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未来か過去か⁈ そんなの私には関係な〜い!  作者: 想永猫丸
それぞれの思惑と別離
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第百三話 ポチッとな×3 白状なさい!

 「……」だけ修正していくつもりでしたが、同時に本文修正もやる事にしました。


 なので修正が思っていたほど進んでおりません。

 その影響で投稿も遅くなっております。予めご承知下さい。


 それとサラですがやはり放置は出来ないので、区切りの良いところから割り込ませていきます。


*2024/12/14 大規模修正を行いました!

 ・・・・・・



「すまん。まさかこんな手を使ってくるとは……」

「いえ、コーチのせいでは。(わたくし)が奴の挑発に乗ってしまったのが原因」


 暗闇の中、己の未熟さを反省する二人。同時に自分たちが置かれている状況の深刻さに気付く。

 そして今回シェリーの「捕獲」に成功したロイズ。彼のここにおける役割は研究所の防衛であり探索者(招かざる者)がやって来た際の対応だった。


 ◇


 未だ未成年のため正探索者ではない兄弟。

 彼らはローナ姉妹・奈緒姉妹に続く「探索者以外の者が探索艦と契約」した三組目であり、育成施設を経ないで探索者となった唯一の存在であるエリー姉妹(書類上は卒業している)と同じく、候補生育成施設には通わずに探索者になることも決定している「特殊な」立場、なのだが未成年なので艦を動かしたことはなかった。


 当然、先輩とは操艦技術では差があるのはあたりまえ。

 研究所サイドもレベルの差は分かっている。

 だからこそ色々準備をしてくれた。


 そこに「あのシェリー」がやって来た。そこで思った。これはヤバいと。

 シェリーの実力は皆から聞かされていた。正面から正直に戦ったら勝ち目はないと。


 だが正面から正々堂々と戦わなければどうか?

 勝算は十分。

 サッサとご退場願うため、真っ先に「保険の存在」をチラつかせ動きを封じた。これでとりあえず「不慮の事故」で死ぬことはなくなったはず。

 思惑通りに進むかに見えた矢先に予想外な出来事が。

 なんとエリーが離脱。

 そして役割の変更。


<シェリーの身柄を確保せよ>


 ……なんてご無体なオーダーを。でも期待には応えないと。


 ここで策を講じることにした。保険が利く今だからこそ有効な策を。


 一つ目の策。

 展開させていた調査艦を密集させ「盾」を形成した。シェリーから見れば防御態勢をとっていると見えるはず。

 だがそれはフェイクで本当の目的は重力波を止める「防波堤」作り。

 重力波は直線的に伝わる性質があり、条件を満たした障害物を置けば大半は消失させられる。


 障害物()が出来上がったところでシェリーから「見えている位置」にいる調査艦をシェリー艦()()()跳躍をさせるとともに、シェリーから観測できない位置にいる、全体の五割近くの艦を、シェリー艦を中心とした六方向(分かり易い言い方では上下前後左右)へと超々短距離跳躍を同時にさせた。


 同時にしたのは跳躍の際に発生する重力波を誤魔化すため。

 盾のお陰で波の大半は消せるとはいえ、これだけの数が一斉に跳躍をすれば次元の歪みが大きくなり探知されてしまうかもしれない。探知されたらオーダーには応えられない。

 なので念には念と跳躍による攻撃を同時に行うことで散開跳躍を隠した。


 その後のシェリーの動きから隠匿に成功したと判断。

 最後の仕上げと通信回線を開きジンの動きを一時的に止めさせた。

 時間稼ぎの会話の合間にシェリー艦が現在留まっている座標情報を持った調査艦(伝令)を、シェリーの死角から跳躍させ、待機している調査艦達に伝える。

 情報を受け取った調査艦らは「指定された座標」へ「決められたタイミング」にて順次跳躍してゆく。


 最終目標はシェリー艦……の数百m手前。

 六方向から跳躍を終えた艦は急制動を行いながらジンに殺到。艦首をジンに向けた状態で1秒にも満たない僅かな時間で艦同士を接触させ停止する。仕上げに「ウイルス弾」を放出して「牢獄」の出来上がり。


 この牢獄はCエリアでシャーリーとソニアを苦しめた同一の陣形。前回と違うのは牢獄の狭さと密度、さらにウイルス弾の有無。

 1枚目の牢獄が出来上がったところに間髪入れずに次の壁(二枚目)となる調査艦が同じ様に一斉に現れ、一枚目の外側にウイルス弾をまき散らしながら(一枚目と同じ様に)艦首をシェリー艦に向けながら包囲壁を形成していく。

 そして五枚目以降はウイルス弾を用いない「厚みのある壁」が出来たところで打ち止めとなった。

 ここまでの商用時間は約1分。見事な球体牢獄の出来上がった。


 中心にいるシェリーがこれを突破する場合、ちょっと動くだけでウイルス弾に接触してしまう。勿論、ワクチン等の対抗策はないので機能停止は免れない。


 では機能停止は覚悟の上で推進力全開で突っ込んだとしたら?


 ウイルス弾に被弾→ジンが機能停止→だが慣性移動は継続→その状態で敵艦に接触→硬い部分との接触により急激な速度低下が起こる→だが突破は成功→二枚目のウイルス弾と壁に接触→さらに速度低下→程なく慣性移動が止まる→ジン復活前にウイルス弾が浴びせられ捕獲……

 もう艦を動かすどころの騒ぎではない。なにせ艦の生命維持機能までもが停止してしまうのだ。


 残る確実な手は跳躍にて離脱し仕切り直す。

 だが跳躍には艦を円錐型にする決まりがある。だが今いる空間にはそのスペースは存在しない。形状変化した途端被弾してしまう。


 だがやろうと思えばできる。

 牢獄完成直前、ジンは真っ先にコタロウ君を艦に収容した。そして質量兵器は収容せずに薄く延ばして自艦を覆わせてある。

 なので形状変化に合わせて質量兵器の形状も変えれば被弾するのは質量兵器となる。つまり彼らを犠牲にすれば跳躍自体は可能なのだ。

 ただし「跳躍先は神のみぞ知る」となってしまうが……


 だが問題はそこではない。

 一番の問題は突撃時のために位置をコタロウ君に調べて貰った41艦の位置データーが、目隠しをされたことにより使い物にならなくなっていた。

 これでは「牢獄」から抜け出せても、一からのやり直しとなる。勿論質量兵器がない状態で。


 ◇


 暗闇の中、シェリーは「ロイズ程度」と油断していた己を反省する。

 とここでロイズからシェリー宛に通信が入った。

 何故通信が届くのか? と不思議に思ったが何のことはない、囲っている調査艦の装置を利用していたのだ。


『もしも〜し?』


 緊張感が感じられない声のみの通信。


「…………」


 ()()()()()()ので無視をする。


『ありゃりゃ、怒っちゃったかな?』


「……何の用だ?」


 自分は負けた。敗者は勝者を無視出来ない。


『んーーーー悪く思わないでね。おいらとしてはシェリーの姉さん傷つけたくなかったからこんなやり方しか思い浮かばなかったんだ』

「……なあロイズ」

『はい? 何でしょう?』

「……いや、なんでもない」



 ロイズにはロイズの理由があってここにいる。敗者に理由を聞く権利は無い。


『……およよ? ま、いいや。「あの方」が呼んでるんでシェリー姉さんは一足先に行っててね』

「あの方?」

『椿ちゃん♡』

「…………」

『元気出して。勝負は時の運って言うっしょ? 今回はオイラとの相性が悪かったってだけで、ね?』


「ああ、最悪だ」


 素直な気持ち。

 お陰で色々と()()が頓挫してしまった。

 因みに「計画」とは今回の作戦だけでない、個人的なモノも含まれる。


『はは、一応誉め言葉と受け取っておきますね!』


 ここで通信が切れた。


「シェリー、包囲網が移動を始めた。この状態のまま連れていかれるらしい」


 ご丁寧に重力制御を働かせて移動させている様だ。


「……了解です。この速度だと(研究所まで)どのくらいで?」

「30分程度か」


 反省(クールダウン)する時間は充分ありそうだ。


「分かりました。少し頭を冷やします」


「何か用意しようか?」

「ありがとうございます。では冷えた紅茶(アイスティー)を……」


 と答えながらベルトを外しシートの背もたれを倒すと静かに目を閉じた……




 ・・・・・・




「……あれ、何だと、思う?」


 暗いコックピット。搭乗者の右側面の球体壁面モニターには黒い球体が映っている。

 コックピット中央で「椅子」に腰掛けいる少女はその球体が余程きになるのかチラチラと視線を向ける。

 そんなに気になるのならガン見しても良さそうだが顔は正面に向けたまま。だが難儀な性格故に無視も出来ない。


 仕方なし、と艦AIに尋ねた。


「……先生、見テ分カラナイノデスカ?」

「……お団子、かな?」


 連想したのだろう、少しだけ表情が崩れた。


「……食ベタイノデスカ?」

「……うん」

「ナラ用意シマスデス」


 小皿に載った月見団子と熱々の緑茶が現れ音もなくスチール机の上に舞い降りてくると、パーと表情が明るくなる。

 そしてお茶を手に取り一口飲む。



 ──美味(うま)、か……



 次に楊枝を持ち団子に刺してお口に放り込む。


「……たーまやー!」


 ワクワク顔で叫んだ。


「ドコニモ花火ハ上ガッテハイマセンデス」

「……チッ、あの黒玉は花火じゃないの、かい…………じゃなーい‼︎ アレは何⁈」

「調査艦ガ円陣ヲ組ンデルノデハ?」

「……へ? そう、なの?」

「ハイ」

「……そうか。何かの訓練? なら邪魔しちゃ悪いよ、ね。ところでシェリーはどこ、なの?」

「姿ガ見当タリマセンデスネ。他ノ方々モ」

「……奴の姿、は?」

「同ジク見当タリマセンデス」

「……中に入られちゃったか、な? 仕方ない、な。先ずはシェリーから探すか、ね」

「了解デス」


 数秒して、


「ピコピコ信号発見! オ団子ノ中カラシェリーサンノ反応ガ!」

「……はい? もしや合同訓練の真っ最、中? なら邪魔しちゃ悪いよ、ね?」

「ウウ、先生モ成長シマシタネ。ソウ言エバ妹先生ガ、シェリーサンハ戦闘中ト言ッテマセンデシタカ?」

「……ならアレは訓練じゃなく、て」

「……戦闘中デス!」


 やっと正解に辿り着いた。


「……ほうほう。それで隣の一団、は?」

「状況カラシテ……アッ、ロイズサンガイマシタデス」

「……という事はあれは遊んでいる訳では、ない? オー何てこった!」


 こりゃまいった、と真剣味が感じられない驚き様。


「先生ドウシマショウ!」

「……アシ1号焦る、な。どこかにボツ郎戒はおる、か?」

「発見シマシタ! アソコニ!」


 研究所脇で隠蔽迷彩状態で待機している。


「……お? いたいた……ってローちゃんもいるではないか、え」

「ソノヨウデスネ。アンナ所デ何ヲナサッテイルノデショウ……」

「……まあ良いではない、か。それよりもボツ郎戒に新たな指令を……ポチっと、な!」


 と手を伸ばした先には空間モニターが。そこには真っ青なアナログなボタンが表示されており、それを人差し指で力強く押す?

 その瞬間、ボツ郎戒が一瞬ブルっと震えると真っ黒なお団子やその近くの一団に近寄り周りを高速で回り始めた。


「……お次は……ポチっと、な~」


 今度は青いボタンの隣に真っ黄色なボタンが映った空間モニターが現れた。

 伸ばしていた手を横に移動させソーと静かーに押す。

 その途端、お団子を形成していた調査艦は撒き散らしたウイルス弾を蹴散らしながら散開を始めると、僅かな時間で同じ方向へと向きを変えた。同時に傍にいた一団も同じ方向へと一斉に向きを変えた。


「……トドメだ、ぞ~!」


 最後は真っ赤なボタンが現れる。空いている手を使いお団子を口に運びながらボタンを叩く?

 と全ての調査艦が一斉に同じ方向へと跳躍していった。

 その場にはシェリー艦とロイズ艦、さらに所属不明? の40艦が残される。



「「「はいーー?」」」



 一瞬で消え去る調査艦を見たロイズとシェリーとジンが盛大にハモる。


「……いっちょ上がり〜、だぞ?」

「相変ワラズ見事ナオ手並デス! デモ行キ先ハアソコデ良カッタノデスカ?」

「……天然分解圧縮蒸発工房のこと、かい?」

「ソンナヤヤコシイ言イ回シヲシナクテモ……ブラックホールト言エバ、オ読ミ頂イテイル方々二ハ通ジルカト。ソレニシテモアノ方向ダト、天ノ川銀河ノ?」

「……実は試したい事があって、ね。ちょっとした実験を、ね」

「ソノ話シハマタノ機会二。ソレヨリアノ探索艦達ハ何デショウカ?」


「…………お茶が冷めちゃう、でしょ?」


「先生! ココニ来タ目的ヲオ忘レデハ無イデショウネ⁈」


「……次はお団子♡」


「先生……」



 ……チン……



 いつぞやに聞いた音が。


「解析終了シマシタデス」


 アシ1号の声。だが寸前までとは逆の方向から聞こえてきた。


「ソノ声ハ……オ久シブリデスネ」


「コチラコソオ久シブリデス」


「……ご苦労様。()()3()()、や。感動の再会はそれくらいにして、どう? 問題なさそう、かい?」


「パターンハ同ジデシタ」

「……それなら~もーまんたい、だね~。ではでは遠慮なくシェリーに(暗号)通信、だぞ」

「ハイドウゾ」


「……はろ~、かなかな~?」

『その声はミアか? ……そうか敵が消えたのはミアのお蔭か。そちらも忙しいだろうに手を煩わせてしまったな。申し訳ない』

「……余計なお世話だった、かなかな?」

『ん? いやそんな事はない、正直助かった。それよりそちらの(救出)任務はもう終わったのか?』


「……え? (救出? 微妙に予定変更になったのかな?) う、おーー大丈夫、だー。それより他エリアの探索者を見掛けてない、かいな?」


 滅多に無い状況下。ボロを出したら大変と冷や汗を流しながら慌てて誤魔化す。


『他エリア? この作戦に参加しているのか?』

「……Aエリアの方々が総出でこっちに来ている、らしい」

『……多分、ロイズの傍にいる奴だな。Aエリアの……という事は』

「……ひぃ、ふぅ、みぃ…おお! 丁度40艦おる、で~」

『ミア、奴らは敵になるのか?』

「……どっちがいい、かい?」

『ん? ……敵ではない?』

「……今は眠らされて()()()()()()()()ってとこか、ね」

『…………』

「……ただハッキング(操った)奴のパターンは既に把握済みであるからして、いつでも解除可能です、ぞ?」

『つまり今は敵の傘下ということか?』

「……多分、ね」


『なら一つ願いがある』


 目に炎を宿らせている姿が容易に想像がつく声色。


「……何~? 言うて、みい」

『奴らをこの宙域から逃がさない様に出来るか?』

「……行動不能、ってこと?」

『違う。あの41艦と戦いたい!』

「……しかし難儀な性格だ~ね~お主は。はいはいポチっと、な。それから()()()()()()()、な。」


 ミアの左右に現れた、空間モニターに映っている青いボタンを両手を使って素早く押す。


『感謝を!』


 シェリー艦を覆っていた質量兵器が散開。艦も円錐形へと変化する。


「……質量兵器を上手く使って、みて~。そんじゃぐっどらっく~、だぜ」


『助言に感謝を! ロイズ、我が行くまでそこを動くなーーーー‼︎』


 生き生きとしたシェリーを見送ると隠蔽迷彩の状態のままローナ艦に接近。艦同士が接触したところで停止をした。


「……またまたはろ~、かな?」


 有線接続にて。


『グッドタイミング! お帰り~待ってたわ♪』


 空間モニターにはローナの姿が。


「……大まかな状況はノアちゃんから聞いてる、けど?」

『奴は今は中♩ 現在通信封鎖中♩ マリは自力で脱出の最中♩』

「……そう、か。そんで中の現状、は?」

『事前情報とはかなり差が生じているわね♩』

「……調べよう、か?」


 先程、アシ3号から「この宙域は問題なし」とのお墨付きが出ている。


『今は危険ね……奴を挑発したくはないし♩ それより覗くことは可能?』


 慎重派のローナらしい返答。

 だが調べるでは無く覗く? 気付かれずに?


「……中を、かい?」

『そう』

「……多分」

『ならお願い♩』

「……やってみる、ぞ~」


 何を警戒しているのか。今来たばかりの自分には分からない。


『やりながらでいいんだけど、一つ聞いてもいいかしら?』


 嫌な予感が。


「……はい? 何でございましょう、か?」

『逃げられたの?』


 笑顔のローナ。


「……え、え~と」


 思わず顔を背けてしまう。


 ノアちゃんめ……


『仕込めたの?』

「……ん、ん~と」


 目が泳ぎまくる。


『正直に白状なさ~い♪』

「うううう、あ、思い出した! リンがAエリア基地に現れた、ぞ!」

『そうなの?』

「……そうなの、だ~」


 食い付いてくれたので一安心。なのでリンの口調で説明してみた。


『まあ奴が戻ってきたのに現れないから疑問に思ってたけど。ならリンはあの子達と無事合流したのね?』

「……うい」

『それなら良し♪ あと基地にレイア(彼女)はいた?』

「……予測通りいた、ぞ。オマケつき、で」

『オマケ?』

「……アリス、だぞ」

『……何故アリスが?』

「……しかも椿バージョン、だぞ?」


 そこまで言うとローナは真顔に変わる。


『…………向こうの情報全部頂戴』

「……今送ってる最中、だぞ」


 そこで会話が途切れた。





 ・・・・・・




「ここも随分と久しぶりだな」


 薄暗い暖色の明かりの室内。豪華な座席に座り小窓から宇宙()を眺めているのはサラ。


 つい先ほど全身漆黒色へと擬態変化をした元金色の巨大な球体をした艦から一隻の連絡艇が現れ、少しとは言っても100kmほど離れた巨大な三つの建造物へと向かっている。

 行く先にある巨大な建造物は三つ等間隔で並んでいてその内の一つ、主星に一番近い建造物へと連絡艇は向かってゆく。

 そのサラだが見たことも無い真っ黒で地味な制服を着ており、他には誰も乗っていない客室内からつまらなそうに一人外を眺めていた。

 サラが利用している連絡艇だがどの部署も政府管轄の共通仕様を使っており特筆すべき点は全くない。

 機能も通常空間での近距離移動用として超小型の反重力装置が積んであるだけ。

 大きさは大小何通りかはあるが、外観は全て円柱形のコンテナの風貌で前部に出入用の隔壁扉、周囲に小窓が多数配置してあり座席は全て単座の豪華な造りは全くの一緒。

 唯一、所属部署による外装の色に違いがあるが、AIによる完全自動運行でアンドロイドなども配置されてはおらず、ただ単に目的地まで確実にお客さんを運ぶことのみを目的として作られた輸送船である。


 余談だが形状を自由に変えられる探索艦には積まれていない。



 次にサラがいる宇宙空間()に目を向けてみる。

 向かっている建造物がある宙域は「火星」と「地球」との中間地点。

 主星となる太陽に近い方から「整合部本部」、中央は「情報部本部」、最後に「探索部本部」となっており、その内の整合部本部に向かっている。


 因みにサラが所属している「探索部本部」は元々は移民用宇宙港だった。だが諸事情によりここを探索部本部にする為、わざわざ他の宙域に宇宙港を移設をした上で本部にした。

 それと「調査部本部」は太陽系外の外縁、所謂「オールトの雲」がある位置にある。

 よってこの区域は現在は政府特別区域に指定されているため、行き来する宇宙船や連絡艇などもなく、色も相俟ってヒッソリと静まりかえっている。


 最後に四部門を統括しており四賢者と呼ばれるAIが置いてある「総本部」は、人類にとって母星となる「地球」の衛星である「月」の地中にある。


(何故そこに探索部本部を置かなければならなかったのか? 何故調査部だけ別の宙域に本部を置いたのか? その理由は本物語の後半で判明する予定)



 やがて目的地である「整合部本部」の宇宙港の連絡艇専用ドックに近付くとハッチが開き目印となる明かりが点々と灯っているのが見え、そこに出入口用扉が衝撃もなくドッキングするとドックのハッチが閉じた。

 すると連絡艇内の客席エリアの照明が一気に明るくなり、客に到着した事を告げる。


「着いたか。さて何で呼び出されたのやら……」


 やれやれと言った感じで立ち上がるサラ。


 一度襟元を直し帽子を被り直してからそのまま出口へと足早に向かって行った。


作中の連絡艇ですが、イメージとしてISSに物資を運んでいる「コウノトリ」を未来的人員輸送用に作り替えたモノ、という感じで。


次回は8/10(月)までには投稿します。

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