第47話 勇者の過去2
彼の遺書にはこう書いてあった。
何度も何度も読んだので、覚えている。
そして思い出すたびに、悲しい気持ちになってくる。
手紙の内容は彼の一生の話だった。
――自我が芽生えた時、最初の記憶が、最初の感覚が『痛み』だった。笑えるよな?
彼は遺書の中でも陽気な『彼』を演じていた。
そして最後の一言、『ありがとう。拓哉。さようなら』と、書いてあったその遺書。
俺は泣いた。
久しぶりに大号泣した。
しかし、泣いても何にもならない。
だから、俺は決めた。
彼の分まで生きようと。
■■■■
「くそ! なんでアイツがあんなに早く死んだんだよ」
俺は1人、勇者――佐藤 拓哉の独り言を聞いていた。
そして分かった。
拓哉はきっと、いいや、絶対に一回死んでいる。
たぶん拓哉は俺の昔からの顔馴染みだ。
小中校のクラスは全部一緒。
さすがに席は違ったが、ある意味腐れ縁のある奴だ。
そして、今回はこっちの世界で合う。それも敵役か?
悲しいねぇ。非情な現実だよ。まったく……。
「はぁ~、『勇者サマ』って奴は直ぐに人に剣を向ける者なんですか?」
俺は勇者の背後から、バカにするような口調で言った。騎士? 飛ばしちゃった。
戦慣れってすげぇよな。昔の俺なら逃げてたよ。
いや、こんな事になる前に察知して逃げてるけど。
「な、何故……」
拓哉は困惑している。
その顔は、やはり友人の面影がある。
「はぁ? 俺があんな武器で死ぬとでも? んな訳ねぇだろ」
「そ、そうか……」
拓哉は完全に戦意を失っていた。
俺は戦闘態勢を解くと、拓哉に近づいた。
しかし、体を引きずって、後方へ逃げてく。
「お、おい、何をする気だ? お、俺は勇者だぞ!」
拓哉は完全に怯えている。
何故だ? 殺気はだしていなかったと思うけど……。
あ、不気味に思ったんですね。そうですかそうですよねこんな陰気野郎に捕まりゃあおかしいと思って怯えますよね。
「さて、俺はお前を殺す気はない。さっさと立て」
「あ、ああ」
俺がそう言うと、拓哉はすぐに立った。
俺は俺と拓哉を中心に、魔方陣を描く。
「さて、『お話』を聞きましょうか」
俺は『空間転移』でどこかの草原に転移した。
さあ、再開の時なのかな? 友人。