第39話 精霊契約
「さて、『契約』始めるぞ。ハギ、魔法陣の上に乗って俺の手を握ってくれ」
「え、え~と、む、無理! 恥ずかしいよ!」
ハギは頬を赤く染めながら、言った。
それは俺も同じだよ。
ったく。この『契約』を考えた奴誰だよ。
この『契約』が載っていた文献はご丁寧に発案者の名前の場所だけ無くなっているしさ………。
「大丈夫だ。それさえやりゃあすぐに終わる……はずだから」
「う、うんわかったけど……し、失礼します…………ね、ねえケイ」
ハギは少し敬語になりながら、俺の右手を握った。
……敬語じゃなくていいんだけど。
今さらだし、なんかむず痒い感覚に襲われるので止めていただきたい。
「ん? なんだ?」
「………この『契約』誰が作ったの?」
ハギの疑問に俺は言った。
本当にな。今の俺の中の知りたい事ランキング1位だよ。
「………知らねぇよ。それじゃあ、いくぞ……『我、『精霊神――黒谷 啓』は『吸血鬼――ハギ・スカピオサ』を主とする事をここに『宣言』する』っと……もう手を離してもいいぞ」
――俺が『宣言』を言った瞬間、俺達の乗っていた魔法陣の光が強くなった。
「ええ!? 何これ?」
「………さあな、さっぱりわからん……だが、こうになるって事は書かれていた。『光が弱まったら『契約』の成功、その後は――』って続いてた」
「……本当に誰なの? その『契約』について書いたの」
「そりゃあ俺が聞きたいよ……だけど、この『契約』が本当だったら、そいつは天才だと思うよ」
俺達がそんなやり取りをしていると、魔法陣の耀きが弱くなってきていた。
「……やっと『契約』も終わるな」
俺がそう言うと、ついに魔法陣からが光が出なくなった。
「………これで終わるんだね? この『契約』」
「ああ、地味に長く感じたな」
「……うん、本当に誰なんだろうね? この『契約』作ったの」
ホントにな。誰だよこれ考えたやつ。
まあ、それ取り入れたのは俺だけどさ。それしか無いんだぜ? 文献がさ。
「さて、最後に俺がハギの手の甲にキスすりゃあ終わりだとよ」
ちなみに、最後の方は、全て『文献』通りにやっている。
最初の方はどうなのか? ………ま、魔法陣はオリジナルだよ? 『文献』通りにやったらもっとあれだし………。
「…………ほえ?」
デスヨネー。そういう反応になっちゃいマスヨネー。
ぶっちゃけ俺も、言っていて恥ずかしかったしな。
「え~と………もう一回言ってくれない?」
「………だから、俺がハギの手の甲にキスをするって言ったんだが?」
「ふぅ~、そ、そうだよね……き、聞き間違いじゃあなかったんだね……」
ハギは少し早口になっていた。
照れてる照れてる。
まあ、俺もハギのような顔しているんだろうけど。
主従のキスを手の甲にするのは何か面白いなー等と客観的に思っていた過去の俺………畜生。
「さ、さあ、とっととやっちまおうぜ。………恥ずかしいし」
「う、うん……とっととやって、この方法考えた奴探そ?」
……探されると、俺も怒られそうだけど……まあ、関わってないし、少しは内容を変えたんだ。
きっと大丈夫。本当の『儀式』の方法教えれば黙る。そして激怒するはず………。
ハギは、俺の目の前に右を出した。
俺はハギの目の前で跪き、右手の甲にキスをした。
これで、『契約』が交わされた。
俺はハギの『契約精霊』になった。
ハギは俺の『契約者』になった。
その後、ハギが少し寝込んだ。
『契約』のせいだ。
そもそも、『契約』は、二人でやるものではない。
二人でやるなら、魔力の詰まった『魔石』が多量に必要だったのだ。
それを知ったのはハギが寝込んでいるときだったので、一応、起きた時に謝った。
まあ、俺もそれを知らずにやったから、魔力の消費がやばかったのだけど………。
そんなこんなで、遂に入学式前日になった。
……この1週間は長かった。
『学園』では、余り事件が起こらないといいなぁ。
ま、起こるよね。俺が行った場所で事件が起きなかった場所なんて……ほぼ無いな。
そして、その日の夕方、ライアがとある『情報』を掴んだ。
――王族が『勇者召喚』をしたという情報を。
番外編を一話投稿した後、キャラクター紹介を更新します。