第92話 だからそういうイベントは勇者に回せっての
俺達の泊まる『木枯らしの宿』は俺が飯の美味いという噂を聞いて泊まることにした宿。
宿泊代? 二の次だよ。
まあ評価な。
美味いよ。普通に。
どこにも変なアレンジや調味料を使わずに、ただ食材の良さを出す調理法………いいことだ。
ライアにも参考にして貰いたいくらいには――まあ、ライアは一発見りゃ覚えるけどな。記憶チートめ。
勿論部屋も快適。
1人部屋でのんびりできるのも最高だ。
ハギは勉強が大変そうだな。
馬車でやってた俺を恨めしく思うんじゃねぇぞ。
さて………と。
俺はベッドに横たわり《検索魔法》《世界地図》を発動させる。
2つの魔方陣が俺の目の前に顕れる。
《世界地図》の魔方陣からは世界中の外見的地図が。
《検索魔法》の魔方陣からは検索について事細かく。
ちなみに俺がGoo○leマップの事を知っているのは女神様が原因とだけ言っておこう。
俺に『地球にはこんな便利なモノがあるのよ! 歴史を辿りましょ!』とか言って世界中を歩かされた日は懐かしい。
まあ楽しくはあった。
悲しくもあったけど。
俺は思い出に耽りながら、《創造魔法》の派生《魔法再創造》で《検索魔法》と《世界地図》の効果を合体させる。
これでGoo○leマップの完成。
俺の手元には検索エンジン付き世界地図が表示されている状態だ。
「【検索:佐藤拓哉】」
まあ欠点は検索対象を決める方法が詠唱な所か。
それ以外にもあるけど、これはこれでアリだな。
俺しか使わないし。
そんな事を考えていたら。
もう《検索魔法》は拓哉を捉えた。
現在もう就寝している模様。
「【詳細検索:拓哉の今日の1日】」
さて、面白半分でアイツの今日を見よう。
頭の中に、拓哉の今日1日の出来事が映されていった。
■■■■
朝6時。
拓哉は他者の体温で目を覚ます。
拓哉は目を擦りながら周りを見る。
『ね、眠い………』
拓哉は昨夜、散々頑張ったので、まだ少し気だるさを感じながら、伸びをしたかった。
しかし、少し腕を伸ばしたら感じた柔らかい感触に、思わず手を止めた。
拓哉は横に首を向ける。
「えー、なんで居るの?」
そこには寝巻きのはだk――
■■■■
――轟音め。滅びろ。そしてリア充かよ。
さて、大きな揺れと轟音によって? まあお楽しみな拓哉クンの1日 (笑)が? 途中で止まったかねぇかこのクソがぁ! 面白そうなのにどうしてくれるんじゃのんびり見ようとしてたんだぞコラァ………。
さすがに深夜に叫ぶのもあれなので、内心で叫ぶ。
さて、ハギは無事かなー?
俺はベッドから起き上がり、隣のハギの部屋に向かおうとする。
『ケイー? 起きてるー?』
さてハギよ、何故無事か確認しない。
そんなツッコミを我慢して、俺は扉を開ける。
ちなみに内開きです。
「起きてるよ。それとまずは安否の確認をしろ」
「いや、ケイだし。無事でしょ?」
「まあな」
それはそうか。
俺はハギと共に1階に降りるか検討――しそうになった。
「う、うわあああああああ!」
「た、助けてー!」
………俺とハギは顔を見合せ、頷いた。
「「よし、籠るか (籠ろう)」」
一先ず俺の部屋に入って俺が《検索魔法》で現在の街の状況を確認。
実は汎用性の高い《検索魔法》。探知系スキルとの相性が抜群だったり。
「現状は――まあ混乱状態」
「そうだよね」
うん。悲鳴がそこかしこから上がってるし。
俺は『結界魔法』で遮音結界を張る。
部屋中に範囲を絞る。
「次ー。先ほどの揺れの原因な。あれは魔族――まあ『過激派』っていう血の気の多い奴らの暴走」
「あー、説明で聞いたやつ?」
「それだ」
どうやら『過激派』はここら一帯に『重力魔法』をかけたようで。
さすがに建物の崩壊は無かったが、大きな揺れは起こった。
「今『過激派』は――おお、俺達のいる宿の屋上に居るな」
「へぇ………じゃあ、ここが1番危険だね」
「そうだな」
さて、俺は撃退でもするか。
俺は詠唱を行う。
「【発動地点:俺の頭上1メートル以上上にいる重力魔法使いとその仲間の足元から・発動範囲:半径10メートル・対象:人。種族は問わず・速度:時速10キロ】」
俺の詠唱は想像力を高めるというより、必要な情報を口に出して言うという表現の方が正しい。
細かい設定は消費魔力を少なくするしな。
「さあ、行くぞ――【起動】」
ちなみに普通の魔法使いは杖を使います。
魔力の暴走を防ぐためです。
俺の場合『精霊』だし、魔力を操るのに長けているってのも杖を使わない理由の1つだな。
魔力の無駄だし。俺にとっては。
俺は魔法がきちんと発動しているか確認する。
必要最低限の魔力で、必要な分の結果だす。
特に、今は旅行中。
そして人様の生活を覗くという人として屑なことをしている最中にだぜ? 自覚してるからな? 最低な行為だとは。
まあそれを抜いても許さん。
いつもだったら許すという訳でも無いけどな。
俺は2人の魔法使いが大気圏まで飛んでいったのを『眼』で確認。
その後周囲の被害を再確認して――
「【発動範囲:半径2キロ程度・対象:建物等人以外全部・効果指定:現在から1時間前の状態への再生・魔法全過程終了時間:一瞬】」
今はまだ、誰もが混乱の状態にある。
少しは平静を保てているようだが…………。
「まあ、少しくらいなら見られても構わん――【起動】」
俺は『再生』の魔法を発動させる。
一応光属性最上位魔法に位置している『再生』魔法だが、実は大部分が光属性魔力ってだけで、土属性等の魔力も必要。
それを未だに解明できずにいる彼ら――もうあれなんだよ。全属性使える人しか使えないというなんとも可哀想なレッテルを貼られている魔法なんだよ。
俺は成果を確認して、ハギの方を振り向く。
時刻は午前1時過ぎ。
「よし、終了――寝るぞー」
「うん。おやすみー」
俺の異常な行動にも呆れることが無くなったなハギよ。
ある意味成長だが、慣れはある意味天敵なんだよなぁ。
俺は再びベッドに横たわり、もう一度拓哉の日常を拝もうとした。
「――そうだ」
俺はもうひとつ『魔法』を使う。
「【発動範囲:半径5キロメートル・対象:生物全般・効果:精神安定・全過程終了時間:1時間】――【起動】」
これは『精神魔法』という闇属性最上位魔法の1つ。
まあ光属性と火属性、モノによっては風属性も必要な面倒な魔法。
これは『失伝魔法』とやらに該当するらしく、今の時代に『精神魔法』という言葉はない。
もう、そんな魔法を使わなくてもいい時代だとも捉えられるけどな。
さて、寝るか。
俺は『睡眠魔法』を重ねがけして、強制的な眠りについた。
久しぶりに見るアニメってめっちゃ面白いですね。特に理由はありませんけど。
次の更新は今週中にギリギリできるかなぁ? くらいです。期待しないでください。