第41話 入学式直前
「う~、何で起こしてくれないのさ~」
ハギが文句を言いながら玄関に来た。
もう、時間的に家を出ないと徒歩では遅刻になりそうな時間である。
……行きは『転移』で行くか。
俺はそう決めて、『転移』の魔法を構築した。
ハギはあの後、ライアに強制的に制服に着替えさせられた。
これがライアの最終手段。名前はない。
まあ俺も反省しないと。
俺がハギを甘やかしたせいでこうなったようなもんだし。
ってか魔法で電流ながして目覚めさせる方法もあったじゃん。今さらな事だけど。
「早く行くぞ」
俺は制服に着替えさせられたハギを転移魔法陣の上に立たせる。
実はハギに制服着せるのに一番時間がかかっているのだが………まあ今はどうでもいいな。
「え? 何これ?」
ハギは驚いていたが、俺は無言で魔法陣を起動させた。
魔方陣はどんどん輝きを強めていく。
「へ? ちょ!? これ、大丈夫な――」
ハギの文句を無視して、魔法陣は俺達を玄関から学園近くの脇道に転移させた。
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「う~、びびった~」
「びびったんならもう少し良い反応をくれよ。あと、早く行くぞ」
「え? あ、ちょ、置いて行かないでよ!」
俺は急いで学園に入っていった。
ギリギリセーフだった。
学園の校庭には3つの人だかりがあった。
まず、初等部のもの。
ここは、小さい子ども達が多くいたので、すぐにわかった。
問題なのは、中等部、高等部だ。
中等部でも、高等部の人並みに大きい人は少なからずいるので、わかり難い。
まあ、一番端の人だかりが高等部だとは前の説明会で聞いていたが。
俺達は、高等部の方へ歩いていった。
正解だった。
高等部は一番右端だった。
俺のクラスはAクラスと言う場所らしい。
そして1年は3階に教室があるらしい。
……………めんどくせぇ。
それも、高等部の教室は、3棟ある建物も一番奥にあると言うね。
ちなみに、入学式をやる体育館は、その真横にポツンとある。
一瞬脳裏に『ぼっち』という単語が浮かんだような気がするが、きっと気のせいだ。
俺は体育館に歩いていった。
あ、ちなみにハギは俺の後について来ていた。
まあハギの身長なら中等部の子供も間違えられるかもだからな。
言わぬが仏ってやつだけど、俺と一緒にいると兄妹だと間違われそうだな。俺達髪の色同じだし。
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体育館に入るとまず、受付があった。
受付に説明の日に貰ったものを見せると、「ご入学おめでとうございます」と言って案内までしてくれた。
その後、案内に従って体育館に入った。
『これより、第96回王立スフォット学園入学式を会式する』
急にそんな言葉が聞こえたかと思えば、外部転入以外の生徒が急にビクンッとはねた (ような気がした)。
顔を見ると、皆怯えの表情が出ていた。
何を怖がっているのかと、皆が向いている方を見ると、おじさんがこっちに向かって飛び膝蹴りをしてきていた。
もちろん。迎撃した。
「ぐふぉ」
おじさんの蹴りを避け、背中 (腰)に肘うちを食らわせた。
おじさんの腰はバキィ! と良い音をたてていた。
そういえば、前もこんな倒し方した人がいたような………。
『…………』
「…………」
体育館に居る者は皆、無言で俺を見ていた。
俺は無言で見返した。ハギは苦笑――おい、他人のフリするなよ。
っていうか、この状況なんですか? 被害者ですよ? 俺に注目するの止めてくれませんかねぇ?