第51話 国王拉致&勇者救出後
俺と拓哉は、俺の家の庭――玄関先に転移をした。
………本当に庭に転移したらトラップ地獄にハマるぞ。
「ふぅ~、お疲れ」
俺は今日二回目になる言葉を拓哉に言った。
拓哉は笑いながら、反応する。余裕が戻ってきてる証拠かな。
「いや、その言葉はさっきも聞いたぞ。もっと語彙力をなぁ……」
俺達は顔を見合せ、吹き出した。
まさかこっちでもその言葉が聞けるとは思いもしなかったから。
「ハハハハハハ、まさか、お前がこっちに来るなんてなぁ。ハハハ、笑いが止まらねぇ」
「いや、俺もだよ。まさかこっちに居たなんてな」
俺達は拓哉の仲間が起きるまで談笑をした。
もちろん、『前世』の事は一切話さなかった。
だが、『地球』での出来事の話はした。
■■■■
拓哉の仲間達が目覚めたのは、転移した数分後のことだった。
俺達――というか俺は『異空間収納』からテントや毛布を取り出し、拓哉の仲間を寝かせた。
俺が『異空間収納』から物を取り出す様を見て拓哉は「よ、四次元○ケット……」等と呟いていたがそれはさておき。
その後も俺達がふざけていると、テントから人が出てきた。
「……ここ……ドコ?」
拓哉が俺の方を向く。
顔に書いてある。お前が説明しろ、と。
拓哉は説明してもいいけど何て言えばいいんだよ! という視線を向けてくるが無視。
自分で考えろ。お前の仲間だろうが。
「え、え~と……」
「あ、拓哉じゃなくていい。そっちのお兄さん、説明してくんない?」
「…………」
俺は笑顔のまま固まった。まさかそっちがそう来るとは………。
そんな俺を見て笑いをこらえている声が隣から微かに聞こえてくる。
くそっ、後で憂さ晴らしに拓哉の恥ずかしい事件 (黒歴史)についてばらしてやる。
「……ここは俺の家の玄関前だ。そして――」
俺は凍結状態の国王を取り出す。
こうしないと『異空間収納』に入らんからな。
「ここに国王がある。復讐でもするか? コイツに」
俺はさっさと国王を出して逃げようと決めていたので、家に入ろうとする。
いや、復讐してもいいよ? まあその後俺もすこし拷も――尋問するけど。
しかし、拓哉に行く手を遮られた。
「………復讐したきゃあしてくれ。しなくてもいいけど。俺は家の中にいる。終わったら言ってくれ」
「いや、ちょっと待て。説明求めたんじゃないわ。俺達どこで休めと?」
俺はテントを指差しながらいい笑顔で言った。
「ああ、そこのテントで寝ていいぞ」
「悪魔か? お前」
何言ってんだ? あのテントは防風防寒、そして気温を自由に変更できる。
結構快適なテントだぞ? それに人の心を読むのは難しいね。
ついでにだけど、温度調整は慣れないと難しいらしいぞ。
「あ、ノリでアレな事やっちゃあダメだぞ」
拓哉の疑問を無視した俺はそう言って家に入った。
後ろから「なんでコイツと一緒なのよ! せめてもうひとつテント出して! または、私と露だけでも中に入れて!」とか「おい! 確かに一緒のテントはあれだが、俺を犠牲にして中に入ろうとすんな!」等の声が聞こえるが、きっと二人で痴話喧嘩でもしているのだろう。
微笑ましいねぇ。