第90話 さあ、ここが首都だ……………
俺の言ったとおり、移動時間に約二時間を費やし、遂に目的地の目の前まで歩いて来た。
「あれが今の魔族の首都なの?」
ハギが『え、マジですか………?』みたいな表情を浮かべて俺を見てくる。
まあな、気持ちはよ~くわかるぞ。
──真っ白な。どこぞの灰被りの女の子のお城のような城を中心に四方に広がる街。
夜になると人工の光がイルミネーションのように綺麗だとかなんとか………うーん。トラウマがこんにちわしてるんだけど。
「そうだぞ。言ったろ? 今の魔族は『魔道具』っていう生活を快適にする技術があるってさ」
「あ~、言ってたね」
ハギは思い出したかのような口調で言う。
「まあ地形は一切変わってないし、王城の場所も変わらんからな。景色を楽しもうぜ?」
「うん。今までのあの歩いても歩いてもおんなじ景色っていうのは、結構精神的にきたよ」
「つらいよなぁ」
まあ俺は『耐性』スキルのせいでそういう感性が希薄になっているので、まあ特に何にも感じないわけだがな。
俺達はその後ものんびりと歩いて行く。
色々と雑談するのは、やっぱ楽しいもんだ。
それに、俺とは違う――俺よりも感受性豊かだから、反応を見ていて楽しかったりもする。
慣れてくるとつまんない反応だけど。
■■■■
「身分を証明出来るものはあるか?」
「ああ………ハギ、ギルドカードを見せろ」
俺もそう言いながら、ギルドカードを筋肉の塊な門番に渡す。
ここは魔族の『首都』の門の中にある――まあ空港でいう保安検査所かな? まあ『首都』に危険なモノを持ち込ませない為の場所。
ここを通らないで『首都』に入れば、その者は『不法入国者』または『テロリスト』として懲罰を受けるとか。
まあそんな訳だから、きちんと身分の証明はしよう。
「………ハギ・スカビオサと………ケイ・クロヤ。か──いいぞ。ようこそ『オデット』へ」
「ありがと。ところでここら辺で飯の美味い宿屋ある?」
実は門番っていうのは、結構街について詳しい。
結構な確率で『案内所で聞け』と言われるが………。
「ああ、それなら『木枯らしの宿』っていう一番最初の交差点を左側に行って──」
おお、説明してくれるじゃないか。いい奴なのか、それとも………まあいいけど。
「──ってところだ。本当にすぐ見つかるよ。看板には枯れた葉っぱが一枚大きく書かれているからな」
「ほーそんなところが」
俺達は感謝を述べて、一先ずそこへ行ってみる。
旅とか懐かしいな。最近は目的なく外に出ることは一切なかったし。
「………本当に変わったね」
「ああ、魔族は『魔道具』の技術で発展してきたんだからな。地形を変えたら色々な問題が起こるんだぜ?」
少し、今の魔族の生活等について説明していると、すぐに目的地──『木枯らしの宿』に到着した。
「まあ機会があったら──そうだ、この家の魔力を見てみろよ」
「え?………うん。まあ」
実は『魔力を視る』という技術はかなりの高等技術。
その理由としては、やはりイメージの難しさだろう。
魔法を使うには絶対に『想像力』が大切。
その『想像力』に限界があるから魔法陣を使いはじめた………それが魔術なのだがそれはさておき。
基本的に人体のごく一部を強化──目とかの小さい部位の強化は滅茶苦茶魔力を消費する。
逆に足とか手とかは、簡単に強化可能だ。
今回は魔力を見るために自身の魔力で目を慣れさせるだけなのだが、難しいものだ。
それをハギは不完全ながら、一応は使えるのだ。
まあそれは『転生者』だから──経験があるから──という可能性もあるがな。
「………やっぱ難しいねー」
「そうだな、まあ慣れればそこまで難しくはなくなるからなぁ」
俺は魔力を視ることが出来なかったハギに、一時的に制限付き『精霊眼』を与える。
もともと『精霊眼』は魔力を視るための目なので、俺は常時魔力も視ている。めっちゃ眩しい。
勿論それは魔導具を──あー、なんか創作意欲が湧いてきた。
「ケイー、視れたよー………」
「…………」
「ケイ?」
「………ん? どうした?」
はっ! 一体俺は………まあいっか。
俺は意欲を抑え、予約できるか『木枯らしの宿』に聞いてきた。
結果はOK。結構予約している冒険者は多いのだとか。
やっぱ人気店だったんだな。
「んじゃあ、少し散策でもしようか」
「おー!」
俺達はぶらぶらと周辺の散歩から始めることにした。