第37話 儀式後
「おい、大丈夫か? 体に異常はないか?」
ハギは『儀式』――『吸血副作用操作教示』が終わっても魔法陣の上に立ったままの状態だった。
何か問題があったかな? あったら今のうちに改造しておこう。
「う、ううん。大丈夫、何にも問題ないけど……」
「けど?」
「……少し、頭が痛い」
……どうやら、頭の許容量をオーバーしそうになったらしい。
そりゃあそうだ。無理やり頭に『情報』いれたんだ、頭だって痛くなる。
やっぱ情報強制処理・定着をさせる魔法も加えた方がいいのか? でもなぁ………。
「……そうか、少し休んでろ」
俺は『闇魔法』や『付与魔法』に入る魔法の1つ、『睡眠魔法』をハギに使い、眠らせた。
……起きる頃には、頭痛も治まっているだろ。治まってなかったら『治癒』でもなんでもすればいいし。
「……まあ、こんなカンジだ。わかっているだろうけど、あの頭痛は起きちゃうものだから」
「おう、すまんのう」
もう直すのも面倒なので、俺はそう言い残し、転移で家に帰った。
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ケイが帰った後、広場には静寂な空気が流れていた。
それは言うまでもなく、ケイのせいである。
ケイは彼らの魔法陣を改造し、魔法陣の能力を大幅に向上させたのだ。
それも、一瞬で。
若き『吸血鬼』達は、神聖な場所を汚すなんて! と、憤る者もいたが、魔法陣の一瞬での改造を見て、そして説明を受けてただただ唖然としていた。
そして『吸血鬼』の中で一人だけ、キナガだけは違った。
本当にあの『救世の勇者』だったのだ。
顔に出ていないが、内心大騒ぎしっぱなしだ。
一体どうすれば、あんな高度な術式を一瞬で書き換えられるのか?
どうすればあの境地――極地に至れるのか?
それが吸血鬼達一同がケイの改造を見ての感想だった。