の到着が遅れてしまったから間に合うかどうかは微妙な所♩」
「ワシのエリアが原因? 知らないけど取り敢えずは謝っておくかの」
ペコリと躊躇うことなく頭を下げるアトラス。
事情を知らないので感情が全く籠ってはいない。
その姿を見て珍しく片眉がピクピクト反応しだす。
「…………やっぱり一回踏ませなさい♩」
存分にストレスを発散し、今後の予定を詰めた後、一人でとある転送装置へとやって来た。
外見上は全くありきたりの装置。
一応乗ってみたがピクリとも反応しない。
この装置、ある「特定な場所」へと繋がっている為、常時規制が掛けられてある。
その規制とは「特定の場所」に行こうと試みても許可が下りない限り正常には作動しない仕組み。
そんな装置があれば直ぐに発見・調査されそうだが、基地内移動用の転送装置としては他の装置と変わりなく使えるように「偽装」されてあるので、今まで誰にも気付かれることは無かったのだ。
「……お待たせ~、かもかも?」
とその転送装置からニコニコ顔のミアが現れた。
しかも大事そうに何かを抱えながら。
「あら? 何持ってるの?」
「……タイ焼き~、だぞ。お一ついかが~?」
「……頂戴♫」
抱えていた茶色の紙袋から大事そうに熱々のタイ焼きを一つ取り出し手渡してくる。
さらにもう一つ自分用に取り出しお口に頬張る。
「それじゃ準備はいい?」
「……いつでもOーK」
誰にも解読できない二人だけの極秘の会話。
行先を思い浮かべ装置の上に乗るが反応しない。
するとミアの前に空間モニターが現れ、ポチッとボダンを押す? と今度は無事作動し二人の姿が消えていく。
辿り着いた先、そこは報告書通りの綺麗な花が咲き乱れている場所、通称「アリスエリア」の草原のど真ん中にある転送装置の上。
「ここが例のエリアね♩ 周囲に人の気配は……なし♩」
予めミアに覗き見をして貰ったところ、エリア内の二か所で機器が可動中。内、一か所にはバイオロイドが一体いるだけと判明していた。
「……いや人は一人だけいる筈だ、ぞ」
「その一人はどこにいるの?」
「……この先の建物の中、に。その人のそばにバイオロイドがいる、みたい」
「あらあら、待ってくれてるみたいだからこちらから出向きましょうかね♩」
「……れっつぴくにっく~」
二匹目のタイ焼きを上機嫌で頬張ると先頭切って歩き出す。
「しかし凄い風景よね♪」
「……金と資源の無駄遣いはいかん、ぜよ」
一本道を歩いて行くと程なくして「アリスの館」へと辿り着いた。
「ここね。チャイムも無いようだし遠慮なく入りましょ」
「……一部屋だけ電気のメーターがグルグルとまわっとる、で〜」
先日訪れた探索者達とは目線が違うらしく、遠慮なく門を抜け扉を遠慮なく開け中を覗き込む。
「……く、暗い、ぞ」
ローナの背に隠れながら最後のタイ焼きを生唾と一緒に飲み込む。
どうやらここが玄関で間違いなさそう。
開けた扉から差し込む光が自分達の影を床に映している以外、目立つモノは何もない。
正面奥には無駄に長い上り階段、左右には扉が僅かに見えるだけの暗闇。
その様子、光源が全く無く、しかも静まりかえっている為、家主が長期旅行にでも出かけてしまった風にも見える。
「どこにいるか分かる?」
一歩、中に踏む込み辺りを見回す。
「……多分階段を上った先の部屋、かも?」
相変わらずローナの背に隠れたままの先生。
「仕方ない。このまま行くかね♩」
宇宙服を用意してこなかったことを少しだけ後悔しながら中へと踏み込んでゆく。
足音を立てながら階段を昇って行くと、ちょうど正面にこの建物に不釣り合いな柄の大きな扉が見えてきた。
一応ノックをしてみる、が返答が無い。
ノブを回してみようとするが全く開く気配が無い。
光源が無くかなり薄暗い為、詳しく調べることが出来ないが、開けるための端末らしきものはどこにも見当たらないし、非力な自分達ではこじ開けることも叶わなそうだ。
「ミア、アリスの生体情報をフル活用してロック解除を試みてくれる?」
「……あいあいさ~、だぞ」
それから約一分後。
「反応ないわね♩」
「……この中にバイオロイドと誰かがいるのは間違いないんだけど、ね」
「パンドラの箱だったりして♪ なら次。もう一つの稼働している機器っていうのはどこ?」
「……外」
中庭に戻ると上空を見上げて指を指す。
「……あそこだと思うけど、ね」
その先、雲の隙間からそこそこの広さを有する湖が見えていた。
「何も無くない?」
目を凝らしてみるが人工物らしきものは見当たらない。
「……位置は……湖の底、みたい?」
電脳空間から得ていた情報を元に教えてくれた。
因みにミアは空間モニターを開かなくても自分専用の電脳空間を艦AI内に常時展開させており、そこで手足となるアシシリーズと各種のやり取りを行っている。
その電脳空間を例えるなら「菜奈の友達空間」の上位バージョンと言えなくもない。
そこでは二十畳ほどの薄暗い「板の間」にスチール机を向かい合わせで並べ、そこに常駐しているアシ1号や制御下のプログラムを擬人化させた上で座らせ、皆で仲良く作業をさせている空間。
ここでは上下左右などの堅苦しい関係は一切なく自由で活発な議論が交わされており、ミアのサポート的な役割を果たしている。
「はい? 底?」
「……底に透明な膜? に覆われた転送ルームとその真下に怪しい部屋がある、な。たださっきの部屋と同じで中に何があるかはまでは見通せないない、けど」
そう言えばちびっ子二人組が怪しい転送ルームを見付けたって報告書に記載されてたっけ。
「アリスなら私達がここに来ることは当然想定済みな筈。ならトラップの可能性大? それとも単なる足止め? いや多分だけど私宛のメッセージ……ってとこかしらね。まあどちらにしても自分の正体が知れ渡った今となってはここに戻って来ることはもうないか……な。今はリスクを冒してまで物理的に調べる時間的猶予はないし、後々手が空いたら改めて訪れるってことにして、この場は素直に撤収しますかね♩ ところでそちらの進捗状況は?」
「……ここと同じでめぼしい情報は残ってなかった、よ」
「外は?」
「……艦・探索者共に現在は異常なし、だね」
「残存ウイルスの類も?」
「……痕跡残さず、きれいサッパリ、かな」
「職員は?」
「……記憶の上書きの痕跡は見つけた、ね」
「なら後始末はジジイに任せるか♪ アイツなら夢でも見せれば察するだろうて♩」
「……夢って?」
「ノアとエリスに殴られた時の様子♪ 当時の映像もノアから貰ってあるし、それを使って神様を枕元に立たせることぐらいミアならお手のモノでしょ?」
「……なるなる~」
ワクワク顔で了承した。
「では念の為、ワクチン残してから帰りましょうかね♪」
「……もう帰っちゃう、の?」
上目使遣いで聞いてきた。
「へ? 何その反応?」
予想外の返答で思わず呆気に取られる。
「…………帰る前に……お土産を買って……いきたいな~、と」
珍しくモジモジしながら呟く先生。
「何、土産って?」
「……さっき食べたタイ焼き、君。ここのはとっても生きが良くて美味しかったから……ノアちゃんにも、ねって」
「あーーそれ分かるわ♩ ここのは実際に焼いてから出すので微妙に風味が違うのよね~♪ それじゃ土産買ってから出発♪」
「……だ、大丈夫、かな?」
「……ジジイのこと? 近寄れなくしてもいいわよ? 勿論内緒でね♪」
初めて安堵の表情を見せるミアであった。
・・・・・・
ローナとミアがAエリア基地から情報部の秘密基地へ向かった頃。
(……分かりました)
白衣を着たスタイル抜群のアンドロイドが機材の片付けをしていたる中、診察台の上で腕を出した状態で横になっている赤髪の女性が、誰に対してでもなく無言で頷いた。
「はい終わりましたよ〜」
「ありがとう〜」
「前回よりもだいぶ上昇してわよ~」
「あらあら~」
捲り上げていた服を元に戻して貰い、手を貸してもらいながら起き上がる。
そこに空間モニターが現れ、誰かから呼出しが掛かった。
「姉さん、ちょっといいかな?」
声からしてロイズのようだ。
ここで音声通話から映像通話へと切り替えると、そこには指令室の班長の席に座りながら敬礼をしている兄弟の姿が映っていた。
「あらあら二人共~一体どうしたの~?」
「艦が一、こっちに接近中なんだな」
そう言えば自身が検査中の間、ワイズとロイズの兄弟に外の警戒を指示していたことを思い出す。
「誰〜?」
「……アリスさんっす!」
待ち人来たり……さてどう出てくるかしら……
「分かった~私が出迎えるので~二人はそのまま任務継続~」
「「了解!」」
元気な声を残して映像が切れた。
この二人、遺跡周回組と別れた後に呼び出すと何故だか気合が入りまくり状態だった。
理由を聞くとはぐらかされたが「探索者になったからには皆の力になりたい」という思いが伝わってきたので、丁度良いタイミングと思い、基地周辺の監視任務に当たらせていたのだ。
というのも決戦前に体調チェックだけは受けておきたかったので二人の申し出を快く受け、簡単ではあるがとても重要な任務を与えたのだ。
診察室から直接待機室へと一人で向かう。
因みにシェリーとソニアの二人は宇宙で特訓を行っており基地にはいない。
待っていると黄金色の宇宙服を着て金髪を靡かせたアリスが現れる。
二人は目が合うと普段とは違う、真面目な表情でその場を動かずに見つめ合う。
十秒程だろうか、微妙な空気が漂う中、突然アリスが口を開く。
「お久しぶりですラーナさん。貴方の協力を仰ぎたく、ここに帰って来ました♡」
裏を全く感じさせない、純粋な笑顔のアリスの姿がそこにあった。
・・・・・・
アトラスは後で出てくる予定です。
やり残しが無ければ場面を戻します。
次回は5/20(木)までには投稿します。
呟き第三弾
本日二度目のワクチンを打ちました。
今のところ腕の痛みは酷いが、他の副反応は起きてはいません。
明日の朝に発熱しなければ多分大丈夫でしょう。
話しは変わりますが政府が発表している「大規模接種会場」で一日最大1万人可能、と言っていますが、それって「新規(1回目)」の人数の事を言ってるですかね?
三週間後には「二回目」が始まるワケで、合わせると「2万人」になると思うのですが……
それとも三週間後は「新規」を停止し「二回目」を優先させると言うことなのかな?
「最大」と言ってるんだから半分の「5千人」とし、三週間後から「1万人」と言う意味なのかね?
その辺の説明しないとまた揉めそうな気がする。




