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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第二章 学園1年 春~
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第72話 対話

 立て札には、こう書いてあった。

『右から順にハギ、拓哉、五十嵐、園部用の扉となってる。覚悟を決めたら入れ』

 それだけ。

 ハギはその立て札を見て、直ぐに指定された扉の前に立った。


「早く行こ? この扉、全員同時に開けないと開かない仕組みみたい」


 ハギが何度か扉を開こうとしているのを見て、拓哉も扉に近づいて開こうとするが、開かない。

 どうやらハギの言う通り、全員で開けなければ開かないらしい。


「………ああ、わかった」


 ハギから出る威圧感似たモノ………それが拓哉達から「何故わかったのか」を聞こうという意思を削いだ。もしかしたら啓よりも怖いかもしれないと思う拓哉だった。

 無論、啓の前で言う気はないだろうが。


 全員が扉の前に立ったのを確認したハギはドアノブに手をかけた。


「行くよ」


 その言葉と同時に、全員が扉を開けた。


■■■■


 扉の中は、別々に繋がっているらしく、ハギはこの空間で一人だった。

 ただただ雲海のみが果てまで続いている世界で一人ぼっち。


「ケイ? どこ?」


 啓を探してここまで来た。

 やっと終わって、言いたい文句も一つ二つはある。

 だけど、人の姿は一切ない。


「ケイ? どこー?」


 しかし、どれだけ歩いても、どれだけ探しても、ケイは見つからなかった。


──愛しい人を探しているの?


 だから、そんな声が聞こえたのは幻聴かと思った。


「誰?」


──ワタシは貴女、貴女はワタシ。これでいいかしら?


 後ろからの声のようだ。

 振り替えると、黒髪の少女がいた。

 よく見ると、昔の自分のような姿をしている。

 そして、昔から背は伸びなかったなぁ。と深いため息をはいた。


──あら? ため息をつくと幸せが逃げる。って貴女の愛しい人は言ってたわよ?


「!」


 何故知っているのか。それがハギの疑問だ。

 目の前にいるコレは私の偽物。もう一人の自分。

 これを鏡みたいだと、ハギはふと思った。


──なんで知っているの? って顔ね。面白いわ。


「………そんなのどうでもいい。ケイはどこ」


──少しお話をしましょう? そうすれば教えてあげる。


「………わかった」


 目の前の自分の形をしたナニカにうんざりしながらも、ハギは話を聞くことにした。


「それで、何をお話するの?」


──そうね………これからの事を話しましょうか。


「これからの事?」


 ハギはこてん? と首を傾げる。

 その仕草に可愛いと思いつつも、虚像は話を続ける。


──そう、これからの事。これからあなたが、ケイといることで巻き込まれる事について。


「? それがどうしたの? 私には関係ないじゃん」


──ええ、貴女には関係がないわ。でも、ケイは違う。


「どういう事?」


──どうもこうもないわ。ただ、事実を言っているだけよ………まあ、信じなくていいけど。


 彼女の微笑みに、ハギは怖気のような何かを感じた。

 彼女の言ってることが、本当のことのようにも思えている。

 それはハギが己の『特異性』を──そして啓の『異常性』を理解しているが故なのだろう。


──ハギ。あなたは賢いわ。

──別に私は、あなたの番をとる気じゃないの………これは、忠告なのよ。


「忠告?」


 何故彼女の言葉に耳を傾けるのか。

 何故嘘だと思えないのか………そんな事を考えていても、ハギの意識はハギの虚像に向く。


──そう。忠告。あなた達がケイに守られているだけじゃダメっていう………それだけの忠告。


「守られてる………」


 ふとハギは、遥か昔に聞いた言葉を思い出す。


「時間は有限………?」


──そういうことよ。


「え? ──待って! どういう………消えちゃった」


 少女の消えた場所に、『扉』が出来た。


「私は………」


 守られている──そう言われ、まず彼女の心に浮かんだ感情は『喜び』だった。

 そしてすぐ、それがずっとでないと言われた。


「行かなきゃ」


 ハギは自分にそう言い聞かせ、『扉』を開ける。


 覚悟と共に開いた扉の先。


「もう…来ちゃったのか………」

「ケイ?」


 そこには、ハギにとって世界で一番愛しいと思える人物──黒谷啓がいた。

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