第68話 ギルド登録と説明どっちを選ぶのよ?
まあ、囮の話はさておき、俺達はギルド登録の長蛇の列に並ぶことになった。
暇だねぇ。
「ねぇケイ。ここで言うのもおかしい事だと思うけどさ」
「ん? どうした?」
ハギから面白そうな話題が出されそう。
こりゃあ、時間潰しに使えるかも。
「あのさ、『魔術』と『魔法』の違いって何?」
……フム、いい質問だ。
「俺にとっての『魔術』と『魔法』の定義でいいんだったら聞かせてやる」
「うん。それでいいや」
おい、何だよ「それでいいや」って。
まあいい。
「『魔術』っていうのは『魔』の力を操る『術』――って言うか、『魔法適正』を持っていない奴らでも使える『魔法』だ。
『魔術』には二つの『魔術』があってな。
一つ目が『大魔法』を扱うための触媒としての『魔術』
そしてもう一つが『魔法』を使えないけど『魔力』を使える奴らが『魔法』を使うための『魔術』だ。
で、『魔法』が自身の『魔法適正』のある『魔法』をを指している………ここまでで質問は?」
ハギは何も言わない。
「無言ってことは無しでいいな。まあ……『魔術』っていうのが魔方陣を使って扱う『魔』の力を安全に操るもの――まあ、『触媒』を使う『大魔術』の場合は失敗するけど………『魔法』は『魔』の『法』に則って発動させるものだと思ってくれ。
さて、先ずは、『魔術』と『魔法』の違いについて考えみよう。
そこで、問題だ。『魔術』は『魔方陣』さえあれば魔力を流すことで発動するのは何故?」
俺は初歩的な問題を出してみる。
まあ、これくらいだったら絶対に解けるだろ。
「え~と………『魔方陣自体に必要な事が全て書かれているから』?」
「大正解だ。まあ、初歩中の初歩だな。
『魔術』は、魔方陣大きさと精密さで威力が決まる。
逆に、『魔法』にはそういう決まりは存在しない。
だから――」
俺は火属性魔法の初級魔法を発動する。
魔力はAランク級である。
「まあ、こんな事も出来るな」
俺の手の中には、Aランクの魔力を持った真っ赤に燃える火の初級魔法がある。
それを握り潰す。
「まあ、『魔法』は魔力を好き放題流す事ができるが、想像力がないと意味がない。例えば――」
もう一度、火の初級魔法を発動させる。
次は、小さい火なのに、凄く青い。
「火って言うのはな、赤色が普通だと思われている。それはいいが、青の方が強い。
火の最高位魔法を見てみろ。大体が蒼炎だ。だけど、あいつらが蒼炎を作れるのは、先代達の魔法を見たことがあるからなんだ。
それに、強大な『魔術』っていうのは、本当に一握りの人間しか使えない。
きちんと魔法を理解している者でないと『魔方陣』は作れねぇ。
だから、『魔術』は一属性を極めただけの人間からしか入手出来ない……もういいか? これくらいで」
俺は疲れてきたので、一旦止める。
もう一つ重要なこともあるが、だいたいの重要なところ全て言ったし質問に答えるだけでいっか。
「うん! ありがとう……でもさ、『魔術』の良さがあまり分かんないけど…」
「ああ、忘れてた。『魔術』の良いところは『いつでも魔力を流すだけで魔法が発動する』事だ。
もう質問ない? ないならいいんだけど……」
「うん。お疲れ様。あと、ギルドマスター呼んでるよ?」
ハギが指指した方角を向くと、ギロティがいた。
「いやぁ、すまん。いい暇潰しになったよ」
「いや、暇潰しで本格的に講義をしないでよ」
「本格的? あれがか? ………ハギ、お前さんの番が回ってきたぞ」
ハギの目の前には、もう一人しか人がいない。
もうすぐだな。
「え? 気づかなかった……教えてくれてありがとうね」
「おう、それじゃあ、ギロティ待ってるんで」
「うん。またあとで」
そして、俺はギロティの方へ行くすると………
「……………」
「おーい。ドワーフのギルドマスターさん? 聞こえますかー」
「……………」
あれ? 立ったまま気絶してらぁ。
「起きろ」
魔法を発動する。
「っ! あれ? 俺は一体………」
「おはようございまーす。っつうわけで、ギルドカードくれや」
忘れてたが、俺はギルドカードを貰いに来たのだ。
断じてここで講義をするためではない。
「なあ、ケイ……」
「ん? なんだ?」
ギロティは俺の肩を掴んで言った。
「頼む! ギルドの教育係をしてくれないか?」
「断る」
そう返すと、ギロティは「頼む! 頼むぅ!」と、何回も頼んでくる。
何故俺? 俺以外にもいい人おるだろう。
「なんで、俺がやらなきゃならんのだ?」
俺がそう言うと、ギロティは言った。
――お前の魔法講座。俺聞きたいから。
「お前の言いたい事はわかった」
「本当か! それじゃあ――」
「だが、俺は授業をしない。代わりに、本を作ってくるから、それでいい?」
俺だって忙しいのだ。
研究はしたいし、研究はしたいし。
まあ、それ以外の理由もあるけど………。
「わかったそれでいい………ところで、その本は俺の分もあるのか?」
この野郎……。
俺は少しギロティと立ち話をして、ギルドカードを貰って、外にでる。
外にはハギ、拓哉、園部さん、五十嵐さんの全員が揃っていた。
え? 王女様? 誰それ?
「よーし、それじゃあ行きますか」
「「「おー!」」」
「いやいや、待て待て」
拓哉に呼び止められた。
どうしたと言うんだい。
「ギルドカードお前ら発行したの?」
「ああ、してるよ……なぁ?」
俺はギルドカードを見せるように言う。
まあ、全員白カードスタートか。
ギルドカードは白、緑、黄、青、赤、黒と色で区別させられている。
「よし、全員。拓哉も持ってたよな。それじゃあ――「いや待て」………なんだよ」
何回も止めるなよ。
まったく………。
「え? なんで俺が非難されてるの!? 俺は啓のギルドカード見てないから言っただけですよ?」
その言葉に「あ、そう言えば」と思い出す女性陣。
チッ、野郎。無駄なことを……。
「ねぇケイ。ギルドカード見せて?」
「断る」
「でも――」
「断る」
「で――」
「断る」
「…………」
「よし、それじゃあ、『転移』で行きますんで、捕まっていてくれぃ」
俺は転移魔法を使う。
移動はこれが一番だね。
少し路地に入ればバレないはずだしね。
「あ、そうそう、お前らにプレゼントな。ほれ」
俺は異空間から小さめのバックを放り出す。
「ん?なんだこれ?」
それは転移先で見ろ。
「それじゃ、行くぞ」
昼前のギルド前で、膨大な魔力が吹き荒れる。
そして、大きな光を放った直後、俺達はその場から姿を消した。