第7話 村へ
よろしくお願いします。
俺は魔王城で働いていた。
時給は良かったし、週休二日制で休みもあった。
残業は一切なく、俺の結構得意な仕事だった。
寮制だったので、寝食もなんとかなった。
いい先輩社員もいた。
………あれ? 魔王の娘とどこで会っているんだ?
俺が魔王様の拝見の間に行ったのは数回だけだし、その時は魔王様以外に誰もいなかった……と思う。
いや、いたのか? それとも、休日に会ったのか? ……それも違うな。
そもそも俺、休日はあまり外に出なかったからな。
休日で外に出るとしたら……魔王様から呼び出された時くらいだ。
………っつうか、魔王様の名前覚えてねぇよ。たぶん聞いた事もないよ。
何年も前の話だよ。
思い出せる訳がないわ。
魔法かけられたのだって、ハギに聞いて初めて知ったし………。
……そういえば、一回呪いがなんだとか言っていたな。
魔王様の場合、呪いにかかるより呪いをかけるの方があっているが……。
ま、いっか。
■■■■
俺はフル回転させ、魔王様の名前を思い出そうとした。
「………ダメだ。全然わからんし覚えてない」
俺は何度も思い出そうとしたが、まったくでてこない。
何故だろね? まあ記憶が古すぎて朧気なのは仕方ないと思うが、ここまで頑張って出てこないのはおかしくないか?
「ねえ………、そろそろ移動しない? 結構寒くなってきたし」
「……ん? もう…そんな時間か」
俺はハギの言葉を聞き、そろそろ夕暮れ時ということを思い出した。
俺は立ち上がり、少し伸びする。
「うん。そろそろ村に戻らないと……」
「え? 今の俺、家も金もありませんよ?」
一応、転生前に使っていた隠れ家的な所があるが、一切行っていない。
そして俺は今回、転生してからずっと森の中で過ごしていた。
転生してからと言っても、ここ数日のことだが……。
「大丈夫。私の家に泊まってよ………今は誰もいないからさ」
そういえばハギは、ここら辺の村に住んでるんだっけ。
俺は無言で頷き、ハギについて行った。
■■■■
ハギの住んでいる村は、森からそこまで遠くなかった。
村の名前は『レテ村』らしい。
この小さな村は大陸の端にあるらしく、森と逆方向に向かうと、海が見えてくる。
なんか隠れた名所感………いや、秘境感があるな。
村について数分後、俺達は普通の家の前にいた。
「ついたよ。ここが私の住んでいる家」
ハギは小声で「まあ、一人で暮らすには広すぎるけど」と言いながら、扉を開けて家の中に入っていった。
俺も心の中でたしかにと頷きながら、家の中に入っていった。
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