第306話 第三学年一学期21
「さすがに気障すぎたかねぇ」
先程自分で言った言葉を思い出しながら俺はお茶を飲む。
最近はこんな感じで一日を過ごしている。全身常に痛くてあんま動けないから、寝るとき以外はほとんど応接間だ。まあ時折外に出て日光を浴びてはいるが。
「さあ? ですがマスターの本心くらいは伝わったかと思われます」
「否定しないのな」
「否定できないので」
まあ言った本人もわかるくらいにゃ気障だったよな……うん。思い出したら恥ずくなってきた。それでも言わないよりかはマシよな。
なんて開き直って湯飲みに口をつけた時、突然応接間の扉が開かれた。
「大変たいへーん!」
先ほど着替えに部屋に戻ったハギが、物凄く焦った様子で応接間の扉を開ける。
思わず湯飲みが手から滑り落ちた。
「うおビビった……助かったわ」
「いえ。それよりハギ、どうしましたか?」
魔法で落ちかけた湯飲みを器用に操作して机に置く。お茶も器用に戻すなあ。
それはさておきハギだ。大変だと言われただけじゃ俺達は何もわからん。
「大変なんだよケイ!」
若干パニック状態に陥っているハギは説明にならない説明をし続ける。
「ハギ。一旦落ち着いてください」
「深呼吸しろ」
「すぅー……はぁ……」
「……落ち着きましたか?」
「う、うん」
少なくとも先程までよりは落ち着いた様子のハギだが、その表情からは不安がありありと見て取れる。そこまで不安になることあるか? まあ異性だし、色々あるか。
そう考えていると聞いていいのかと疑問が浮上してくるが、そこはハギが「寧ろケイに聞きたいから」とのことで。いやホントに何?
「私……鏡に写らなくなったんだ」
「……」
「……」
「ライア、お茶のお代わり頼む」
「ハギの話はいいのですか?」
「水鏡で代替できるから用意しておけ」
「承知しました」
ライアはお茶のお代わりを酌んで下がる。
ふう……そういやあったなぁ、吸血鬼の特性。完璧に忘れてた。
「えーっと……どゆこと?」
「本来、吸血鬼は鏡に写らないんだよ」
「???」
ハギは疑問符を何個も浮かべる。今までは写ってたからなぁ……それだけ成長したって証でもあるから喜びたいが、素直に喜べないなぁ。
それによく見れば他にも変化した部分はあるし……本格的に『吸血鬼』としてのスキルを育成させんとな。
「まずは吸血鬼についてサラっとおさらいだ。ハギ、吸血鬼ってどんな種族だ?」
「人の生き血を吸う生物?」
「言い方。まあそれはいいし、捉え方もそれでオッケーだ。
厳密にはヒトだけじゃなくて獣の血も吸うし魔物の血だって飲めるけど……」
「ヒトの血が一番美味しいよ」
「うん。らしいな。まあ血液の味談義は後でやるとして……ともかく、吸血鬼は他生物の血を飲まないと干からびる生物だ」
「そういえばどうして吸血鬼って血を飲まないといけないの?」
「血を生成する力が弱いからだと」
「何その欠陥生物」
それな。地球ならとっくに淘汰されてる特性だわ。まあこの世界は魔力があったからか、色々偶然が重なって種族にまでなったわけだが。
「血を生成する力が弱い分、色々メリットもあるしデメリット……それこそ鏡に写らないのもこの辺りが要因なんだけど、更に詳しい話は教本を見ながらにするか。じゃ、書物を取りに行くぞ」
「そこからなんだ」
そりゃな。突然だし仕方ないだろ?
次回は説明回……すいませんたぶん今日か明日にもう一話投稿します。やっと時間に余裕ができそうなのです。
またこの作品の吸血鬼は独自解釈が多分に含まれています。既存の吸血鬼とは異なる部分が多くございますが、その点はご了承ください。




