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未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
選択 結果 誰が為に?
135/215

ミア迷宮! 訓練場2

*経験値一万倍→百倍に変更します。順次修正します。

 翌朝予定通り六時起床。六時半に朝食を取る為に準備を整えて、少し早かったがエリーと二人で待ち合わせ場所の地下の酒場へ向かう。


 食事のみも可能なこの酒場。二十四時間開店しているが最繁盛する時間帯はやはり夜。

 食事よりもアルコールのメニューの方が多いことからも分かる様に、朝食や昼食をここで利用する者は少ないみたい。


 やはり早朝という事でお客はまだ多くは無かった。だが一画で席を囲んだ人だかりが出来ており一際大きな歓声と拍手が上がっているのに気付く。


 早朝からまさかの酒盛りか? と一瞬疑うが、夜間戦闘を終え帰ってきた者達が就寝前の酒盛りをしているのかもしれないと思えば別に可笑しな事ではない。

 ただ絡まれるのも面倒なので、離れた席に着こうと移動しようとしたところ、聞こえて来た歓声の内容が「何か」を応援している様に聞こえたので気になり、素通りせず覗いてみることにした。



「げぷっ」



「おおーー! 食べ切ったぞ!」

「凄い!」

「あんな小さな体のどこに入るんだ!」

「可愛いーーーー!」


 目の前で大歓声が巻き起こる。


「姉様、より一層食べる様になりましたね?」

「んーーせいちょうきーなのかなー?」


 何処かで聞いたことのある声。


 感嘆の声を上げながら解散していく人混みと入れ替わりで覗き込むと、幸せそうにお腹をポンポンと叩いているリンと、呆れ顔で空き皿を眺めているランが目に入る。


 その二人の前にはお皿がテーブル一杯に所狭しと積み重ねられており、既に馴染みとなったウエイトレスさんが肩で息をしながらテーブルにもたれ掛かり項垂れてるのが見えてきた。


「も、もしかしてこれリンが一人で⁈」

「あ、おはようございます」


 二人に気付き、恥ずかしそうに挨拶を返してくる。


「以前はここまでは食べなかったんですけど……」


 一体どうしたのかしら? といった表情で小さな姉を見る。

 そんな妹に可愛らしいドヤ顔を向ける姉。



 因みに小さな忍者は迷宮以外では頭巾は外しており、可愛らしい顔と頭のお団子、更には幼い体つきも相まって子供が仮装している様にしか見えない。

 それは隣のランにも当てはまること。


 先程迄、如何にも荒くれ冒険者風の者達に囲まれていた中で、そこだけが場違いな空間であっただろう。

 解散していった者達も二人を見て存分に癒されたはずだ。



「リンちゃんてば凄いわ~」

「ホント!」


 エリーの呟きに思わず同意する。


 以前まで、と言うか基地で「消失」が起きるまでは確かにあんな小さな体でも二〜三人分は食べていた気がするけど、ここまでってのは見たことがない。


 どうやら暫く見ない間に大食漢にレベルアップしてしまったみたい。


「まだまだたべれるよ~」どこにいてもマイペースなリン



 まだ⁉︎  ま、マジっすか⁉



「ところでお金は? 持ってないっしょ?」

「それが……」

「ゴチなのね〜」


「「ゴチ? 誰の?」」


 思わぬ言葉に周りを見渡すが仲間は誰もいない。

 いや、いたとしても私以外の者は誰も持ち合わせはない筈だ。


 という事は一体だれ?


 ドヤ顔のリンを見る。

 だが満足そうにお腹をポンポンするだけでそれ以上は教えてくれそうもない。


 そのままランを見る。

 すると二人の視線を感じたのか、リン()を一目見てからため息をつき事の成り行きを説明し始めた。


「えーと早起きな姉様と二人で、待ち合わせの時間までここで待っていようと思いまして。初めは静かに座って雑談していたんですけど、突然「おなかすいたのだ……」といつもの顔つきで我儘言い出しまして」

「はあ」


「その呟きを聞いていた一人の冒険者の方が姉様と()()()()()()しまっって「こんな小さな子供がお腹を空かしているのは可哀想だ」と一食分、ご馳走してくれたんです」

「あらあら~」


「それをペロッと平らげてしまうと「なんて愛らしく、それなのに豪快な食べっぷりなんだ!」と感動しまくりで。その声を聞いてこちらに興味を持った他の方に対して、また同じ目を向けて次から次へとご馳走の餌食に」

「……」


「三人分くらいかな? 食べ終えた時に「まだまだはいるよ~」とお腹をポンポンして見せると、他の方が「よし、俺も奢ってやるからもっと食え!」となりまして」

「……」


「結局居合わせた皆さんから一食分ずつご馳走になったところですぅ」



 あの瞳にやられたか……

 って全員ってさっき十五人くらいは居たよ?



 そこに仲間達が階段を下りてこちらにやって来た。


「お? リンや、朝から絶好調?」

マリ(マリリン)おは〜なのね〜」

「フフ、じゃあ〜朝ご飯にしましょうね〜」


「やっとあさごはんなのだーー!」


「「「…………」」」



 さ、さようですか……これから朝ごはんなんですか……





 食事を終え報酬を貰う為、ギルド窓口へ。

 今回の報酬は六千G。

 LV15オークが三千G、LV10オークが各々千G。


 ついでに例の「未確認生物A」の件を尋ねたところ白い目で見られた。

 反応から推測するに、どうやら本当に未確認らしい。


 何とか信じて貰おうとしつこく詳しく説明を繰り返したが「聞いたこともありません」と同じ返答で終始訝しげな眼差しを向けられてしまう。


 討伐こそ出来なかったが、報酬の対象にもなっていないところを見るに、どうやら「神様」が仕組んだことで間違いなさそう。

 あと戦利品の鍵のことも聞いたら「それは武具屋で聞くか鑑定の魔法でないと分かりません」と呆気ない対応であった。


 まあどちらもいずれは分かるだろう。

 無理して調べたとしてもどうせ「内緒〜」だろうし。





「いらっしゃいませ。訓練場(バーチャルルーム)へようこそ」

「おう! 遊びにきたで〜」

「あ! 今日も来てくれたんですか?」

「ウチは約束守るタチなんよ?」

「ううう、なんとお優しい……」


 涙ぐむ訓練場の受付嬢。



 約束守るって……魔神の迷宮が公開されてなければ来る予定は無かったんだけど、ね



「そんで今日は……」

「魔神の迷宮ですよね?」


 急に泣くのを止め真顔へと変わる。


「へ? あ、そう」

「はい。皆さんのお陰で低階層のデーターが集まったので公開の運びとなりました!」


 嬉しそうな受付嬢さん。


「そうなん? データーって?」

「ギルドは冒険者に報酬を渡すのと引き換えに、ペンダントから討伐モンスターの詳細データーを抜き取り、国に得たモンスターに関する情報を売っているのですが、そのデーターの一部をこちらで買い取らせて貰い、お勧めの武具のアドバイスや訓練場での模擬戦(バーチャルバトル)に役立てているんです」

「へーーそんなシステムになってたんかい」


「はい! 冒険者有ってのこの商売。数が減っては()()()()食い上げですからね。五体満足無事に帰ってきて貰わないと我々が困ります!」

「我々がかい!」


 成程。上手く回っているってことね。

 国もギルドも武具屋も冒険者も。

 あ、あと教会もか。


「でもそのお客さん、今日も全くいないよ?」

「そこが悩みどころなんです」

「へ? どーゆー風に?」

「冒険者の気質なんですかね~後先考えないで突っ込んでいく人ばかりで……後悔先に立たずって言葉、知らないんでしょうね~」



 当たってるかも……だってウチのパーティーにもいるもんね~誰とは言わないけど



「それでか……閑古鳥が鳴いているのは」

「ご納得頂けたところで早速試されますか?」

「へ? 何をや?」

「今話してたやろ? 模擬戦のことやん」

「お、そうか。さっそく頼んます。ええよね?」


 ラーナを見る。すると親指立ててグーを突き出した。


「ではご準備を」


 促されるまま魔法陣の上に乗る。


「それと「魔神の迷宮公開第一号様特典」として今回に限り三種類のモンスターが一回ずつ出現致します。一号様特典も御座いますのでお楽しみを! それでは行ってらっしゃ〜い」


 笑顔で手を振る受付嬢さんに見送られながら光に包まれた。






 ライティングが必要な程ではないが薄暗く静まり返った空間。

 一見どこかの神殿の中とも思える風景。

 そこかしこで青く輝く天然水晶。

 剥き出しの黒色天然大理石が何処までも続いている整然とした巨大な通路。


 そう、来たばかりで無謀にも挑み、けんもほろろに追い返された「魔神の迷宮」の一階。

 誰も彼も忘れる筈もない苦い思い出。


 そこで出会った得体の知れないモンスター。

 引き離し、逃げ切ったと思いきや、いつの間にか追い付き気配も音もなく忍び寄る。


 そのモンスターが再び目の前にいる。


 あの時は全く手が出なかった。



 だが今は違う



火炎柱(ピラーフレーム)!」


 遊撃が一体のモンスターを取り囲み攻撃を加え始めたが余りダメージを負わすことが出来ない。

 そこに前衛が加わり敵の注意が散漫になったところに呪文組が新たに覚えた魔法を放つ。


 この呪文は術者の前に現れるのではなく、対象モンスターの真下に魔法陣が現れ、そこから上へとモンスターを覆い尽くす程の炎の柱が立ち上る。

 メリットとしては術者の位置がバレることは先ず無いところ。


 さらに初級呪文である小火球(ファイアーボール)と比べ威力が倍近くあるようで、炎の色もどちらかと言えば中級呪文に相応しい白色近くの高温へと変化していた。


火炎柱(ピラーフレーム)!」


 先ずランがその火炎柱(ピラーフレーム)を唱え敵にダメージを与える。が初めてエンカウントした敵だったので念のため、炎が消える前にエリーが同じ呪文を唱えることにより、敵に倍の時間、ダメージを与え続け様子を見ることにした。


 ここで敵の正体が判明する。


 <LV25シャドウグール>


 不死(ゾンビ)系のモンスターのようで名前同様、触れられたら(ポイズン)麻痺(パラライズ)、さらにHP吸収(エナジードレイン)を喰らう可能性があるとのこと。


 ファイター系が囲み見守る中、炎柱(ピラーフレーム)の中で藻掻くシャドウグール。

 炎の外に出ようとすると押し返されてまた炎の中へ。


 正体が判明したにも関わらず口以外は全身真っ黒で体の凹凸(おうとつ)すら分からず、炎の中で人型の暗闇だけを形作っていた。

 だが二回目の炎を耐えきることが出来なかったようで、唯一認識できる真っ赤な口を開き断末魔を上げながら炎の中で煙へと変わってしまう。


「ハアハア~やっと倒せた~」

「オークとはまるで違うぞ」

「攻撃も八割近く避けられてたなの!」

「グールって確かゾンビ系ですよね? と言う事は炎系が弱点な筈。それなのに倒すのに時間が掛かりましたよ?」

「それだけ耐久力があるってことじゃない?」

「でも前は良く逃げ切れましたね?」

「動きだけは遅いからかな?」


 息を切らせながら次々と感想を述べる仲間達。特にファイター系は汗までかいていた。



 ボン‼



 宝箱出現!



「つぎくるぞーー!」


 え? もう? 回収している暇がない!


 唯一平静なリンが刀を抜いた状態で天井付近に注意を向けていた。

 釣られて全員見ている方を向く。


「「「い、嫌ーーーー!」」」


 それを見た瞬間、エリーとマキ、さらにランが叫び声を上げながら後方へと後退る。


 天井には体長五mはあろうか巨大な大蜘蛛モドキ? がいつの間にかへばりついて動かずこちらをジッと見ているではないか。

 しかもよく見ると足がムカデ並みの本数、更に一際大きいお腹の部分の模様が微妙に波打っているようにも見える。


 うん、とっても気持ち悪い……


 ドサッ……


「あ! お、お姉様‼︎」

「しぇ、シェリーさん⁈」


 さらに叫び声が上がった。

 声がした方を見ると、なんとシェリーが口から泡吹いて昏倒しているではないか!

 敵の出現と共に四人が瞬時に脱落してしまった。


 <LV20カモフラージュスパイダー>


 ここで敵の名が表示された。


「く、来るで!」


 予備動作なし、いきなりパーティーの動きを制限するようにそこら中に口から糸を吐き出すと、何故か向きを変え遠ざかり暗闇と同化してしまう。


「な、何なの?」


 ソニアが何か嫌な気配を感じ取った。

 その言葉で皆の緊張感が跳ね上がる。


 固唾を飲んで相手の出方を待っていると、張られた糸が小刻みに揺れ始めた。

 すると体長十cmくらいの無数の蜘蛛が糸を伝わりこちらに向けカサカサと静かに音を立て行軍して来た。


 一瞬何が起きているか理解できず全員フリーズしてしまう。

 そんな状態の冒険者達にお構いなしに次第に増していくカサカサ音。


 僅かな間ではあったが思考が回復するころには寸前まで迫られてしまった。


「よ……よくもランランを泣かしたなーーーー!」


 そこに怒りに振える声が響き渡る。


 小さく丸まり怯えていたランの前に立ち、迫りくる小蜘蛛を睨みつけている忍者がいた。

 その表情……とは言っても目の部分しか見えないのだが、その目が怒りに満ちているのが誰の目にも明らかな程に。


「にんぽう……あとかたもなくけしずみになるのだーーーー!」


 両手の人差し指を伸ばし掌を合わせ、指先を口元へと持っていきそこで大きく息を吸い込むと、布で隠れた口から大火炎が吹き出され、その火炎が瞬く間に小蜘蛛達を丸飲みしていく。

 さらに小蜘蛛の炎が後続の小蜘蛛達へと連鎖的に燃え移り、伝って来た糸までもが燃え始め、終いには全ての糸が炎上していくと隠れていた大蜘蛛の姿が見えてきた。


「あ、あれ?」


 その姿は先程までとは違い、巨大だったお腹の部分が頭部よりも小さくなっていたのだ。

 どうやら先程の小蜘蛛達が腹部を形づくっていた様で、実際の体は小さかったようだ。


 とはいえ、逆に今の姿のアンバランスさで余計に不気味に見えてしまう。


「後は任せとき!」


 腰から取り出したのは出刃包丁。

 その包丁を一振りすると形が二回りほど大きくなった。


 それを大蜘蛛に向け気合を込めて振り下ろす。

 すると二枚刃となった斬撃が蜘蛛の両足をそれぞれスパッと切り裂くと、体だけが地面へと落下していく。


「よっしゃーマキ、仇はうったどーー!」

 ガッツポーズをするマリ。


「「ちゃーーんす!」」


 好機とみてラーナとソニア、そして菜奈の三人が動けず藻掻いている蜘蛛に止めを刺すと煙へと変わった。



 ボン‼



 また宝箱出現!


 多くの犠牲者が出たが何とか倒すことが出来た。


「姉様ーー怖かったですーー」

「おねえちゃんがたいじしたからもうだいじょうぶなのだ!」


 抱き合う小さな姉妹。


「いやーー一瞬で蕁麻疹が湧いて出たで!」

「もうおらへんから安心しーーや」 


 二人組とも、ウチの姉と同じで蜘蛛が苦手なようだ。

 そう言えばエリーはどこ?


「エリ姉~」

「こ、ここよ~」


 背後から声が聞こえてきた。

 振り向くと真後ろで私に隠れる様に寄り添う姉の姿が目に入る。


「うぉ⁈ そこにいたの? 全く気付かなかったよ」

「もういない~?」


 怯えた上目遣いで聞いてきた。


「おう片付いたよ!」

「そう~」


 いないと分かり私にもたれ掛かってきた。

 そんな姉の肩に手を回しポンポンと優しく叩く。



 あ、そういえばもう一人いたっけ



 見るとシャーリーに膝枕をしてもらい、青褪めた顔でうなされているシェリーが地面に横たわっていた。

 直ぐ隣で座り様子を伺っていた菜緒に状態を聞いてみる。


「相当苦手みたい。今でも「来るな……来ないでくれ……」とうわ言を」

「そうなの? シャーリー」

「はい。蜘蛛もそうですが昆虫全般が苦手でして……」


 こりゃ重症だね。でも苦手なのが昆虫系か。

 普段の生活で見掛ける事なんて皆無だし仕方ないのかも。



 でも「ふぁんたじー」でのモンスターの定番だから、今後も沢山出てくると思うんだよね~



 とここで全員の眼前に小ウインドウが開き文字が表示される。


 <LV16ボトムデーモン>


 反射的に読み込む、が全員がウインドウが現れた意味を咄嗟に理解出来ず、僅かだが時間が流れてしまう。


「…………あ! ど、どこだ⁈」


 一斉に我に返り敵が現れたと悟り、皆で周りを見回すが姿が見えない。

 というかリンでさえ辺りを見回している。


「姿が見当たらない?」

「え、エマ~あっち~」

「え? エリ姉どこ?」


 弱々しい姉の声。まだ先程のショックから立ち直れていないみたい。

 少し休ませてあげたいが敵は待ってはくれない。


 エリーが指差す方向を見るが、その方向には誰もいない。


「マップ~~」

「マップ⁈ あ、そうか!」


 皆、同時にマップを開くと確かにエリーの言う通り、指差す先ここから十m程に光点があり、そこに敵がいるよと示してくれていた。


 でもどこにもいないよ? 上も下も……


 しかし光点はゆっくりとこちらに向かって来ている。


「にゅ~~? 何かを感じるなの!」

 と何もない空間を凝視し始めるソニア。


 だが何かを確信したのか突然「ちぇすとーーーー!」と叫びながら何もない空間に気合を込めたフライング飛び蹴りをすると


 ドス!


 と鈍い音と共に


 バーン!


 と足裏から追加効果の爆発が巻き起こる。

 さらに爆発が起きた空間が一瞬揺らいだかに見えた途端、その空間自体が煙へと変わった。



 ボン‼



 またまた宝箱が現れた。


「ミッションクリアです。宝箱の中身を回収次第、転送を開始します」


 とのアナウンスが聞こえた。


「確かここに出てくるモンスターは最弱の部類なんよね?」

「そ、その筈」

「これで⁉︎」

「ところで最後のは何?」

「どうやら……ステルスタイプ……元々が透明な体のようね」


 ヘルプで調べている菜緒がこちらを見ずに説明してくれた。


「HPや他のステータスはかなり低いみたい。でも厄介なことにクリティカル発生率が5%もあるわね」

「クリティカル……」

 自分の首を手で触る。


「そうそれね」

 頷く菜緒。


 このゲーム内でのクリティカルとは首と胴体がさようなら〜の状態の事で「会心の一撃」とは意味合いが違い、即死亡判定扱いとなっている。

 因みにこの発生率が0%の者はスキル等の特殊条件がない限り、何度攻撃してもクリティカルは発生しない。


 我がパーティーで現在有しているのは忍者(リン)(シェリー)槍使い(シャーリー)の三人のみで、リンで10%、シェリー姉妹の発生率はリンに比べてかなり低い3%だが、レベルが上がれば僅かだか上昇するらしく、先々ジョブチェンジを果たした際には、その時点の値の1/5が引き継がれるらしい。


 でもそんなのんびりと育成している時間的余裕は多分無いと思う。



 戦利品回収に専念する為、まだフラついているシェリーは妹に任せて宝箱開封作業に移る。

 エリーが三つの宝箱にそれぞれ鑑定の魔法を使うと全てに罠の反応があった。


「リン、解除出来る?」


 どんな風に罠を解除するのか、興味津々で聞いてみた。


 因みにこのダンジョンに現れる宝箱には鍵穴や錠の類が一切なく、ただ蓋をあけるだけの簡単な構造。

 もし罠が仕掛けられてあった場合、宝箱に触れただけでも反応してしまうため、開ける者には罠の種類と効果、そして肝心な解除方法を調べる必要があるのだ。


 その役目は我がパーティーでは唯一罠解除能力を有しているリンとなる。

 因みにこのゲームでは罠解除作業にもMPは消費する。


「んーーちょっとまってーー」

「?」


 突然その場で不思議な舞を始める、が僅かな時間でピタッと止め宝箱の一角を指差した。



「はんにんは~~おまえなのだーー!」



 ……はい? 何の犯人?



 そのまま指で示した模様の部分をポチッとな、と押すと蓋がギギーと音を立て開いていく。


「ホイホイつぎなのね〜」


 同じ様に舞ってから順に罠を解除していき、無事全ての解除に成功した。



 因みにリン曰く、

 一つ目は

 猛毒(マッドポイズン)の罠


 二つ目は

 石化(ストーン)の罠


 三つ目は

 錯乱(コンフュージョン)の罠

 とのこと。


 最終的に武器が合計十二個手に入った。

 鑑定は後にして取りあえずは帰還しよう。



 帰ってくると受付嬢さんが笑顔で出迎えてくれた。


「おかえりなさい。脱落者もなく、戦利品も無事手に入ったようで」

「一つ聞いても良いかしら?」


 この世界に来てから積極的には発言していなかった菜緒が珍しく口を開いた。


「はい、なんでしょう?」

「知っていたら教えて欲しいのだけど、呪文を使ってくるモンスターはいるの?」

「はい、何体かは。初級呪文が確認されています。あと口コミで申し訳ないのですが、上に上がれば上がるほど、転送系の(トラップ)が増えていく傾向が見られるようなので、そちらも特段注意して下さいね」


「転送系……」


 つまりテレポートってことね。

 行き先が決まっているならまだしも、ランダムテレポートだと完全な()()()

 つまり神様の気分次第。


 でも前回のマリの件もあるし、飛ばされた後の対策は既にしてある。

 でも気を付けるに越したことは無い。


 全く気まぐれ神様には困りものだ。


迷宮編は簡単に終わらせるつもりでしたが……


「はいふぁんたじ〜系」や「VR系」に関しては今後は書くつもりは無いので最後の機会と思い、もう少しだけ続けます。


次回作は「ホラー系」か「ローファンタジー」かのどちらか。


多分「ホラー系」が先かな。

10〜20万字程度で終わらせそうだし。


どちらにしても、今作をしっかりと終わらせてから考えます!

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