第87話 お約束って勇者以外の旅人にも起こるんだな
甲高い笛の音が聞こえる。
実はこれは俺の馬車の『敵襲』を教える合図。
俺は外の景色から視線を外し、ハギのほうを向く。
あんな大きい音が鳴ったというのに、爆睡している。
起きる気配など微塵もない。
「おい、ハギ起きろー」
寝ているハギを揺する。
しかし、起きない。
数回やったが、結果は同じ。
魔法は使わない。
「おい! 死にたくなけりゃあ金目のモノ寄越せよ!」
そして盗賊無視。そこら辺の男に倒されるような弟子じゃないからいいよな。
御者も荷台にいるのは不思議――じゃなくて普通に避難してきただけ。
馬は外にいるし、御者台から荷台へは簡単には移動出来ないという………まあ俺の作った馬車なんで。
俺は少し外を見る。
勿論『精霊眼』でだよ? ステータスしか見られないけど――まあ弱い。
Lvは29と一般人より高めな数字だが、生まれつきのステータス基礎値が少ないのか、一般のLv29より弱いというか、雑魚レベル。
このステータスは本当に一般人のレベル――15、6程度の平均ステータス位しかないとか………。
スキルも『恐喝Lv1』『逃げ足Lv6』『短剣術Lv2』………そして『生活魔法』の4つのみ。
職業が『盗賊』なのを抜けば、普通に村人だぜ?
それ以外の盗賊はそのレベルの平均的な数値だった。
目立ったスキルも無かった。
「おい! 中に隠れてないで出てこいよ!」
ちなみに現在、発言した青年盗賊の足が震えていてめっちゃ笑いを堪えている。
いや、ホントに……声は震えてないけど、足は震えて………。
「す、すいません。現在……現在お取り込み中なんで………」
少し笑いながら、返事をする。
さっきのってお気楽盗賊なら――ああ、お約束な感じで勘違いをしちゃって……。
盗賊は下品な笑みを浮かべて、馬車に乗り込んでくる。
まったく………お気楽な考えすぎて……ヤベェ、笑ってしまう……!
そんな訳で、俺は木の棒に『付与魔法』を使いまくって、馬車に乗ろうとしていた盗賊の鎮圧にかかった。
「………うん。こりゃあ弱すぎじゃない?」
襲ってきたのは六人の盗賊。
前衛は短剣使い一人と片手直剣と大盾を使う全身鎧一人。
後衛に回復術士二人と魔術師一人。
結構バランスの取れた構成なのに、まったく活かせていない。
なんじゃコイツら。短剣使い死んだら全員戦意喪失とか………そんなんで盗賊出来んのか? 廃業しろ。
そもそも開始数秒で戦闘終了かよ。
まあそんな奴らの死体なんて見ていてもつまらんだけなので、燃やそう。そして散骨。
肥料になりな。南無阿弥陀仏。
そんな事しても目を覚まさないハギだった。
すいません。凄く遅れました。
大遅刻ですよ。すいませんでした。
そして更新のお知らせですが、この章は完全な不定期投稿となります。
作者が最近になって書きたくなった章なので、inter logueと章タイトルを変えても過言でいいのですがね?
まあ世界観の説明も兼ねての三章 (予定)。そこまで大きなイベントのない話になる予定ですのでよろしくお願いします。
本当に個人的な理由ですいません。長い言い訳失礼しました。