第73話 招待
俺はこんなにも早く『試練』を突破するとは思っていなかった。
扉が開かれた時、一体何事だ? と思ったくらいには。
「もう…来ちゃったか………」
「ケイ?」
はいはい俺ですよーっと。
いや俺戸惑ってるんだけどね? どうしてこんなにも早く………。
俺は『権限』でダンジョンの『履歴』を遡る。
この『権限』には、全てを記憶している。
故に、このダンジョンで何が起こったか全てわかってしまう。
「………そうか、女神に会ったのか」
「?」
ハギは疑問符を浮かべる。どうやら正体は隠して接触したらしい。
だが………どうして女神が干渉してきた?
………まあ今はいっか。
「それじゃあハギ。とりあえずダンジョンの『試練』突破、おめでとう」
俺はそう言って、ハギに『報酬』の入った箱を渡す。
この中には様々な物が──まあ先程上げたものとは違うから。
「この中には──まあ見てからのお楽しみってことで。優勝者へとトロフィーだと思ってくれ」
「………うん。ありがと」
………明らかにハギの態度がおかしい。
何かあの女神様から入れ知恵されてなければいいけど………。
「どうした? 元気がねぇじゃん」
「ううん………何でも無いよ」
なんか雰囲気変わってね? 真面目感あってとっつきにくいんだけど。
………もしかして、怒ってる? なんかしたっけ?
「早かったが………何かあったか?」
「それは………」
ハギは言葉を濁らせ、視線を逸らす。
どうやら、雰囲気の変わった原因は女神様にあるらしい。
ホント一体、あの女神様は何を言ったんだ?
「まあいいや。拓哉達の──って、どうしたホントに?」
俯いてしまったハギの顔を覗き見る。
心なしか全身が多少震えているように見えるが………泣いてるようでも怒ってるようでもないって不思議だよなぁ。
「………ねぇ。私達って………やっぱ邪魔なのかな?」
「──『転生者』はってことか?」
ハギはこくりと頷く。
邪魔ねぇ………古来より、別世界からの『転生者』によって繁栄してきた世界で『転生者』が邪魔な訳がないのだが………ハギは少々異なるからなぁ。
「………まあ、神様とて気まぐれだ。思い悩んだら一度止まってみな。若者よ」
「ねえ知ってる? 私、前世の歳も合わせたら250歳はいってるんだよ?」
「精神的にゃ、お前は二十歳にもなってねぇよ」
それに、俺が前世の歳全部合わせたら一万歳は下らないからな?
「もっと世界を知ってみろ。お前の疑問なんて、ちっぽけなモンだぜ?」
んな生産性のない疑問を抱けるのも、若いからだ。
大人になると、ホント人間つまらなくなるよなぁ………。