第59話 早朝
拓哉達勇者組のお陰で朝から忙しくなった。
俺はいつの間にか昇っていた朝日を見ながら、ただ、呆然としていた。
だが、徹夜の言い訳はさせてほしい。
本が面白かったのだ。
確かに夜更かしは行けないだろう。美容の大敵だろう。
だが、美容等に興味の一欠片も無いのだ。
まさにセーフでは――
「いや、アウトでしょ」
………ですよねー。
それとハギ。お前はもう少し師匠に敬意を持て。
ってなわけで勇者組とのめっさダラダラしきった登校時間。
はぁ、夜更かしの後の学校は面倒。
「しかしだね、少し調べものをしていたらね――」
「はいはい、違う本読んでそのまま無限ループしてたんでしょ?」
クソッ付き合いが長い知り合いはこれだから嫌なんだ!
「あ、拓哉。お前達は今日から王城に帰れ。または家事を手伝え」
「はぁ!?」
おいおい、拓哉。何素っ頓狂な顔しているんだ? まったく。
因みにこれは我が家の三人 (俺、ハギ、ライア)が賛成しています。
これで断ったら即座にお帰りしてくれや。
「う~ん。私と露はいいけど………」
園部さんと五十嵐さんは、拓哉を見る。
「あ、これは連帯責任で。誰か一人でも断る奴がいたら王城へ帰還してください」
ハギが俺の言葉にうんうんと頷いている。
家にニートを養う金は有るけど養わねぇよ。
「………よし、分かった」
拓哉は決心をしたようなのだが。
「あ、それじゃあ答えは帰りに聞くから」
目の前に学校。
いやぁ、無駄な時間だった。
■■■■
私達は嫌でも目立つ。
特にケイなんかそれの筆頭だ。
今日だって二人の漫才を見て笑っている人もいた。
私もその一人ではありますが何か?
いつも通りケイから順に教室に入っていく。
タクヤさんの答えは帰宅時に持ち越し。
まあ、それがなくても王城に行かせる気だよ? ケイは。
そんなケイは、何故か自分の机をあさっていた。
探し物かな?
「お、おい。どうしたんだ? 啓」
後から入ってきたタクヤさんが啓の挙動の不審さに、たまらず声をかけていた。
むぅ、私も声かけようと思ったのに。
だけど、心配なのは本当らしいので、同じく心配している私もケイの方に向く。
ケイは何かを探していた。
「ん? なんだ拓哉か。心配すんな。ただの探し物だから」
「いや、探し物が気になるんだけど」
私もタクヤさんと同意見だ。
なんかタクヤさんからは、私と同じように振り回されている感が出ているんだよね。
きっと前世で振り回されていたんだろうなぁ。
「ああ、いや、本当にただの探し物だよ」
ケイは机をあさったりしながら、話を続ける。
「ただちょっと、『花瓶』と『落書き』が無い事が気になってな」
「…………………」
「……………………………」
え? いや、うん………チョッと待て。
おかしい。いろいろとおかしい。あ、ちょっとタクヤさん。確かにって神妙な声と顔で言わないで。
「いや、だが異世界なんだし、それは無いだろ?」
「………いや、あるんだよ」
そう言って探る手を止め、魔方陣をサッと作るケイ。
発動した魔法は、記憶を伝える魔法だった。
流れてくる悲しい記憶。
ホンットにヤバいやつだ。これ。
流れてきた記憶には、机に油性マジックで大きく『死ね』の文字が。
違う記憶では、家の前に花が添えてあった。
そりゃあ、こうも………なるかな?
私は疑問に思いながらも、少し質問してみる。
「………これって……本当の記憶?」
ケイとタクヤさんが一斉にこちらを向く。
うわ! 凄いシリアス顔!
「………うん。最初に見たであろう記憶が一番最初の前世の記憶の一部。二つ目が異世界に来て最初の人生の記憶の一部」
「ああ、最初の記憶は俺でもわかるくらいに、思い出せるくらい本当の事だ」
なんかどんよりとした空気が流れる。
………私よりも壮絶な人生を送ってるんだねケイって。
――キーンコーンカーンコーン
その後は何事もなく、学園生活二日目が始まった。