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未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
それぞれの思いの終着点
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昇進?

 癒しが欲しい……

 家庭用のお一人様焼肉台が欲しい……

 でも一人で使うと周りが欲しがる……

 いつの間にか全員分購入する事に……

 そして片付けを一人でする羽目に……


 ちっとも癒しにならない……


 うん、却下



*予定では13日か14日に投稿するつもりだったのですが急遽予定変更となったので、出来上がっている分だけ投稿しておきます。


次回は間違いなく週末以降となります。

 ・・・・・・




「や、やっと来たーー!」


「……ご、ごめんな……さい。忘れていた訳じゃないのよ? ジャーキー……」


「ルーシーです‼︎ 誰ですかジャーキーって⁈ しかも一文字も合ってないし‼︎ 全く探索者ってどれだけいいかげんなのかしら‼」


 今、皆がいる場所は行方不明であったラーナを発見した星系内の有人惑星にある地上の空港内の、相変わらず人が全くいないレストラン。


 そこで食事を取りながらプリプリと怒るルーシー准尉。

 対面の席では平謝りするエマが、隣では素知らぬ顔で軽食を取るノア。

 周りでは仲間達も軽食を取りながらも興味津々で聞き耳を立てていた。


 因みに何故ここを一番に選んだかと言えば、前回偶然? 訪れた時に「遺跡」があったが為に、その惑星への立入禁止命令を出したのだが、時間経過と共にそのまま放置と言う形になっていたのを思い出し、力を付ける()()()()一言謝っておこうと思ったからだ。


 ただ探索者は本来、自エリア内では基本「通告」だけで、事前申請もいらず自由往来権が保障されているのだが、放置したという負い目を感じていたので「一応形だけ」のお詫びと滞在申請だけでもしておこうと、星系担当情報部員であるルーシー准尉に面会を申し出たところ、やはりと言うか会うなりいきなり「遅すぎる!」とお叱りを受けたので、更なるお詫びのつもりで今回はエマが食事をご馳走しているところであった。


 で、当然の成り行きという事で全員に奢る羽目となり、黙々と、遠慮なく、和気藹々と食事が始まる。


 で、初めはお怒りモードでプリプリしながら食事をしていた准尉だが、ある程度満腹になったからか? 見るからに落ち着きを取り戻してきた。


「それで今回はクレア()()はご一緒ではないのですか?」


 突然ジト目を向けてきた。

 何かを観察するように。


「クレアは今は別の用事で……え? 少佐? 少尉じゃなかったっけ?」


 あれっと思い手を止め聞き返す。

 と言うのもルーシーの声は、誰も居らず黙々と食べている静かなレストラン内に良く通っているので全員にも聞こえている筈。なのに誰も反応を示さなかったので、自分の聞き間違えかと思ったのだ。


「その言い方と反応だと別に亡くなられた訳ではなかったんですね。良かったーー」


 手元のトマトジュースを美味しそうに一気飲みした。

 飲み終えると本気で安心したようで、少しだけ肩の力が抜けて行くのが見て取れた。


「良かったって? どーゆーこと?」


「先日、全情報部員宛に届いた公報の昇進一覧の中にクレア少佐の名前があったんですね。でよく見たら三階級特進で特務本部付に転属って載ってたから()()()()()って」


「もしかして……縁起でもない」


「いやだって()()皆さんと行動を共にしていたから何か変な事に巻き込まれたんじゃないかと心配で。しかも前回の去り際に「直ぐに戻ってくるからよろしく」って仰ってたから尚更心配になりますよね?」


「それは悪うございました!」


「いえいえ。実は私も規定に達していないにも関わらず何故か少尉になれたんですけどね~♪」


「へーー」


「もしかしてクレア少佐のお蔭かな? ちゃんと命令守ってたし〜♪」


「さあ? 情報部の内情なんてあたしゃ知らんよ」


「少佐とお近付きになればもっと昇進出来るかな~~?」


 エマが素っ気ない態度に変わったのも気にせず、しかも途中から人の話を聞かずに自分の世界? に旅立ってしまったようだ。


「とまあ、おめでたい話はこの辺で。そんな事よりも早く立ち入り許可を出して貰わないと、こちらとしても遅れに遅れた計画を早く取り戻せないし、昇格直後に降格されても困るんで。と言う訳で隣に行っても構いませんよね?」


「ゴメン、まだダメ」


「えーーーー? 許可を出しに来てくれたんじゃないんですか?」


 身を乗り出し文句を言ってくる。

 それに怯む事なく言い返す。


「違うの!」


「ま、まさか……観光しに来たとか? それでお仲間ゾロゾロ引き連れて来た……とかじゃないでしょうね? もしそうなら一番高級で居心地の良い宿を紹介するんでいっぱいお金落としていって下さい! ここが儲かって成功すれば行政担当官の心証が良くなりさらなる栄転が……はっ! いやそうじゃなくてーーせめて理由だけでも!」


 ()()()()エマ。

 終いには口を紡いでしまう。


「ちょっとよろしいかしら?」

「は、はい?」


 黙って話を聞いていた菜緒が割って入る。

 背筋を伸ばしナプキンでお上品にお口を拭いてから話を始めた。


「私の所属は当然知っているわよね?」


「はい、Cエリアの探索者で菜緒さんですよね? 確か主任代理でしたか? そう言えば何故他エリアの偉い方がこんな辺鄙(へんぴ)で開拓中の惑星に?」


「それをお答えする前に、少々お聞きしたいことがあるのだけれど宜しくて?」


 ナプキンをテーブルに音もさせずに置き、充分に「間」を開けてからルーシーに鋭い視線を向けた。


「はい、どうぞ」


「隣の惑星の今の状況は? ()()()()()()()()のかしら?」


「はい、()()とぉーーても()()()です。惑星全体を覆っていた天変地異が嘘と思えるほどに。今では気候も安定していて絶好の開発日和となっています。ですから……」


「なら丁度良かった。実はね、困った事にあの天変地異の原因はまだ特定されていないのよ……」


 困った困った……といった風に小さくため息をつく菜緒。


「へ? そ、それは誠の事で?」


「そう、それで探索部としては本来の手順に戻し政府に任せ、そのまま手を引いても良かったのだけれど、このエマがね、それじゃ遅くなるしあまりにも可哀想だってことになりましてね。とても忙しい中、他エリアの私達までわざわざ呼び寄せて、手遅れになる前に助けてあげようと、わざわざ調査に来てあげたってワケ」


「わ、わざわざを二回も……そ、そうだったんですか。そう言えば前回クレア少佐が去り(ぎわ)に「恒星を回っていた探索部の艦は、この星系で特殊任務中に損傷して機能不全に陥っていた。その原因がその惑星にあるかもしれないので、原因が判明するまで何人たりとも許可無く絶対に近付けるな」って。だからこんな人数で来てくれたのですか?」


「流石クレア少佐、万全な指示ね。それとも我々ではなく()()()()()にでもお願いする? その場合……どうなるか、将校になった貴方なら分かるわよね?」


「とある部門?…………いいいいイヤちょっとお待ち下さい! アレってそれ程ヤバい事態なのですか⁈」


「探索艦を機能不全に出来るような現象なのよ? 恒星のすぐそばを周回してもビクともしない艦をね」


 ゴクリと喉を鳴らすルーシー少尉。


「それほど危険な状態ではないかってこと。貴方にとって、ここにいる者達は外見上は普通の頼り無い子に見えるかもしれないけれど、見た目とは違い心身ともに鍛え抜かれた探索者達を選りすぐって連れて来たのよ。貴方達のために」


 お澄まし顔で仲間達を()()()説明をする。

 するとルーシーは食事を貪り食う探索者達を横目でチラリと見て、無言で生唾を飲み込む。


 菜緒と同じ様にお上品に食べる者。

 我関せずと無我夢中で食べまくる者。

 他人の料理に手を出し喧嘩をしている者。

 真昼間からビールを煽る者。


 皆、菜緒の話は聞いている筈なのだがマイペースを貫き通し、誰一人として話を合わせようと振舞う者はいなかった。


 そんな事とは露知らず新鮮でどこか近寄り難い、何故だか目が離せない光景に見入ってしまう。


「そ、そのようなワケで必ず解決してみせるから、もう少しだけ待ってて貰えるかしら?」


 ピクピクと顳顬(こめかみ)をひくつかせながらもお澄まし顔を貫き通し、私が()()()()見ている中、華麗に、そして素早く白ワインを飲み干す。



 ってどんなワケ?

 しかも慌ててるし怒ってるし

 さらにいつの間にか酒まで飲んでるし!



「……はい、お任せします」


「ハイ任されました」


 お陰様でどうやら機嫌が直り許可まで貰えたようだ。


 全くアンタ達、一体何しに付いて来たのってな感じ?






 早速隣の惑星へと向かい、例の氷山があった、そして「遺跡」の反応が出ている区域の軌道上へとお揃いでやって来た。

 一応隠蔽迷彩状態で。

 というのもルーシーがいる隣の惑星からは光学観測が可能な距離のため、覗き対策が必要なのだ。


 勿論「遺跡」に降りた後は覗かれないように艦達に上空で目隠して貰う予定だ。


「この辺りだよね? ノア」

「……座標はピッタシ~だけど~、ね~」


 前回訪れた時は惑星全体を真っ黒な雷雨が覆い尽くしそれこそ天変地異というか「世紀末」という言葉がピッタリの大荒れ状態。「遺跡」があった地域は大吹雪で氷山まで出来上がっていた程だったのだが……



 今思えば、

 ラーナは何故この星域に飛ばされたのか?

 遺跡がある惑星を何故その様な、人が近付き難い状況にしたのか?

 何故、常時観測されている恒星という領域に、目立つように探索艦を残していったのか?

 何故ラーナを「遺跡」がある直上に残していったのか?


 それらは今まで見てきた「遺跡」がある双子惑星(連星)とは違い、隣りの惑星には人が暮らしていたから?


 ──全ての状況が椿という人物の性格を表している様な気がする

 ──でも今は余計な事を考えるのはよそう



 そして眼下にはホンワカとした小さな大陸が横たわっていた。


 ホンワカというのは大陸を覆っていた雪や氷はすでにどこにも姿はなく、そこには青々とした草原があちらこちらに広がっていたのだ。


 多分、惑星改造を行った際に植えた遺伝子改良が施された植物が、あの寒さを耐え切ったのだろう、再び条件が満たされたので成長し始めたのだ。

 この調子でいけば数年で森林ができあがるだろう。


 その大陸の中央付近には大きな湖があり、その脇、丁度自分達がいる真下に当たる場所に小高い丘が見えた。


「あ! あそこに何かあります!」


 シャーリーが何かを見付けたようだ。

 皆の眼前にも空間モニターが現れ、そこに長閑に漂う雲の隙間から薄っすらと草に覆われた丘の頂上付近が映し出され順に拡大表示されていく。


 と家と思しき小さな建物が見えてきたところで拡大が止まる。


「さ〜降りるでショ〜」


 真っ先にエリスがプラズマを纏いながら直降下して行く。

 続いて菜奈が、その後をリン・ラン・ノア・シャーリーが同じ様に落ちて行く。


 次にマリマキが同時に降下、今度は流星の如く落ちて行くとエマとエリー、そして菜緒が軌道上に残った。


「さあ行きましょう」


 菜緒が二人に頷くと降下を始める。

 それを見て姉妹は顔を見合わせお互い無言で頷くと同じく地上に向け移動を始めた。


うん、ルーシーの苦労譚が閃いた! 

うんうん、この惑星の未来は明るいぞ!

頑張れルーシー!


*遺跡があった場所は北限に近い場所となっていましたが(我々が住む地球)とは「環境」が多少異なり、さらに惑星改造が終了している為、(今は)氷の大陸にはならずに済んでいる、ということで。



次回は17日以降の投稿となります。

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