第49話 国王拉致
「敵襲!? 一体どういうことだ?」
現在俺は拓哉と別れて王城の隠し通路にいる。
これは俺が昔作った建造物。それも建築当時のままなので、何処に何があるか分かる。
なんか安堵する。行われていて補修のみとか………いやまあ実は魔力流せば自己修復してくれる優れものだったのに…………。
それと同時によくこの時代まで残っていたなぁ。と思ったりする。
まとめると、たぶんこの通路がまだあった事に安堵しているのだろうと思う。
「……………そろそろか」
俺は拓哉のことが少し心配になりながら、国王が近くを通るのを待つ。
俺の使える全てのスキルを駆使して正確な居場所と人数を特定。国王とその側近の兵士は警戒してか凄く移動が遅い。
背後からの奇襲が最良だと考える。
――そして、数分後。
俺は国王と対峙していた。
「お主は誰だ? 侵入者かな?」
国王は余裕の笑みを浮かべながら言った。
なんかあの顔、スッゲームカつく。そんなにご自身の側近の兵士はお強いのかな? レベルが最高で82とか舐めすぎだろ。
でも、この世界基準で考えれば、最高クラスの人間かぁ。
人も廃れたねぇ。
……まあいいや。絶対絶望させてやるよ。国王。レベル&ステータス『不明』の力を見せてやろう。
「あははは、まさかこんな所に居るだなんてね。誰も分かりはしませんよねぇ…………俺意外は」
俺は普段の俺には似つかわしくない姿と声で、質問と関係ない返答をする。
………やってることが道化師のように見えてきた。いやまあそういうスキルは使ってるし、長年生きてりゃ出来るようになるからなぁ。
「フム……なかなかの手練れではあるようだな。だが、鎧も着ずに余の元までくるとは少しバカにし過ぎではないか? ………殺れ」
国王は俺の暖気な服装に騙されずに評価したところまではいいが、今俺が着ている服までは見破れなかったか………やはり、戦場知らずの国王だ。
しかし国王の言葉で、近くにいた甲冑の男達が武器を構えて襲い掛かってきた。
少し怯えているソイツ等の攻撃を避け、時にカウンターを喰らわせながらも、国王から視線を外さない。
ってかいったい、どれだけの騎士が隠れているんだ? 俺の予想ではあと………100以上かな?
「………まだまだ、余裕そうじゃのう。これでどうじゃ?」
国王は、魔法を放ってきた。
流石一国の王様。魔法は綺麗に使えている。
だが、コイツが使おうとしている魔法は、悪手だ。
使おうとしているのは闇魔法の『呪術』。
その呪術にこめられた呪いは『毒』。
俺を確実に殺そうとしている。
だーけーどさ♪
「ハハッハハハ――意味無さすぎ」
え~、なんで『呪術』とか禁忌魔法に入りそうで入らない俺には一切効かない魔法を使うかなぁ。
もしかしてあれかな? 国王様は『呪術』しか使えないのかな? 魔法は綺麗なのに? 魔力と心が汚いの? それとも想像力ゼロ? なにはどうあれマジで面白いじゃん。
俺は攻撃を避けながら笑う。
あれ? 端から見れば戦闘狂じゃね? 俺。
「な、何がおかしい! そして、効いてないだと!? 騎士達よ! すぐにソイツを殺せ! 死刑だ!」
「ハハ、無駄ですよ。無能共」
いや、お前が行うのは死刑じゃなくて私刑だろ? 俺は笑いながら虚空から一本の『剣』を取り出した。
無骨な鉄の長剣にみえる剣を。
「お、お前等! あんな剣一本ごときを恐れるでない! 早く殺せ!」
「「「「……………っ」」」」
騎士達は、主の命令を忠実に実行しようとした。
だが、この『剣』を見て立ち止まった騎士達は勘が鋭いな。傀儡にしようか?
「無駄だって言ったでしょ………『殺戮剣フラガラッハ』」
俺が唱えると、剣が黒く輝いて勝手に動き出す。
実は、俺が操っているのだが、奴等は勝手に動いていると思うだろう。
いやいや、俺が操っているのは分かるか。過小評価ダメ。油断して死にたくなければね。
それに話を戻すけど、『殺戮剣フラガラッハ』は俺の意思で人を殺す剣だし、俺の指定した対象を全員殺すまでは止まらない。だから『フラガラッハ』なんだぜ? まあ命令すれば止められるけど。
それに俺が作った『魔剣』なのだ。
暴走するわけがない。
「い、一体……『ソレ』は何なんだ!」
国王が無駄の事を言っているが無視して、騎士共を倒す。
時には刺し、時には斬り、時にはフェイントをして切り刻む。
降参させる時間など与えない。与えさせない。与える気もない。
いつの間にか兵士は全滅しており、もう国王を守る者はいない。
やっぱ規格外だな。全部『不明』のステータスと魔剣。
「さて、『お話』しましょうか?」
『殺戮剣フラガラッハ』を虚空に戻した俺は、国王を気絶させ凍結させる。
すぐに『異空間』にしまって、拓哉達との合流地点へ転移した。