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100回目の転生で精霊になりました  作者: 束白心吏
第一章 転生者(精霊)と生活
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第32話 ハギへのご褒美

 ハギが『魔導の叡智』を習得したという事を俺に報告した後、ハギは俺の部屋でのんびりとしていた。

 …………正確にいうと、俺のいつも寝ているベッドの上で。


「おい、ハギ。そこでいつまでもゴロゴロしてるのはやめろ」

「え? なんで?」


 俺の気持ちがわからない様で、ハギは純粋な目でこちらを見てくる。

 …………………この天然娘、自分がなにしているか自覚していないのか?


「……それじゃあ、質問です。もし、俺がハギの部屋のベッドの上でゴロゴロしていたらどう思いますか?」

「え!? そ、それはちょっと……」

「それと同じだよ。だから、ベッドの上でゴロゴロするのやめい」


 ハギをからかったが、とくに効果が無かったので最終奥義「あの約束、無しにするぞ」を使った。

 すると、ハギは直ぐにベッドから降りた。

 ……少し拗ねた顔をしながら。


「はぁ~、もう今『お願い』聞いてやるから」

「え? 覚えていてくれたの?」

「そんくらい覚えているわ」


 俺、そんな年寄りに見えるか?

 いやまあ確かに。今まで生きてきた年数を全て足せば――まあ7000歳はいくと思ってる。

 もうそりゃあ仙人だな。7000歳とか。


「ご、ごめんそうだよね。ま、まだ若いんだよね……」


 おい、申し訳なさそうな顔するな。少し傷つくだろ。

 いやそこまで若いわけでもないけどさ。言葉を考えろ。言葉を。


「……まあいい。それより、早く『お願い』を言え。叶えられるお願いだったら何でもやってやるから」

「うん。え~とね……」


 彼女は焦らすように……っていうか、恥ずかしそうに、顔をうつ向かせていた。

 …………早く言ってよ。見てるこっちが恥ずかしくなってくるから。


「え~と、その…」

「はやく言え。早くしないと『お願い』聞いてやらんぞ」

「え!? それは……」


 彼女は世界が終わるかのような顔をしていた。

 だったら早くいってくれよ……。見てるこっちが恥ずかしいから。マジで。


「あ、あのさ………………」

「ん?」


 早く言わんかなぁ。


「あ、あの! 私に『血』を飲ませて!」

「……………………」


 ………………(理解できていない模様)。


「え~と………ダメ?」


 ハギが上目遣いでこちらを見てくる。

 うーん。意味分からん。

 何故俺の――ああ、知的好奇心か。やはり弟子は師匠に似るのか。


「はぁ~。あのな、ハギ」

「な、何?」


 ハギは俺が突然の真面目な雰囲気になったことを戸惑っていたようで、少し反応が遅れた。


「ハギ、『吸血鬼(ヴァンパイア)』はな、家族以外の人間の血を吸わないのは知っているよな?」

「うん。家族か、最愛の人の『血』しか飲まないんでしょ? それが?」


 まだわからんのか……。

 俺は心の中で大きなため息をつきながら、この目の前にいる天然娘(弟子)に教える。


「わかっているんだな。それじゃあ、わかるだろ? 『戦争時代』は例外として、基本的に『吸血鬼(ヴァンパイア)』は、『他人』の血を飲まないんだ……理由はわかるか?」


 少し問題を混ぜながら俺はハギに説明をする。


「『吸血』の副作用?」

「正解だ。『吸血鬼(ヴァンパイア)』の『吸血』の対象になった奴らの副作用は『吸血』時の『快感』だからな。それを知った人間(クズ)共が昔『吸血時の快感』の為だけに『吸血鬼(ヴァンパイア)狩り』までやった……世界史でやったよな?」

「う、うん。それで?」


 ハギは、少し動揺しながらも、話を聞いている。


「だから、『吸血鬼(ヴァンパイア)』達は隠居した。そして、1つの掟をつくったんだ。それが――」

「ちょっとまって!」

「ん? どうした?」

「どうして……どうしてそんな事知っているの? どうして今、その話をするの?」


 ハギは、悲しげな顔をしながら言った。

 そんな顔されてもなぁ…………まあ伝えなかった俺も悪いけど。


「……これはな、『吸血鬼(ヴァンパイア)』の掟だった言葉だ。そして、家族以外の『他人』の血を飲むのなら知らなきゃならん。詳しいのはちょっと長生きしすぎたからだ」


 俺は自分の心を殺して、ハギに説明を続ける。

 ハギは『掟』の話の続きを促した。


「続けるぞ、『掟』は全てで3つ

1つ、『我々、吸血鬼(ヴァンパイア)は、家族以外の者の『血』を吸うのを禁ず』

2つ、『もし、結婚等で他種族と結ばれ家族となった時、その者にこの『掟』を教え、『儀式』をする』

3つ、『『儀式』は、我々の村でしか出来ない』

……この3つだ。

そして、書いてはいないが、『儀式』には、見届け人が必要になる。これも、村でしか『儀式』をやらない理由のひとつだな」


 長い説明が終わると、ハギの頭から湯気がでているような気がした。


「少し難し過ぎたか?」

「……ほぇ? う、ううん、大丈夫。つまり、『親族』以外の者の血は『儀式』をしないと飲めないって事でしょ?」

「ああ、その解釈でいい」


 どうやら、わかってくれた様だ。

 俺は苦笑しながら、ハギの髪を撫でた。

 俺はハギの嬉しそうな顔を見ながら、次にやる事を言った。


「よし、それじゃあ行くか」

「え? 行くってどこに?」

「『吸血鬼(ヴァンパイア)の隠れ里』だ」

「………」


 ……どうやらハギは、驚き過ぎて声もでなかったようだ。

 え? 呆れてる? 確かにそうかもしれんな。

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